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午後五時、ドン、ドンと扉をたたく音で起こされる。今晩もお迎えが来たらしい。ここ数日間、昼と夜が逆転した生活を送っている。バスターミナルわきで深夜営業をしているオムレツ屋の手伝いをしているからだ。 午前1時、ケロシンランプの暖かい光に誘われて、続々と客が押し寄せてくる。映画帰りの客だ。快画は人々にとって唯一の娯楽だ。その年間製作本数は世界一といわれる。一日三回の上映で午後九時半のラストショーがハネるのがこのころだ。 午前3時には客足も途絶えほっと一息。すると、どこからか人相の良くないおじさんが来て、ラティルフに場所代30ルピーを請求してきた。一晩の儲けは100〜120ルピー。そこから場所代、屋台・ランプ・食器類等の借り賃、維持費、材料費等を差し引くと、店長で20ルピー、従業員には10ルピーが給料として残るだけ。 しらじらと夜が明ける頃、片付けを終えてから、茶店でラティルフがおこってくれたチャヤの味が忘れられない。 それから数日後、ラティルは、母が病気になったと言って帰郷したきりニ度と姿を現さなかった。パプーは、別の屋台に再就職。相変わらず、明るい笑顔をふりまきながらチャヤを作っていた。 |