STAR TREK : DEEP SPACE NINE ─スタートレック ディープ・スペース・ナイン 1st SEASON |
#1&2 "THE EMISSARY , PART 1&2"─聖なる神殿の謎 パート1&2
冒頭からいきなりのボーグとの艦隊戦で、なかなか迫力有る開幕となっている。
実際にはそこで妻を失って落胆したベンジャミン・シスコ中佐が、
カーデシアの撤退した後のベイジョーのステーションに赴任するところから話が始まる
第1話は価値を失ったと思われたその星域が、
「予言者」といわれる種族によって作られた「ワームホール」が発生したため、
突如重要な意味をもつ場所になるという話である。
話自体はともかく、ボーグとの戦闘で心ならずもボーグの手先となってしまったピカード艦長がゲストとして登場し、
最初、シスコは妻を失った原因となったと思っているピカードを怨むが、
「予言者」によって自分が過去に囚われていた事に気づき、
和解するという描写がTNGを観ていたものとしてはうれしい演出である。
設定やキャストがほぼ確定しているのでパイロット版というより2時間スペシャルといった感じの第1話。
出だしとしては結構おもしろいものであった。
DS9の保安主任であるオドーが、かつてカーデシア占領時代に彼が逮捕したベイジョー人と諍いを起こし、
そのベイジョー人、イブタンが殺害されたことで嫌疑をかけられる話。
ミステリータッチといえば聞こえがいいが、オドーがDS9で唯一の「流動体生物」であり、
他の人間と異なっていることから、心無いベイジョー人などから罵声をあびたりする、
TOS・TNGではあまり考えられないような、生々しいものであった。
ラストのシスコの台詞「オドーに謝罪する者は1人としていなかった」
というのがかなり痛い。この「痛さ」がこれまでのシリーズとは一線を画しているのだと思った。
困難な状況に置かれたオドーを、いつもは犬猿の仲であるフェレンギ人クワークがかばう姿はなかなかよかった。
DS9のベイジョー側補佐官キラ少佐が、かつての同志の亡命によって苦悩するエピソード。
ターナ・ロスの目的は視聴者には「みえみえ」であって、
そんなことも気づかずに司令官だの補佐官だのやってどうするというツッコミいれたくなってしかたなかった。
まだこのころは脚本や演出がこなれてないからか?
TNGに出演し、劇場版「ジェネレーションズ」にも登場したクリンゴンのデュラス姉妹がゲスト。
さらにサブ・レギュラーのカーデシア人ガラックも初登場。
なかなか怪しげな感じで面白いキャラクターかもしれない。
エンタープライズDから転属してきたオブライエンが、故障だらけのDS9の機器の修理をするうちに、
かつて仕掛けられたウィルス発生器を作動させ、ステーションすべてが感染して危機に陥る。
TOSの"THE NAKED TIME"やTNGの"THE NAKED NOW"のように謎の伝染病で船が危機に陥る話があるけれど、
こちらは言語中枢がおかしくなって、怪しげな言葉をしゃべりはじめる病で、
ストーリーが進むにつれて深刻の度合いは増していくが、最初、
突如詩の朗読を思わせる単語を発するオブライエンには笑ってしまった。
邦題よりも、原題の「BABEL」というのはなかなかセンスがあっていい。
TOS、TNGは宇宙船による「探索」がメインであったが、
DS9はその舞台がステーションであるため「探索」というわけにはいかない。
それを補うのがガンマ宙域に通じる「ワームホール」であり、第6話にしてそのワームホールから
「未知の生命体」が出現することとなった。
やってきた「トスク」と名乗るエイリアンとそれを追うエイリアンは連邦とは全く異なる文化を持ち、
それによって引き起こされる混乱と困惑を描く好エピソード。
トスクと奇妙な友情が芽生えたオブライエンが「艦隊の誓い」を破ってまで
トスクを逃がそうとするあたりが多少、自文化を押し付けるアメリカ的なところが鼻につかなくもないが、
それを除けばこれまでで一番面白いエピソードだと思う。
TNGのセミレギュラー、Qとバッシュが登場。バッシュに執着するあたりが、
ややTNGにおけるQのイメージと異なるような気がするけれど、
相変わらず超絶な力でシスコをからかうあたりはQらしい。今回はQ自身によるものではなく、
バッシュの持ちこんだガンマ宙域のクリスタルによってDS9が危機に陥るというもので、
TNGにおけるQの悪戯よりはこじんまりした騒動話。
最初、バッシュの声が小山茉美から塩田朋子に代わっているので最初別人かと思った。
吹替というのは威力が大きいものであるなぁ。
ダックスのジャッジアの前のホスト、クルゾンに掛けられた嫌疑によって、
ジャッジア・ダックス大尉の引渡し要求がなされ、
それを阻止しようとするシスコらが「公聴会」を開き抵抗する。
アメリカドラマでは必ずといっていいほど行われるという「法廷もの」。
TNGの「THE MEASURE OF MAN─人間の条件」ではデータ少佐の「人権」が争われたが、
こちらは「クルゾン・ダックス」と「ジャッジア・ダックス」が同一人物か否かという
興味深い点で争われたが決着することがなかったのでこのあたりがやや不満である。
トリル族の人格がホスト変更という事態でどのように変化し、
周りもどのように感じるのかをもう少し突っ込んでほしかったと思う。
故障して緊急事態に陥った宇宙船は囚人護送の船で、そこから救出したクルーは
死んだはずの囚人が生きていると執拗に言い張る。そしてDS9で発生する数々の事件…ということで、
姿の見えない犯人が跋扈するある種のミステリーものです。
とはいったものの、導入部の時点で範囲が限定される上、かなり初期から吹き替え版だけかもしれませんが「声」でわかるし、
さらに一瞬姿が移ってしまうので衝撃度は低いです。
新任の保安士官のプリミン大尉とオドーの対立も中途半端で、全体にやや深みに欠けるエピソードであったと思います。
ガンマ宇宙域からやってきた異星人たちはなによりゲームを好む存在だった。
そして、彼らが八百長をしたクワークと行ったゲームの駒はシスコ・キラ・ダックスそしてベシアの4人だった…。
異文明の人々がそのメンタリティに適合した楽しみを行った挙句に主人公たちが迷惑をこうむると言う、
ある種スタートレックらしいエピソードでした。
ゲーム世界に放り込まれたのはシスコ以下の主要メンバーばかりだったのでどうせこの時点では死なない、
という思い込みが少し面白さとスリルをスポイルしている感がありますが、
全然悪びれない宇宙人たちと他人の命を賭ける状況になったら突然弱気になるクワークがいい感じでした。
DS9を訪れたフェレンギの大物、グランドネーガスはガンマ宇宙域へのフェレンギ商人の進出を計画するが、
それを指揮すべき新たなネーガスとして指名したのはなんとクワークだった…というフェレンギ人主役のエピソード。
ぞろぞろとフェレンギ人ばかりでてきてなんか異様な雰囲気がありますが、
突然の出世でいい気になっているクワークとその失墜、というか死によって利益を得ようとする「黒幕」たちの
せめぎあいが結構おもしろかったです。
オチに持ってきていた、クワークとその弟でいつもバカにされているロムとの奇妙な兄弟愛(?)が
なかなかいい印象でした。
クワークと札付きのミラドーン人との取引を妨害したガンマ宇宙域からの異星人はミラドーン人の1人を殺害して拘束される。
彼はオドーに対してガンマ宇宙域には「可変種」が存在すると告げるが…ということでオドー主役のエピソード。
DS9のみならず、アルファ宇宙域にただ一人の可変種(シェイプシフター自体はいろいろいますが同種はいない、という意味で)
であり、DS9メンバーとして信頼され重用されてはいるものの、同種の仲間を求める気持ちと任務遂行という義務の間で
板ばさみになっている感じがよく出てました。
最後のほうで「Home.Where is it」というのが吹き替えでは「故郷。いい響きだ」となっており、
それに続くのはいずれも「いつか行こう」といった意味になってはいましたが、
原語版と吹き替え版ではかなり異なる解釈をしている場合があるのだな、ということが感じられたエピソードでした。
ベイジョーの宗教的指導者、カイ・オパカがDS9に訪れ、シスコらは彼女に敬意を表してワームホールの向こう側へ
案内することになる。しかし突然の攻撃で見知らぬ星系にある衛星に墜落してしまう…
墜落した場所が流刑地であり、そこに住む人々は二派に別れ争う。しかし特殊な微生物の作用によって、
死ぬことが出来ない体となっていた。折悪しく墜落時に絶命したはずのカイ・オパカも復活するが、
場所限定の微生物に依存したその体ではベイジョーには戻れない、ということで、
非常なジレンマを生みそうな話なのですが、相争うエニス派とノル派の調停も中途半端に終わった挙句、
そんなに悩まないうちにエピソードが終わってしまい、少し消化不良な感があります。
「あなたと私の道はいつか交差する」というカイのシスコへの言葉は後のエピソードへの伏線となっていますが、
最終となる第7シーズンの最終話までこの時点で考えていたのでしょうか?
ベイジョーの一地方における土地を巡る争いの調停がDS9で行われることになった。
その一方の指導者はまだうら若い少女で、彼女に興味をもつジェイクとノーグ。
一方、ベイジョーのある村からの緊急事態の知らせをうけて降り立ったベシアとオブライエンは
その村を襲う騒ぎに巻き込まれ、オブライエンは村の指導者の後継者にされてしまう…
ということでベイジョーが舞台となるエピソードです。
土地争いの調停と村に伝わる伝承とその継承者に祭り上げられたオブライエンという2つのエピソードを並行で進めているわけで、
時々で場面と話が切り替わるのが少しわずらわしかった気がします。
1つだけで1話分にするには少し薄いかもしれませんが、もう少し膨らませて別エピソードにしたほうが
おさまりが良かったような気がしました。
惑星ベイジョーの5番目の月ジェラドーからエネルギーを抽出し、ベイジョー本星へ転送するプロジェクトが実行されることとなった。
ジェラドーの住民には退去勧告が出されたが、3人のベイジョー人が居残っていた。
説得するためにジェラドーを訪れたキラはそこでマイロックと出会うが…。
多数の幸福のために少数の人間の積み上げてきたものが無に帰すとき、同情はしつつも、気が付くと
「勝者」の側に居たキラはジレンマに陥ります。
キラ主役のエピソードですが、ベイジョー側代表ということでこのようにベイジョーの代表としての立場と
一人の人間として悩むという形にもっていくのはキャラクター造形としても自然だと思います。
グランドホテル形式にこだわっているのか、このエピソードでもキラの説得と並行してノーグとジェイクの
「わらしべ長者」的な商売話が入っていますが、これで最後に得られた「土地」をマイロックたちに提供して終わり、
というハッピーエンドを想像してましたが、2つの話は交差することなく、キラのほうはあまり救いの無い形で終わります。
現実的といえば現実的ですが、全ての出発点である「宇宙大作戦」がある種「御伽噺」の側面があったのに比べると、
DS9ではかなりきついオチが多いような気がします。
娘のために絵本を読んでいたオブライエンは突如現れた絵本の中の妖精に戸惑う。
一方、ジェイクの前にはホロスイートだけの存在のはずの200年前の野球選手が現れ、
ベシアの前にはいつもと態度の違うダックスが。それは想像の生み出した存在で、その原因となったと思われる
「亀裂」がDS9に迫っていた…という、ややコミカルではありつつも、DS9及びベイジョー星系全体の危機という
大規模な問題を抱えたエピソードとなっています。
オチとして「そう思わなければどんなものでも存在しないんだー」というシスコの力技が炸裂して、
少し強引すぎるような気がしないでもないし、3人の想像上の存在が実は…というのも少し唐突な感じでした。
妖精(実は悪魔?)と東洋系の野球選手というのがなかなかいい感じの存在だっただけに、
もう少しひねりを効かせたオチだとなお良かったように思います。
DS9を訪れた連邦の大使達の一人、ベタゾイド大使ラクサナ・トロイが遭遇した盗難事件をオドーが解決したことが
きっかけでラクサナはオドーに一目ぼれをしてしまう。ラクサナのあけすけな態度に戸惑うオドー。
一方、ワームホールを通ってDS9に接近してきた謎の物体の調査を始めた司令部の面々であったが、
その時ステーションのコンピュータが混乱を始めた。そのあおりでラクサナとオドーは二人きりで
ターボリフトに閉じ込められてしまい…。
TNGでもおなじみ、エンタープライズのカウンセラー、ディアナ・トロイの母にして
ある意味アルファ宇宙域で最強の恋多き女、ラクサナ・トロイがDS9に登場。
その天衣無縫な行動であらゆる人々を困惑させますが、今回の対象はオドー。
これまでは「はた迷惑なおばさん」であったラクサナですが、このエピソードでは
これまでの片鱗を十分に残しつつも、アルファ宇宙域に唯一の流動生物であるオドーを気遣ってみせたりして
「なんとなくいい人」化しております。人前では決してみせない姿を見せることで警戒心をとき、
オドーをして「あなたはやさしい人だ」といわしめる流れは結構おもしろかったです。
DS9に接近し、大混乱を引き起こした謎の物体の正体は不明なままですが、主役のオドーとラクサナについては、
うまいこと描かれていて、細かいツッコミをいれようとは思いませんでした。
ただ、連邦の大使達の接待役を仰せつかったベシアが困惑しつつも緊急事態に際して、大使達からファーストネームで
呼ばれるようになるまでの過程だけはちょっとでも描いてほしかったところです。
ガンマ宇宙域への探査にでかけていたクリンゴンの宇宙船がDS9付近で爆発した。
その船から間一髪転送で脱出したクリンゴン人は「勝利を」という言葉を残して死亡。
その直後からDS9司令部では徐々に不穏な空気が流れ始めていた…。
TOS及びTNGでは「NAKED TIME」や「NAKED NOW」にように、クルーの大半が奇矯な行動をとるエピソードがありますが、
DS9におけるこのエピソードは司令部の面々がシスコ派・キラ派に分かれて闘争を始めると言う指向性があるものの、
似たような系統のものだと思います。
クルーの中で影響を受けない存在がギリギリのところで危機を回避するという流れも同じで、
ここではオドーがその役になっていまして、シスコ派・キラ派をそれぞれ上手く誘導しております。
中でもベシアを誘導する際の「ヒーローになれますよ」という台詞は秀逸で笑ってしまいました。
オドーのお約束通りの行動はさておき、シスコ派といいつつ実質的にその首領となったオブライエンの
いつもとは違う軍師ぶりがなかなか印象深いエピソードでありました。
DS9に接近してきた宇宙船から転送されてきた病人はカーデシア人だった。
しかも、その病気はベイジョー人の強制収容所となっていた鉱山の事故に立ち会ったもの以外は罹るはずの無い病気であり、
そのことを根拠にキラはそのカーデシア人を戦犯として裁こうとするが…
つい最近まで占領されていたベイジョーと占領を行っていたカーデシアとの関係がクローズアップされる、
ある種「DS9らしい」エピソードです。
拘束されたカーデシア人のは文書整理係と名乗るがベイジョーからの資料では強制収用所の所長であり、
さらに調べると…ということで二転三転した挙句についに目的が明かされるわけですが、
カーデシア人の心情の吐露とそれから生まれ出でたようにみえた信頼、そして訪れる結末がなかなかシビアでした。
御伽噺的に安易なハッピーエンドにしないのはTNGでも途中からよくあったことですが、
DS9はスピンオフシリーズであり、さらに舞台設定からしてそのあたりはよりハードです。
ケイコ・オブライエンの学校に突然やってきたベイジョーの司教の一人、ウィン。
彼女はケイコがベイジョーの宗教的な象徴でもある「神」や「預言者」についてなにも教えず、
ワームホールを単なる科学的物体としてしか扱わないことに対して抗議する。
そのことはDS9における連邦とベイジョーの感情的な対立を生み出す。
一方、連邦の技術スタッフの一人が謎の死をとげ、オブライエンらはその調査に追われるが…
第1シーズンの最後を飾るエピソードもDS9らしいエピソードである、といいたいところですが、
"DUET"よりは一般的な感じの仕上がりになっています。
連邦からみると狂信的にしか見えない発言をする宗教的指導者の一人により
DS9におけるベイジョーと連邦の間に軋轢が発生するがそれが実は…ということで、
グランドホテル形式ではありつつも、1つのエピソードの中で並行して発生する複数のエピソードが実は
一つに集約していくという形になっています。
ヘンにばらばらであるよりもわかりやすくていいのですが、すこし見え見えな展開が多くて、
スリルとサスペンスの盛り上げとしてはもう少しかな、と思いました。
宗教的なことで対立がおこった学校の件についても、もう少しケイコ・オブライエンが苦闘する姿を
描いたほうがよかったような気がしました。