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…月夜の仕事人…

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−2:女神の独り言−

ある昼下がり、何となく静かな街
ただ降り続ける雨

傘をさす人が行き交うアンティークショップ前の道
いつもは少ない車も今日は多めでエンジン音がとても五月蠅い

「今日はもう閉店ですね。」

水鶏がアンティークショップの前に看板を出そうとしていた
と、そこに傘もさしてない子供が立っていた
水鶏は吃驚し、慌ててその子供を店の屋根の下に入れた

「こんにちは。」

子供は全く同ぜずにこにこしていた
水鶏は目を点にしていた が、すぐに笑顔を取り戻し子供を見た

「どうしたんですか、こんな雨の中。」
「散歩です。」
「傘もささずに?」
「はい。」

水鶏の質問に対して、子供はにこにこしながら答えていた
水鶏はカタンと店のドアを開けた

「よろしければここで少し道草をしませんか?」
「でも、今閉店って看板が、、、。」
「はい、ですから今からここは店ではなく休憩場となりました。」

そうですか、と言いながら子供は店の中に入っていった
子供は店内に入る也、ぴたりとある絵の前に足を止めた
カチャカチャと音を立てながら水鶏はティーセットと、大きなタオル持ってきた

「それが気になりますか?」

子供は黙ってにっこりと笑う

「作者の名、描かれた年代は共に不明。」
「確か題名は、、、、、。」

水鶏は近くにあったテーブルにティーセットを置いた
そして子供に近付き、タオルを頭に被せテーブルに戻る

「『深海』。」

水鶏は2人分のカップに珈琲を注いだ

「さぁ、珈琲がまだ冷めないうちにどうぞ。」

そう言い、水鶏はまだ湯気の出るカップをテーブルに置く
子供は言われるがままに、椅子に座りカップに手を伸ばした
次に水鶏は砂糖とミルクを子供の前に出した
子供はそれらを少量ずつ入れ、一口だけ珈琲を飲んだ

「遅れましたが、私はここの店長の水鶏といいます。」
「貴方の名前は?」
「僕はエリリスです。」

エリリスと名のった子供は又一口だけ珈琲を飲んだ

「そういえば、あの絵にとても興味を示していましたが、、、。」
「あの絵の女性が僕の母に似ていたので。」
「では、さぞかし綺麗な方なんでしょうね。」
「、、、、、、はい。」

エリリスは急に俯いた
だがすぐに顔を上げ、テーブルにカップを置き水鶏を見て笑った

「おかわりいただけますか?」

水鶏はカップを手に取り静かに珈琲を注いだ
どうぞ、と言い今度はセサミクッキーと一緒にエリリスの前に置いた

「そういえば、エリリスさんのお母様は今は?」

水鶏の何気ない質問にエリリスは一瞬固まる
そして、手にしていたカップを置き少し悲しそうに笑った

「十年前、事故で殺されました。」
「丁度、今日みたいな雨の日にです。」
「、、、そうですか、すいません悲しい過去なんか思い出させたりして。」
「いえ気にしないで下さい、もう十年前のことですし。」

そう言い、エリリスはクッキーに手を伸ばした

「所で水鶏さん、あの絵を僕に譲ってくれませんか?」
「『深海』をですか?」
「はい、あの絵を友人に贈りたいんです。」

水鶏はにこりと笑い、立ち上がる

「いいでしょう、きっとエリリスさんに貰われるなら深海も喜ぶだろうから。」
「絵が、、、喜ぶ?」

エリリスは不思議そうに水鶏を目で追った
水鶏は壁に近づき、掛けてあった深海を下ろす

「絵にだって感情くらいあるんですよ。」
「いえ、絵だけではなくこの世のもの全てにです。」
「不思議な話でしょう? でも、全て本当の話なんです。」

そしてそれを手に店の奥へ入っていった

「もちろん絵のお代は頂きますよ。」
「でもお金は頂きません。」
「その代わりにですが貴方の綺麗なモノを下さい。」
「、、、、、綺麗なモノ?」

エリリスはきょとんとしている
その間に水鶏はさっきの絵を包装し始めた

「答えは出ましたか?」

しばらくし、水鶏が包装し終わった絵を持ってきた
エリリスは遠慮気味に水鶏を手招きし、耳元でぼそぼそと何か言った

「歌ですか?」

エリリスは照れながら小さく頷く
水鶏はとても嬉しそうに微笑んだ

「ではいただきましょう、貴方の歌『女神の独り言』を。」


♪幼き女神の花冠に
♪白き月の光が注ぐ・・・・


それから、アンティークショップからは優しい歌声が聞こえた

「素晴らしい、今の歌声はお釣りがかえって来るくらい上等な物です。」
「そんな、、、、。」

エリリスは顔を真っ赤にしていた
水鶏は嬉しそうに、包装した絵をエリリスの前に差し出した

「確かに『女神の独り言』をいただきました。 どうぞ、『深海』をお持ち帰り下さい。」
「はい、ありがとうございます。」

エリリスは嬉しそうに笑い、絵を抱きしめた

「ニャー!」

その時、突如金平糖が店の中に飛び込んできた

「金平糖、何処にいってたんですか。」

床が濡れていることに気付き、水鶏は急いで金平糖を捕まえタオルに包み込んだ
そしてそのまま、ぐしゃぐしゃと手荒に拭く

「飼い猫ですか?」

と、そこへエリリスが興味深そうに顔を覗かせた

「そうですね、一応飼い猫です。」
「ニャ!」

ようやく拭き終わったか、水鶏はタオルから金平糖を放した
金平糖はすぐさまエリリスに近付き、ごろごろとのどを鳴らす

「?」

エリリスは自分の足に身をすり寄せる金平糖を不思議そうに見た

「どうやら、金平糖に気に入られたみたいですね。」
「金平糖は綺麗なモノが好きなんですよ。」
「エリリスさんの歌声が少しでも聞こえたんでしょうかね?」

エリリスは又顔を真っ赤にしていた
水鶏はタオルを畳み立ち上がった

「時に、エリリスさん。」
「これからは雨だけで昔の悪夢を流し出そうとしないで下さい。」
「?!」

水鶏の一言にエリリスは素早く反応した

「貴方の見た悪夢はきっととても辛く怖い物だったのでしょう。」
「でも、雨は貴方の良いモノだけしか流し出してくれませんよ。」

水鶏はそう言い、エリリスを撫でた すると、エリリスの両目から自然と雫が溢れた

「、、、、、わかりました。」
「あ、もう雨が上がりましたよ。」

水鶏は笑いながらそう言った エリリスは溢れ出る雫をそのままに少し笑う

「じゃあ道草は終わりですね。」
「はい、では又の道草お待ちしております。」
「雨降り時に、もしも会えたらの話ですがね、、、。」

水鶏はどこからかはさみを取りだし、何かをプツンと切る
その瞬間、エリリスは静かに目を閉じた

「さて、金平糖お別れは寂しいでしょうが彼を送って下さい。」
「ニャウ、、、、。」
「仕方ないでしょう、これも仕事なのですから。」

金平糖は残念そうに、包装した絵『深海』をくわえエリリスに近付いた

「じゃあ、よろしくお願いしますよ。」

店内には風が吹き、ガンッと何かがぶつかる音がした



「エリ、リ、、ス大、、、丈夫?」
「、、、、ん。」

顔に当たる何かひんやりした冷たい物
ふんわりとした花の匂い
それと、聞き慣れた優しい声
目を閉じたままのエリリスでもそれらだけは何となく分かった

「ルナラさん、、、、。」
「もう心配したよ、草原の中でおでこ怪我して倒れてんだもん。」
「死んでるかと思った。」

と、笑いながらルナラは話した

「ん、そういえばその手元にある包装した物は何なの?」
「何? 誰か女の子にでもプレゼントするの??」
「えっと、、、。」

エリリスは記憶にない包装物を見て少し戸惑った
が、すぐに何かを思い出したか包装物をルナラに渡した

「これはルナラさんにあげた方が良い気がします。」
「ホント? 貰って良いの??」
「後から返して〜何て言っても返してあげないからね。」
「いいんです、何か最初からそうしようとしていた気もしますし。」

エリリスの様子を見て、ルナラは豪快に包装紙を破いた

「わぁ、、、!」

そして、包装紙を取り除かれたそれを見たルナラは歓喜の声を上げた
エリリスも少し気になり、それを覗く

「凄い、綺麗ね〜!」

ルナラの手には青を中心としたとても綺麗な、女性の絵があった
2人はしばらくその絵に見入る

「、、、その絵の女性、何となくルナラさんに似てますね。」

無意識のうちにエリリスはそんなことを言っていた
ルナラは笑いながらエリリスの背中をバチンと叩く

「痛〜〜い。」

エリリスは目をうるうるさせていた

「いくら社交辞令でもそれは言い過ぎよ、エリリス。」
「でも嬉しいわ、ありがとね!」

そう言い、ルナラは顔を少し赤くして嬉しそうに笑った
エリリスも自分の言葉が急に恥ずかしくなり、少しだけ赤くなった


「ルナラさんも似ていたんですね、あの『深海』の女性に。」
「それにしても何て可愛らしい、、、エリリスさんもまだまだお子さまですね。」
「ニャァ。」
「おや、お早いお帰りですね金平糖。」

どこからか金平糖が椅子に座る水鶏にすり寄ってきた
水鶏は金平糖を抱き上げじっとにらめっこして話し始めた

「今日はエリリスさんを怪我させたのはかなりのマイナスですね。」
「なので、今日のおやつは抜き、、、。」

水鶏がそう言いかけると金平糖は水鶏の頬をぺろんと舐めてみせた
水鶏はやれやれと苦笑いし、金平糖を抱きしめる

「、、、にしようと思いましたが、いろいろとサービスしてくれたので。」
「そうですね、う〜ん。」
「まあ、プラスマイナス0と言うことにしておきましょうか。」

水鶏は窓際から雨に濡れた街を眺めた

「明日は晴れると良いですね〜。」

そう思う水鶏の気も知らない金平糖は嬉しそうに顔を洗う


【END】


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