Richard Morton's Will and Testament

リチャード・モートンの遺言 (訳:けえにひ)

 

1905.4.12 シャドウ・アイランドにて

 ここにわたし、署名人リチャード・モートンは健康な精神と肉体を供えた者として、最期の意志と遺言を明らかにするものである。この遺言以外の何物もこれに取って代わることは出来ない。

 アーチボルド、我が息子よ! わたしが遥か昔に引きうけた使命はまだ全く達成されていない。わたしはこの使命の完了のために、おまえとその子孫が休みなく努力してくれるものと確信している。おまえにこの使命およびわたしの持てる人的財産などこの地所をすべて遺言で残す事にする。ド・セルトがおまえが何をいかにすべきか導いてくれる事と思う。アーチよ、わたしは疑念がしばしばおまえの若々しい目を曇らせるのを見てきた。ときには、おまえの瞳が内心の不賛成をあらわにしておまえを裏切っていたよ。実際、わたしは人命を犠牲にしてきた! しかし犠牲なくして得る物はない!また、聖書のすべての戒律をことごとく冒涜してきた! だがいつだって道徳こそが進歩の最初の犠牲者ではなかったか?
 少数の命の犠牲は、わたしの成し遂げた大きな発見と比すれば微々たるものだ。アーチよ、おまえは臆病者ではないのだから、わたしが到達できなかった高みへ、ド・セルトの助けを借りて至るものと確信している。おまえは未知なる領域へ踏み込む唯一人の人間なのだ!」。
 新たなる人類のために、財団を作って欲しい。我々によって、モートン一族の名はのあまたの星と共に、史学会における偉大なるパンテオンとして輝くだろう。わたしを中傷する輩はその時になれば、物笑いの種となっていることだろう。
 おまえとわたしの信用するド・セルトによって、我々の使命は果される事だろう。それが分かっているからこそわたしは、やすらかに眠りにつけるというわけなのだ。
 図書室はわたしの人生だ! 六つの正三角形によって宇宙をあらわす完璧な形――六角形に仕上げたのだ。人間の、10世紀分にも及ぶまったく価値のない知識のための倉庫。無学で、無駄で、愚かな反応としての暗黒の10世紀分の無意味な論文は、それぞれの時代の人間の精神がどんなに粗悪で、どんなに卑小だったかをわたしに思い起こさせる。この間、闇の世界に関して言及したものは一つも無いのだ。
 今やわたしには、人類がその宿命を無視したと分かっている。しかし4つの作品には守られる価値がある:4つの作品には正しい鍵が含まれている。わたしはそれぞれの上に互いに釣り合う、闇のおよび光の世界をあらわすシンボルを発見した。どちらももう一方なくしては存在し得ない。対称になるよう置かれた2つの――そのひとつは明るく、もうひとつは暗い――三角形である。このシンボルが図書館内に垂直に存在するように、わたしは4冊の本を配置した。このシンボルは図書館を以下のように横切る。

 最初は一番高い場所

 次は対称となる場所

光 ― 闇 ― 闇 ― 光

(←最終ページの図形)

■2001.8.22■