□双眼鏡とドブソニアンによる星空観望(2006.1.28)

 

ローカルの天文同好会の観望会に参加させていただきました。怪我・仕事・天候不順などなかなか参加できなかったので実に4ヶ月ぶりです。場所は茨城県十王。今までにないコンディションに恵まれ、素晴らしい星空散策を体験させていただきました。

観望会当日は土星とM44がとても接近していましたので、双眼鏡の視野ではとても美しくみることが出来ました。覗かせて頂いた双眼鏡の25倍の視野にはM44がすっぽり入り、かつ土星の輪も良く確認できて絶妙のバランスでした。このような倍率では双眼鏡といえども安定なマウントも重要ですが、メンバの方が自作された立派な双眼鏡用経緯台に固定されていましたので、大変安定した視野で楽しむことが出来ました。この経緯台はDIYショップで入手可能な部材のみで作製したそうですが、大変良く出来ていて、また天頂付近の星空もとても楽に観望できるように工夫が凝らされていましたのでとても気に入ってしまいました。

冬の空には双眼鏡での観望に適した散開星団が数多くあります。ペルセウス座の2重星団(NGC869−84)やぎょしゃ座やいっかくじゅう座の幾つかの散開星団(M36/37/38/46/47)を視野に入れましたがなかなか見事でした。また、双眼鏡からのぞくM42は立体感さえ感じます。メンバの多くの方が双眼鏡を所有して観望を楽しんでいる理由が良く分かりました。

メンバの方は皆さん星を見ることが大好きな方ばかりで、夫々いろいろな双眼鏡や望遠鏡で観望を楽しんでます。今回はとても大きなドブソニアンを持参された方いらっしゃったのですが、その方に16インチの巨大な鏡を用いてで眼視では観察困難と思っていた対象を次々と見せていただき、なかなか出来ない経験をさせて頂きました。

覗かせて頂いた望遠鏡はOMEGA 38cmF5 ドラス型ドブソニアン、ファインダとして、低倍率のファインダに加え、より暗い深宇宙天体を捉えるためにFS-60Cが同架されていました。アイピースは主にNagler31mm、12mm、必要に応じてOIIIやHβフィルタを併用します。FS−60CやNaglerアイピースはとても重たいので、バランスをとるために、ミラーハウジングのところにマジックテープで脱着可能な錘が取り付けられていました。合焦のためのクレイフォード接眼部は大変スムースですし、トラスの経度緯度方向のそれぞれの動きもとても思った以上に軽くスムースでした。F5とはいえ、D38cmでは焦点距離が1900mmにもなります。このような長焦点の望遠鏡で、しかもこのような簡単な構造のマウントで、本当に星を追うことができるのかしら?と最初は思っていたのですが、Naglerの32mmの比較的広い視野では、問題なく星を追うことができますし、また、視野の移動も全く問題ありませんでした。

この望遠鏡をお持ちのメンバの方は、大変経験豊かなかたで、驚くべきことに星図が殆ど頭に入っているようでした。観望会では無数の天体を見せていただいたのですが、以下では、そのうち私の記憶に残っているものの一部について、観望メモをご紹介します。

・オリオン座周辺

M42のトラペジウム周辺の光芒は小口径でどのような空でも良く確認できますが、16インチでは高倍率にしたときのトラペジウム周辺のガスのディテールが驚くほど良く確認できました。同じ部分を6インチと見比べましたが解像度が明らかに違います。また、Hβフィルタを通してみた視野では、写真でしか見えないと思っていた南に大きく広がるガス領域が非常に良く見えたことにも驚きました。

ζ(ゼータ)星付近にある有名な馬頭星雲(IC434)とフレームネビュラ(NGC2024)は、眼視で確認できるとは思っていませんでした。

NGC2024は馬頭星雲より数倍明るいのですが、最初はぼんやりした光芒を固まりとしてしか認識できず、そらし目にしたり、視野を振ってみることで、枝の存在を確認できるようになりました。また、一度その状態がわかると不思議なもので、その後はわりとはっきり見えてくるものです。一方、馬頭星雲については、昨年暮に同じ領域を6インチニュートンで撮影していまいたので、NGC2024との位置関係はそれなりに把握していました。ところが最初はあるべき位置に全く何も見えません。なんどもなんども視野に入れてもらい、そらし目法や視野を振る方法をためしたり、いろいろやりました。

ちょっとあきらめかけましたが、暫く他の淡い銀河を観た後、再びチャレンジしました。これは凝視しても見えるものでないことは分かっていましたし、リラックスして取り組みました。私の場合、視線をゆっくり中心から左上に移動させていくと、ふっとガス雲が見えて、見えたと思った瞬間に暗い部分(これが馬頭)の存在を確認したという感じでした。なぜか、視線の移動をとめると途端になにも見えなくなってしまいます。この存在を確認するためには、相当よいコンディションと見方のコツみたいなものを掴む必要がある大変難しい対象であると感じました。

・M51(子持ち)/M101(回転花火)

おおぐま座のηを挟んで存在する2つの有名な銀河ですが、高度が低いうちは何れもコアの周辺の光芒が確認できるのみでしたが、高度が高くなってきた1時過ぎくらいに再度確認したところ、最初M51の腕の陰影と二つの銀河が繋がりあう様子が見えるようになってきました。10インチではこのように見えたことは無かったので、大変感動しました。M51のように二つの銀河が相互作用を及ぼすほど接近すると光度が上がる性質があるのだそうです。そのため、M51は比較的見やすいという話を興味深く伺いました。M101は1週間ほどまえ、60mmF5.4屈折の比較的広い視野で写真を撮影していました。眼視ではそらし目でぎりぎりいるかいないかの確認をできるほどでしたし、5分ほどの露光でもまだ淡いので、眼視で構造までとらえるのは無理と思っていました。ところが、この天体も腕の存在を示唆する淡い濃淡を確認することが出来ました。

・バラ星雲

いっかくじゅう座にある写真ではおなじみの散光星雲ですが、普通に見たところでは中心にあるNGC2244という散開星団しか確認できません。実際私もこれまで、小口径の屈折やシュミカセで何度か視野にいれたことはありますが、その周辺に広がっているはずのガス星雲(NGC2237-9)を確認できたことは一度もありませんでした。しかし今回はちょっと様子が違います。散開星団の周辺部で気のせいかも知れないというレベルですが薄くかすんでみえます。ところが、視野を大きく外側に振ったり戻したりしてやると、背景が暗くなったり少し明るくなったりするので、ガスの存在を確認できました。 また、このような星雲はOIIIフィルタを使ったほうが良く見えるということも初めてしりました。というのは、水素が主体と思っていたのでHβを使うのがよいのかなと漠然と思っていたのですが、微量に含まれている酸素が励起され可視光として放出される光の強さの方が、Hβ線より強いということです。

・乙女座付近

マルカニアンの鎖は何個もの銀河が視野の何倍もの領域に鎖のようにつらなっていました。このように粒のそろった銀河が狭い領域に見えるのは、大変見ごたえのあるものです。宇宙の構造の一端を垣間見たような気がしました。また、シャム双生児というニックネームのついた衝突銀河も見せていただきました。最初、ボーっとした1つの塊にしかみえなかったのですが、暫くして高度があがってきたあとに再度見せていただいたときには、光芒がくの字状になってるようすがなんとなく分かりはじめ、2つの銀河が衝突している様子を想像することができました。

・からす座

NGC4038/4039という別の衝突銀河を視野にいれていただきました。変形した光の塊として捉えることができましたが、ディテールはあまりよくわかりません。家に帰ってからWEBで写真を探しましたが、触角銀河というニックネームがついているようで、まさに銀河が衝突した現場で、かなり複雑な構造をしています。

・クエーサ

番号をわすれてしまったのですが、同じような光度の恒星と並び合っている様子から、3C273だったと思います。20億光年遥か彼方に位置する天体の光を見ているということ、また数日光年の大きさを持つ超巨大ブラックホールであることに起因してやはり数日といった時間オーダーで変光が生じるそうで、なかなか興味深い天体です。それにしても、良くこのような恒星と変わらない暗い天体星をドブソニアンの視野に導入できるもので、私にはそっちの方が正直いって驚きでした。

・ヒクソンコンパクト銀河団

入門用の星図ソフトにはそのカタログナンバさえ載っていないマニアックな銀河団を眼視観望させていただくことができました。Hickson56は非常にサイズが小さく、決して明るくはないコアの回りにまとわりつく非常に微妙な光のにじみから銀河であることがかろうじて分かる程度で、なかなかの難物です。幾つか見えるはずといわれたうちのせいぜい2つくらいしか確認できませんでした。

また機会があれば、何度でも挑戦させていただきたいと思います。そのほか、おなじみの銀河や惑星状星雲を幾つか見せていただき、大変良い経験になりました。

 

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