BORG50EDレビューその2(2004.12.18)
□拡大撮影編
前回試した直焦点撮影では、対物レンズとカメラのみというとてもシンプルな構成でしたが、惑星や月面クレータのクローズアップを写すことができるような倍率は得られませんでした。これに対して拡大撮影法では、対物レンズと撮像素子の間にレンズを挿入することにより、大きな合成焦点距離が得られるものです。このためのレンズには短焦点の眼視用アイピースを使います。また、アイピースと撮像面までの距離を適度に保持しながら、アイピースとカメラの両方を鏡筒に固定する機構が必要で、このためにはトミーテックの拡大撮影用アダプタBORG SD-2Xと直焦点撮影でも使用したカメラマウントを組み合わせて使用しました。

ビクセン LV9mm(左)、MEADE SP26mm(右)
いずれも手持ち31.7mmアイピース
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拡大撮影用アダプタ BORG SD-2X[7395](左)
カメラマウント+回転装置[5005]+[7000]+[7351](右)
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SD-2Xを分解したところ
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31.7アイピースにはアダプタが必要
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鏡筒に取り付けたところ
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SD-2Xは2インチ対応の拡大撮影アダプタで、MEADE LX200用に購入したものですが、今回はMEADE
2"ダイアゴナルミラー付属の2"→31.7mmアダプタを介して手持ちアイピースを活用します。SD-2Xを50ED鏡筒に取り付けてみましたが、結構ごついですね。50EDでは、大きな倍率を得るために比較的短焦点のアイピースを使うので、実際にはより軽量な31.7mm対応のSD-1Xで十分かと思います。
@視野の確認(2004.12.18)
土曜日の午後は天気がとても良かったので、CANON EOS 20DをSD-2Xを介して50EDと接続、合焦と視野の確認をしておきました。20Dの標準ズームレンズと50EDの直焦点撮影時の視野は既に紹介していますが、今回は拡大撮影のためにより遠くにある対象を選び、もう一度撮影を行っています。対物レンズのみによる直焦点撮影では、基本的に撮像素子において倒立像を結びます。ただし、カメラ内部の光学系によりファインダーから見る像は成立像となります。一方、拡大撮影では、挿入されるアイピースによりもう一度像が倒立するので、ファインダーからの像は倒立像となります。


EOS20D + EFS17-85mmF4-5.6
標準ズームレンズのテレ端視野
(35mmフィルムでf=136mm相当)
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EOS20D + BORG50ED
直焦点視野:f=500mm
(35mmフィルム換算でf=800mm相当)
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EOS20D + BORG50ED
SP26mmによる拡大撮影:f=1350mm
(35mmフィルムでf=2100mm相当)
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EOS20D + BORG50ED
LV9mmによる拡大撮影:f=3300mm
(35mmフィルム換算でf=5300mm相当)
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拡大用のアイピースによる合成焦点距離 f '
の計算は若干複雑です。まず、アイピースの焦点距離をfe、撮像素子とアイピースまでの距離deをとすると、アイピースによる拡大率Meは次のように計算されます。
Me=de/fe-1
合成焦点距離 f ' は、対物レンズの焦点距離をf
とすると、
f ' = f ×Me
となります。
SD-2Xを使用した場合deは可変ですが、この距離は、さらに使用するアイピースやカメラによっても変わります。たとえばSD-2X
+ LV9mm + 20Dの組み合わせでは、およそ60-90mmくらい、SP26mmとの組み合わせでは70-100mmくらいの範囲で可変できます。今回は一番短縮して使っています。
拡大法には実はちょっとした注意点があります。それはアイピースに付着したゴミが像面に写りこみます。上の小さなサイズの画像ではわかりませんが、オリジナル画像では点々とゴミによるノイズがはっきりわかると思います。拡大法に使うアイピースは清浄な状態にキープしなければなりません。このようなゴミの写りこみは地上物などの明るい対象では良く目立ちますが、星空ではそれほどでもありません。問題になるとすれば、月面撮影などでしょうか。
A土星の撮影(2004.12.19)
ED50と拡大撮影用のカメラアダプターを使って土星撮影してみました。短焦点で口径も小さいので、なかなか厳しい対象です。まずはLX200にガイドスコープリングで架台して、眼視で確認します。同時にLX200でも確認していますが、今日はシーイングがかなり厳しく、カシニ空隙は見えますがボーっとして揺らめいています。ED50では、LV9mmと付属のバローを組み合わせてみましたが、もちろん輪は良く見えますがカシニ空隙は無理でした。
気を取り直して、一通り撮影はしました。直焦と拡大時の像の大きさやシャッタースピードの確認をすることにします。直焦点では点像に見えますが、実は豆粒のような輪がちゃんと写っています(クリックすると原寸が見れます)。でもこれでは厳しいですね。LV9mmでやっと勝負できるくらいです。

EOS20D + BORG50ED ISO800 1/60s
直焦点視野
(35mmフィルム換算でf=800mm相当)
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EOS20D + BORG50ED 1/30s
SP26mmによる拡大撮影
(35mmフィルム換算でf=2200mm相当)
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EOS20D + BORG50ED ISO800 1/15s
LV9mmによる拡大撮影
(35mmフィルム換算でf=5300mm相当)
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より短焦点のアイピースを使うと、もっと像を拡大できますが、ED50の分解能や20Dの画素数から考えて、あまり意味がないでしょう。下の写真はED50+LV9mm+20Dによるオリジナル画像をRegistaxにより11枚重ねて、トリミングしたものです。オリジナルの倍率ですが、元像がよくないため、スタックの効果はほとんどありません。かなり悲しい結果ですが、もっとシーイングのよい日に再チャレンジしようと思います。

LV9mmによる拡大撮影画像11枚をResistaxによりスタック・トリミング
B月面の拡大撮影(2004.12.23)
50EDを用いた直焦点による月面撮影では、対物レンズ以外の余分な光学系を通さないためイメージは良好で、EOS20D等の十分な解像度をもったカメラと組み合わせた場合、月の全景を捉えるには十分でした。ただし、クレータなど月の特徴的な構造を捉えるには、明らかにパワー不足でした。そこで、短焦点アイピースを用いた拡大投影法による月面撮影を行ってみました。
前述したMeade SP26mmとVixenLV9mmによる撮影例を以下に示します。直焦点では中心付近に慎ましく収まっていた月は、SP26mmによる拡大投影法で全景がカメラ視野の全体を占めるようになって、少しだけ迫力も出てきます。一方、LV9mmでは、地形の一部をクローズアップするのに丁度良いパワーを持ちます。流石にEDレンズだけあって周辺部の色づきも気にならないレベルです。ただし、このくらい倍率をアップすると、イメージがやや甘くなってきます。
ところで「冬の月は撮るだけ無駄」とぼやかれているのをとあるweb
siteで見かけました。なるほど、確かに今日も月面がゆらゆらしていて、十分なコンディションとは言いがたい状況でした。コンディションがよければ、LV9mmでももう少しシャープなイメージがえられそうですが、50mmの口径では、総合的に考えると今回試した高倍率側の9mmを上限と考えた方がよさそうです。
EOS20D + BORG50ED 1/60s
SP26mmによる拡大撮影
(35mmフィルム換算でf=2200mm相当)
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EOS20D + BORG50ED ISO800 0.3s
LV9mmによる拡大撮影
(35mmフィルム換算でf=5300mm相当)
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