父、母、夫、私の4人家族。
昼食は両親を交え4人での食事。 夕食は夫婦のみの食事である。
昼食は忙しい農作業の合間にサッと食べる、味には保守的な両親のことを思った料理。
夕食は夫婦でゆっくりと酒を呑みながら食べるので酒の肴でもある料理だ。
二つの台所を行き来し、二つの食事の傾向を行き来している。
 
 2006/8月
●色のついた料理の名前をクリックすると作り方のページに進みます    
 
8月3日      



おばあちゃんちを裏から臨む

 

おばあちゃんの住む島根へ出かける。
(私の実家の母の実家である)

東京で仕事がある夫の運転する車に乗り西荻窪まで送ってもらい、中央線で東京駅へ。そこから東海道新幹線に乗る。
のぞみ号に乗るのは初めてだ。
車掌さんのアナウンスによると最高速度は270kmだそうだ。速い。車窓の風景を見ようにも、速すぎて眼が疲れるほどだ。

 
 
       

新幹線を岡山で降りる。暑い。前日まで東日本は涼しい気候が続いていたので、温度差にクラクラする。東京出発からたったの3時間半で周囲の人々の言葉が変わっているのも夢を見ているような感触だ。
岡山からは伯備線・特急やくも号に乗る。振り子式車両といい、山間のくねくねした線路を、車両を右に左に傾けながら走るのだ。今度は速度も120kmくらい。山・川・山・山 ・川・山・山… の車窓の風景をじゅうぶん堪能した

岡山と鳥取の県境の山中では急に激しい雷雨になり、列車の窓ガラスの外側を滝のように雨水が流れていた。涼しげなよい風情だった。
また、途中の備中高梁は『男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎』(第32作)ロケ地なのだ。映画に出てきた石垣や石段や諏訪家(劇中の博の実家)の門を車内から眺めることができた。

 
 
       

伯備線を安来駅で降り、今度はバスに乗る。
ギラギラした日射しの下、なつかしい田んぼの間の道をあちらへこちらへ揺られながら走った。

鷺の湯温泉でバスを下車。
出雲そば屋で叔父と母と待ち合わせし、大好きな割子そば(出雲そば)を2年ぶりに食べる。

そこからさらに車で30分ほど山奥へ入り、おばあちゃんの家へ辿り着いた。(写真上)

夕食はサザエの壺焼き、日本海の魚の刺身数種、叔父が畑で作ったトマトなど。

 

そば屋にて
思いがけない方の
サインを発見

 

8月4日      

  東京から飛行機でやって来る父を迎えに米子空港まで迎えに行く。
すぐ近くの境港の魚市場にて夕食の食材を物色する。
市場に並んでいるものはどれも旨そうで、しかも安い。
あれもこれも欲しいが、胃袋の許容量は限られている。
サザエ、岩がき、イシダイ、ハマチ、スズキ、ハタハタ、白いか、するめいか、中トロ、もずく、しじみを購入 。

境港の回転寿司屋にて昼食。
風情はないが、岩がきもサザエもあわびも一皿126円だ。
 

8月5日      

おばあちゃんの米寿のお祝いの宴会だ。
おばあちゃんの家からさらに山奥へ入った比田温泉にて。

割子そば(出雲そば)、刺身数種、サザエの壺焼き、出雲牛、カニ、鮎の塩焼き、うなぎ、天ぷら、山菜の煮物、香茸ごはん、茶碗蒸し… どれもすばらしく美味しく、思い出せないほどの種類の料理を食べたが、そうめん瓜の酢のものとピーマンの和えものが胃の休まるような美味しさだった。

 

かなり大きい
翌日の朝、叔父が“鯛めし”にした
 

8月6日         叔父、叔母、いとこ夫婦と私は、この日、松江へ出る。
おばあちゃんとはお別れだ。

最後に叔父が畑で作った西瓜をみんなで食べた。上品な甘さのみずみずしい西瓜だった。
直径30cmほどもあった大きな西瓜だったが、一瞬にしてたいらげてしまい、この光景。

昼食は松江にて割子そば(出雲そば)。(今回3度目)
 
 
        夜は松江の花火大会。宍道湖上で2カ所から打ち上げられる。
水面に映ると花火は
より一層美しく感じる。
湖畔をぐるーっと囲む広場に座って見ることができるので、かなりの人出だがのびのびとしている。
不思議なことに「おー」とか「わー」とか大声を発する人はいず、みんな静かに見ている。
驚いた。松江の人はおとなしいのだろうか。

夕食は寿司、うなぎ、ハモの湯引き、アゴの野焼きなど。
   

8月7日        

午前中、松江郊外にある八重垣神社へ行く。
出雲大社よりも古い縁結びの神様で、実は出雲大社に参拝した後にここへも参拝しないと縁結びの効果はない、と言われているそうだ。(←叔母談)
規模は小さいが、古めかしさと静寂さの漂うよい場所だった。

昼食は松江駅近くでにて割子そば(出雲そば)。(今回4度目)

 
 
       

いよいよ島根とはお別れである。
午後7時31分発の寝台特急・サンライズ出雲に乗る。
叔父の買ってくれた鯖の棒寿司を車内でつまみながら、ややしんみりした気持ちになった。


とはいえ、座席はノビノビ座席
。寝っ転がりながら電車に乗ることができるなんて、夢のようだ。
一人当たりのスペースは1畳くらい。飲み物や荷物やらを配置して、一夜限りのちょっとした自分の巣のようになる。楽しかった。

   

8月8日       サンライズ出雲は午前7時8分に東京に着く。
早起きをして早朝の熱海周辺の海を車窓から見た。ゴロ寝しながら横浜あたりの通勤列車を見るのも不思議な感覚だった。
東京駅から高崎行きの新幹線に乗り、バスに乗って我が家に着いたのは9時過ぎ。群馬の田園風景もなつかしい。

昼食作りのためS家へ行くと、たくさんの野菜や牛肉が待ちかまえていた。

●牛肉とレタスのオイスターソース炒め
 

8月10日      

気温が高い。群馬の最高気温は37℃だったそうだ。
作品を出品した展覧会の最終日の今日、会場のある上越高田まで行って来た。

 
 
       

友人の実家のお寺が画廊のすぐ近くにあると知ったので、訪ねた。
高田駅の西に広がる寺町のなかにその寺はある。
古い本堂がひっそりと建っている。そのまわりに木々が茂り、蝉の鳴き声が降り注いでいる。夏の風情をじゅうぶんに味わった。

   
 
       

雁木のある通りを歩きながら「ここは雪国なんだなぁ」としみじみ感じた。
昼食は友人に教わった寿司屋にて、近年稀にみる旨い寿司を堪能した。さすが日本海だ。当分、寿司は食べないでおこうと思うほどの素晴らしさだった。
夕方の搬出に立ち合い、直江津港で日没を過ごし、帰ってきた。
雪国の城下町、上越高田。もっと散策したかったが、なにしろ暑くて参った。
いい町だった。ぜひまた行きたい町だった。

 

8月13日      

我が家の垣根にはこれまで朝顔や夕顔を絡ませていたが、今年はゴーヤーにしてみた。
この場所は、目隠しと見栄えのために葉っぱを繁らせたいだけなのだ。
「農作物を収穫するぞ」という気合いはなく、ゴーヤーに適した土作りなど一切せずに、「せっかくなら食べられるものが実るといいな」という程度の気構えで、朝顔の代わりにただ植えただけである。植えた後の追肥や剪定など、特に手入れはしていない。

 
 
       

  そんないいかげんな垣根に、小指大の小さなゴーヤーが実りつつあるのを見つけた。なんともうれしい。
食べられるくらいまで生長するだろうか。
来年は土作り、追肥などしっかりやろう。と思うのだった。

●もやしのソムタム風サラダ
 

8月15日      

今日は前橋の花火大会だ。
が、朝から頭痛にめまい。体に力が入らない。熱まで出ている。夏バテだ。

前橋近くの花火の見えるお宅からお誘いを受けていたというのに出かけられず、結局、自宅で“群馬テレビ”の花火大会中継放送を見ることになった。
テレビ画面で花火が大きく開いてから十数秒後に、前橋方向からドンという音が聞こえる。なんだか寂しく口惜しく情けない。
それでもテレビで“8号”と解説されていた高く上がる大きな花火は我が家からも見えた。

●茄子の煮びたし

(10号玉=尺玉 だそうです)

 

8月18日      

体調の悪さが続くので病院へ行った。
『脱水症状』だと言われた。頭痛も発熱もめまいも筋肉痛も脱水症状によるものらしい。
水分補給には気をつかっていたつもりだった。私はもともと喉が渇きがちなので、お茶は1日2リットル以上は飲んでいた。しかし、お医者さん曰く「お茶じゃダメなんですよ。水かスポーツドリンクにしてください」とのこと。そして、脱水症状になると頭痛薬が効きづらくなるとも言われた。なるほど… である。
2時間におよぶ点滴を受けている間、病院のベットで熟睡した。
病院はクーラーが効いていて過ごしやすかった。家でクーラーをかけるのを我慢していたことは愚かなことだったのかもしれないと思った。

むしょうにモロヘイヤを食べたくなり、買ってきた。野菜はS家の畑から採れるものばかりに頼っていたので、青菜をしばらく食べていないことに気がついた。
モロヘイヤは茹でるとぬるぬるして扱いづらいが、茹でてから刻んで
、醤油や酢をかけ、ちりめんじゃこと擂りゴマを散らす。ズズズズーッと食べる。旨い。

●あさりのそのまま蒸し(参考→→4月の『きょうの料理』

 

8月19日      

本日も病院にて点滴。
昨日採血した血液検査の結果が出たが、どこにも異常なし。「ただ、中性脂肪が足りなすぎるので、肉や脂っこいものをもっとたくさん食べてください」
と言われた。野菜中心の食生活を心がけていたのがアダとなったのか。
昨日からスポーツドリンクをひんぱんに飲むようにしているが、人工的な味のせいか、食事がおいしくなく感じる。

●豚肉とにんにくの芽の炒めもの

 

8月20日      

立って動くとめまいがするので、寝ている時間の方が多い。
うとうとしながら見ようと思った夏の高校野球の決勝戦。うとうとするどころか目を離せない緊迫した試合だ。こちら38歳はクーラーをかけた部屋でヘロヘロになっているが、鍛え上げた10代は炎天下のなか延長戦をやっている。タフだな、選手たち。うらやましい。

空いたペットボトルにハチミツ、黒酢、塩を入れ、フタをしてよく振る。さらに水で薄め、冷蔵庫で冷やしておく。スポーツドリンクよりもずっとおいしい。

●焼き茄子とオクラの酢醤油びたし

 

8月21日      

まだ頭痛は治まらず。
ごろごろしながら高校野球の決勝戦の再試合を見る。“筋書きのあるドラマ”のような9回表であった。

 
 
       

北海道に住む友人からトウモロコシが届いた。10年近く前に東京で知り合った友人、数年前に北海道へ引っ越し、今年から本格的に農業を始めたのだ。なんと立派な、その作物である。上品な味だ。
その日のうちに全部茹で、食べきれないものは実を採って冷凍しておく。後日、トルティーヤを作るのだ。

そして、ご近所の農家からはモロヘイヤをたくさんもらった。ありがたい。
うどんやそばのトッピングにモロヘイヤを入れると、粘り気で麺とつゆが絡みあって美味なり。

●レバーとにんにくの芽の炒めもの

 
 

8月24日      

頭痛はいっこうに治まらないが、体調は少しずつ回復している。スパッと治らないのがもどかしい。
病院での点滴の帰り、
近所の商店の刺身用ショーケースにボタンエビを発見した。
値が張るので迷ったが、買ってきた。刺身の贅沢な食感を堪能し、アタマはみそ汁に。ショウガ汁と大根とミョウガも入れた。濃厚な出汁が出て、体に深くしみわたる味わいだった。

●まぐろとアボガドのサラダ

 

8月25日      

一週間ぶりにS家へ食事作りに行くことができた。
久々に4人で囲む食卓。テーブルの上に並んだ食べ物、豚肉と茄子とピーマンの炒めもの、かに玉、モロヘイヤとちりめんじゃこの和えもの、カボチャの煮物、トマト、大根とオクラのみそ汁、昆布の佃煮… 何一つ残らずに平らげられたのが気持ちよかった。
しかし、畑へはまだ出かけられなかった。

 

8月26日      

一日中曇り空。秋の気配を感じる。天候が秋めいてくると、体調を崩して夏を満喫できなかったことが悔やまれる。

むしょうに“ねりごま”を使ったものを食べたくなる。

●豚しゃぶときゅうりのごまだれかけ

 

8月27日      

今日も曇り空。気温も低い。さみしくなるが、過ごしやすい、複雑な気分だ。
久しぶりに畑へ出かけた。里芋の葉が驚くほど大きくなっている。茄子とピーマンが呆れるほどたくさん実っている。新しく植えたきゅうりやいんげん豆の葉が茂り、花が咲いている。しょうがも採れるようになった。
畑へ行くと体は疲れるが、気分は爽快になる。
我が家の垣根のゴーヤーも長さが20センチを超え、収穫できるようになった。
たくさんの野菜に恵まれ、いい気分だ。

●茄子の煮びたし

 

8月28日      

  ご近所の農家から珍しいものをいただいた。“花オクラ”である。
直径は20センチほどと大きく、ふんわりしている。夢のようにやさしげで美しい。包まれたくなるようだ。
これをサッと茹でて、酢醤油と和えて食べるのだ。
初めてである。
茹でるとオクラのようなぬめり気が出るが、シャキッととした歯応えもある。そしてふわっとしている。不思議で楽しい感触だ。思い出すとまた包まれたくなる。

●茄子とみょうがの酢のもの