□赤道儀モードを用いて最初に得られたイメージ(2005.2.5)

LX200とMeade Super wedgeを用いた赤道儀モードによる写真撮影を初めて試してみました。

以下に得られた無修正イメージを最初に示しながら、問題点を一つずつ見ていくことにします。

共通データ

・Meade LX200GPS-25 + f/6.3レデューサ

・Canon EOS20D ホワイトバランス 太陽光, ISO800, 長時間露光ノイズ低減モード

・観測地 千葉県市原市の住宅地

・コンディション 周囲に水銀灯, 風強い

・アライメント One star alignment, 特別な修正なし

・ガイド LX200赤道儀モードによるノータッチ1軸追尾 

Figure1 M42/43

・露光 2分

Figure2 M51(NGC5194)/NGC5195

・露光 5分

 

@周辺減光と視野下部のケラレ

LX200-F10とf/6.3レデューサ併用による縮小されたイメージサークルは、APS-Cサイズ(22.5×15.0mm)の撮像素子に対してほぼぎりぎりですね。この組み合わせでは周辺減光が目立ち始めます。減光はCMOSセンサの中央から約9mm離れたところからcos4乗則に従って生じています。

Figure4 周辺減光の状況

下部に見える特徴的な減光はEOS20Dのミラーによるケラレに起因しています。EFSレンズなどの通常のカメラレンズでは生じませんが、望遠鏡など特殊な光学系では問題になり、このような不具合は天文撮影用のカスタムモデルであるEOS20Daでは改善されているようです。

これらのイメージの不均一性の補正については、フラットフィールド減算などで逃げれそうです。といってもそれほど特別な装置やソフトが必要なわけではありません。実際に使用したのは、EOS20D付属のPhotoshop Elements 2.0というフォトレタッチソフトのみです。

Figure5 簡易的なフラットフィールドの生成 元画像(左) ガウシアンブラー処理後(右)

フラットフィールドの作り方は幾つか考えられると思います。望遠鏡の前に拡散版を配置して適当な露光をかけて撮影したボケたイメージを使う方法がもっとも良いと思います。今回は撮影時にそのような準備はしていなかったので、お手軽な別の方法をとることにします。

具体的には明るい星のない別の領域を撮影しておき、この画像に対し、Photoshopのガウシアンブラーを使ってイメージに写っている星を潰します。このときの処理半径は可能な限り小さく設定しないと、本来欲しいフラットフィールドとの隔たりが大きくなってしまいます。たとえば、今回例として用いた元画像の画素数は900x600pixelとしましたが、このときの処理半径は30pixelに設定しています。この状態だと一番明るい星が若干残ってしまうので、部分的に大きめの半径でブラーをかけて目立たなくしました。それがFigure5(右)です。

Figure6 フラットフィールド減算後(左)とレベル補正後の画像(右)

Figure 1の元画像からFigure5のフラットフィールドを減算します。このとき、フラットフィールドの不透明度は100より小さめにしておきます。バックグラウンドが少し残りますが、これはレベル補正をするときに一緒に足切りします。低輝度の部分を少しストレッチして、バックグランドの調整を行えば、Figure6(右)のようなイメージが得られます。少し青っぽい色が残ってますが、これは偽色と思います。フラットフィールドイメージとしてオリオンから少し離れた位置の星野を切り取って利用したので、市街地の光害の被りの程度が違ったため減算処理で誤差を生じてしまったようです。この点については、フラットフィールドを撮影する場所を注意すれば改善可能と思います。

 

Aドーナツ状のパターンノイズ

撮影した数枚のイメージの全く同じ位置にドーナッツ状のノイズがあることがわかりました。原因が最初はよく分からなかったのですが、冷却CCDイメージングにおいて同様のパターンノイズが生じることがwebサイトで報告されているのを見つけました。これはゴミ付着が原因のようです。

 

Figure7 全てのイメージの同位置に写りこむパターンノイズ

EOS20Dのイメージサイズ設定のLでは3504×2336pixel、一方、パターンノイズサイズは直径70pixel程度でした。撮像素子であるCMOSセンサは6.4×6.4μmの正方画素、22.5×15.0mmのセンササイズですから、ゴミが作っている影のサイズは0.49mmに相当します。この値からゴミ付着面までの光路長は、縮小光学系を含めて見積もると3.1mmとなります。幾つか近似が入っているのであまり細かい数字を議論してもしかたないかもしれませんが、屈折率1.5程度、2mm厚くらいのIRカットフィルタの表面に付着しているゴミが原因と考えて、まず間違いないでしょう。

撮像面のクリーニングは自分で行うのはリスクを伴うので定期的にCANONのサービスセンタに出そうとおもいます。ただし、軽微なゴミはある程度避けられないので、フラットフレームの減算処理などで、周辺減光と一緒に取り除いてしまうのが良いようです。今回、フラットフレームは簡易的に生成されたものなので、撮像面のゴミによるパターンノイズの除去は考慮していませんでしたね。

フラットフィールドを用いたイメージ処理とドーナッツ状パターンノイズについての考察は以下のサイトが役立ちました。ありがとうございます。

・Suzuki's Astro Page(http://www.geocities.jp/mtnsuzuki/index.htm)

 ⇒フラットフィールド撮影用拡散版(http://www.geocities.jp/mtnsuzuki/flat.htm)

 ⇒CCD画像に写るドーナツ状の影(http://www.geocities.jp/mtnsuzuki/ring.htm)

 

B星像の流れ

Figure2に示したM51(NGC5194)/NGC5195子持ち銀河をM42で用いたものと同じフラットフレームを用いて減算処理を行いました。この結果をFigure8に示します。M42に対し、時間にして2.5倍の5分の露光をかけていますが、かなり暗いですね。より長時間の露光を掛けたいものですが、5分でも星像が大きく流れてしまいますので、これ以上はほぼ無理です。子供のNGC5195の構造も殆どわかりません。

 

Figure8 フラットフレーム減算処理後の画像(左)とレベル補正・トリミング後の画像(右)

この星像の流れは、極軸合わせ精度とマウント機械精度の両方に原因がありそうです。

 

前者について、今回の極軸アライメントは、LX200の日本語マニュアルに唯一記載されているOne start alignmentを1回行ったのみです。この場合、目盛り環の表示と実際とのズレなどが補正されていません。このようなズレをあわせこんでいくためには、以下の2つの方法がメジャーのようです。

 

レチクルアイピースを用いて、星像の流れる方向を特定しながら、赤道義ウェッジの方位角と仰角を星像が流れなくなるように調整していく方法

 

・基準星と北極星を交互に導入しながら、最終的にその両方が正しく視野中央にくるように、ウェッジの方位角と仰角を調整する方法

 

これらの方法のうち前者はLX200の英文マニュアルに記載があります。このような正確なアライメントを行うことにより。どの程度星像の流れが改善されるか次回確かめてみようと思います。

 

次にマウントの機械精度の問題ですが、駆動系、とりわけウォームギアの加工精度などに起因してペリオディックモーションが生じ得ます。LX200にはこのようなエラーを補正する機能(PEC)を持っているようなので、この部分に起因する星像の流れは幾らか軽減できると思います。

 

ただし何れの方法も、レチクルアイピースが必要なので、実際の効果を試すのはアイピースを入手したあとですね。

 

C星像が甘い

星像がかなり甘いことにお気づきになったと思います。今回の撮影では風が強く、これによるブレも一因ですが、根本的にピントが合っていないのが問題です。EOS20Dの液晶画面やパソコンとのUSB接続しながら用いるDigital Photo ProfessionalとEOSキャプチャなどの付属ツールはピント出しを行うことは考慮されていなので、とても厳しいと思います。またマイクロフォーカサはピント位置の数値指定ができないため、なかなかピントだしがうまくいきません。

シュミットカセグレンのピントだしテクニックいついては、ハルトマンマスクを用いる方法が複数のweb siteで紹介されています。これを用いれば、ピントが手前にずれているか奥にずれているか調べることができるので、位置の絶対指定が出来ないマイクロフォーカサでも、ピント出しの作業が楽にできるようになるかもしれません。

・Cometman.com web site(http://cometman.com)

  ⇒The Arcturus Observatory Mask Page(http://cometman.com/Mask.html)

ただし、カメラからイメージを取り込みながらの確認作業になるので、付属のビュアーを我慢して使うよりも、このための支援ツールを自作してしまった方がよさそうです。

また、マイクロフォーカサは拡大撮影時には極めて高精度のピントだしができるので利用価値が高いですが、直焦点撮影ではピントだしに時間がかかりすぎます。目盛環付きの直進ヘリコイドによるピントだしについても、今後考えることにします。

 

Dゴースト

明るい星が視野内にあると、ゴーストを生じることに気が付きました。恐らくレデューサの写りこみと思います。これは不可避ですね。

Figure9 ξ-Ori付近

 

・露光 5分

 

Table1 問題点と対策

現象 原因 対策
周辺減光 レデューサによるイメージサークルの縮小 拡散版を用いたフラットフィールドイメージの撮影と減算処理
視野下部の減光 ファインダへ光を導くミラーにより、光束の一部がケラレる。
ドーナッツ状のパターンノイズ 撮像素子のIRフィルタ上へのゴミ付着
星像の流れ 極軸のズレ 極軸アライメントの精度向上(ドリフト法)
駆動系のペリオディックエラー PEC
ピント 強いて言えば、忍耐力の欠如? ハルトマンマスク、ピント出し支援ソフトの自作

直進ヘリコイドの挿入

ゴースト レデューサへの写りこみ。ARコートが不完全であることによると思います。 他社品のレデューサはどうなのでしょうか?

 

今回経験した多くの問題の殆どは、解決できそうです。ただし、ゴーストについては、恐らく除去は難しいと思います。

 


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