父、母、夫、私の4人家族。
昼食は両親を交え4人での食事。 夕食は夫婦のみの食事である。
昼食は忙しい農作業の合間にサッと食べる、味には保守的な両親のことを思った料理。
夕食は夫婦でゆっくりと酒を呑みながら食べるので酒の肴でもある料理だ。
二つの台所を行き来し、二つの食事の傾向を行き来している。
 
 2006/2月
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2月1日      

2月が始まった。「さあゆこう!」という気持ちに反して、熱を出してしまった。
画廊巡りに出かける予定を断念。
寒く忙しい年末年始を切り抜け、「この冬の私は風邪をひかない!」「なんて健康体になったのだろう!」と感慨にふけっていたが、油断した。一冬に一度は風邪をひくものなのだな。

晩酌時に『仁義なき戦い』を鑑賞する。こちら側食卓で骨付き鶏肉にむしゃぶりついているまさにその時に、ブラウン管内では手首が切り落とされ、耳が、鼻が切り落とされる…。うへぇ。
人がたくさん殺されるが、そのたびに、どろっとしたほとばしる“生”を感じてしまう。そこが深作欣二(監督)
らしいなぁと思う。そしてかねてから夫が絶賛していたとおり、アキラ(小林旭)さんがおそろしくかっこいい。声がいいのだと思う。まるで音楽のようだ。

●鶏肉のパプリカ蒸し焼き

 

2月2日      

昨夜はスーツ姿の怖い人がたくさん出てくる夢を見た。本日も懲りずに、まぐろのカマの塩焼きをほじくりながら、『仁義なき戦い』を鑑賞する。

●厚揚とねぎのさっぱり鍋

 

2月3日      

だいぶ日射しが強くなり、春めいてきた。そうなるとこの地では、からっ風が狂ったように吹き始める。家が壊れるのではないか、というほど騒々しいガタピシ音。なにもそこまで頑張って吹かなくても…と呆れるほど吹き続けていた。しばらくこういう日が続くのだろう。

テレビで『風の谷のナウシカ』を放送していた。見るのはもう何度目だろう。
22年前の作品だということを忘れてしまうほどの壮大なスケールだ。 〜風に乗って〜雲を切って〜飛ぶ〜落ちる〜、宮崎駿のどの作品にもあるこの浮遊感に、毎度のことながらゾクゾクする。心も体も緩むようだ。 〜飛ぶ〜落ちる〜また飛ぶ〜、そういう体験が効果を生むのだろう、思いがけないところで、涙がどわぁーっと出てくる。宮崎駿作品のほとんどをテレビやDVDで見ているが、大画面の映画館で見たら大変なことになりそうだ。

●豚肉とレタスのトウチ炒め

 

2月4日      

病院からもらった薬は効いているようだが、少し体を動かすと頭がぼーっとしてうっすらと痛い。そして熱っぽくなってくる。今日こそは画廊巡りに出かける予定だったが、断念して寝ていた。窓からさし込んでくる、春めいた日射しがうらめしい。
とはいえ、かなり底冷えのする一日だった。夜には、家中の窓ガラスの結露が固く凍りついていた。
あまりに寒いので、夏の風景と空気を味わいたくなり、DVDで『となりのトトロ』を鑑賞する。

●アボカドとクリームチーズのわさび醤油和え

 

   

友人のホームページで、昨年の個展の様子をアップしてくれました。 こちらの画像は“肉眼の記憶”に近いようだ。 そして、私の横顔が私の弟にそっくりなことに気づき、驚いた。

 

2月5日      

昨夜の冷え込みは相当厳しかったようだ。S家の台所では水道管が凍ってしまい、昼頃まで水が出なかった。お母さんによるとこんなことは十数年ぶりらしい。
午後、ほうれん草を採りに畑へ出かけて驚いた。畑の土が硬く凍っていて、ほうれん草が採れない。こんなことも初めてのことである。

●セロリとタコのマリネ

 

2月7日      

外はだいぶ春めいてきて暖かかった。でも家の中はまだまだ底冷えがする。

チャンネルNECOでは今月、小林旭の“暴れん坊シリーズ”を一挙放送する。
“暴れん坊シリーズ”は銀座のレストランを舞台にしたコメディ。若々しくバカバカしくさわやかで、アキラさんのアッケラカンとした朗らかな歌声を堪能できるのも大きな魅力である。私が最も好きなシリーズだ。
とはいえ我が家では地上波しか見ることができず、東京の友人にDVDに録画してもらうことにした。本日、第一弾がメール便で到着した。
晩酌時に、シリーズ3作目の『夢がいっぱい暴れん坊』を鑑賞する。1962年作。アキラ24歳、ルリ子22歳。
愛嬌いっぱいのアキラさんだが、ときおりチラッと見せる凄味、これが『仁義なき戦い』のあの恐ろしいかっこよさにつながるのだな、としみじみ感じる。

劇中の“カレーハウス・ジロー”にちなんで今夜はカレー。きゅうりとセロリでピクルスも作った。


●きゅうりのピクルス

 

2月8日      

昨日作ったカレーは会心の出来だった。しょうがのすりおろしとカルダモンを多めに入れたので、とてもさわやかだ。この味を数日維持しようと、今日も再び玉ねぎを炒めて加え、増量した。

風邪をひいた頃から、むしょうにピーマンを食べたくなっている。それも“ピーマン肉詰め”で。おととい食べたばかりだが、また作ってしまった。
我が家では、肉詰めしたピーマンを焼いた後にトマトスープで煮るのだが、トマトスープで煮られたピーマンの苦味とトマトの酸味がたまらない魅力だ。食べると内臓や背中のあたりがありがたがっているのがわかる。
ほんの一年ほど前までは“ピーマン肉詰め”なんて面倒くさそうな料理だと敬遠していたが、作り始めると楽しい。ピーマンの内側の狭い凹みにすーっと挽き肉を詰めてゆくのは快感だ。用意したピーマンの数に目分量で作ったタネの量がピッタリと収まるとさらに快感で、嬉しい気分になる。
タネの挽き肉 (+炒めた玉ねぎ+卵+塩+コショウ) にナツメグを多めに振り入れるとキリッとした味になり、酒のつまみとしても最適となる。

晩酌は小林旭の1960年代初め民謡調の歌の数々を聴きながら、楽しく酩酊。

●ピーマン肉詰め

 

2月9日      

風はうるさいほど強く吹いているが、気温はずいぶん暖かくなったように感じる。数日前に凍っていた畑の土もふかふかだ。ほうれん草は一回り大きくなったようで、収穫用のカゴがすぐにいっぱいになった。

本日も再び玉ねぎを炒めて、カレーを増量した。ピクルスも増量。
そして再び、

●ピーマン肉詰め

夫が借りてきたDVD、『仁義なき戦いー完結編』を鑑賞。アキラさんのセリフの恐ろしさと美しさに背筋がぞわっとした。まるで歌のようだ。あまりの美しさについ目を閉じてしまう。こうしてしまう感触は、11代目團十郎の『助六』のセリフを聴いた時に似ている。

 

       

2月16日、夫がシュウマイを28個ももらってきた。
2月17日、
S家にラーメン20食分が届いた。
2月18日、梅干しをもらった。

2月19日、とてつもなく大きい山芋をもらった。→
ここでの生活は、食べものに恵まれている。

最近あたらしく作ったもの。
●松前漬け
●水菜のカリカリちりめんじゃこちらし
●菜の花の梅とろろかけ

菜の花の梅とろろかけの“梅とろろ”だけをご飯にかけて食べるのも旨い。とてもさっぱりしているので、すぐには満腹感が訪れない。それがいいのだか悪いのだか…。

   

2月19日      

暖かい日がやってきた後に再び寒さが戻ってくると、心身共にこたえる。それが冬から春へと移り変わる時季の特徴だとはわかっていても、ひどくがっかりする。せっかく緩んだ体をまた縮ませる。そのせいか、ここ数日は疲れ気味。そして強烈な眠気がやってくるのだ。

絵を描くには力が湧かないので読書でもしようと腹を決め、松尾スズキの『クワイエットルームへようこそ』(文藝春秋)を読んだ。
初めは布団の中で寝ながら読んでいたのだが、おかしくておかしくて、布団から起き上がり腹筋をひきつらせて笑うこと数回。気がつけば布団から出て床に座り、立て膝を着いた姿勢のままで読みきってしまった。1時間もかからなかった。もったいない気がしたのでもう一度読んだ。

●イカとキクラゲとクコの実とピーマンの中華炒め

 

2月20日      

相変わらず足首が痛いほどに冷えて、強烈に眠い。
ここでの生活は、寒さに向き合うことにかなりのエネルギーを使うものだとしみじみ感じる。

幕末好きの夫が借りてきたDVD『新選組始末記』を鑑賞しながら、冬に逆戻りの料理を味わう。

●厚揚とねぎのさっぱり鍋 (今日はなめこも入れてみた)

 

2月22日      

アイスダンス・フリー、女子ショートプログラム。 昨日今日とトリノ・オリンピックのフィギュアスケート鑑賞に夢中になっている。
氷上を滑る女性の姿のなんと美しいこと。
お尻から後ろ向きにスィースィ(またはグィーグィ)と滑る姿、脚をガッと上げてスゥーと優雅に滑ってゆく姿。これ以上ない“縮”の力とこれ以上ない“伸”の力が見えるようだ。かっこいい。なぜだかチューブの中身を気持ちよーく絞り出した時の感触を思い起こす。上であんな風に滑られている広く白い氷も気持ちよさそうだ。
競技中の姿にはもちろん魅了されるが、ウォーミングアップ風景も軽やかで美しい。
就寝時に布団に入って目を閉じると、白い氷の上を美しいお嬢さんたちが幾人も、スィスィスィと滑ってゆく光景が見えてくる始末だ。

未明の生放送を録画しておいて、晩酌時に4時間かけてたっぷり鑑賞。美しいものを見ると興奮するのか酒も進む。飲みすぎる。

●ピーマン肉詰め

 

2月23日      

“豚の角煮”は大好きな食べ物だが、ここ数年はあまり作らなくなっていた。何故かというと、材料費が決して安くはないうえに時間をかけて煮込むのでガス代がかかる、というケチな考えから。そして、そこまでして作ったとしても、脂ぎった料理は夫の体質にはよいはずはない…という配慮もあったからである。
しかし今日、スーパーで豚バラ塊肉が特売になっているのを見かけてしまった。久しぶりに“豚の角煮”を作ってみた。
やっぱり豚の脂は、なににもまして旨い!
“納豆卵かけご飯”とどちらが旨いだろう…と思い描いていたら、シメは“納豆卵かけご飯”になってしまった。とても贅沢な晩となった。(軍配は“納豆卵かけご飯”にあがる)

連日、ピーマンの苦味の虜になっている。

●ピーマンとちりめんじゃこの煮びたし

 

   


 

2月の終わり以降はビデオ録画してあるオリンピックのフィギュアスケートを見る日々だった。
何度見てもぽかーんとしてしまう美しさ。心をもっていかれる。とくに音楽とピタッと合った演技を見ると胸が熱くなる。
また、テレビ放送の音声を消してステレオからまるで違う曲をかけながら見てみると、上位の選手たちの演技はどんな曲にも合うものだなぁ、と気がついた。

16歳になったばかりだというグルジアのエレーネ・ゲデワニシビリはまだ子供のような…でも大人のような…というより深い森から出てきた何かのような不思議な魅力があった。動きも弾んでいて、今後が楽しみな選手だ。

写真はあまりの可愛さ美しさに惚れてしまったスイスのサラ・マイヤー