Hand-written Letter

手書きの書簡 (訳:けえにひ)

 

 リチャード・モートンよ、お前はわしを知らない、そしてわしの事を知らない限りお前の行く手には予期せぬ障害や危険が待ち構えることになるであろう、わしの名はユダ・ド・セルト。お前の方がわしのことを知らないとしても、わしの方ではお前の事をなにからなにまで知り尽くしている。お前の眠れぬ夜について知っている、一人寒さに身を縮こまらせて過ごす夕方を知っている。そしてお前の感じる恐怖について、見知らぬ何かに、名状し難いものに面と向かい合ったような気持ちで感じるひどい孤独について知っている。
 わしは、長い長い生涯のなかで夜の生き物に遭遇した事がある。わしは、お前がそれらに打ち勝つのを手助け出来るばかりか、それらを支配し、それらをお前の奴隷として、お前の下僕にできるよう手助けする事が出来る。お前はきっと、それらを使役することに強烈な快楽を覚えるであろう。
 わしの名はユダ・ド・セルト。お前はわしの事が次第に分かってきたはずだ。わしはこの力(既にお前の血の滾るような興奮を感じ取っている)と引き換えに、機が熟した時にちょっとした頼み事に忘れずに応えて欲しいという、ささやかな好意を求める。わしの要求は、お前の血で署名された証文をわしに送ることのみ。
 わしの名はユダ・ド・セルト。いまや、わしが何者かをお前は知っている。

 

■2001.9.24■