観望会(2005.5.3)

今日は、ゴールデンウィークのなか日です。以前一緒に仕事をしていた会社の方からバーベキューに誘って頂いたのですが、夜天気がよければ望遠鏡による観望会を開こうということになりました。

参加者は、呼んでいただいたご夫婦とGW中帰省していたご兄弟、そして、近所の方々など、私をいれて9名でした。

新しい観測機材をそろえ始めて半年くらいになりますが、当初思い描いていたほど観察実績は上がりませんでしたので、なかなか人に指導や説明をできるほどの知識や技術の蓄積も少ないのが現状です。それでも最初のころよりは少しだけ経験値も上がってきましたので、ロケーションや天候でどういう天体が見えそうかなんとなくわかるようになりました。

この時期、木星と土星の二つの惑星が良く見えていて、これらは、多少厳しいコンディションでも大丈夫ですが、この日の天候は、日中ずっと薄曇りだったのと、ロケーションが千葉県の内房だったため東京湾の光害が厳しく、なかなか淡い天体を見るのは難しいかなと思っていました。夜になると薄曇りが引いて少しづつ空が澄んで来たとはいえ、見える星は3等星くらいまででしたので、少し明るめの以下を対象として観望会を行いました。

惑星 木星・土星

 

深宇宙天体 球状星団 M13(ヘラクレス座)

        銀河 M51(りょうけん座)、M81(おおぐま座)

 

惑星や球状星団は、空が明るくても比較的良く見えますが、銀河は見える人・見えない人がいるかもしれません。

 

観望会をはじめて、みなさん最初に驚いていたのは、望遠鏡の形と大きさが予想とずいぶん違ったことのようです。

恐らく望遠鏡というと屈折式でドイツ式赤道義に乗ったものを想像されていたと思いますが、赤道義ウェッジにのった10”主鏡とフォークマウントは少しばかり大きめに見えたのかもしれません。それでもアマチュアが持つ機材として、10”シュミットカセグレンはごく一般的なものです。

 

 

@木星(Jupiter)

 

木星=Jupiterは、古代ローマの神様の名前を冠するにふさわしく星夜のなかで−2等級の強い輝きを放っているため、誰でも直ぐに見つけられます。いまは、南の空で乙女座(Virgo)のγ星ポルリマ(γ-Vir Porrima)の下あたりにいます。

 乙女座(私の星座)はスピカ以外は殆どが3等星なので少しばかり分かりにくいですが、誰での直ぐ見つけられる北斗七星の柄の湾曲から、うしかい座(Bootes)のアークトゥルス、乙女座のスピカをつなぐ春の大曲線をたどれば、ここらへんかなという見当は直ぐにつきます。ついでに言うと、アークトゥルス、スピカとともに、正三角形の頂点付近似位置する2等星(デネボラ)を西側の空に見つけると、これが獅子座のお尻の部分にあたり、またこれらを結ぶと春の大三角形となります。木星と春の大曲線・三角形を知っていれば、春の夜空に随分親しみをもてますよね。

 

Fig.1 春の大曲線と三角形、木星(2005/5/3 21:30ころ)

 

木星の観察では、本体を見る前に最初にファインダとして架台してあったBORG50EDの倍率を少しだけ上げて(36倍)、ガリレオ衛星を確認してもらいました。早めに見た人は4つ、あとから合流した人は3つの衛星を確認したと思います。また木星本体は、同じ視野に写る他の恒星のような点像とは異なり、ディスク状であることも気づかれたと思います。

 

木星には、地上からの観測やパイオニア、ボイジャー、そして最近ではガイレオなどの惑星探査機からの詳細な観察により、63個の衛星の存在が確認されていますが、そのうち小口径の望遠鏡では4個の明るい衛星がよく確認できます。これらは発見者にちなんでガリレオ(Galileo)衛星と呼ばれていますが、内側の軌道を回るものから、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストと呼ばれ(Jupiterの恋人たちの名前だそうだ)、4.6−5.6等級くらいの明るさを持ち、大きさはイオとエウロパは月と同じくらい、カニメデとカリストは月と火星の間くらい、あるいは水星と同じくらいの大きさを持ちます。

 

Fig.2 木星とガリレオ衛星、別の日に撮影したもの(2005.5.16)

    BORG100ED F4 直焦点

0:14 0:44 1:14 1:44

 

木星の観察は10”F10主鏡とLV9mmアイピースを用いて、約280倍に拡大して観察してもらいました。シーイングは私が過去経験したもっとも良い時期に比べると決して良くはありませんでしたが、ここ数ヶ月の不安定な大気の状況から比べると、かなりましなほうでした。このときは、木星のトレードマークである大赤班は裏手に回っていて残念ながら見えませんでしたが、南赤道縞(SEB)、北赤道縞(NEB)と呼ばれる太い濃い縞模様は全員が確認できましたし、私にはかすかに南温帯縞(STB)も分離して見えるような気がしました。

 

Fig.3 観望会で撮影した木星

 

Fig.4 木星の縞(暗部)および帯(明部)の名称

 

 

A土星

 

土星はふたご座のポルックスとカストールと一緒に西の空に移動しつつあります。そろそろ高度が低くなってきたので観測好機も終わりに近てますが、観望会の日にも明るく輝いていました。土星の最大光度は−0.3等級でこれは、シリウス、カノープスに次ぐ明るさです。

 

土星の最大の衛星タイタンにはNASAのカッシーニ・ホイヘンスミッションにより、探査機ホイヘンスが軟着陸に成功したこのが記憶に新しいと思います。そこで、BORG50EDの36倍の視野において、まずこの衛星を確認してもらいました。このような低倍率では、土星は豆粒にしか見えませんが、それでも輪の存在を十分に確認できます。

 

Fig.5 ふたご座と土星(2005/5/3 21:30ころ)

 

タイタンを見ながら探査機との交信にどのくらいの時間がかかるのだろうという話になりました。Table.1に木星と土星の公転半径などをまとめておきました。電波は光の一種ですから、30万km/sの速度で宇宙を伝播します。土星と地球の距離はおおよそ10AU(地球と太陽の平均距離を1としたときの距離=天文単位)、14億kmありますから、これを30万kmで割ると4700秒、つまり片道1時間20分かかることになります。一方木星については、現在地球に近い位置関係にあり、その距離6億kmくらいですが、それでも30分以上かかります。

 

Table.1 木星と土星の地球との比較

地球 木星 土星
平均公転半径 1.5億km (1AU) 7,8億km (5.2AU) 14.3億km (9.5AU)
公転周期 365.3日 (1年) 4,332.6日 (11.9 年) 10,759.2日 (29.5 年)
自転周期 24時間 9時間53分 10時間15分
体積 (1,330倍) ()
赤道半径 6,378km 71,492km 60,268km
極半径 66,550km
質量 5.974x10^24kg  1.901x10^27kg (318倍) 5.684x10^26kg (倍)
密度 5,517kg/m^3 1,330kg/m^3 (0.241倍) 690kg/m^3 (0.125倍)
衛星 1 63 46
最大等級 - -2.6  -0.3
会合周期 - 398.9日 378.1日
平均直視径 - 46.86秒角  

 

Fig.6 この日の惑星の位置関係(2005/5/3 21:30ころ)

(惑星軌道図はToxsoft Stella Theaterによる)

 

土星の輪を持ったユニークな姿は、何度見ても見飽きない観察対象の一つです。LX200を通して見た土星が想像以上に大きく見えていたので、皆さん驚いていたようです。この日はカッシーニ空隙が明瞭に確認でき、土星の縞模様の一つである北赤道縞(NEB)もよく見えました。観望会の記念として、LX200とDSIの直焦点により撮影した土星のイメージは、少々倍率が足らずにカッシーニ空隙がつぶれてしまいましたが、それでも土星の特徴を良く捉えています。

 

 

Fig.7 観望会で撮影した土星

 

 

 

B深宇宙天体(M13・M51・M81)

 

望遠鏡で銀河を見ることは、観察者にとってそれなりに大きな意味を持ちます。

直接眼視ではとても淡い光芒ではありますが、それでもほかの人が見ることが出来ない光景を自分の眼で直接みているということ、そしてそれがカメラによる長時間露光によって、美しい自然の造形美をフィルムやCCDに焼き付けることを知っているからです。

 

私が中学生のころ、10cmのニュートン望遠鏡で見たM81、M82のイメージは、いまも記憶に残っています。

北斗七星のDubheを基準星にして、目盛環を見ながら赤道義のハンドルを操作して望遠鏡を覗きこむと、

ふわっと二つの光芒が視野に飛び込んできました。それは、M31に比べるとサイズが小さく幾分暗いのですが、ちゃんと銀河の形が分かるくらいにはっきりと見えたので、すごくうれしかったのを思い出します。私が子供のころは、まだ空がとても暗かったのですね。

 

観望会で観察する銀河としてM81とM51を選びました。これらは比較的明るい部類に入るからです。

しかし、やはり空が明るすぎました。銀河中心部の光芒については殆どの参加者が確認できたものの、全体的な形を捉えることは出来ません。

いくら口径が大きな望遠鏡を用いても、空が明るくては何にもならないということをつくづく思い知らされました。

M81については視野の中に全員がその存在を確認しましたが、M51は見えないという人もいました。

 

 

Fig.8 M81(ボーデの銀河)とM51(子持ち銀河)

 

 

この日に唯一良く見えたのが、ヘラクレス座の球状星団M13です。M13は過去何回も望遠鏡に導入したことがあり、満月の夜のような厳しい条件でも良く見えることを知っていました。実際にこの日のコンディションでも、視野の中央に雲のような光芒が広がっているのと、周辺部では微星がちりばめられたような状況が確認できたと思います。

 

Fig.9 観望会で撮影したM13(ヘラクレス座)

 

Fig.10 観望会で撮影したM13(ヘラクレス座)

 

 

 

 

参考文献

 

ニュートン別冊 改定版 太陽系全カタログ(2002年度版)

図解われらの太陽系6 木星の全て 朝倉書店

図解われらの太陽系7 土星の全て 朝倉書店

 

 


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