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1993.7.24 マツハヤ・リアル・リゾート

 曲:

大滝詠一/夏のペーパーバック(「BEACH TIME LONG」より)

売野: こんにちは、売野雅勇です。えーっと、今月は大滝詠一さんとともにお送りしております。えー、先週は、大滝さんの10歳のころのお話を伺いましたですが。

大滝: はい。

売野: えーっと、昭和33年ですね。

大滝: はい。

売野: えー、昭和33年に長嶋茂雄、若ノ花、プレスリーという、この「3」ですね。「3」づくしといいますか、

大滝: そうですね。

売野: これで、そのー、トライアングルのなかに、

大滝: えぇ、3種の神器ですな、

売野: (笑)。

大滝: これがね。そのー、ちょうど、そのー、昭和33年頃に映画がピークだったんですよ。で、すごかったですからね。その、映画館なんて、週に、ねぇ、えーっと、だから週に1本ずつくらい変わってたんですか?モノによっては3〜4日で変わるんですよ。

売野: ふんふん。

大滝: あのー、だしもんが。3本立で。だから、当時の人なんて、だから、年間360日中、2百何本とか主演した人がいるんじゃないのかな?

売野: ふんふんふん。

大滝: それくらい、そのー、映画が、昭和33年ピークだったんですね。32年ぐらいがね、裕次郎の「嵐を呼ぶ男」とかね、そういう、そのー、まだまだテレビが、

売野: えぇ。

大滝: テレビが「ようやく」っていうのは、ちょうど34年の御成婚ぐらいからです。今の、そのー、えー、なんだ?今回の、そのー、皇太子御成婚のひとつ前の、

売野: ふんふん。

大滝: 皇太子御成婚のころから。だからね、映画館がすごかったですね。で、いろんな映画がね、とにかく好きだったんですけど、格別、日活アクションっていうのが好きだったんですよ。で、その、小林旭の主演モノ、石原裕次郎主演モノから、そのー、ほとんど見てるんです。

売野: うん。

大滝: で、そのー、一番好きだった、個人的に一番好きだったのは、今いってもわからないと思うけど、まぁ、小林旭のときに出てくるね、その、殺し屋のエースのジョーっていうのをやってた宍戸錠っていう人が、個人的に好きだったんですけど、

売野: うん。

大滝: 裕次郎も好きだったし、小林旭も好きだった。

売野: ふん。

大滝: で、歌に関しては、裕次郎のムーディーなものも、僕はぴったり歌えるんですよね。

売野: へぇー。

大滝: で、小林旭のすっとんきょうな、

売野: えぇ。

大滝: 歌も両方歌えるんですよ。ちょっと、だから、あのー、自慢じゃないんですけどね、

売野: えぇ。

大滝: 小林旭と裕次郎、両方、得意ネタにできるっていうことはね、ちょっと不可能に近いんです。

売野: うん。

大滝: どっちかでしょ、たいてい。

売野: そうですね。タイプがですね。

大滝: タイプが別のように思うでしょ?

売野: えぇ。

大滝: これがね、両性具有とでもいうか、これがね、両方できるんですよ。

売野: へぇー。

大滝: これ、実は誰にも、今、初めてオン・エアで明かすんだけど。

売野: (笑)。

大滝: ところが、カラオケは嫌いだから、1回も行ったことがない。

売野: あー、そうです?

大滝: なんだけどね、これは、自分が例えばさ、あのー、ボーカル・ダビングで、歌うたうときあるでしょ?あれ、だいたい1時間ぐらい人の歌うたって、あのー、慣らしをやるんですけど、もう、これはまぁ、プレスリーあたりからね、いろんな歌があるけど、

売野: えぇ。

大滝: 必ず裕次郎とアキラは(笑)、

売野: いれる?

大滝: 途中いれんの。

売野: (笑)。

大滝: で、その前振りがあったあとで、

売野: えぇ。

大滝: それだけのもんだったときに、85年のときに、その、「小林旭に曲書いてくれ」ってのがきたのよ。で、そのころももう、そのー、「EACH TIME」出して翌年だったから、

売野: えぇ。

大滝: もう、活動はもう、止めてた時期だったんだけど。

売野: うん。

大滝: もう、そのー、頼んでくる方からしても、

売野: はい。

大滝: 「これはあーた、もう必然だよ」って、向こうからいってくるわけです。

売野: あー、そうですか。

大滝: うーん。で、自分としても、「もうこれは必然だな」と思ったの。

売野: うん。

大滝: ただ、その、大役を担うことができるかどうかはわかんないけど、「これはやらなきゃいけないんだろうな」というようなかたちで入ったの。

売野: ほーっ。

大滝: で、とにかく、あのー、もうね、あのー、当時、一世を風靡したんだけど、やっぱり小林旭にも2タイプあってね。

売野: えぇ。

大滝: 「北帰港」のような、

売野: はい。

大滝: そのー、割合、朗々とした唱歌的なタイプの歌と、

売野: えぇ。

大滝: 「さすらい」のような、こう、あのー、マイナーのしずんだ歌と、両方のタイプがあるんですよね。

売野: えぇ。

大滝: で、なんとか、この両タイプを1曲で出してみようと考えたんですよ。

売野: うーん。

大滝: で、多分、それが、多分ね、

売野: えぇ。

大滝: 小林旭っていうと、ああいう、すっとんきょうな方が好きだっていうタイプと、「さすらい」のムーディーな方がタイプだって、わかれると思うの。

売野: わかれますね。

大滝: わかれるでしょ?

売野: えぇ。

大滝: これが僕の違うところなんで、どこまでいっても。

売野: おーっ。

大滝: 横ばいだからね。

売野: おー、おー。

大滝: これが、その、両方を1曲にできないんだろうかっていうんでつくったんです。

売野: ふーん。

大滝: だからね、そのー、だから、王派とか、長嶋派とかいってるんだけど、

売野: うん。

大滝: 長嶋の、で、結局、僕は左バッターだったんで、

売野: えぇ。

大滝: 結果的には王のフォームの方をマネしてるのね(笑)。

売野: (笑)。

大滝: なんだけど、長嶋の意気込みが好きなのよ(笑)。

売野: (笑)。

大滝: 難しいでしょ?これ、王派と長嶋派っていうのは、必ずわかれるんだけど。

売野: うん。

大滝: だからね、対立構図とか、そのー、単純な紋切り型の対立構図というのに、いつも当てはまらないっていうか、

売野: は、はーん。

大滝: そっから脱却したいと思う心もあるのかな。だから、「サッカーか野球か」とかいう、そういうくだらない対立構図っていうのが、一番人生をロスさせているなと。

売野: うん。

大滝: どっちも(笑)、

売野: どっちもいいですね。

大滝: どっちもいいところ見てるし。どっちかちゃ、それよりも、あの、アメリカのバスケットの方がよっぽど面白いっていうことをいおうと思えばいえるんだけどね。まぁ、それもなんか、単純な対立構図とかいうのが、一番馬鹿らしい、

売野: うん。

大滝: というふうに思っているのと、あとはやっぱり、必然性ですよね。これが、だから、そのー、小林旭だからあるんでね、

売野: えぇ。

大滝: そのー、例えば、そのー、違う映画スターの、あのー、あんまりそうファンでなかったっていう人が、例えばね、

売野: うん。

大滝: 「好きだからつくってくれ」といわれても、なかなかそうはいかない。

売野: あー、そうでしょうね。

大滝: うん。そんとき、ほんとに、その、昔、ほとんど映画を見てて、ほとんどの曲が歌えてっていうものがあるから。ほんとうにあるから。

売野: うーん。

大滝: でないと、ただね、やっぱり、プロじゃないんだよね、つくづく思ったけど。

売野: ふーん。

大滝: プロっていうのは、別に、そういうのがさ、根本にあろうがなかろうが、やっぱり、どういう人にもある程度の作品を提供できなきゃ、やっぱり、プロフェッショナルとはいえないじゃん。

売野: うん。

大滝: で、ある程度、調子が悪かろうが、良かろうが、定期的に、ある程度アベレージ稼げなけりゃ、

売野: うん。

大滝: プロとは呼べないでしょ。

売野: ふんふん。

大滝: だから、もう、アマチュアもいいところなんだね。

売野: うん。

大滝: だから、こうなったらもう、「アマチュアの権化」でいくしかないなと。

売野: うん。

 曲:

小林旭/熱き心に

 曲:

ラッツ&スター/Tシャツに口紅

大滝: 休んだときにね、3年休んだらね、

売野: はい。

大滝: 「3年休んだら、忘れられるよ」っていわれたんだよ。

売野: はぁー。

大滝: 忘れてもらおうじゃない(笑)。

売野: (笑)。

大滝: で、5年休んだら、

売野: えぇ。

大滝: 「おまえ、5年も休んだら、いくらなんだって、そろそろじゃないの?」て。いや、別に、そろそろだって。で、「いくつまで休めば、どうなるってんだか、聞かせてくれ」っていったんだよ。

売野: うん。

大滝: どうもね、そういう、なんか、定説みたいなのがくると、

売野: ふんふんふん。

大滝: 反抗したくなるのよ。

売野: うん。あれですね、あのー、なんていいましたっけ?頑固おやじじゃなくて、

大滝: (笑)、まぁ、頑固は、

売野: 頑固おやじですか?

大滝: はってもくるまや(?)だけどね。

売野: はい。

大滝: 「ロング・バケーション」のときも、最初、シングル・カットがなくて、

売野: えぇ。

大滝: 「シングル・ヒットがなきゃ、アルバム売れないよ」っていわれたんだからね。

売野: ほーっ。

大滝: これ、10年前の話だよ。

売野: うん。

大滝: 俺んときの話だよ。

売野: うん。

大滝: 今、別にシングルなんか切らなくたって、みんなアルバムはアルバムでやってる人がほとんどだと思うんだけれども。まぁ、シングルも絡めてる人は多いけど。

売野: うん。

大滝: 10何年前、そういわれてたんだよ。

売野: ふーん。

大滝: 「じゃぁ、別に、シングル」、あれだよ、あのー、「シングルなし」で。だから、「イーチ・タイム」って、シングル一切カットしてない。シングル・カット皆無、ゼロ。

売野: あー、そうですね。

大滝: 全部。で、CMのタイ・アップもゼロ。いっさいなし。

売野: それで1位ですね。

大滝: 1位。

売野: うーん。

大滝: それで、「売れない」っていうんだったら、「じゃぁ、売れなくていいよ」って。

売野: うん。

大滝: なんかね、

売野: えぇ。

大滝: まぁ、ある程度定説っていうのは、パーセンテージはとるんだろうけれども、

売野: えぇ。

大滝: 一個一個のケースにおいて、すべて正しいとは限らないんだ。

売野: ふんふん。

大滝: だから、そういう紋切型とか定説とかいうと、なんかムラムラっとしてくるんだ。

売野: あー、それで「つきなみ」が嫌いで、

大滝: 嫌い。

売野: で、しかし、その、パロディーが好きっていうのと、「つきなみ」が嫌いっていうのは、こう、あれですね。

大滝: クロスしている。

売野: そうですね。

大滝: うん。

売野: えぇ。だいたい、あのー、そこで統一されてますね。

大滝: 統一されてるかね?

売野: 人格が(笑)。

大滝: やっぱし(笑)。

売野: (笑)、一番太いところはそれですね。

大滝: それだねぇー。なんか、形があると風穴あけてやろうっていう。だから、基本的にそれは噺家なのよ。

売野: うーん。

大滝: 噺家さんってさ、あのー、すごいっていうか、あのー、結局、葬式も茶化すからね。

売野: ふんふん。

大滝: で、もっと大きくいうと、自分の死を茶化すっていうか、最後、自分の死までネタにして、

売野: うん。

大滝: あのー、死んでいくのが噺家さんなんだよね。で、噺家っていうのはね、「古典的な話をいかにうまく話すか」とか、そういうんじゃなくて、

売野: うん。

大滝: 「生き方」なんだよね。

売野: ほー、ほー。

大滝: 実は。で、その、その人の噺家さんの人格がわかると、話もおもしろいのよ。

売野: なるほど。

大滝: なんで、若手の、あのー、古典とか、そのー、誰も知らない人の話がつまんないかってのは、そういう意味なの。

売野: うんうん。

大滝: あの人を知らないから。

売野: はー、はー。

大滝: 逆に、ビートたけしや上岡龍太郎がなんでおもしろいかっていうと、だから、人格がわかったからだよ。

売野: はー、はー。

大滝: 話の内容がたいしたことなくても(笑)、

売野: えぇ。

大滝: 人格がわかったから、そのー、実は話にうなずいてるのを、それを話がおもしろいと思ってる。

売野: ふんふん。

大滝: だから、例えばだから、先代志ん生、先代志ん生じゃない、志ん生さんにしても、

売野: えぇ。

大滝: 例えば圓生さんにしても、その、先代の文楽さんとか、いろいろ、その、落語がものすごく、そのー、すごかった時代ね、

売野: うん。

大滝: テレビ始まったころっていうのは、ラジオの人たちがいっぱい出てたのね。

売野: うん、うん。

大滝: で、ああいうときにいろいろ、その、噺家さんなんかいっぱい出て、そのあと三平さんが出てね、こぶ平のおやじ、

売野: うん。

大滝: そういう人たちが出てたんだけど、それはね、勘違いしてはいけないのね。

売野: ふんふん。

大滝: 話芸とかいうんじゃなくって、いわゆるなんか、「生き方」、根本的にいうと、最後までなんか、こう、えーっと、茶化すっていうのは言い方良くないんだけど、

売野: うん。

大滝: うーん、退いて見るのかなー?

売野: うん。

大滝: とにかく退いて見ることなんだよ。ものの、その、人生の捉え方なのね、視点。

売野: えぇ。

大滝: それがやっぱり噺家さんが、から得たもので、どうもそっちの方が根本にあるの。やっぱり噺家なんだよ。

売野: はーん。

大滝: うん。だから、だれも、文化勲章なんかくれとかいわないけど、まじでいらないもの。

売野: (笑)。

大滝: で、文化勲章もいらないから、もちろんレコード大なんて、いまさらどうだってことはないけど、ほっんとにいらないんだよ。

売野: うん。

大滝: 要するに、えーっと、「You can't take it with you」っていうなんか、えーっと、なんとかの楽園、「我が家の楽園」?向こうで、フランク・ケプランの映画があって、それの原題なんだけど、「墓場までは何も持っていけない」ってやつ。

売野: ほー、ほー。

大滝: そういうのが、なんか、すごく、噺家の気持ちなんかじゃないのかなって思ってるのさ。

売野: うーん。噺家の、なんといいますか、「物語」ではなくて、「物語る人」のことなんですね?

大滝: 「人」のことなの。要するに「人」。だから、それを、話の方にばっかりいくと、まぁ、主客転倒するっていうか、

売野: ふんふん。

大滝: 物事の捉え方が逆になってくるという。

売野: それを音楽に引き寄せると、どういうことなんですかね?

大滝: うーん、だから、まぁ、要するに活動の仕方っていうようなことだとは思うんだけどね。

売野: うーん。

大滝: でも、基本的に、ほら、だから、音楽家だと思ってないところがね、

売野: うん。

大滝: 本人が。

売野: うーん。

大滝: いかに、ただ、こう、なんかダラダラ生きていくかっていうことしか(笑)、

売野: (笑)。

大滝: 考えてないからさ。

売野: うん。

大滝: うん。

 曲:

大滝詠一/Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語

売野: 音楽の構造を考えるわけですよね?

大滝: 音楽?

売野: 考えないですか?

大滝: 考えなくなっちゃったね、このごろ。

売野: (笑)、えぇ。

大滝: あのね、だから、はっぴいえんど始めてから、だから、あんときにだから、例えば、そのー、ロックぽいサウンドで日本語を歌うとね、

売野: えぇ。

大滝: 「日本語はあわない」とかいわれて、散々だったんだよ。

売野: ふーん。

大滝: 20年前(笑)。

売野: うん。

大滝: 要するに、日本語のロックなんて、みんなにバカにされたんだから。

売野: ふんふん。

大滝: で、異端児のようにいわれてたしね。

売野: えぇ。

大滝: で、誰も聴いてくれなかったし。

売野: ほー、ほー。

大滝: 3000枚だからね、売れたのはね。

売野: えっ?

大滝: さんぜん枚。

売野: 3000枚ですか?

大滝: さんぜん枚だよ。

売野: ほーっ。

大滝: たったの。

売野: うん。

大滝: そのわりには、業界入ったら「聴いてた」ってやつは多いな。どういうわけなんだろうな?

売野: うーん。

大滝: 今のJリーグとおんなじか?みんな昔からサッカーファンだったの?

売野: (笑)。

大滝: そのわりには、国立ずいぶんガラガラだったぞ、昔。

売野: (笑)。

大滝: 急に増えるんだよね。

売野: えぇ。

大滝: さーんぜん人しかいないはずなんだけど、業界入ったら、いっぱいいるんだ。

売野: ほーっ。

大滝: だからね、そういうことらしいよ。「成功者には関係者が多い」っていう(笑)、法則があるらしいよ。

売野: あー、おもしろいですね。

大滝: あぁ。「失敗したのに、責任者いない」んだって。

売野: うん。でも、あれですね、あのー「熱き心に」ですよね?

大滝: うーん。

売野: やっぱり、あのー、そうじゃないとできないっていうような、あれですね。

大滝: 曲自体ねー。

売野: えぇ。

大滝: なーんかだから、でも、例えばだから、あれが「演歌だ」ってのが大笑いなんだよ。

売野: うーん。

大滝: 演歌でもなんでもなからね(笑)。

売野: そうですよね。

大滝: うん、そうそう。小林旭が歌っただけだから、単純に。

売野: えぇ。

大滝: だから、よくいってたんだよ、だから、千昌夫が、あのー、「ギターのインストゥルメンタル出したら、どうするんだ?」って。

売野: うん。

大滝: ベンチャーズの「Walk don't run」をさ、

売野: (笑)。

大滝: えっ、「チャンチャチャカ、チャンチャチャンカ、ジャンジャジャン」って、千昌夫が弾いて、それでも「演歌のチャートになるのかって?」ね。

売野: (笑)。

大滝: 昔(笑)、聴いたことがあるのよ。口笛だけの、あの「口笛天国」っていう歌があるんだけどね、

売野: うん。

大滝: それを、千昌夫が口笛で吹いたら、これ、「演歌か?」って聴いたことがあるのさ。

売野: うん。

大滝: どうして、だから、人に付随するのかが不思議なんだけど、

売野: うん。

大滝: 日本の文化って、人に付随するのよね。

売野: そうですね。あのー、野球のことでいいますと、そのー、一番気に入らないのがありますね。あのー、野球で、選手のこといいますよね。

大滝: 「親孝行」だっていうやつでしょ、それをいうなら?

売野: そうです(笑)、そうそうそう。

大滝: あのー、ねっ、あのー、大監督が出てきてね、セカンドがエラーするんだよ。「ん、これはね、おやふこーもんですから」(マネしてます)、

売野: (笑)。

大滝: 「おやふこーもんだからエラーするんですよ」。どこに書いてあるのかね、これがね。

売野: (笑)。

大滝: こりゃぁ、おもしろかったなー。なんで、こんな声色までしなきゃいけないのか。

売野: (笑)。

大滝: これ、誰もわかんないんだよな、もう。ドン川上のモノマネしても。

売野: あー。

大滝: いまやもう、死に絶えたモノマネ芸だよ(笑)。

売野: (笑)。

大滝: 似てない?いいんだよ、似てなくてもな。

売野: 似てます。

大滝: 結構、似てんだ、これがねぇ。

売野: えぇ。

大滝: モノマネもやるんだよ、実は。「おやふこーだから」ってね(笑)。まだいるんだよ、ドン川上って、北海道へ帰ってね。まだモノマネやってんだけどさ。

売野: (笑)。

大滝: あの「古さ」がたまんないね。もう、死ぬほどおかしいよ。今、あれモノマネすると。誰にもわかられないっていうかさ。あれがなんかいいよね。

売野: うん。

大滝: 何からこんな話になったんだ、これは?

 曲:

布谷文夫/Let's Ondo Again

売野: あれですか?あのー、日本人が好きなメロディーってあるんですか?

大滝: うーん。

売野: それは大滝さん別にしましてです。

大滝: いや、あるんでしょうね。いろいろとあると思うんですけど、

売野: えぇ。

大滝: それがね、時代によって変遷しているんですよ。多分、だから、これは日本に限らないとは思うんですけどね。

売野: えぇ。

大滝: 「どれくらい長く続いたか」ということなんじゃないかと思うんですよ、文化って。

売野: ふんふんふん。

大滝: 例えば、よくそれを「根源的」っていう言い方するじゃないですか。

売野: うん。

大滝: で、「根源的」って、「いつからなんだ?」って聞き返す人って、あんまりいないんだよね。

売野: うん。「根源的に」ってのは、いないですよね。

大滝: うん、そうそうそう。これってさ、また、落語の話になるんだけどさ、あのー、昔話を話そうとするおやじがね、あのー、ひねたきんぼうに話すんだよ。「むかし、むかし、あるところに」っていうとね、「『むかし、むかし』っていつのころ?」って聞き返すんだよね(笑)。「『あるところに』って、いったいそれはどこ?」って聞き返されて、

売野: うん。

大滝: それでおやじが、しどろもどろしているうちに、おやじがしゃべっている間に寝ちゃってね、「あー、大人は罪がない」っていうオチなんだけどさ。そういう、その、話があるんだけども、

売野: うん。

大滝: なんか、そういう種類のことに、ごまかされるケースがほとんど。

売野: はー、はー。

大滝: で、それで、あのー、本論と離れるかどうかはあれなんだけど、「古賀メロディーが日本人の根源的な、民族的なものだ」っていうのが、これがウソなの。

売野: ふんふん。

大滝: これ、オン・エアでいう人は初めてじゃないかな?

売野: うーん。

大滝: 滅多にいわないんだよな、こういうこと。

売野: うん。

大滝: でね、あのー、いろいろあるのよ。

売野: えぇ。

大滝: もちろん、その、古賀メロディーが一世を風靡したし、

売野: えぇ。

大滝: いまだに、そのー、美空ひばりの「悲しい酒」が、その、ずっと、これから好きな人がいるだろうってことは当然だけども、

売野: うん。

大滝: あれが、民族的に、根源的かというと、ちょっと疑問なの。

売野: ふんふん。

大滝: で、そのー、何度も前にもいってたんだけど、そのー、明治のときに輸入したもんだからね、音楽って。

売野: えぇ。

大滝: 以前からあったものは別にして。

売野: うん。

大滝: その、西洋音楽ってのは、結局、全部輸入したもんじゃないですか。だからね、そのー、最初のころに、学校で習った歌なんていうのも、外国の歌だったりすることが多いわけですよ。

売野: うん。

大滝: 「蛍の光」とかね。

売野: うん。

大滝: あれはだから、スコットランド人なんかは、自分達の国を、もう1回スコットランドで建国したら、「国歌にしようか」っていうくらいの歌なわけですよね。

売野: うん。

大滝: スコットランド民謡で。で、そういうふうに見ていくと、もう、「むすんでひらいて」とかね、「ちょうちょ」だったかな?どっちかがフランス民謡だったりしてるし、それから「庭の千草」はドイツ、シューベルトかだれかか、だれか。とにかく、そのー、あたりまえのような歌ね、

売野: うんうん。

大滝: はたまた、例えば、そのー、ドリフの「だーれかさんと だーれかさんが むぎばたけー」とかいう、あれだって、スコットランド民謡だからね。

売野: スコットランドですか?

大滝: スコットランド民謡(笑)。「エブリバディ ミータバディ カミ スルー ザ ブライト(?)」という。で、それを「故郷の空」と訳してるんだよね。

売野: うんうん。

大滝: そすと、「夕空晴れて 秋風吹き」、

売野: うん。

大滝: 「月影落ちて 鈴虫鳴く」か。「思えば遠く 故郷の空」とかいうと、なんとなく哀愁っぽいんだよ。こういう詞がつくと。

売野: そうですね。

大滝: でしょう?で、なんかジーンとくるでしょう、そういうのって。

売野: きちゃいますね。

大滝: くるでしょう?

売野: えぇ。

大滝: ところが、「だーれかさんと だーれかさんが むぎばたけー」じゃさ、

売野: (笑)。

大滝: こないんだよ。

売野: うん。

大滝: こういうところにね、それを称して、なんか、「民族の根源」とか、なんか「情緒」とかいうのを、なんか捏造しようとする人が現れるのね、こういうときに。

売野: はー、はー。

大滝: そういうものを「気をつけなければいけない」というふうに思う。

売野: ふんふん。

大滝: で、あのー、えーっと、今、ロシアの南の方に、まだ、その、えーっと、なんていうの?戦争の爪痕でね、あの当時、その、迷子になったような人たちとか、いろんな人たちが、まだその、祖国に戻れなかったりするような人とか、いっぱいいるの。

売野: うん。

大滝: で、その当時、日本の教育受けてるわけ。

売野: うん。

大滝: だからね、歌う歌が唱歌なんですよ

売野: ふーん。

大滝: そのー、だから、そのー、えーっと、「ふるさと」か、「(曲のフレーズを口ずさんでいます)」とかさ、なんか、なんのときだったかな?それ、イギリスの民謡なんだよ、

売野: ほーっ。

大滝: 実は。でも、それをね、

売野: えぇ。

大滝: 歌って、みんなで泣いてるんだよ。「クニへ帰りたい」って。

売野: ふんふん。

大滝: で、ああいうのを見たときにね、その、古賀メロディーが「民族の根源」とかいうのが、まるっきり嘘だなと思った。

売野: うんうん。

大滝: で、その時々に受けた教育とか、

売野: えぇ。

大滝: その時々に「流行った」ということは、ありうるんだけど、

売野: ふんふん、なるほど。

大滝: その、「根源」とかいうような、いわれるときには、やっぱりマユツバで聞いた方がいいっていうことなんだと思うんだ。

売野: はー、はー。

大滝: だから、例えばそのー、なんていうのかな?「根源」とかいうときには、すごく、もっと、時間かけなきゃいけないんだと思う。

売野: ふんふんふん。

 曲:

森進一/冬のリビエラ

売野: えー、そろそろお別れの時間になったんですけども、大滝さんにですね、また、ここで、リスナーのみなさんに、

大滝: はい。

売野: 週末の、

大滝: あっ、週末の過ごし方。週末の過ごし方はですね、

売野: はい。

大滝: やっぱり、たまにはね、モノマネをしながらね、

売野: はい。

大滝: そういう週末を過ごすと。こういうのがいいんじゃないですかね。

売野: あー、これがですね。

大滝: 「ボールは、体の中心で取らなければ、いけないよ」(みなさんにお聞かせできないのが残念です)

売野: では、また来週も、

大滝: 失礼しました(笑)。

売野: よろしくお願いします(笑)。

 この放送は大滝さんの大滝さんらしさがよく出ている放送だったと思います。「つきなみ」が嫌いで、「形があると風穴をあけたくなる」というのは、まさに「大滝哲学」ではないでしょうか。
 それから、「その人の人格がわかると、話しもおもしろい」というのもまさにそのとおりではないでしょうか。最初はただ聴くだけだった私が、大滝さんのことを知れば知るほど(それでも、ほんの数%ですが)、はまりこんで、ここまでになってしまいました(笑)。
 それにしても、ドン川上のモノマネには笑わせてもらいました。こんなこともやるんですね。アキラや裕次郎のも聴いてみたいものです。うーん、滝壷はまだまだ深い。

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