書籍感想記録(2002-12)


02-Dec-2002

高千穂遙「悪霊都市ククル」下巻 朝日ソノラマ(文庫/ソノラマ文庫/ISBN4-257-76984-X)
 改訂新装版第8弾の下巻。今回はジョウではなく、リッキーにスポットを当ててるのかもしれない、ということにようやく気づいたのですが、 それでも全体的に漂う淡々とした雰囲気、極言すれば停滞したようなスピード感もスリルも少ない展開とノリは何なのでしょうか。 上下巻ということで2冊にするのではなく、普通に1冊にまとめればテンポもよくていい感じになったような気がするのですが、 なまじ分冊になった分、間延びしたような印象があります。 ボーイ・ミーツ・ガール的要素のある、この手の作品は決して嫌いではないし、 まして馴染みのキャラクターによるものなら素直に楽しみたいところなのですが、 その面…ラブコメ要素ですね…の描きこみが足りないので萌えるに萌えられません。 ナタラージャもすごいのかすごくないのかよくわからないし、 シリーズ初期のハッタリとケレン味の利いた作品に戻してほしいなあ、と古いファンとしては願わずにいられません。


17-Dec-2002

阿刀田高「鈍色の歳時記」 文藝春秋(文庫/文春文庫/ISBN4-16-727821-9)
 「歳時記」にのってるような季語をモチーフにした12の短編集。 まあ、阿刀田高の書く短編ですから、はずれがないというかお手本みたいというか、 どれもすっきり読み易く、それでいてそこはかとなく恐怖が漂っていてミステリの香りがあってという、 安心して読める作品ばかりでした。作品の中に接頭語に「超」とつけたり、語尾に「じゃん」とつけたりする記述があって、 その部分は阿刀田高らしくないなあ、と思いましたが、他はいつもの通り安定志向でありました。


19-Dec-2002

倉田英之「R.O.D」第7巻 集英社(文庫/集英社スーパーダッシュ文庫/ISBN4-08-630105-9)
 「ゲーテンベルグ・ペーパー」を巡る争いの「引き」であった前巻の続き、ではなく、 読子とねねね、そして読仙社の四天王の外伝です。 あの引きの次に外伝はないだろう、と思いつつも、アクションもなにもない、 のほほんとした読子とねねねは結構面白かったです。 いかに読子が「のほほんとしている」というようなことを文章で書いても、 実際がハードなアクションばかりではそれが「単なる看板」になってしまうので、 こういう外伝を入れてくるのは却って新鮮でいいのかもしれません。 四天王の外伝は全く毛色が違って、香港映画みたいなノリでまあこんなものもありか、 と思いつつも前巻読んでから時間が経ってるので誰が誰だったか思い出せずに 感情移入はしづらいかなあ、とも思いました。


Author : suita@terra.dti.ne.jp