父、母、夫、私の4人家族。
昼食は両親を交え4人での食事。 夕食は夫婦のみの食事である。
昼食は忙しい農作業の合間にサッと食べる、味には保守的な両親のことを思った料理。
夕食は夫婦でゆっくりと酒を呑みながら食べるので酒の肴でもある料理だ。
二つの台所を行き来し、二つの食事の傾向を行き来している。
 
 2006/11月
●色のついた料理の名前をクリックすると作り方のページに進みます    
 
       

展覧会が始まっている。

 
 
       

金・土・日曜日は鎌倉の画廊へ出かけ、月曜は移動日、火・水・木曜日を群馬で過ごす日々である。

季節は進み、すっかり秋である。
S家にはご近所から秋の野菜が次々に届いている。S家の畑からも季節の変化を感じる目新しい野菜が収穫されるようになった。そのうえ、久しぶりに出向く近所の商店の鮮魚コーナーの品揃えがますます充実していて、あれもこれも食べてみたくなる。めくるめくような気持ちだ。
「あぁ、ずっと家にいて、いろんな料理を作っては食べ、作っては食べしていたい」と思うほどである。
だが、出かけた先の鎌倉、横浜、西荻窪の店で飲食するのもこれまた楽しい。
季節の変わり目は、胃袋がいくつでも欲しくなる。

 

11月1日      

ずっと忙しくしていたので、ずいぶんの間、畑へ出かけることができなかった。今日は久しぶりに畑へ出かけ、気がかりだった里芋を掘った。畑は母の畑だが、芋掘りのような力仕事はぜひとも私がしなければと思うのだ。
里芋は、一ヶ月ほど前に母が試しに掘ってみた時よりもずいぶんと大きくふっくらとしていた。充実した気分だ。
だが、母の畑は広い。収穫した里芋はほんの一部だ。続きはまた来週だ。来週にはさらに大きくなっているかもしれない。

●里芋の梅干し煮

 

11月2日      

群馬へ帰ると、畑仕事、庭の草むしり、頼まれていたイラスト描き、12月に参加する小品展の準備…、などと思いのほか休む間もなく忙しい。
また鎌倉の個展会場へ出かけると、これまで家にこもって制作していた状態から一転、何人もの方々とお会いし、話す時間である。
描くということは言葉を超えた行為なのだが、展覧会場では言葉を使うことになる。時には「あぁ、喋りすぎたな」「言葉の選び方や使い方を間違っていたな」などと反省し、恥ずかしくなるのである。シラフだと照れ屋なうえに話し下手、なにをどうどこまで話せばいいものか…展覧会場での言葉の在り方は、いつでも私を悩ませるのだ。

群馬に帰っている間にやっておきたかった部屋の掃除をする間もなく、明日から鎌倉だ。

●鶏だんごと豆腐とごぼうとにらの鍋(味噌味)

冷凍の鶏だんごを常備しておくと便利だ。私は生協の宅配で注文しておくのだが、鍋にひょいと加えるだけでいい出汁が出る。にらは畑のにら、柔らかくやさしい味だ。
今日はまたご近所から白菜をたくさんもらった。庭の柚子も黄色く色づいてきた。いよいよ冬がやってくるのだな。

 

       

個展が終わった。
今回は4 週間という長い会期だった。これだけ会期が長いと、今までのことがまっさらになる気がする。スパッとあたらしく、一から始められるような心もちだ。
次に向かうためには、ある程度の時間とある程度の肉体疲労が必要なのかもしれない。

初めての画廊主さんのところで個展をすること、鎌倉ならではの出会い、それらは貴重なものだった。そして、終わってみて漠然と思うのは、鎌倉という群馬から遠く離れた場所に通う… 、ということにもなにか大きな意味があったのでは、ということだ。

なんて、大袈裟な言いぶりになったが、わけのひとつは電車に乗っているのが楽しかったということ。
湘南新宿ラインや横須賀線のボックス席に、進行方向に対して後ろ向きに座る。そうすると、背中から目的地に吸い込まれていくような感触になり気持ちよい。車窓の風景がビュンビュンと流れていくのを見ているのが爽快だ。とくに大崎〜新川崎〜横浜〜大船の車窓の風景は楽しかった。あのあたりは線路がたくさん見えるせいだろうか。とにかく、眠ったり本を読んだりする暇はまるでなく、電車に乗っていることを楽しんだ。

そんなことだけでなく、制作中には部屋に閉じこもらざるをえない私が、遠い場所で個展をしていて、そこまで出かけてゆく、違う場所に向かい、目を向ける、ということがきっと必要なことだったのだろう、と感じている。
鎌倉という場所は私が選んだわけではなく、時には「遠い…トホホ…」と嘆きもしたが、ありがたいことだったのだろう。きっと。

 
 


お越し下さった皆さま、ありがとうございました

11月15日      

久しぶりに群馬へ帰ってくる。群馬の空気はシャキッと冷たく、あぁこうだったなぁ… と懐かしくなる。

もうすでに始まっている、大相撲九州場所をやっと見る。大関陣の安定ぶりを見ては「あぁ、大事な人がいない
…」(贔屓の白鵬は左親指骨折のため休場)悲しくなる。私がテレビ放送を見ていない間に旭鷲山も引退してしまい、久々に見る相撲放送を見ているとキツネにつままれた気持ちになる。

●まぐろとアボガドのサラダ

 

11月16日      

長い会期の個展が終わり、一息つきたいところだが、12月に小品展に参加する。どうしても新作を出したい気持ちになっている。
「どこから片づければいいのだ」と途方に暮れるような状態の部屋の掃除をし、描き始める。
いつもは個展の後は脱力して休んでしまう。今回、ここで休めないことに、なにかの思し召しがあるのだろうと自分に言い聞かせる。

相変わらず、近所の商店の品揃えにはわくわくする。魚担当の店の息子さんに「今日はアナゴがおすすめだ」と言われる。見るとアナゴは白く輝いている。見るからに旨そうだ。すぐさま買うことに決める。塩をふり、白焼きにして、わさびをつけて食べる。ほんとうに旨い。
丸々とした張りのある、大きく美しいカブが1個たったの20円。驚きである。

●かぶのとろ煮

 

11月17日       午後、キャンバスに向かうも眠気がおそってくる。気持ちを切り替えて、気がかりな里芋掘りをすることにした。(霜が降りるまでに掘り終えなければならないし、週明けには雨が降るらしい)
地下足袋を履き、畑へ出かけ、やや冷たい風を受け、土の上に立つ。すると眠気はどこかへ行ってしまった。
カマで茎を切り、スコップで土を掘り、里芋を掘り出す。そして、地べたに里芋の大きな葉を敷いてその上にどかんと座り、里芋のひげ根を丁寧に取りのぞく。たった一人で黙々とする作業。夢中になる。
掘られた里芋はおいしそうで嬉しくなる。


●里芋の土鍋スープ
 
 
       

個展の会期中に鎌倉の近くに住む友人のお宅にお世話になった。
先週に掘った里芋を彼女に送ったところ、「こんな風に料理しました」というメールが届いた。
私もさっそくまねてみた。
“中華スープ、里芋、ゴボウ、ドライトマト、切り落としのハム、月桂樹の葉”
我が家にハムはなく、ウインナーがあったのでそれを代用し、昨日余ったカブの葉も加えた。透きとおった味だった。

   
 
友人の住まいの近くの『立石』
ただ一人佇むようでかっこい
名前が同じなのがちょっとうれしい

11月21日      

  真ん中木の上に白い点  
 
2日間雨がたっぷり降り続き、今日は久しぶりに晴れた。風もなく、暖かく穏やかだ。畑へ出かけた。
小松菜の間引きをしていると、後ろの方でシャカシャカッという音が聞こえた。収穫した野菜を入れようと持ってきていたビニール袋が風で鳴った音だ。
「飛ばされては困る」とビニール袋を取りに向かったが、その姿はどこにも見あたらない。
不思議に思いながら上を見ると、ビニール袋が風に舞っている。慌てて走るが、追いつかない。
あぁこりゃもうだめだ、ビニール袋かえってこない。
 
       

  青い空にぽつんと白いビニール袋。高く昇ってゆく。
ぐんぐんぐんぐん昇ってゆく。
カラスよりも、自衛隊のヘリコプターよりも高くなり、どんどん遠くへ。いったいどこまで行く気だろう。

なんだかいいなぁー、いいものを見たような気がする。


だが、あれは生協の宅配のビニール袋、私のフルネームを記したシールが貼ってあるのだ。


●小松菜のおひたし(ごまだれポン酢)
 

       

ここ数日、朝の冷え込みが厳しい。体が冷えきってしまい、毎朝体調を崩している。そして午後になると熱を出している。これから長く続く冬はまだ始まったばかりなのに、こんなことで大丈夫なのだろうか。

 

11月26日      

まだ掘りきっていない里芋を掘りに畑へ出かける。今日は夜には雨が降るらしい。そんな時は外は暖かい。空気の肌触りがやさしい。里芋を掘りつつ、ときどき畑の土の上に寝転んでみる。安心するような気持ちよさだ。

大相撲九州場所も今日でようやく千穐楽だ。
今日のテレビ放送は、実況・藤井アナウンサー、正面解説・北の富士勝昭、向正面・舞の海秀平。私にとってはゴールデンコンビである。相撲をよく知り、相撲に期待をしていると感じさせるこの3人の会話を聞いていると、相撲が数倍楽しくなるのだ。また、この3人のいいところは、始終喋りっぱなしではないところ。仕切りの時間の美しさを沈黙で知らしめてくれるのだ。

●さつまいもの柚子煮

 

11月27日         昨夜から降っていた雨があがると、今日はぐっと暖かい。外は春が来たような不思議な空気だ。
雨上がりの赤城山にはあまり見ないような雲がかかり、荘厳な風情だった。
 
 
       

4年前に越したきり、忙しさにかまけて長いこと放ったままなっている、S家の2階の部屋。本格的な掃除はまだ先延ばしだが、今日はこれまでの作品を整理しつつ、少しだけ掃除をした。
久々に上がるS家の2階には、いたるところにネズミのフンがあり、夜中にここでネズミの大宴会が行われているのかと想像するとギョッとした。そのフンや、いらない段ボールや紙や布を庭で燃やし、汗をかく。たき火は気持ちがよい。

●ゆで白菜の酢のもの