Meade Deep Sky Imagerによるガイド撮影検討その3 (2006.9.15)

 

upload 2006.9.17

 

■ ガイド鏡の並列装荷

 

LX200のDSIによるガイド撮影の検討は、これまでオフアキシスガイドを前提に行ってきました。しかし、この方法は撮影対象とガイド星の位置関係が適当な配置でなければならず、また、DSIの感度の限界から7等星以上の明るさのガイド星が必要でした。このような要件を満たす撮影対象は、そう多くはありません。そこでガイド星の選択幅を広げるためにガイド鏡の並列装荷による方法で再試行することにしました。

 

 

これまでサブスコープとして使用してきたBORG50EDでは、焦点距離と集光力の両方において不足しているので、今回別途入手したVIXENのCUSTOM80Mアクロマート屈折鏡筒をガイド鏡として用いることにしました。これは以下のようなスペックです。

 

有効径 D=80mm、焦点距離 FL=910 (F=11.4)

 

この鏡筒はオークションなどで中古を安価に入手可能で、私が落札した価格は1万円ほどでした。おそらくNP時代の若干古めの個体ですが、対物セルには光軸調整機構があり、高倍率で星像を観察したときに確認できるエアリーディスクやディフラクションリングの状態から十分な精度を持ち、調整も不要であることが分かりました。LX200への装荷はガイド鏡リングを使用しました。鏡筒径90mmに対して、ガイド鏡リングの内径は98mm程度なので、ギリギリという感じです。モータへの負荷を軽減するためにバランスウェイトは必須で、バッテリーも外付けの容量の大きなものを使ったほうが安心です。撮影用のカメラを含めるとトータルでは結構な重量になるので、追尾動作の安定を考えるとこのくらいが限界と思います。念のため、MaxSlewRateは4まで下げています。

 

今回の実験では極軸調整は厳密には行っていませんが、基準星として用いたVegaと北極星を交互に自動導入した場合にSP26mmアイピースのFOVに両方が入るくらいには調整してあります。実験用の撮影対象としてM45(プレヤデス星団)を選びました。写真視野に全景を収めることは不可能ですが、これなら少なくともガイド星の選定に困ることはありません。

 

以下の実験は全てF6.3レデューサ併用で撮影を行うこととします。

 

まず、ガイドを行わないで撮影した5分間露光による写真を示しますが、いくつかの特徴のある動きを示しています。

 

 

 

(a)は極軸ズレによる南北方向のドリフトで、(b)はウォームギアの加工や組み付け精度に起因した東西方向に生じるペリオディック・モーションです。前者は今回の場合は南の方向に単調にドリフトしていきます。一方、後者は周期的な動きをするはずですが、今回は5分の露光でも1周期に満たないようで、恐らく1周期は10分弱くらいではないかと思います。このエラー補正のために行う、PECトレーニングは最低30分くらいくらい(3−4周期分くらい)必要でしょう。それにしても大きなエラーです。実は、先週(9/9)にPECのトレーニングを実施したばかりだったので、少々意外な結果でした。これについては、後に述べます。しかし、このくらい遅い動きであれば、ガイド操作で十分補正可能のはずなので、今回はこのままガイド実験に進むことにしました。

 

 

■ガイド方法

 

ガイド鏡を用いたガイド方法として、以下に示すマニュアルガイドとDSIによるオートガイドに両方を試しました。また、マニュアルでは実効的な焦点距離の違いによるガイド性能の優劣なども撮影された写真から判断します。

 

マニュアルガイドでは、@Meade純正のレチクルアイピースとAビクセンGA4ガイダによる2種類で試しています。ガイド鏡とアイピースの焦点距離・見かけ視野・バロー光学系の有無により、前者の最も小さな中心の四角の領域内で30秒ほど、後者の一番内側の円で6秒、2番目の円で11秒の実視角度に相当します。ここで主に見たかったのは、合成焦点によるガイド性能の違いです。本来後者についてはMeadePL9mmと3倍バローを組み合わせて合成焦点を稼ぎたかったのですが、過剰倍率とアイピースの出来も幾らか関係してか、星像が見難くなるためGA4としました。主観では、GA4とクラシカルがOr5mmの方が暗い星までずっと見やすいのです。

 

一方、BDSIによるオートガイドでは、ガイド鏡とエクステンダによる合成焦点距離、DSIのピクセルサイズから、ガイドソフトウェアが表示する目標円の実視角度は25秒に相当すると思います。

 

@Meade PL9mm

 レチクルアイピース

 

見かけ視野52°

 

第1円 108秒

中心四角 30秒

AVixenGA4

 3倍バロー内臓ガイダ

+Or5mm

 

見かけ視野42°

 

外側第2円 11秒

中心第1円 6秒

MeadeDSI

+Borgコンパクトエクステンダ+延長筒

⇒合成焦点×3

 

中心円 25秒

 

 

■実験結果

 

おおよそ予想通りの結果となりました。

 

マニュアルガイドに用いた@Meade純正のPL9mmレチクルアイピースは、主鏡に対しほぼ同焦点のガイド鏡の使用か、主鏡のオフアキシスガイドを想定した設定のため、910mmでは焦点距離が明らかに不足しています。ガイド中に一番内側の四角に星を留めておくことは容易ですが、実際これによるガイドでは星像が流れていることが分かります。

 

一方、3倍のバローで合成焦点を稼いだAGA4によるガイドでは、拡大率が@に対して5倍であるため星像は暗く、また、変動量も大きくなるため、中心円に星を留めておくのは至難の技です。第2円を超えることはありませんが、第1円を逸脱することも多く、実質的には10秒くらいの変動幅であったと思います。しかし、撮影された写真の星像はほぼかっちり止まっており、十分なガイド性能が得られることが分かりました。

 

@Meade PL9mm

 レチクルアイピース

 

見かけ視野52°

 

第1円 108分

中心四角 30秒

 

実質的な変動幅30秒

AVixenGA4

 3倍バロー内臓ガイダ

+Or5mm

 

見かけ視野42°

 

外側第2円 11秒

中心第1円 6秒

 

実質的な変動幅10秒

 

MeadeDSI

+Borgコンパクトエクステンダ+延長筒

⇒合成焦点×3

 

中心円 25秒

 

実質的な偏差15秒

 

 

DSIによる自動ガイドでは、前回の実験の経験から、焦点距離を落とせないことが分かっています。そこで、必要な焦点距離を稼ぐために、最初からBorgのコンパクトエクステンダと延長筒の組み合わせで、合成焦点を3倍に拡大して使用することが前提となります。この場合、合成焦点は2700mmで、主鏡の直焦点とコンパラですが、反面、ガイド星として用いることが可能な等級は市街地では6等星、暗いサイトに移動しなければ7等星は難しいと思います(何れもDSIの露光は0.25sの時)。

 

 

実験の結果、オートガイド動作自体は前回の結果をほぼ再現し、DSIのガイドソフトに表示されている目標円を逸脱することはありません。画面上の変動幅(ピクセル数)から実視角における変動幅を見積もると、GA4によるマニュアルガイドよりも精度的にやや劣るものの、それほど悲観的な数値ではありません。これに対応して、実際に撮影して得られた星像もGA4によるマニュアルガイドの場合とほぼ同等の結果が得られました。

 

以上で、ようやくDSIを用いたオートガイドによる撮影の目処が立ちました。

 

以下にガイド鏡の並列装荷とDSIによるオートガイドについて、少し捕捉しておきます。

 

今回は単純に基本を守ってオートガイドの動作確認が出来たにすぎませんが、Meade製品の総代理店であるミックインターナショナルが主催するディスカッションフォーラムでは、より技巧を凝らしたオートガイドの実施例が報告されています。例えば、miniBORGのような、より小口径で短焦点のガイド鏡とフレーム蓄光型のCCDカム、フリーソフトウェアによるガイダプログラムを巧みに組み合わせた動作例が示されていて、実際にうまく機能しているようです。このような新しいシステムについては、今回のDSIによるシステムで少し撮影実績を積んでから、情報集めをしたいと思います。

 

次に気をつけておきたいのは、バックラッシュの問題で、これはオートガイドプログラムを困惑させるものです。私のLX200GPS−25の個体は、RA・DECの両軸ともバックラッシュは比較的小さくて、ハンドコントローラによる操作にも素直に反応してくれます(もちろん、バックラッシュ補正は行っています)。しかし、私が過去に2台ほど触れた8インチの個体では、特にDEC方向のバックラッシュが大きく、問題と感じました。これらの個体を所有している両名ともバックラッシュ補正は実施済みとのことでしたが、RA・DECの2軸によるオートガイドは困難かもしれません。しかし、このような個体でも、以下の点に注意すればガイド動作は可能と思います。

 

@極軸は厳密に合わせる必要はないが、大雑把にはあわせておく。例えば、EasyAligmentで指示される基準星と北極星を交互に自動導入して、付属のSP26mmアイピースの視野に入れる程度であれば十分。

 

ARA−PECは実施しておいた方が無難だが、必ずしも実施しなくともよい。

 

Bガイド動作をしないで10分ほどの露光を行い、南北方向のどちらににドリフトするか、その方向を確認しておく。

 

Cドリフトの状態によって以下の設定を行う。このとき南北方向の動きのみに着目する。

A.南にドリフトする場合、

Select Item: Setup: Telescope: Dec. Guiding: North Only

B.北にドリフトする場合、

Select Item: Setup: Telescope: Dec. Guiding: South Only

C.南北方向のドリフトが僅少の場合、

Select Item: Setup: Telescope: Dec. Guiding: Off

 

D極軸が外れすぎていると、ディフォルトのゲイン設定では、ドリフトを補正しきれないことがあるため、ゲインを1.0まで上げる。それでも、流れる場合は、極軸をより正確に合わせなおす。

 

 

■PECデータについて

 

4月初めにファームを4.0lにアップデートしましたが、その前にPEC Utility Toolを使ってデータを確認しました。このツールはPEC情報を読み出したり、リファインするためにMeadeが提供しているもので、主な機能は以下のようなものです。

 

@ LX200のコンピュータマウントからPECデータを読み出し・書き込みを行う機能

A 読み出したデータをグラフ化する機能

A PEC波形に対するシャープ化あるいはスムージング処理

B Periodic error補正データのタイムラグを調整すつための波形のシフト機能

C PECデータのCSVファイルへのエクスポートあるいはCSVファイルからのインポート

 

その後、あるアクシデントが元で鏡筒の光軸が大きくずれたため、かれこれ2ヶ月ほどヨシカワ光器研究所に入院させていました。ファームのアップデートによりPECデータはクリアされていたため、今回久しぶりにPECトレーニングを実施しました。ファームウェアの更新前後のPECデータを比較して示します。

 

4/9に実施したPECトレーニングデータ

 

9/9に実施したPECトレーニングデータ

 

ファーム更新前のPECは、非常に良く機能していました。これは、PECトレーニング実施後に6分にわたるノータッチガイドに成功していることが実証しています。しかしながら、今回PECトレーニングを実施しているにも関わらず、非常に大きなペリオディックモーションが確認されました。これらの2つの時期のPECトレーニングデータを比較すると、同じ個体から得られているのものなので、本来同じようなデータになるはずですが、そのようにはなっていません。この原因がファームの不具合によるものか、PECトレーニングのミスオペによるものか、今後調べたいと思います。

 

 


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