Meade Deep Sky Imagerによるガイド撮影検討その2 (2006.3.18)

upload 2006.3.19

LX200でのMeade Deep Sky Imagerによるガイド撮影の検討を開始してから、かれこれ1年が経過しました。昨年の3Qくらいまでは、LX200は眼視観望を中心に活用してきましたが、ここ数ヶ月間はやむにやまれぬ事情で、戸外へ運び出すことさえ出来ずにいました。長い休止期間の後ですが、これからもLX200は観望や撮影に活用していく予定です。またDSIを使ったガイド撮影の検討も再開することにしました。

昨年の検討では、LX200にサブスコープリングを介してBORG50EDを同架し、これにEOS20Dを取り付けて、写真鏡として用いました。そして焦点距離2500mmもある10”LX200をガイド鏡に見立てたテスト動作をさせ、問題なく動作することを確認しました。しかし、本来取り組むべきLX200の直焦点による撮影は十分に試すことができていません。今回、この部分をなんとか出来るようにするために、半年くらい掛けて、少しずつシステムのテストと写真撮影の実験をしていきます。

ここで、ガイド撮影の話を始める前に、自分の使っているシステムについて、少し思いをめぐらせてみました。

深宇宙天体を眼視観望するのに適した、大口径で長焦点のシュミットカセグレン鏡筒(SCT)は大変多くのユーザーがいますし、自動導入装置のついたフォークマウントは観望に用途を絞れば、その利用価値は高く、導入の難しかったより暗い深宇宙天体をより身近な観察対象にできるようになりました。

また、SCTは深宇宙天体の写真撮影に多くの方が利用しています。国内でのSCTによる撮影は、Meade製によるものよりCelestron製によるものが圧倒的に多いのですが、天文ガイド誌などに示されているロンキーテストの結果をみても、光学的な性能にほとんど有意差は無いように思えます。私が所有している10”F10の個体についても、大気のコンディションが良く、鏡筒を十分に温度順応させた後であれば、アパート前からのお手軽観望でも驚くほど鮮明で美しい土星を見ることが出来ましたし、また、透明度が高い夜に十分に暗いサイトに出かければ、OIIIフィルタとナグラ−31mmアイピースの視野で、白鳥座にある網目状星雲のディテールを大変よく観察することができました。時折、Meadeの光学系の品質に対して大変な疑問をもたれている方がいらっしゃったり、購入したけど直ぐに手放したなどという少々残念な話を聞きますが、あまりこのような風評を気にする必要はなく、写真撮影などにも安心してどんどん使っていってよいと思います。Meade製SCTによる写真の作例が少ないのは、国内でのOTA単体売りが殆どされていないことによるものでしょう。

総じて、LX200のようなシステムはコストパフォーマンスが高く大変よく出来たシステムと思いますしかしながら、写真撮影では、フォークマウントゆえの極軸修正の難しさや、更に駆動系に用いているDCモータ制御とギヤの機械精度に起因した追尾エラーの問題などを解決しなければならないなど、使いこなすのにはそれなりの努力が必要です。実際Celestron鏡筒により撮影された深宇宙天体の作例は、高精度のドイツ式赤道儀との組み合わせた例が殆どですし、もし私が仮に仕事で深宇宙天体の撮影に取り組まなければならないならば、ドイツ式赤道儀を選びます。例えば、タカハシのEM−200などのように高精度で精緻な機械精度をもったドイツ式赤道儀マウントは、極軸望遠鏡を用いた簡便な方法で十分な精度の極軸アライメントが可能で、駆動波形を精緻に制御されたパルスモータによる高精度追尾が期待通りの結果をもたらしてくれるでしょう。

しかし、LX200のEQモードによるフォークマウントをなんとか撮影に使かいこなそうという取り組みも、趣味だからこそ楽しみながら行うことが出来るわけですし、また、これには仕事のように期限も無いのです。

私は、この取り組みをなんとか実用レベルまでもっていけると楽観的に考えながら行っています。例えば、下の写真はM51子持ち銀河を中心に収めたLX200の10”F10直焦点の視野です。ISO800で露光は2分足らずの無修正画像ですが、月明かりの影響もあり、お世辞にも良く映っているとはいえません。それでも、よく確認できる2つのコアや淡い腕の陰影から銀河の広がりを十分確認できますし、視野の中でとても大きく写っていることが分かります。きっと十分な露光をかけてやれば、細かい構造を含むかなり迫力のある画像を得られるに違いありません(この写真に対して強力な画像処理を施したイメージをライブラリに掲載しました)。

私が赤道儀ウェッジを取り付けたEQモードのフォークマウントではじめて撮影した時に経験したように、極軸修正を怠ったり、PECを有効にしていないと、30秒足らずの露光でも2500mmという長大な焦点距離のもとでは、簡単に星像はぶれてしまいます。一方この画像は、極軸アライメントとして標準のone starアライメントを行った後、インタラクティブ法で簡易的に極軸修正し、かつ、PECも有効にしてしたものです。2分のノータッチガイドでそこそこ星像は止まっているように見えます。残念ながら5分の露光では星像の流れが目立ってしまいますが、ここまで来ていれば、ガイド撮影の工夫を行えば、それなりの画像をきっと得られるに違いありません。

ここからは、前述のような極軸アライメントの状態でDSIによるガイド動作の確認を再び行ってみます。

fl=2500mmのLX200のビジュアルバックには、電動マイクロフォーカサと31.7mm接眼アダプターを介して、DSIを取り付けます。このときDSIのUSB端子はマニュアルどおり右に向くようにしています。ここでは、うしかい座のα星アークトゥルスを導入し、ガイドなしで、DSIの視野ではどの程度のドリフトを生じているか確認してみました。下図の左が初期状態、右が10分経過後にドリフトしてしまった星の位置を示しています。RA方向で、−25ピクセル、DEC方向で+45ピクセルの変移があります。DSIのCCDセンサSony ICX404AKのチップサイズは5.6x4.7mm、カラー画像として出力される画像サイズは510x492ですから、RGB1セットを1ピクセルとした等価ピクセルサイズは、11.0x9.6umとなります。従って、撮像面に投影されている星像はRA方向で275um、DEC方向で430um動いていることになります。

今回意図しているガイド方法はMeade標準のオフアキシスガイダを用いたものですので、撮影に使う20DのCMOSセンサ上でも同じ距離だけ星は移動するはずです。20DのCMOSセンサの等価ピクセルサイズ6.42x6.42umを割り戻して、ピクセル数に換算すると、DEC方向で43ピクセル、RA方向で67ピクセルも動いていることになります。

 

次にオートガイド動作を確認してみました。アークトゥルスは0.2等級ですが、16msくらいの露光時間でDSI上の輝度はほぼフルスケールです。同じ露光時間でこの1/5くらいの輝度でもS/N的に全く問題ありませんので、コントラスト調整の変更のみで2等星の追尾が可能です。さらに1等級あたりの光度差がおよそ2.5倍であることを考慮すると、露光時間を0.1s程度にすれば、4等星程度の追尾が可能と思います。フレームの更新に1秒程度要するため、今回のような明るい星を用いるのと4等星を用いるのでは、ガイド動作にそう大きな差は無いでしょう。

オートガイド動作をするためには、シリアルポートの接続を確立したのち、ガイド星を枠で囲んで捕捉します。

 

Will Cal(キャリブレーションを実行)と表示されていることを確認したのち、GuideHereボタンを押すと、Statusウィンドウに以下が順に表示されます(以下は上記画面とは別の状態での実行例です。)。いままで気が付かなかったのですが、キャリブレーション時の移動量検出はY軸、つまり、DEC方向のみしか行われないようです。つまり、天頂プリズムやオフアキシスガイダなどによるDEC方向の像の倒立の確認のみを行っているようです。

 

    

 

キャリブレーション後はセンターサークルが表示され、ガイド動作が始まります。途中、CenterTargetボタンを押すと、サークルが中央に移動して、そこに星を引き込むように動作します。この動作自体も問題ないようです。

 

 

 

10分間ガイド動作させたあとに、状態を確認したのが以下です。ガイド動作中は星が円の中から外れることはありませんでした。つまり、DSIは意図したオートガイド動作をしています。しかし、円の中では若干星が動いて、そして中心に引き込まれるような動きが見られました。これは周期的なハンチングではなく、かなり不規則に見えました。

 

 

円の直径は30ピクセルですが、星の動く範囲は最大15ピクセル程度でしたので、少なくとも私の所有するLX200の個体と20Dを組み合わせて、かつ、現状のDSIソフトウェア設定で撮影を行った場合、3504x2336ピクセルの20Dの視野の中で20ピクセル程度のブレが生ずることになります。これはかなり悲観的な結果です。

 

update 2006..3.24

 

私は、20Dの3504x2336ピクセルという高精細な視野で、星像を1ドットもずれずに止めたいと思っているわけではありません。さしあたりの目標は、ライブラリに掲載している画像の標準サイズとしてる600x400ピクセル程度でカチッと止まってくれればと思っています。このためには現状のブレ量である20ピクセルを1/4くらい、つまり5ピクセル程度に抑えたいと思っています。

 

これは、非現実的な話ではなく、なんとか達成可能なレベルかも知れません。というのは、ものぐさな私はマウントのRA−PECの学習をたった1度しか行っていませんし、バックラッシュ補正も購入してから1度実施しただけです。つまり、まだ改善の可能性が残されています。RA−PECの学習は大気の落ち着いた夜を選んで、出来るだけ高精度に極軸をあわせた状態で、今後、数回実施して効果を確認する予定です。また、機材は車で何度も運んでいますので、ギヤの遊びの状況なども変わっているかもしれません。いまのところ、マウントのコントローラのアローキーによる視野移動はそれほどもたつかずに出来ているので、バックラッシュの程度は最初のころと比べて極端に変わっていることはないと信じています。ただ、バックラッシュ補正はガイド動作のレスポンスにクリティカルに効くはずですから、ベストな状態を維持するために、これも昼間の地上物を使って、再び実施しておこうと思います。

 

さて、10”F10と20Dを組み合わせた視野においてM51の見え方を確認し、また、DSIによるガイドも精度的に不十分ながら動作はしているようです。この日は、オフアキシスガイダによる直焦点撮影にもチャレンジしてみました。

 

そこで、追加の部品を幾つかとりつけ、機材をオフアキシスガイド用にセットしました。Meade純正のオフアキシスガイダのTネジ(M42)のあとには、ガイド側との同時合焦の問題をより単純にするために、これまでのBORG部品の組み合わせたやや複雑な構成から、Vixenのカメラアダプタのみのシンプルな構成に変更しました。一度、20Dの視野におおくま座のミザールを導入してパソコンの画面で合焦の確認をしたあと、ガイド側にはDSIと同焦点になるように同焦点リングを取り付けたSP26アイピースを取り付け、どのくらいの深さまでDSIを差し込めば、20Dと同時に合焦しそうかあらかじめ確認します。SP26では視野の一部にオフアキシスガイダのプリズムからの星像が写ります。少し視野を振ると、暗い星が入りましたので、これを用いました。

 

一度、ミザールでSyncしたのち、M51を自動導入し、再び、M51が20Dの視野に捉えられているか確認します。少しだけ視野を調整したのち、SP26mmをDSIに差し替えました。DSIの露光を0.1sにしましたが、視野に星はとらえられていません。露光を1秒に上げ、オフアキシスガイダの視野を回転させていきましたが、結局めぼしいガイド星を探し出すことができませんでした。

 

PCのバッテリーも上がってしまいましたので、テストは中断することにしました。オフアキシスガイドの場合は、ガイド星の位置の確認など、それなりにプランを立ててから取り組まないと、あっという間に時間をロスしてしまいます。

 

一通り、機材を片付けてから、MeadeのAuto star suite ソフトウェアを使って、M51周辺の星図を確認しました。その星図に、20Dの視野(白い矩形)とDSIの視野(赤い矩形)を重ね合わせてみました。赤い円は、オフアキシスガイダを回転させた場合に、DSIの視野の中心がとり得る軌跡を示します。

 

M51の周辺は比較的明るい星が少ないため、やはりMeade純正のオフアキシスガイダのように視野を調整出来ないタイプのものでは、苦労しそうです。M51周辺では8から9等級の星が多く、これらをガイド星とするのは、DSIの感度では無理そうです(7等級程度=1秒強の露光が限界と思われる)。20Dの視野を少しだけずらせば、唯一6.9等級の星が可能性がありますが、これもかなり苦労するでしょう。M51は今後、より容易な対象で経験を積んでからじっくり取り組むことにしたいと思います。

 

 

 

次回は、ここに示したような感じで、Auto start suiteの星図機能を活用して、オフアキシスガイドによる撮影に向いた幾つかの対象を選び出し、前もってプランを立ててから撮影に挑戦しようと思います。

 

 

 


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