コミック感想記録(2002-12)


14-Dec-2002

真田ぽーりん「ウチら陽気なシンデレラ」1巻 少年画報社(A5/YKコミックス/ISBN4-7859-2261-3)
 ルンルンサービスのクリーンスタッフの4人組が仕事場、プライベートで巻き起こす事件の数々を描く4コママンガの単行本第1巻。 この手の4コマものはキャラ立ちがしっかりしてれば、多少ネタが強引だったりオチが弱くても結構笑えるものですが、 このマンガはそれなりにクリアしていると思います。 ただ、主役の4人組よりも、本来脇役である「癒し系」のキャラが主役を食いまくっているので、 現時点では少し描き分けの弱い4人組の分もまあ補っているかな、というところはあったりしますが。 ある程度安定した以降の展開によって普通に楽しめるか、ネタが切れて惰性となるかが決まると思うので、 今後もがんばってほしいと思います。

山東ユカ「ヒミツの保健室」1巻 少年画報社(A5/YKコミックス/ISBN4-7859-2260-5)
 とある私立高校の女性保険医、香椎と保険委員の佐々木さんを中心に描かれる4コママンガの第1巻。 一昔前のぶっとんだ性格の女の人のような香椎が暴走して、佐々木さんがツッコミいれるというフォーマットを中心に、 それに他のキャラクターをからませるというバリエーションを用意してあります。 香椎、佐々木、そして佐々木ラブな中谷(男性教師)はそれなりにキャラ立ちがしてますが、それ以外がさっぱりで、 ある種割り切っているともいえますが、ボケ担当の香椎にもう少し暴走してもらってもいいかなあ、と思います。 ツッコミ役の佐々木さんはともかく、暴走担当が近頃のマンガにしては「おとなしめ」なので、 その部分でがんばってもらわないと、あるいはがんばるとさらに面白くなるのでは、と思います。


16-Dec-2002

矢上裕「エルフを狩るモノたち」20巻 メディアワークス(B6/DENGEKI COMICS/ISBN4-8402-2281-9)
 続きに続いて20巻。この巻も突出はしてないですが、安定して楽しめるエピソードが収録されています。 前巻を読んだとき、「幕の引き時が難しくなってくるとは思いますが」などと書いていたら、 先頃ついに8年にわたる連載が終了し、この巻ではこれまで延ばし延ばしになっていた「魔法のかけらの収集」がついに完了。 そこにいたるまでのエピソードもそういう目でみると収束に向かってなんとなく…ということはあまりないですが、 「かけら」が集まるのがあまり唐突に感じなかったのは、ぼちぼちまとめてしまったほうがいい、という自然の流れだったからかもしれません。


18-Dec-2002

草場道輝「ファンタジスタ」17巻 小学館(新書/少年サンデーコミックス/ISBN4-09-126297-X)
 イタリア編もこの巻から本格開始ということで、新監督の不可解な采配の中でチーム内での軋轢や争いが激化していきます。 そして現れる新キャラクター。
 サッカーもしっかり描ける作者ですが、スポーツ漫画的なアプローチとして、読者を煙に巻くというか、 お約束が多くなり勝ちなスポーツもので「先が見えない」ように話を持っていくのは、 次回への興味を維持するという面でいいとは思います。 ただ、この巻では軋轢や不協和音ばかりでカタルシスに欠けるのがテンションを下げています。 短期で終わる漫画ではないから中にはこういう巻があるのは重々承知ですが、 やはり1巻に1つのカタルシスは欲しいところです。

雷句誠「金色のガッシュ」8巻 小学館(新書/少年サンデーコミックス/ISBN4-09-126238-4)
 遊園地で遊ぶ清麿とガッシュの前に現れる二組の敵。 2対1で戦う清麿とガッシュは苦戦する。しかし彼らの前に現れたのは… ということで、相手はギャグっぽいですがコンビネーションでボロボロにされるところに 助っ人というシチュエーションはバトルを伴う漫画ではお約束中のお約束ですが まっとうにやってもイヤミがなくていい感じです。 ラブコメの雰囲気も初々しくて悪くありません。 そして、香港編(?)では魔物と人間のかかわりを問うような話でこちらも悪くありませんでした。 その他、恵とティオが主役の外伝も収録。ギャグとシリアスのバランスがいい感じでした。


19-Dec-2002

貞本義行「新世紀エヴァンゲリオン」8巻 角川書店(B6/角川コミックス・エース/ISBN4-04-713529-1)
 最強の使徒を倒した代償に、初号機に取り込まれたシンジを救うため、ネルフはサルベージを試みるが… ということで、本編でもあった過去話を含めて謎解きや状況説明など。 アニメよりも個々の心象風景ややりとりなどの描写がいいなあ、と思う場面がありました。 漫画はアニメと違って動きがない分、コマとコマの間を想像で補完することになって、 それが自分好みの「行間」いや「コマ間」にできるから、 この手の作品は却って漫画のほうがいい、と思えるのかもしれません。 今のところ、アニメと大きく外れたところはありませんが、結末がどうなるのでしょう。 今更あのラストを持ってこられてもいまいち感動しないので、 なにか一ひねりあるといいのですが。


23-Dec-2002

柊あおい「銀色のハーモニー」 集英社(文庫/集英社文庫コミック版)
 中学2年生になった琴子は親友の鈴子と面倒見のいい研一郎たちと楽しい学園生活を送っていたが、 ふとしたきっかけで知り合った海くんが気になって…という柊あおいの少女漫画の文庫版です。 りぼん本誌に連載していたときは、まだ「星の瞳のシルエット」のイメージが強すぎて、 似たようなことやってる、という程度の印象の薄い作品という感じがしていました。 文庫になって改めてまとめ読みすると、ドロドロした人間関係(まあ少女漫画で許容される範囲ではありますが)や すれ違いによる軋轢など似たところもありますが、思っていたよりはすっきりして読みやすい作品であったなあ、と思いました。 一つ大きな違いがあるとすれば、というか決定的に違うところですが、 主人公の琴子たちより一つ上の世代、琴子の叔父や海の母の世代の過去そして現在の恋愛の描写で、 昔はそんなに感銘を受けることはなかったのですが、琴子や海よりも叔父さんの年齢に近くなった現在は、 「こんな話、少女漫画でやってたのか」と驚いてしまいました。 作者も琴子と海よりは叔父さんたちの恋愛を描きたかったような気がして、 そちらの面からみると(ありがちな話ではありますが)結構面白く読めました。 印象だけの読まず嫌い(というほどじゃないですが)はいけませんね。

大暮維人「天上天下」9巻 集英社(B6/ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ/ISBN4-08-876387-4)
 過去の経緯を知り、気持ちを新たに予備戦に向かう柔剣部一同。 そんな中、十二宗家の元当主たちの特訓を受ける宗一郎は着実に力をつけるがその前に新たな敵が…という第9巻。 真夜のフィギアのついた特別版もあったようですが、これは通常版です。 フィギアだけは一度見て見たいと思いましたが、それはさておき、 ストーリーは現在に戻り、特訓・仲間の増加などイベントを重ねつつ、気がついたら学園を飛び出して伝奇アクションへの 道を突っ走り始めました。主役の(はずの)宗一郎は少し主人公っぽくなってきましたが、 ヒロインのはずの亜夜は姉に負けてます。 ストーリーが脇道、あるいは本筋へのインターミッションかもしれませんが、存在感の強い真夜に亜夜が勝てる日が来るのでしょうか?

桜野みねね「まもって守護月天!再逢<Retrouvailles>」1巻 マッグガーデン(B6/ブレイドコミックス/ISBN4-901926-23-3)
 作者が突然違う漫画を始めて、並行でやってた漫画も何か良く分からないうちに終了して、 気がついたら別の雑誌で復活していた「守護月天」の続きです。 とはいっても前の巻から随分長いブランクがあるので登場人物を思い出すだけで一苦労で、 前の終わりがどんな話だったかまでは完全に思い出せない体たらく。 ただ、謎めいた新キャラがでてきて、新たな試練も始まりそうな雰囲気というのだけは分かりました。 一時期、絵が崩れていた作者ですが、この本では復調の兆しもあって、 話もいい感じになってくれるといいな、と思いました。

高田裕三「幻蔵人形鬼話」3巻 講談社(B6/アフタヌーンKC/ISBN4-06-321143-6)
 これまた前の巻から随分長いことブランクがあって復活した作品です。 安土桃山時代の瀬戸内海を舞台に、傀儡師・幻蔵が出会った事件を描く活劇ものです。 2巻までは1話完結に近い形でしたが、この巻からは連載の形態が変わったせいか、 1巻分では収まらずに「次につづく」となっているのが目新しいところですが、 もう少し厚くしても1巻で話を収めたほうがこの作品の色としてはいいのかなあ、と感じました。 あのヒキで「次巻につづく」をやられると少し間延びしてしまう気がしないでもないので。
 長期連載を終えたばかりの作者ですが、絵も崩れていないし、 こういう毛色の違うものだと違った面白さがあって結構いいと思いました。


26-Dec-2002

六道神士「エクセル・サーガ」10巻 少年画報社(B6/YKコミックス/ISBN4-7859-2268-0)
 もともと「伏線は張ってるらしいけど全体としては話が進んでない」ような印象のある漫画で、 ここ数巻は新キャラ登場や岩田のロボット化などイベントはあったものの、 停滞感というものを多少感じていたところなのですが、その印象はこの巻でもあまりかわりませんでした。 長期連載の漫画の落とし所というのはなかなかに難しいもので、その推測も難しいものです。 ただ、この漫画に関しては方向性がさっぱりわからないので、 細かなギャグなどを取り上げて笑う以外の、多分本筋の部分に対する興味が削がれているような気がします。 その打開策かなんかしりませんが、いきなり学園ものになったりしていて、さらに何が何やら。

鬼魔あづさ「夜の燈火と日向のにおい」7巻 少年画報社(B6/YKコミックス/ISBN4-7859-2266-4)
 巧と女子高生幽霊の彩子のラブコメを中心にした人々や幽霊や物の怪たちのほのぼの、 ときどきせつない系のエピソードを連ねた連作ものなんですが、作者自身も書いているように、 この巻になったら巧と彩子よりも、拝み屋の村山兄弟と鬼娘のほうが目立っていて、 何が何やらですが、少なめの台詞とラフっぽい画面をさらっと流して読むと雰囲気は伝わってくるので、 悪い印象はないです。 ある種のBGV…真剣に集中してみるというより流し見てて、なければ何か物足りないといったところ?…でしょうか? ラブコメ好きな人間なので、幽霊と人間のラブコメの行く末を気にしてましたが、 そっちはなんだかどうでもいいような感じがしてきたのは作品としてどうなのでしょう?

冲方丁・伊藤真美「ピルグリム・イェーガー」2巻 少年画報社(B6/YKコミックス/ISBN4-7859-2267-2)
 連載を毎月読んではいるのですが、正直なところ1話分だけ読んでも前後が把握しづらいので「???」と思うところの多い漫画です。 唐突に登場人物が増えて、それぞれが「二つ名」をもって、何かをやろうとしている、というのはわかるのですが、 アデールやカリーンが出ないときは本筋なんだっけ、と思うことがしばしばでしたが、 単行本にまとまってみると、<銀貨>と呼ばれる面々は舞台となる16世紀の有名人たちで、彼らがぞろぞろ集まって、 何かを企んでいる。そしてアデールやカリーンはそれに関わりがある/関わりをもつことになる。 そしてまだ「前段階」として登場人物が集まり始めたところだ、ということがようやく理解できました。 ということで、1巻に続きこの巻もまだ「導入」といったところであるようです。 じっくり描いてもおもしろそうなんですが、少しメリハリというか、盛り上がりが欲しいような気がしました。


29-Dec-2002

ちば・ぢろう「オタがいく!!」1巻 少年画報社(B6/YKコミックス/ISBN4-7859-2265-6)
 中学時代はヒッキーだった森空すばるは高校入学と共に変わった。 それは趣味を同じくする友達を得たから。しかしその友達はオタクだった…というオタク礼賛、というと少し言いすぎですが、 オタクの生態を笑いを絡めながら描く学園もの、というのもなんか違いますが、まあそういった漫画です。 この作品よりもベタベタに濃いオタク漫画とか、同人業界をネタにしたような漫画も出回っている昨今ですが、 ネタもそう深いところのツッコミはないし、このくらいの濃さなら気楽に笑えていいかなあ、と思えます。 「ギャルゲー風コスメ」のネタと「再会すばるとてしあ」…これでようやく森空兄弟の名前の元ネタに気付いたわけですが…が 結構楽しかったです。


31-Dec-2002

林家志弦(Please! 原作)「おねがいティーチャー」1巻 メディアワークス(B6/DENGEKI COMICS/ISBN4-8402-2131-6)
 「停滞」という不可思議な病をもつ少年、草薙桂のクラスに新しい担任、風見みずほがやってきた。 しかし彼女は実は宇宙人でなりゆきで桂とみずほは結婚することになって…ということでアニメの「おねがいティーチャー」の コミック版です。アニメのほうは第1話をチェックし忘れてそれっきり観てませんが、今頃になってなんとなく買ってみました。 桂とみずほが「夫婦」になるまでの展開があまりにも唐突すぎて連載してる時に読んでも何がなんだかわからなかっただろうなあ、 というのは初読の感想です。1クールアニメのコミック版を月刊誌でやるというのはいろいろ大変で、 出来るだけ放送中にあわせて掲載しようとすると「詰め込んだ」展開にならざるを得ないのでしょうが、 もう少しゆとりというか溜めがあるとよかったような気もします。無いものねだりかもしれませんが。 展開の唐突過ぎる面意外は絵柄も話の流れも悪くなくてドタバタラブコメしているのが好感が持てました。
 今後アニメのほうをチェックするかは不明ですが、1度みてみるのも悪くないかなあ、とは思ったので、 そのうちチェックするかもしれません<タイアップにひっかかった?


Author : suita@terra.dti.ne.jp