きもの
着物を再び着るようになって十余年がすぎた。
着物を着ると不思議と落ちついた気分になるのは子どもの頃着物を着ることが多かったせいかもしれない。忙しいという理由で着ないままになっていた着物を虫干しでひろげる時、どの着物からもそれぞれに懐かしい思い出が立ちのぼる。
やわらかな絹の感触。サクサクした木綿の肌ざわり。
それぞれの着物からも作り手の個性や思いが伝わり、虫干しのたびにデッドストックされた着物の無念さが聞こえる気がした。“着物を着よう”と思ったのはそんなことがきっかけになった。
それにしても、着物は洋服に比べ襦袢の襟のつけ替えやスムーズに行かない帯結び。着た後の手入れやシーズン毎の後始末に手間がかかるのは確かだった。
しかし、洋服もシーズン毎のクリーニング。生地はほとんど傷んでないのに3年も経つと流行おくれの感じがするし、加えて年と共に体型は容赦なくニュートンの法則にしたがって確実にずり落ちていく。
それを補正するための下着類の窮屈さ、を考えるとこれはこれで着物に劣らず大変だった。で、どうしたか?というと“外出は着物で。”作業をする時はセーターにパンツルック。と住み分けて、両方のいいところをとることにした。
これが気持の切り換えに役立ち、生活に快適なリズムをつくり出したのだった。
それにもう一つ、着物をコーディネイトする楽しさが加わったのも思わぬ収穫だった。コーディネイトといっても、高価な作家物の着物を持っている訳でもないし数少ない手持ちの着物といえば、昔ながらの紬や絣、などのごくありふれた着物を中心にした身近なものをコーディネイトしたものです。
子どもの頃着た着物。若い頃好きだった着物、は愛着があって捨てるに捨てられないものは、セパレーツの帯に仕立てなおすとデッドストック化していたものが帯として生き返った。それにその帯が思いもかけず取り合わせの妙を発揮することもあり着物ならではの楽しみだと思う。
今、タンスのこやしになっている着物を前にして“もったいない”と思い、捨てるに捨てられないで悩んでいらっしゃる方がきっと多いのではないかと思い、“きものへのお誘い”をしたくて着物のページを新しく加えてみました。
たまにはフォーマルなものも見て頂けるとは思いますが、“豪華で高価な”着物は女優さんやタレントさんに任せて“ごくありふれた着物を工夫して楽しく着る”ことを目的にどれも身近な日常着をコーディネイトしたもののご紹介です。