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1993.7.17 マツハヤ・リアル・リゾート

 曲:

ナイアガラ・トライアングル/A面で恋をして

売野: こんにちは、売野雅勇です。えーっと、今月は大滝詠一さんとともにお送りしております。

大滝: あっ、どうも、こんにちは。

売野: よろしくお願いします。

大滝: よろしく。

売野: 野球、お好きですか?

大滝: 野球は好きですねー。

売野: 解説もおやりになってますね。

大滝: これね、ラジオで解説したり、

売野: えぇ。

大滝: ついにね、えぇ。やっちゃいましたけども(笑)。

売野: えぇ。

大滝: えぇ。

売野: 右投、これ、写真見ますと、

大滝: 写真が。

売野: 左打ですね。

大滝: 野球をやっているね、

売野: えぇ。

大滝: 写真ですけどね、

売野: えぇ。

大滝: あのー、右利きは、右利きなんですよね。ご飯を食べるのも、その、鉛筆を持つのも右利きなんですけども。

売野: えぇ。

大滝: で、右投右打だったんですよ。

売野: えぇ。

大滝: で、小学校のころはね。野球をやってたんですけども。

売野: はい。

大滝: えーっと、みんなたいてい、空地みたいなとこで野球やるでしょ。

売野: えぇ。

大滝: と、まぁ、狭いか、長方形じゃないですか。

売野: はい。

大滝: 長方形なんですよね。

売野: えぇ。

大滝: で、ほとんどみんな右投右打でしょ。

売野: うん。

大滝: めったに、その、左投左打の人がいない。

売野: えぇ。

大滝: でね、あのー、右打で打つとね、遠くまでホームランを打つとね、

売野: えぇ。

大滝: (笑)、川があったんですよ。

売野: (笑)。

大滝: で、しょっちゅうその川にボールが入って、

売野: えぇ。

大滝: そのころ、ボールなんて1個しかないでしょ。

売野: えぇ。

大滝: で、取りに行くのが大変だということで、そのー、全員、そのー、逆の、「右打の人間は左で打とう」と、

売野: 左で。はぁーん。

大滝: そうすると、あんまり、

売野: とばないから。

大滝: とばないから、そのー、ボールを探しに行くこともないという、まぁ、ひとつの知恵が出たわけですよ。

売野: はぁーっ。

大滝: そうすると、で、あのころは三角ベースとか、そういう種類のあれで、

売野: えぇ。

大滝: あのー、「たくさん打った人の方が何度も打てる」っていうようなルールってのがあるじゃないですか。

売野: はいはい。

大滝: 「9人対9人」の野球じゃない野球でやってましたからね。

売野: えぇ。

大滝: そうすると、そのー、「長打を打つと、もう一度打席が回ってくる」と。それで、左打の練習をし始めたわけです(笑)。

売野: へぇー。

大滝: そしたら、

売野: えぇ。

大滝: 右打よりも得意になったんですよ。

売野: はぁーん。

大滝: で、当時はね、あのー、その、ちょうど10歳のときなんです。右投左打にしたのが。

売野: えぇ。

大滝: で、ちょうど野球を見始めたのも、ちょどそのときなんですよ。長嶋の入団した年なんですよ、プロ野球に。

売野: 奇しくも。

大滝: えぇ。それで、当時、あのー、プロ野球で右投左打って、ひとりしかいなかったの。

売野: 誰だったんですか?

大滝: 大毎っていう、あのー、スタメンでね。

売野: えぇ。

大滝: 大毎のスタメンで八田という選手がいたんですけどね。

売野: はぁーっ。

大滝: もうだれも知らないと思うけど。あの人は右投左打だったの。

売野: あー、そうですか。

大滝: 当然そのー、なんていうの、右投両打の柴田だとか、

売野: えぇ。

大滝: そういう種類の人が出てくるのは、ずっとあとだったんですよ。

売野: はーん。

大滝: もう、だから、1958年の話だから。

売野: えぇ。

大滝: 昭和33年。

売野: はい。

大滝: だからね、それで、右投左打にしたんですよ。で、その年にセントルイス・カージナルスっていう、向こうの、そのー、野球、メジャーが来て、その、ファーストを守ってたスタン・ミュージアルっていう選手がいるんですけど、

売野: えぇ。

大滝: その人がね、やっぱり左でね、こう、華麗なフォームだったの。

売野: ふん、ふん、ふん。

大滝: で、それを真似した。ちょうど左になった年。

売野: ふーん。

大滝: それで、たまたま、その10歳で、転校するんですけどね、

売野: ほー、ほー。

大滝: 生まれ育ったところを。

売野: えぇ。

大滝: それで、あのー、転校したとたんに、まぁ、そういうクラス対抗の野球みたいなのがあって、

売野: はい。

大滝: で、たまたま代打みたいなので出て、初打席ホームランを打って、野球部の先生に勧誘されると。

売野: ほーっ。

大滝: それで、ファーストを守って、

売野: えぇ。

大滝: そのミュージアル調に5番でしたけど。右投左打っていうんで、その、珍重されたんですよ、そういう選手がいないんで。

売野: ほー、ほー。えぇ。

大滝: で、まぁ、5、6と野球部で過ごしましたけど。

売野: へーっ。

大滝: そういう、そのー、自分からやったんじゃないんですよ。

売野: 必要に迫られたんですね?

大滝: ていうか、まっ、その、向こう側からスカウトに、

売野: あっ、野球部ですね。

大滝: 野球部の場合はね。

売野: えぇ。

大滝: ただし、その前に僕はもう、野球好きになったんで、

売野: えぇ。

大滝: ラジオ聴きながらスコア・ブックとるぐらいのね、マニアだったんですよ。

売野: すごいっ。ほーっ。

大滝: だから、そのー、そのころから今までですから、野球の歴史も、そのころちょうど、ポップスを聴きだしたのも、ちょうど10歳。

売野: いっしょですか?

大滝: えぇ。コニー・フランシスの「カラーに口紅」。やっぱ昭和33年なんですよ。

売野: えぇ。

大滝: それでポップスに目覚めたの。

売野: はーっ。

大滝: だから、野球とポップスとね、

売野: えぇ。

大滝: まぁ、相撲も得意ですけどね(笑)、

売野: (笑)。

大滝: 若ノ花、栃若時代で、全勝優勝、あのー、初めて全勝の決戦になったのも昭和33年か32年のどっちかでした。

売野: ふーん。

大滝: で、それを、だから今、35年のキャリア、野球と相撲とポップスは。

売野: 長いですね。

大滝: 実をいうと(笑)。だから、それと、でも、ただね、今考えてみると、まっ、例えば掛布だとかね、

売野: えぇ。

大滝: 右投左打の、そのー、いい選手が目白押しですよね。篠塚なんかもそうだし、今の松井も右投左打だけど。

売野: うん。

大滝: なんか、あのー、自分を表しているような気がしますね、右投左打って。

売野: はーん。

大滝: うん。なんか、右投右打のような正々堂々ともしてないしね。

売野: うん。

大滝: 左投左打ほどの特異なキャラクターでもないしね。

売野: うん。

大滝: どうも、どっか卑怯なところがありますね、右投左打ってのはね(笑)。

売野: (笑)。

大滝: いまひとつ、こう、ひとつに絞りきれないというか、まぁ、そういう感じが今にして思いますけどね。

売野: ふーん。分析するとですか?

大滝: うん。ただ、両投両打に、右でも打てたんでね、あのー、左ピッチャーが出てくると、右打席入ったんですよ。

売野: ほー、ほー。

大滝: 当時から。だから、いわゆるスイッチ・ヒッターのはじまりですけどね。やっぱり左対左はね、打ちにくかったんで、

売野: えぇ。

大滝: 左ピッチャー出てくると、右に入ってたんですよ。だからまだよかったんだけど、長い間やってると、もう、左の方がよくなって、右、へたになっちゃった。

売野: あー、そうですか?

大滝: うーん。

売野: 今は左ですか?

大滝: で、今はもう、完全に左でしか打ちませんけど、

売野: えぇ。

大滝: 右で打っても、当たることは当たりますよ、まだ。いいバッティングはできないけどね。

売野: うん。

大滝: それでね、両投両打っていうのを目指してね、

売野: うん、なるほど。

大滝: 実は。で、左で、しかも左のアンダースローって世の中にいなかったんですよ。

売野: はい。

大滝: 今は「野球狂の詩」で、水島晋司が書いて、なんか、いたよね。あのー、水島ゆうきじゃなくて、なんか、左でアンダースローって。

売野: うん。

大滝: でね、左のオーバースローはいるんだけど、左のアンダースローっていなかったのよ。

売野: うーん。

大滝: だから、両投両打を目指してね。

売野: ふん。

大滝: それで、右をアンダースローに、アンダースローって、だいたいいなかったのよ。今、下手投げの人いないよね。

売野: いないですね。

大滝: いなきゃぁ、いいんだよね、僕の場合には。

売野: うん、うん。

大滝: いないものに挑戦する。

売野: うん。

大滝: で、右のアンダースローで、しかも左もアンダースローで。で、右でも打って、左でも打ってっていうのをね、目指したんだけど、

売野: うん。

大滝: 左のアンダースローがどうもさまにならなかった。最後まで。

売野: うーん。

大滝: それで断念したんです。

売野: それは形がですか?

大滝: うーん。なんていうのかな、あのー、右のように同じボールがいかないの。

売野: はぁーん。

大滝: 形だけじゃ、自分で納得できないわけ。

売野: うん。

大滝: やっぱ、右とおんなじように、あのー、ボールがいってこそ、やっぱり左投げっていえるわけだから。

売野: うん。

大滝: と思ってね、もう、必死に練習したんだけど、できなかった。

売野: うーん。

大滝: ここの挫折がね、

売野: (笑)。

大滝: いまだに悔しいね。人生においては。

売野: うーん。

大滝: もう終わるかと思うとね。さみしいね。

売野: (笑)。

大滝: これだけは。うーん。

 曲:

Connie Francis/Lipstick on Your Collar

 曲:

大滝詠一/こんな時、あの娘がいてくれたらナァ

売野: 今でも野球チームあるんですか?

大滝: いや、ないですよ、もう。昔はありましたね。15年ぐらい前は。「福生エキサイターズ」というね、

売野: えぇ。

大滝: すぐに喧嘩するんじゃないかっていわれるぐらいの、変な名前で、

売野: うん。

大滝: あのー、やってましたね。

売野: はーん。でも、あの、今から考えますと、その、えー、あっ、福生にすぐお住まいになったんですか?

大滝: えぇ。福生に住んだのは73年からですね。

売野: 73年からですか?

大滝: えぇ、えぇ。もう、だから、今年で20年なんですよね。

売野: はぁーっ。

大滝: ちょうどその場所に住んで。

売野: えぇ。

大滝: 生れた場所には10年しかいなかったんですから、

売野: (笑)。

大滝: 今の場所に20年住んでるっていうことはね、

売野: えぇ。

大滝: ずいぶん人生の中では長くいたなと思いますけど。

売野: うーん。

大滝: うーん、だから、売野さん来ていただいてから、もうはや10何年に、

売野: そうですね。

大滝: うん、わたってるんですけど。

売野: 昨日のことのようですが。

大滝: ほんとにねぇー。暑い夏でしたけど。「あるいは、夏の日の桃太郎」。これね、でもね、売れる前、売野さんがね、売野さんが、そのー、僕のところへ、だから、雑誌で編集していただいて。

売野: ふん、ふん。

大滝: で、あのころ、あのー、書いたんですけどね。僕はね、まだ、当然「ロング・バケーション」よりも2年も前の話ですよね、これは。

売野: そうですね。

大滝: そうなんですよ。実際、アルバムが発売されるよりも2年も前で。で、僕はだから、最初の3年間から5年間ははっぴいえんどで、

売野: ふん。

大滝: そのあとは5年ぐらいはナイアガラでっていうことで、格別、例えば、「ロング・バケーション」で聴かれるようなサウンドだけをずっとやってたわけではないんですね、全くね。そういうイメージじゃなかった。

売野: そうですね、えぇ。

大滝: にもかかわらず、えーっと、この「ナイアガラ・サマー」っていう、その、今に、僕はね、あとで読んですごくビックリした。

売野: は、はーん。

大滝: この原稿。

売野: はぁーん。

大滝: すでにだから、この原稿のなかで、

売野: えぇ。

大滝: 「ロング・バケーション」を予見してるんですよ。

売野: 予見してるかもしれませんね。

大滝: してますよね。

売野: えぇ。

大滝: 最後、そのー、いわゆる、あのー、ちょっと引用しますけど、よろしいでしょうか?「日本人全体としてレジャーを中心とした、〈夏〉を楽しめるようになったのは、つい最近」のことで。今、例えばね、

売野: ふん。

大滝: 夏を定番とする音楽とかいわれるけど、

売野: うん。

大滝: いわれだしたのは10年ぐらい前のことで。もっと、もうひとつ大きくいうと、

売野: ふんふん。

大滝: まぁ、20年ぐらい前の、そのー、ワイルド・ワンズの「想い出の渚」とか、加山雄三がはやったころとか、その前までいくと、30年前の石原裕次郎の「夏」とかいうのがあるけども、

売野: ふんふん。

大滝: でも、夏が定番で、夏の歌を出せばヒットするなんていうようなことはなかったんですよ、実は。

売野: ふんふん。

大滝: これはここ10年のことなんですよ。当たり前のように思ってるかもしれないけど。

売野: ふん。

大滝: で、これを「つい最近だった」と。で、そのー、「『想い出の渚』のそれを凌ぐ曲は果たして出るのか?」って書いてあるのね、これが。

売野: おぉっ!

大滝: これは自分で、

売野: 出したわけですね。

大滝: うーん。「想い出の渚」を越えたとは全然思わないけど。で、別に、こんときに例えば、「リゾート・ソング」をやろうとかいうような意志も、まるでないにもかかわらず、

売野: ほーっ。

大滝: 「果たしてこれを凌ぐ曲は出るのだろうか?」

売野: うん。

大滝: だから、それを、そのー、やり遂げる、例えば、ヒーローっていう意味合いで、

売野: うん。

大滝: あの、「果たして」、その、「桃太郎」っていうふうにいってるのね。

売野: ふんふん、ふんふん。

大滝: そのー、“夏の歌を歌うヒーロー”っていう意味で。

売野: えぇ、えぇ。

大滝: で、「《桃太郎》は出現するか?」

売野: おーっ。

大滝: 「するとしたらそれは何時か?」

売野: うん。

大滝: 「波の音でも聞きながら、吉備団子の夢でも見ることにしよう…」と。

売野: (笑)。

大滝: 一見ひいているようでいて、結局自分が、

売野: そうですね。

大滝: そのー、夏のサウンドを、そこでつくりあげてしまうことの2年も前に、

売野: そうですよね。

大滝: 売野さんの原稿で、

売野: これ貴重ですね。

大滝: 貴重なんだよー。

売野: えぇ。

大滝: 驚いたなー。これはね、もう、つくり終わってから、あとで気がついたの。

売野: あー。

大滝: まったくそういう、「わーっ、こんなところでこういうこと」をね。

売野: すごいですね。

大滝: まぁ、売野さんだったんで、そういうような考えが出たんだと思うし、「ナイアガラ・サマー」というタイトルは、売野さんが考えてくれたんですよ。僕は全然考えてない。

売野: はーん。

大滝: だから、こういうふうに書かれたことによって、なんか、この原稿と、そういうのがやっぱり、頭の中に残っていたのかなと思うんですけどね。

売野: うーん。

大滝: で、これの直後なんですよ。あのー、ソニー出版からね、

売野: えぇ。

大滝: 「絵本を出したいが」、

売野: ふん、ふん。

大滝: そのー、絵本、「こういう絵なんだけれども」、

売野: えぇ。

大滝: 「こういう絵に、なんか、その、タイトルとか」、なんかそのー、「文字を入れてくれないか」っていわれて、

売野: はい。

大滝: あの永井博さんの絵をね、ソニーの人が持ってきてくれたの。

売野: あっ、そうなんですか?

大滝: そうなの。

売野: あーっ。

大滝: それで、リッキー・ネルソンの絵とか、いろんな、あの、ジャケットのプールの絵とかあるでしょ。

売野: えぇ、えぇ。

大滝: あの絵を持ってきてくれて、

売野: えぇ。

大滝: 「どうしましょうか?」っていわれて、「フッ」と思いついて、「これは『ロング・バケーション』という絵本のタイトルにしよう」と僕が考えたの。

売野: あーっ!あー、そうですか。

大滝: そう!で、絵本は、あれは、もう、2年前に出てんの。

売野: へぇーっ!

大滝: で、絵本が出たんで、

売野: うん。

大滝: あの絵になんか音をつけて、で、あそこの絵本に、

売野: えぇ。

大滝: シングル盤6枚入れる予定だったの、最初。

売野: えぇ、はぁーっ。

大滝: あの絵本とシングル盤6枚をつけて、

売野: えぇ、えぇ。

大滝: ひとつのブックレットにして売り出そうかっていうのが、一番最初の考え方。

売野: あっ、そうですか?

大滝: そうでした。

売野: はぁーっ。

大滝: だからもう、なんていうのかな、偶然に偶然が重なって。だから、全然リゾート・サウンドをやろうとかいうことは、全くないわけ。

売野: はぁー。

大滝: たまたまその絵本を、永井博さんの絵を、

売野: えぇ。

大滝: 絵を、なんか持ってきてくれた、そのー、出版社の編集者の人がいてね。

売野: えぇ。

大滝: 何で、だから、俺に持ってきたのかな?全く見当がつかないんだよね。

売野: ふーん。

大滝: なんか、その人のなかでは、「思いついた」っていうんだけどさ。

売野: えぇ。すっごいですね。

大滝: すごいでしょ。

売野: その運命。

大滝: うーん。

売野: うん!

 曲:

大滝詠一/真夏の昼の夢

売野: でも、あのー、「音の前にジャケットがあった」というのは驚きでした。

大滝: あー。

売野: いや、音にあわせて、当然、あのジャケットと、

大滝: あー、あー。

売野: いうんだと思ってましたから。

大滝: うーん。

売野: 初めて聞きました。

大滝: だから、その、タイトルつけたのは、なんていうか、やっぱり、因縁というかね。これが、タイトルを、向こうであって、

売野: うーん。

大滝: その絵もあって、

売野: うん。

大滝: だったらば、その、完全に、そのー、向こうのイメージにこっちがあわせて、

売野: そうですね。

大滝: 曲つくったみたいに思うかもしれないけれども、

売野: うん。

大滝: 絵はただ、そのー、

売野: ただ頼まれただけですね。

大滝: 並んでただけなんですよ。

売野: えぇ、えぇ。

大滝: あの絵を、ずらーっと並べたときに、「ポーン」と、そのー、「ロング・バケーション」っていう、そのー、タイトルが浮かんだところに、また、この偶然のあれがあるんですよね。

売野: うーん、すごいっ。

大滝: で、なおかつ、

売野: うん。

大滝: そのー、松本隆とコンビを組んだのは、当時で7年ぶり。はっぴいえんどを解散して一度もやってなかったの。

売野: あっ、そうですか?

大滝: そう。かたくなに拒んでたのね。

売野: ほーっ。

大滝: きらいだから(笑)。とにかく、だから、はっぴいえんどはもう、終わったものだというようなことを、強くアピールしたかったんですよ。

売野: はぁーん。

大滝: とにかく、だから、まわりからはね、

売野: えぇ。

大滝: まぁ、数少ないファンの人は、「もっと松本とやってくれ」っていうよなことを、よくいわれたんですよね、当時。

売野: ふん。

大滝: だけど、もう、1曲も書いてない、はっぴいえんどから。

売野: あー、そうですか。

大滝: うん。

売野: ほーっ。

大滝: だから、松本と久しぶりに、そのー、まぁ、はっぴいえんど以来いっしょにやるんだっていうのが、大きく、僕らがわではあるわけで。

売野: うーん。

大滝: あえてだから、そのー、あそこの絵にあわせたとかいうことでは全然ないんですよ、作品としては。

売野: うーん。

大滝: 単独で作品はつくられているし。

売野: えぇ。

大滝: で、「夏だ、夏だ」というけど、「さらばシベリア鉄道」は夏じゃないからね。

売野: (笑)。

大滝: 全然。だから、結構ね、夏のテーマって3曲ぐらいしかないんだよ、実は。

売野: うん。

大滝: 「ロング・バケーション」ってね、みんな「夏だ」というけど。で、なんか、ほんとになんか、いろんな偶然が重なったんですよ、たまたま。

売野: ほーっ。しかし、まぁ、「ロング・バケーション」といいますと、タイトルもさえてますね。

大滝: あれはなんかヒットだよね。

売野: すごいですよね。

大滝: そのあと、こんなに休むとは思わなかったけどね(笑)。

売野: (笑)。

大滝: 自分でつくっておいて。

売野: それも予見した(笑)。

大滝: (笑)、それも予見したのかなぁ?

売野: いやー。

大滝: だからもう、10年。その次に「イーチ・タイム」ってアルバム出してから、もう、早9年、来年で10年になりますけどね。

売野: えぇ。

大滝: ソロ・アルバムが出てないという意味合いではね。

売野: うん。

大滝: ちょこちょこと、いろいろ曲は書いたりはしましたけど。

売野: えぇ。

大滝: アルバムを出さないと。しかも、ねぇ、自分でいうのもなんだけども、その、全く売れないからやめたわけでもなく、

売野: うん。

大滝: 1位になったんですからね。

売野: そうですよね。

大滝: 前の「イーチ・タイム」はね、初めて。「ロング・バケーション」1位になってないんですよ。

売野: あっ、そうですか?

大滝: 2位で終わってるんですね。

売野: ほーっ。

大滝: 年間も2位だったし、最高チャートも2位で。

売野: あー、そうですか?

大滝: そうです。

売野: もう、ダントツの1位だと思ってました。

大滝: 全然。

売野: あっ、そうですか。

大滝: あのー、だって、ほら、寺尾聡の「ルビーの指輪」が。

売野: はぁーん。

大滝: 松本さんが、どっちも松本さんで。もうけやがって、あのやろう。

売野: (笑)、へぇー。

大滝: だからね、「ロング・バケーション」は2位なんです。

売野: あー、そうですか。

大滝: だから、僕は、1位とか、2位とか全然こだわらないんです。なんでもいいんですよ。

売野: ほーっ。

大滝: ただ、その、「イーチ・タイム」はまぁ、他にも、たいして、他のアルバムがなかったんだろうから、たまたま1位になって。で、CDチャートが初めてできたときの、

売野: 1位ですか?

大滝: また、日本の方の1位なんです。マイケル・ジャクソンが最初の1位だったんですよね(笑)。日本アーチストとしては最初の1位だった、CDチャートの。

売野: へぇー。

大滝: で、それが出て9年ですからね。まぁ、例えば、だからね、

売野: えぇ。

大滝: だめになったから。1位になってから9年出さなかったってのは、ちょっといないんじゃないかな。

売野: すごいですね、うーん。

大滝: これが。

売野: 聞いたことないですね。

大滝: 聞いたことないでしょ。

売野: えぇ。

大滝: だから、まぁ、「イーチ・タイム」は別にしても、「ロング・バケーション」はそうだったけど、要するに偶然の重なり合いでしかないんですよ。

売野: ふーん。

大滝: 偶然が重なったから、そういう行動を起こしたっていうことで。

売野: ふん。

大滝: だから、全然だから、それ以降偶然が起きないっていうことなの。

売野: (笑)。

大滝: 単純な話。

売野: うん。

大滝: だから、なにか、その、偶然が起きるんであれば、動かざるを得ないっていうか。そのー、偶然の運命に従うっていう、その、他力本願とは違うと思うんですけどね。

売野: うん。

大滝: そういうあれなんですよ。

売野: はーっ。その、なんていいますか、うーん、

大滝: 行動パターンがね、

売野: はぁ、はぁ、はぁ。

大滝: 自分のその、行動パターンがなんか、そういう、

売野: えぇ。

大滝: うん。いろんな、そのー、なんか、あのー、人生における、

売野: えぇ。

大滝: いろんな偶然がね、

売野: えぇ。

大滝: よかろうが、悪かろうが、なんか、いろんな偶然が、こう、多発して、

売野: ふんふんふん、ふんふんふん。

大滝: それがなんか、ひとまとまりになるようなときに興奮するんですけどね。

売野: はぁ、はぁ、はぁ。やはり長嶋と若ノ花と、

大滝: 若ノ花と、えぇ。

売野: で、プレスリーもそういう感じしますね。

大滝: プレスリーも、するでしょ。

売野: えぇ。

大滝: 非常に、長嶋と若ノ花とプレスリーって、その、彼らではなくって、

売野: えぇ。

大滝: そのー、まわりの状況、

売野: そうですね。

大滝: 社会、その時代、

売野: えぇ。

大滝: そういうものがつくって。その前後にないじゃないですか。

売野: はい。

大滝: で、彼ら本人は、極端な話、どうってことないじゃないですか(笑)。

売野: うん。

大滝: 確かにすごい人たちだけど。なんか、その、彼らをつくった時代?

売野: えぇ。

大滝: ねっ。

売野: 押し上げるものですね。

大滝: うん。つくられている、その時代も含めての彼らの映像であって。

売野: はい。

大滝: よくだから、例えばだから、僕が長嶋ファンだっていうことをね、

売野: えぇ。

大滝: 誰かが取り上げて、そのー、それと音楽性とをクロスさせてね。で、例えば、その、揶揄するときでも、長嶋を揶揄すれば、僕を揶揄できるかっていうような、論旨に会うこともあるんですけど。

売野: えぇ。

大滝: 別に本人とか、長嶋そのものとかなんとかっていうのは、全く関係ないんですよ。僕がいってる長嶋とか、僕がいってる若ノ花とか、

売野: あー、なるほどですね。

大滝: 僕がいってるプレスリーっていうのは、彼ら本人の、

売野: 個的なことをいってるわけじゃないですね。

大滝: うん、そう、そう。

売野: ふんふんふん。

 曲:

Elvis Presley/I Got Stung

大滝: スポーツ紙にコラムを書いたんですね。

売野: ほぉ。

大滝: 今年、もう15回ぐらいで。

売野: はい。

大滝: 初めてですけどね。

売野: えぇ。

大滝: そのー、プロのそういう人たちとも、まぁ、多少、新聞記者の人とか、

売野: えぇ。

大滝: いろんな人たちにも、まぁ、会うこともできたんですけど。

売野: えぇ。

大滝: 僕は誰も知人とかいないんですよ、野球選手とか。個人的に誰も知らないし、知りたくもない。

売野: えぇ。

大滝: で、「長嶋に会いたいだろう?会わしてやる」とかいうような話が2〜3回、いろんな人から、

売野: はい。

大滝: 全然会いたくないのよ。

売野: (笑)、うん。

大滝: 全く。そういう長嶋ファンであり、若ノ花ファンであり、プレスリー。プレスリーがだから、例えば、コンサートしても、見に行かなかったじゃないかなー。

売野: はぁーん。

大滝: どうでもいいのよ。

売野: ふん。

大滝: その代わり、彼らに関しては、ずいぶん、かなり知ってるっていう自負はあるよ。

売野: ふん。

大滝: で、自分のなかで、そのー、彼らっていうものは、特殊なものだっていうふうには、自分のなかで捉えてるけど、

売野: えぇ。

大滝: 本人になんか、コンタクトをとるとかいうことには、全く興味ない

売野: ふん。素晴らしいですね。それで謎が解けますよね、ひとつ。

大滝: 解けた?

売野: えぇ。大滝さんの。

大滝: これはね、形でいってる人も多いけど、ほんとにそうなんだよね、これがね。

売野: うん。かっこつけて「会いたくない」っていってるわけではないですよね(笑)。

大滝: なんかね、まったく。うーん。

売野: そうですね。

大滝: まぁ、その、会うなら会うで、なんてぇの、必然があって会ったとかね。

売野: えぇ。

大滝: なんか、そういうんだったら、一向に構わないけど。わかるでしょ?

売野: わかります。

大滝: そういうのが、でもね、ファンのあり方のようにも思ってるんだ。

売野: はーっ。

大滝: うーん。だから、会いに来る人ほど、大したファンじゃないんじゃないかっていうような気も(笑)、しないでもないんだよね。

売野: うーん。はしたないと(笑)。

大滝: (笑)。いや、そういうんじゃないんだけど。ただ、会うなら、会うなりに、そのー、かなりの覚悟を決めないとまずいと思うんだよね。

売野: うん。

大滝: もし、ほんとにその人がさ、

売野: えぇ。

大滝: その、人生において、その人がすばらしい、自分の人生において、ものすごい特殊な存在であるとかっていうんだったら、

売野: うん。

大滝: なんか、こう、仇やおろそかに、ただね、会って、ニコニコ「ファンです」っていってさ、ニコニコして、ただ握手して帰ってくるとか、そういうみっともないまねしたくないじゃないですか。

売野: うん。

大滝: もし、なんかあるんだったら、かなり、もう、人生かけて、一生かけて、やっぱし会いに行くっていうくらいのものじゃないと。

売野: うーん。

大滝: と、彼らに、その、会いに行くだけの、そのー、自分がなにものかって。まだ自分ができてないの。彼らに、そのー、伍するだけのものが。

売野: おー、すばらしい。うん。

大滝: もし、だから、会うとすればね、

売野: うん。

大滝: 彼らに伍するような人物になれたとするなら、それでようやく、会う資格ができるかなっていうぐらいの、それでも会うか、会わないかわからないという、そういう考え方なんですよ。

売野: うん。

大滝: だから、そういう考え方にたってるんでね、例えばそのー、定期的に音楽をつくるとか、定期的になんかの活動をするとかいうようなことが、これが圧倒的にできにくいので、

売野: うーん。

大滝: 現在に至ると。

売野: あのー、だいたいの音楽家の人がですね、あれですよね。あのー、チャート・オリエンテッドですよね。

大滝: うん。

売野: それとは、正反対とまではいいませんけど、全然違う種類のものですね。

大滝: うーん。でもね、気にはするんですよ。僕はもう、チャート好きですからね。ビルボードとキャッシュ・ボックスみたいなのは、中学時代つけてましたから。

売野: えぇ。

大滝: で、いまだに、だから、例えば、そのー、「ロング・バケーション」が一番最初、76位初登場ですからね。

売野: うん。

大滝: 初登場76位から、

売野: えぇ。

大滝: 次が50何位、40、30何位とか、あのー、1週ずつ上がっていったりした、そのー、チャートの動きとか、売れてる枚数とかいうようなことに関しては、

売野: うーん。

大滝: これは徹底的に知ってるし、調べてるし、興味ありますよ。

売野: うん。メカニズムですよね。

大滝: そういう種類に関してはね。

売野: えぇ、えぇ。

大滝: ただし、「だからどうだ」ってことはないんですよ。

売野: うんうん、わかります。

大滝: うーん。そこですよね。よくだから、あるのはね、あのー、自分は独自に音楽活動をしているし、自分は商業的にやってるわけではないから、その、「チャートには全く無縁だ」とか、「関係ない」とか、そういう立場の人とも全く違うんですよ。

売野: そっちの方が全然違いますね。

大滝: 全く違う。

売野: えぇ。それ、ちょっとあれですね。

大滝: ただ、それならば、まだ、あのー、あれだよね。ずっとチャートに関して、

売野: そうでしょうね(笑)。

大滝: あの、ギリギリやってる人の方が近いんだ。

売野: うん。

大滝: 近いんだけど、これも違うんだな、これが。うーん。

売野: その辺、やっぱ、魅力ですよね。

大滝: そうですかねぇ?

売野: えぇ。でも、そういう方ですと、あれですね。やっぱり、うーん、それは、あのー、「長い休暇」がわかりますよね。

大滝: これがね。

売野: えぇ。

 曲:

大滝詠一/スピーチ・バルーン

 曲:

大滝詠一/Water Color

売野: えー、今週も楽しいお話をいろいろ聞かせていただきましたけれども、そろそろお別れの時間です。えー、ここで大滝さんから、週末の過ごし方を教えていただこうと思います。

大滝: そうですね、久々に野球の試合がありますから。

売野: はい。

大滝: えぇ。「グッ」とバッシリ打って来てみようと思いますけどね。

売野: あっ、大滝さんがですか?

大滝: えぇ。私が。

売野: あります?

大滝: まだやりますから。

売野: はー。

大滝: えぇ。

売野: 現役ですか?

大滝: 現役です。

売野: はい。えーっと、あと、大滝さんはですね、えーっと、「ロング・バケーション」と、

大滝: はい。

売野: これ、あのー、ルネサンス長崎伊王島、ここで聴きますと、また格別かと思います。

大滝: いいでしょうね。

売野: では、また来週まで。よろしくお願いします。

大滝: よろしく。

 今でこそ(今は“冬眠中”ですけど)、「Ami-go Gara-ge」で大滝さんの子ども時代の野球少年だった話や、学芸会の話などを知ることができますが、この当時、これほどまでに、大滝さんが自分の子ども時代ののことを語ったことはなかったと思います。「野球と私」にもありましたが、当時まだ少なかった「右投左打」をマスターしていたことや、誰もやっていなかった「左投のアンダースローを目指した」というのは、いかにも大滝さんらしいと思いませんか?蛇足ですが、大滝さんが憧れたという「左投のアンダースロー」だった、西武ライオンズの永射投手(最後は横浜でしたっけ?)、クラウンライター時代、一時期(笑)親戚だったことがあり、家に遊びに来てくれたりしました。キャッチボールをしたり、サインをもらったりで、当時、小学生だった私はいっぺんにライオンズファンとなりました。当時のライオンズといえば、パ・リーグのお荷物球団でしたが、永射投手はそこそこ活躍し、オールスターにも出場し、王選手をはじめとするセリーグの並み居る左バッターたちを手玉に取りました(と記憶している)。また、「日本シリーズのなかの日本シリーズ」といわれる83年(このころはもう親戚関係はありませんでした)の「西武VS巨人」でも、あの篠塚に全くバッティングをさせませんでした。
 それにしても大滝さん、この番組ではご自分の話をほんとによくしてくれます。「ナイアガラ・サマー」ということばを生み出した売野さんと、よほど呼吸が合うんでしょうね。おふたりによる曲をぜひ聴いてみたいものです。

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