父、母、夫、私の4人家族。
昼食は両親を交え4人での食事。 夕食は夫婦のみの食事である。
昼食は忙しい農作業の合間にサッと食べる、味には保守的な両親のことを思った料理。
夕食は夫婦でゆっくりと酒を呑みながら食べるので酒の肴でもある料理だ。
二つの台所を行き来し、二つの食事の傾向を行き来している。
 
 2006/5月
●色のついた料理の名前をクリックすると作り方のページに進みます    
 
5月3日      

ゴールデンウィークだ。夫の仕事も忙しく、どこへも出かけずにいる。
いつものようにふきを採り、筍を掘り、そうしているとやって来る庭の猫と遊び、道を歩きながら生長著しい緑を見ては眩しくなる。ゴールデンウィークに人が出かけるような所に住んでいるのかな、天気のよい気持ちよい時にはふとそう思う。混んでいそうだから行かないが、町に新しい温泉施設もオープンした。
天気がよく過ごしやすいので、制作日和でもある。
冷や奴日和でもある。

●冷や奴(みつば・ちりめんじゃこ・にんにく・のり)

 

5月4日      


ユンボの動きに見とれる

  S家の駐車場の整備が行われている。
駐車場とはいえ、この場所はデコボコした土の地面、不揃いの石がゴロゴロ、使われていない農機具が長年放置されている…そんな殺伐とした場所だった。
その地面をならし、川砂を敷き詰めている。
まるで相撲部屋の稽古場のような美しい場所になっている。
 
 
水はけ用のU字溝を埋め込むために、職人さんがユンボで穴を掘っている。鮮やかな仕事ぶりにしばし見とれる。指先で床に落ちたホコリでもつまみあげるかのような繊細でやさしい動きに感心した。

二人いる職人さんのうち一人は義理の兄。昼食に彼の好物だというポテトサラダを作った。

●スモークサーモンのポテトサラダ

5月5日      

4月から始まったNHKの連続テレビ小説『純情きらり』は久々に見応えのある作品だ。役者さん達も芸達者が揃っている。ここ数作は、主人公がどういう仕事に就きたいかを悩みながらうろうろしている作品が多かったが、今回は「ピアニストになりたい」と夢がはっきりしているのも直球の魅力なのかも知れない。
ただ、胃が痛くなることがある。ドラマの中では現在、昭和13年。これから戦争が起こるのである。私がもう親しんでしまっている登場人物のうち誰かが戦死するのだろうか…と想像すると気が重くなる。
私は私の知りあった人が病気や事故や寿命などで亡くなることもとてもイヤだけれど、戦争で亡くなるなんて絶対にイヤだ。『純情きらり』を見る日々、毎日のようにそんなことを思う。
戦死を美化するような単発ドラマや映画もあるけれど、この番組では戦死がいかに悲しく口惜しいことかということを感じてしまいそうだ。

●ゴーヤーと豚肉の炒めもの

 

5月6日      

気候がよい。制作日和だ。描いて描いて描いている。が、はかどっているというわけではない。どうもまだ“これだ”という状態にならない。絵の具とキャンバスをムダにしているなぁ、と思いつつも描き進めている。
思えば“絵描きになるぞ”と絵を描き始めて10数年。描けば描くほど自然とハードルを高くしているようだが、楽しくなっている。描けば描くほど描きたいものが現れる。不思議であり、ありがたいことだ。
気候がよい。酒も食事も旨いのだ。

●あさりのそのまま蒸し(参考→→4月の『きょうの料理』

 

5月7日      

今年も、描きたいものは外に出た時に見る風景の一部にある。
そんなふうに見ていると、去年とは春先の気候が違うせいか、草や葉や花の生え方(順番や量)がずいぶん違うものだなぁと気がつく。

●たけのこの木の芽和え

 

5月8日      

  S家におびただしい量の牛肉が。
解体したばかりの牛一頭分の肉を数家族で分けたそうだ。
昨夜、ゴールデンウィーク恒例の親戚一同の焼肉大会をし、心ゆくまで牛肉を堪能したばかり。しばらく牛肉は受け付けられそうにもない胃袋事情だったのだが。

焼いた牛肉にポン酢醤油をかけ、大根おろしを添え…それでも胃に打撃を感じたので、今日からS家の畑で採れるようになったキャベツをただザクッと切ったものを大皿に盛りつけ、ボリボリ食べた。胃が休まった。


●冷や奴(梅ねぎ)
 

5月9日      

昼食は牛刺と焼肉だ。
午後は、大量の牛肉を小分けにし、冷蔵と冷凍に分ける作業に時間を費やす。次第に牛の脂で手がヌルヌルしてくる。和牛なのである。見事に入ったサシも、普段ならば惚れ惚れとして喜ぶのだが、見ているうちに胃に堪えてきた。

いただきものの新たまねぎが10Kgもあるので、牛肉の脂っぽい部分を使って和牛ビーフカレーを作ってみる。たっぷりのしょうがの摺りおろしとカルダモン、缶詰のトマトを入れ、爽やかに仕上げる。

●きゅうりのピクルス

 

5月10日      

“じぶじぶ天気”。曇り空で今にも雨の落ちてきそうな空模様のことを母がそう呼んでいる。5月は意外とこういう天気の日が多いのだ。

和牛ビーフカレー・二日目は、フライパンで炒めて味と焦げ目を付けた茄子といんげん豆、目玉焼きをトッピングする。外は曇り空だが、皿の上は夏の気分だ。ビールとよく合う味だ。
食卓にはほかにゴーヤーのスライスも。水にもさらさず、醤油もかけない。薄切りをそのままポリポリ食べる。苦味が胃袋を助けているのを感じる。

●焼きパプリカの甘酢漬け

 

5月11日      

朝、近頃はたくさんの鳥の鳴き声が降り注いでいるように聴こえてくる。曇りの日にはそこへたくさんのカエルの鳴き声が重なる。鳥とカエルが鳴き声を競うことはないのだろうが、そんな風に聴こえる。カエルの声が増え、鳥の声が減ってくると、そこへは雨の降る音が重なってくる。雨がやむと、ふたたび鳥の鳴き声が増えてくる。

牛肉と筍とピーマンを炒める。ここへも、しょうがの摺りおろしをたっぷり入れる。爽やかになり食が進む。

●たけのこの木の芽和え

 

5月12日      

連日の昼夜牛肉攻め。ここ数日体が重たく感じるのはきっとそのせいだろう。
野菜をたくさん食べたい! と願っていたら、ご近所からレタス、ほうれん草、春菊をどっさりいただいた。
今夜の牛肉活用は
チャプチェ。本来なら韓国のチャプチェ麺か春雨で作るところを、生協から届いたばかりの群馬産蒟蒻から出来たしらたきで作ってみた。

今年は庭にうどがたくさん生えている。毎日のように「今日はどのうどを採ろうか」と包丁片手に庭を歩いている。

●うどの梅煮

 

5月13日      

昼食は、鍋底に2センチほど残った五日目カレーに玉ねぎや牛肉、缶詰トマト、ウスターソースなどを足し、ハッシュドビーフに変化させた。スパイシーな旨さだ。
肉や野菜、料理の素材に恵まれているので料理を作るのが楽しい。「今日はあれを作ってみようか」と昼の間から思いを巡らせていたり、台所に立ってから気が変わって名案を思いついたりしている。
が、今夜の夕食に久しぶりに食べた“納豆卵かけご飯”の旨さといったらない。「いろんなものがおいしいが、これにかなうものはない」と夫婦でしみじみ味わった。

●ピーマンとちりめんじゃこの煮びたし

 

5月15日      

ご近所から完熟トマトと茄子をいただいた。これらを加えて、一昨日ハッシュドビーフに変化した七日目カレーをカレーに戻した。

●ラタトゥイユ

 

5月19日      

五月の歌舞伎・夜の部を観た。舞踊『藤娘』に圧倒された。
この演目、“大津絵から抜け出た藤の精が娘の姿になり…恋しい男に思いをはせ踊る…酒を飲み…次第に酔いつつ…踊る…そしてふたたび大津絵の中に戻ってゆく” 大雑把にいうとそんなことを踊りで表現するものだ。
今回踊るのは市川海老蔵。普段は立役の海老蔵が女方を演じるのである。
「これはおもしろそうだぞ」と奮発して花道近くの二等席のいちばん前のチケットを買ったのだ。
幕が開くと舞台中央に巨大な松の木。松の木に絡みついて舞台の上辺から下辺へどどどどどーっと気が違ったかのように垂れ下がるいくつもの藤の花。これだけで相当な見応えである。
そして海老蔵の舞踊は、危ない妖気をプンプン発しているようで、気が違っているようで、人間ではないなにかのようで、ギョッとした。観ているうちに楽しい気分になり、顔がほころんできた。
最後に花道を通って舞台から下がってゆく海老蔵は、美しいような恐ろしいような魅力を発していた。
いいものを観た。一緒に観ていた母も興奮気味になっていた。

●歌舞伎座裏の焼き鳥

 

5月20日      

5月だというのに太陽の見えないぐずついた天気が続いていたが、久しぶりに青空が広がり、爽快な気分だ。
そんな晴れ晴れしい日、国技館の枡席にて相撲観戦という幸せ。
まぶしい太陽の下、両国に着き、駅の近くのコンビニに入るなり、NHKの実況アナウンサーを見かける。駅前では見覚えのある呼出さんや親方を見かける。
「あぁ、両国だなぁ、相撲だなぁ」と胸が高鳴る。
昼の12時頃に入った国技館の館内はまだ観客も少なく、冷房が利きすぎていて寒かった。ずっと席に座っていると体が冷えてつらくなるので、頃合いをみては周辺を動き回った。テレビ放送で映る客席を見ていると年輩の観客が多いなぁと感じるが、実際に国技館にいると若い人も多いことに気がつく。老若男女、みんな楽しそうだ。

   
 
       

  そうこうしているうちに、いつの間にか観客も増え、照明も明るくなり、館内が暑くなってくる。
結びに近づくにつれ興奮が増し、胃がハラハラする。
国技館にいる時間はいつも夢でも見ていたかのようにあっという間に過ぎるのだ。
6時間もいたのが嘘のようだ。

 
 
       

国技館に到着した12時頃から夜の12時までずっと酒を飲み続けていたせいか、家に帰ってから、これまでの人生38年のうちで最も強烈な頭痛に見舞われた。

●焼き鳥、空豆、寿司、白鵬弁当…など

 

5月21日      

これまでの38年のうちで最も心臓のドキドキした日。贔屓の白鵬の優勝が決まるかどうか…という大相撲夏場所の千穐楽だ。
今場所は横綱朝青龍が休場してしまい物足りなく寂しかったが、「相撲だねぇ」と唸るような見応えある取組が多かった。
さあ、実家にてテレビ観戦。優勝決定戦直前には、心臓どころか胃まで震えてきた。こんなことは初めてである。
白鵬が重たそうな雅山をじっくりと寄り切って見事に優勝。その瞬間、別の部屋で相撲放送を観ていた母の大きな拍手の音も聞こえてきた。私も嬉しくて涙。

●実家の母の手料理

 

5月22日      

実家から鎌倉の画廊へ出かけ、そこから群馬へ帰ってきた。合計4時間半も電車に乗っていた。電車に乗るのは好きだ。風景や他の電車や線路を見ていると楽しくて飽きることがない。が、さすがに体が疲れた。

●ゴーヤーのスライス

 

5月23日      

群馬へ帰ると再びまだ残っている牛肉攻め。味がおいしいのでついつい食べてしまうが、胃に堪える。
数日ぶりに手に取ったS家の畑のキャベツは、ずっしり重たく、大きくなっていた。


●ゆでキャベツの梅肉和え

 

5月24日      

自転車で買い物に出かけると、急に雷が響き、雨が降り出した。
立ち寄った
近所の商店で雨宿りをさせてもらっているときに、ご主人が沢庵をふるまってくれた。
一切れ食べてみる。快い歯応え、ちゃんと太陽に当たっていた感じ、噛みしめると後からやって来る味わい、焼酎に合いそうだなぁ…旨い。この沢庵、お店のご主人が漬けたものだそうだ。さっそく買ってきた。

●新たまねぎとわかめの酢のもの

 

5月26日      

  旨い酒とつまみを持って、東京より友が遊びに来た。
お土産のうちのひとつ、凄玉(すごだま)という米焼酎はアルコール度数が45度に近い。
ラベルには『日本人の基本、米。これも時と場合により迫力のある姿・凄みを我々に見せてくれる』なんて仰々しいことが記してあるが、外れてはいなかった。
事前に冷凍庫に入れて置いたこの酒をグラスに注ぐと、とろーり…まず視覚で気分がよくなる。飲んでみると、体の深いところまで染みこむような繊細さ、力強さ、コクがあった。切れ味のよい刃物のようだ。
これを飲んだ後にはどんな酒も水のように感じてしまい、次の酒がくいくい進む。そして、あっという間に酔っぱらいつつも、明け方近くまで談笑。
が、何を話していたのだか記憶がない。これが無駄なようでありながら充実した時間なのだ。

●ふきの青煮 +山椒の葉をすり潰して入れた味噌だれ
 

5月27日      

佳い酒をたくさん飲んだので、充実した眠りだったようだ。目覚めたときには友人が泊まっていることをすっかり忘れていたほどだ。
東京から誰かが訪ねてくる日は何故だかいつも雨降りだ。家から一歩出ると見渡せる、360度に広がる青空や赤城山や榛名山をぜひとも見せたいのだけれど、残念である。
今回もあいにくの雨。家でのんびり過ごすことに決め、昼間からビールで乾杯。飲みながらつまみを作ることはとても楽しい。
昼間の酒は回るもので、うたた寝のつもりが数時間の昼寝になってしまった。ここ数日疲れがたまっているように感じていたが、すっかり回復した。
それにつけても、東京から時間をかけて群馬まで来て、飲んで寝るのみという友人は大人である。

●あさりのそのまま蒸し(参考→→4月の『きょうの料理』

 

5月29日      

先日訪れた友人のお土産、祇園・原了郭の黒七味。
辛味が強いが、ただ強いのではなく、きめが細かく上品な辛味だ。さすが京都、という香りがする。蒸したり茹でたりした肉にふりかけると旨そうな味である。
これをふりかけたいがために、モツ煮込みを作ることにした。
長野の上品な白味噌に八丁味噌を少し加え、上品に仕上げてみた。


●モツ煮込み
(今回、かんずりやコチュジャンは入れなかった)

   

5月30日      

近所の商店の沢庵に夢中になっている。昼食や晩酌時にはもちろんだが、絵を描いていて小腹が空いたときにも食べている。

●ゆでキャベツの梅肉和え