9月10日 水曜日

    レタスの収穫と積み込み。
    収穫したサニーやロメインの汚れをホースで洗い流したり
    それらを積み込んだり。

    しているとM田さんの携帯が鳴って、僕は集荷のH川さんの手伝いにまわることに。
    今日はデジカメを持ち歩いていたのだけど
    風景を撮ろうとしたら軽トラックの速度を緩めてくれた。

    高いよねえ

    海抜?1000メートルをこえるあたりに畑が多いのだけど
    そのあたりにある2軒をまわって軽トラックに次々と積み込む。
    会社以外の畑の様子が見られて興味深かった。
    最初の畑には犬がいたが、ものすごい目つきで見られた。危険なほど。
    H川さんがなでているときは、おとなしい目つきに戻っていたけど。

    市場 そして市場へと運んで積み上げる。
    フォークリフトの使うパレットとかいうプラスチックの板の上に。
    積み上げ方にも決まりがあって面白かった。
    基本的には互い違いなのだなあ。


    お昼のとき、M渕さんが「明日休みがほしいひとー」
    F井さんが間髪いれずに、ハイッって。
    「言わないと休みにならないので、欲しかったら言ってね」
    うーん。明日はF井さんがいないのかあ。それはきつそうだなあ。
    F井さんが、うんうんと頷く。
    明日で僕が来てから一週間ですよね。
    じゃあ、休んでいいですか?
    「わかりました。言っときます」

    お昼 これで340円

    昼寝をしていて物音で起き上がると、M渕さんが立っていた。
    起きあがりながらそのまま正座。
    はい?
    「びれっじさん、午後休みになりました」
    あ、はい。わかりました。
    半分夢の中で答える。
    午後の予定は一人で草取りだったみたいだけど、小雨がパラついているからなあ。

    M渕さんって、小隊長っぽいというか、
    小学校一年生のときにあこがれていた六年生というか、
    そんな感じがするなあ。


    手元のお金が、このペースで遣い続けると明らかに足りない。
    郵便貯金を下ろしたい。
    しかし郵便局など見かけない。
    S木さんに相談すると、役場の方で見かけような気がする、と
    道を教えてくれた。
    午後を利用して探しに出かけ、無事発見。

    早めのお風呂でのんびり。
    マッサージチェアに座っていると職員の人が来て、雑談を。
    雪は降らないんだけど、寒さだけなら北海道に負けない、って。
    蚊だらけかと思ってきたのだけど、見かけませんね、というと
    今年は少ないという答え。

    え、いま、あがってきたおじいさん、明治生まれ?!
    「たいしたもんだ」
    いや、ほんとに。

    S木さんに郵便局のお礼を、とエビス黒を買っていくと
    非常に喜んでくれて、つまみを買い出して来てくれ
    いろいろ話をしながら飲んだのだった。





9月11日 木曜日

    今日は休み。でも朝起きて、みんなが出かけていく様子を写真に収める。

    浮かび上がる浅間山

    事務所 朝の用意


    少し休憩してからインターネットカフェまで自転車で出ていく。
    それから朝昼兼用でO野塚さんT木さんF井さんから聞いた珈琲哲学という店。
    でかいパフェとパスタがうまいって。

    もはやみょうちくりん写真館レベル

    徹底している そーいう哲学かーい。

    スパゲティ パフェおいしかった

    スパゲティはボンゴレ、海のような塩味にワインのような香りがついたの
    そういうのが僕の好み。
    ボンゴレ・ビアンコというメニューを頼んだら、それが非常に近い味だった。
    そうかそうか。ボンゴレはボンゴレでもビアンコがそうなのか。
    ちょっと辛みと油が強すぎるけど。


    午後はネットカフェ3時間パックで漫画を読む。
    ヒカルの碁の23巻。
    そして一度は読んでおきたいと思っていた北斗の拳を9巻まで。

    店を出ると雨が降っていたので本屋に寄る。
    この本屋では『マキャベリ語録』を買っておく。
    小雨になるのを見計らって帰途につくがザーザー降りに。
    甘かった。本屋なんかに寄るんじゃなかった。あるふぁー?

    途中コインランドリーが目に入ったのでたまらず雨宿り。
    まさか上半身裸で乾燥機を回すなどという漫画のようなことを自分がするとは。

    雨なので風呂はあきらめていたけれど
    S木さんが車でつれていってくれる。
    25万円の軽トラックが愛車だって!
    今晩も軽く酒盛り。

    ボンボンの顔してるって。
    いやあ甘やかされて育ちましたからねえ。
    「そんなの自分でわかるんだ」





9月12日 金曜日

    朝からも「品のある顔してるわ」とか。 自称:いじりっ子だそうな。

    午前。サニー、ロメイン、キャベツの収穫、積みこみ。
    ロメインっていうのは、白菜っぽい形をしたレタスのようなものだった。

    ロメインってこんなの


    お昼。いつもどおり、朝に注文しておいた日替わり弁当を食べながら
    O合さんが日本一周してきた話を聞く。
    O合さん 日本一周! 心うごかされる響きだ。
    風呂には入れないそうな。
    「それがイヤならやめておいたほうがいいです」
    洗濯などもできず。100円ショップなどを見つけてシャツ・パンツを買う。
    汚れものは廃棄。
    寝袋で野宿一ヶ月。たまに声をかけて泊めてくれる人もいたとか。
    青春18切符と折りたたみ自転車を使い、15万円での達成だそうな。
    すばらしい。

    一緒に働くおじさんのひとり、M山さんが持ってきてくれたプルーンも食べる。
    乾燥していない、みずみずしいものを初めてみた。
    味は、プラムにそっくりだった。


    午後。S木さん、F井さんと3人で草かき。
    F井さんがナイスガイだとすると、S木さんは好漢という感じがする。
    かまぼこ型に柄のついた農具の使い方を自分なりに研究してみる。
    M田さんの
    うすく切り取るように畝の表面を削る、という説明を実現するには
    刃の角度が大事。
    そして力は入れないほうがよいみたい。
    農具の重さを利用して、切る。
    それを小刻みにガッガッガッ、とやってやるのがいいのではないだろうか。

    こういう畑に こんな感じで草

    3人で飲みましょうという話になる。
    F井さんに、風呂やネットカフェへ連れて行ってもらったあとに部屋で。

    風呂ではあのいれずみの親切なおじさんがいて、挨拶をする。
    「もうあがっちゃうの?」
    それでは300円分にならないぞ、って。
    マッサージのイスに座るから300円分くらいにはなります、とか。

    S木さん曰く、普段飲んでいるものを用意してこいということだったので
    コンビニで一番安いワインと冷酒、それに人数分のスルメを買う。

    実に楽しく、すすめられるままに冷酒を飲んでいたら、飲みすぎた。
    僕はまず飲みすぎることはない。体がストップをかけてくる。
    それが今日はなぜか。やはりそれだけ楽しかったのだろう。

    ッ冷酒 トイレに行くのに階段を下りるのが、非常に難しかった。
    僕の拍動に合わせるように世界が回転しているから。





9月13日 土曜日

    朝起きて戦慄する。
    普段はおちょこで何日もかけて飲む900ミリリットルのパックが、ほとんだ空だ。

    「酒残ってませんか」とF井さん。
    残っていると思います。とにかく体が重い。
    F井さんもワインがいけなかったとかで。

    がんばってレタスを切っていたのだけど、体の重さは増すばかり。
    呼吸がどんどん激しくなって。口でハーハーと。
    あくびは止まらず。涙と鼻水を呼んでくる。
    さすがにもう動けず。
    面目なく恥ずかしい。だけど動けないのだから申し出るしかない・・・。

    H川さんの軽トラックで戻してもらって。寝る。
    運転、気を使ってもらっちゃっていたと思う。
    この前に比べて、やさしく走ってくれていた。

    あー、恥ずかしい。

    人生二度目の深酒だけれど、これが二日酔いというものなのだろう。
    はじめてのふつかよい。
    ひらがなで書いてもかわいないわッ。



    夢のなかで誰かが僕に言う。やっぱり座敷童子みた、って。
    座敷童子? F井さんは何度か見たって言っていたけど。
    壁のほうを向いて寝ている、背中のほうで気配がする。
    何かが僕の足元と頭の後ろあたりを行き来している感覚。
    僕は寝ているのだから目をつぶっていたはずなのに
    チラッっと赤い着物の端がみえたように思った。
    座敷童子なのか?!
    起き上がろうとするのだけど、体が動かない!
    まさかこれが金縛り?
    金縛りなんか今まで一度もあったことないのに。
    気配は背中へとまわり、
    ゆーーーっくりと二度、
    まるで背中に何かが乗ったかのような重みが。
    温度ではないのだけれど、なにか温かいものが伝わって来るような気も。
    そしてそれが消えた瞬間、ガバッっと布団を跳ね上げる。
    もちろん、もう何も見えなかった。



    お昼。F井さんが弁当があるよ、と言いに来てくれたのは嬉しかった。
    昼を抜くつもりだった。働かなかったから。
    I藤さんによると、二日酔いは昼を食べるとだいたい治るものだそうな。

    午後、復帰。リーフの収穫、キャベツの収穫。
    最後に1時間、草かき。

    風呂でまたも話し掛けられる。
    どうもこれがこの辺の人情らしい。

    昨日洗ったばかりのジャージがひどい悪臭を放っていることに気づく。
    そうそうコインランドリーに行ってもいられないので消臭スプレーを買う。

    農業というのは基本的に人間の都合の良いように自然を作り変えることだと思う。
    それがどこまで許されるのだろうか。
    おいしくて安全な農作物が評価され、きちんとお金になる世界とはどんなだろうか。
    S木さんと話していて思う。





9月14日 日曜日

    午前。レタス、リーフ、ロメイン収穫・積みこみ。
    午後。草かき。

    ロメイン切り 詰め込み


    F井さん 「うー、帰るまえにS木さんに長靴のこと言いてえぇ。なんかうずうずする」
    ことあるごとにボンボン扱いしてくるS木さんに、
    築地の魚屋さん仕様長靴を。

    長靴専門百余年! プロの長靴! 油さえ使わなければこれが最高!

    一日中履くものだと思ったから。
    おかしなものを買って足が痛かったりしたら一ヶ月地獄をみると思ったから。
    長靴・・・といえば築地かなあ、と。
    O合さん「10倍じゃないですか」
    う。一番安いのなら10足買えるのか。

    草かきしている畑の横に栗の木。たくさん落ちている。
    O合さん 「栗、ナマで食べたことありますか」「食えますよ。甘くて」

    観音様が寝てる

    F井さん、O合さんと3人での帰り道、”観音様が寝てる”という話を教えてもらう。
    え、どこどこ、どう見るんですか?
    「大きく見るんですよ」
    あ、ホンマや。一番左のヘンな形をした山が顔、垂直に切り立っているところが鼻か!
    へえー。へえー。
    一度見えると、逆に今度は、もうそのようにしか見えないなあ。


    F井さん、今日で最後。
    「ネットカフェに連れて行って差し上げようかと」
    おお。是非お願いします。
    運転してもらって、風呂、珈琲哲学、ネットカフェとまわる。
    珈琲哲学では、僕パフェ、F井さんケーキセット。
    そりゃあレジで笑われるっちゅうねん。
    「スパゲティの麺はかたいのとやわらいの、どちらが好みですか?」
    え、別にどちらでも。おいしければ。
    そうだなあ、例えば、
    女の子にも髪の長い人や短い人、色々いると思いますが
    まあ、かわいければどちらでもいいというか。
    「すげー わかりやすいんですけど」
    とか談笑。
    『マキャベリ語録』をプレゼント。

    バイクを駆って帰られるそうな。
    「浅間山に登るので休み下さい」という山男でもある。
    休みに休まずに山行くんだからタフだよなあ。

    実に名残惜しい。言葉が少なくなってしまう程。
    また、出会いがあれば別れか。
    「ところでびれっじさんの長靴っていくらだと思いますか?」
    わーわーわー。
    F井さん





9月15日 月曜日

    午前。レタス、リーフ、サニーの収穫。
    レタスの状態非常に悪し。生えたまま腐っている。
    一見きれいにみえても葉の下が黒かったり。刃を入れてみると腐っていたり。
    においも虫もひどい。

    午後もまるまる収穫。キャベツ、ロメイン。

    午後のお茶のとき、おばちゃんが、キャベツは一発で切れるって。
    M田さんがキャベツの切り口は汚くても良いと言っていたことあわせると
    速く切れそう。
    それにしても一刀かあ。
    これまでノコギリのように何度も引いて切っていた。
    あれを一刀というと、渾身、だろう。

    S木さんが、「なんなの、その幸せオーラは」だって。
    とげとげしていないんだって。

    今日は風呂休み。そのへんの店からもらってきたお手拭きで顔や首などをぬぐっておく。
    岐阜屋でギョウザライス500円。
    どんぶりめし、味噌汁、山盛りの漬物。

    S木さんと減価償却費について話していると
    ついに、ついに、阪神優勝。





9月16日 火曜日

    午前。レタス、ロメイン、キャベツの収穫。
    キャベツのあと、草かきをしようとして腰の包丁がないことに気がついた。
    ベルトと鞘しかない。
    昼休みにS木さんにキャベツ畑へ連れて行ってもらうも見つからず。
    キャベツを切った範囲も段ボールを運んだ範囲もそんなに広くはないから
    簡単に見つかると思ったのに・・・。

    キャベツ畑 僕のティッシュ発見。

    ちり紙まで落としていたのか。
    今日は首タオルもなくしていた。

    S木さんが帰りに缶コーヒーをおごってくれた。
    「包丁くらいでへこむなよ」「俺がそのヒゲだったらへこむけどね」

    午後。草抜き。

    O合さんと風呂。
    ホームステイで行ったオーストラリアの海は綺麗だった、と。
    日本一周して思ったのは、日本の海は汚い。その汚い海で海水浴していて驚いた。
    なるほど。

    S木さんと合流して岐阜屋へ。
    O合さん、3点セットから2点、中華丼・もやしラーメン。
    S木さん、揚げ麺。

    揚げ麺 中華丼 もやしラーメン

    もやしラーメンにまでとろみがッ!
    3点すべてにとろみのあるアンがかかっていて、とても無理という結論に。
    それでも2点まで食べてしまうO合さんはすげえ。

    O合さんは、飄々としていてこだわらない。
    多少汚れていても平気。きれいであればなお良し。
    多少食べなくても平気。だけど「食えるときに食う」。

    ばさばさとデカイ蛾が入って来て大騒ぎ。
    扇風機に入ったところへマッチで火をつけようとするおばさん、
    素手でつかみかかるおじさん。
    岐阜屋すげえ。

    食べ過ぎて腹を壊しそうというS木さんにセイロガンを渡す。
    「やさしいね」
    半分はやさしさで出来ていますから。
    「あれ、それなんだっけ?」
    ビオフェルミンですよ。
    「えー? そんなんだっけ?」
    そうですよ。
    「バファリンだろ?! ちがうじゃん!」
    あ!





9月17日 水曜日

    朝起きてペットボトルをつかむが・・・ふたが固い。
    すでに開いているペットボトルなのに。
    握力がなくなってきている。

    朝。レタス切り。
    包丁をなくしてバツが悪かったのだけど、M田ムネさんがすぐに替わりを渡してくれたり
    おばちゃんのひとり、H里さんが心配してくれたりと。

    朝食の風景

    朝食が昨日今日と豪華。
    M山さんの巨峰や、H里さんの焼きそばなど。

    朝食後もレタス切り。少し速くなってきたような気もする。
    根元から切り離しておいて即座に寝かし、切り口が水平になるように
    適当な長さでもう一刀。そこはカンで。

    マルチはぎ、マルチはぎのための草抜き、育ちすぎのサニー抜き
    お昼に少し早かったので草抜きも。

    午後。草抜き。
    冷夏といわれる今年だけど、9月に入って夏が帰ってきたかのような陽気が続いていた。
    しかしいよいよ秋らしい。
    朝夕が少し寒い。
    セミよりトンボが目立つ。コスモスも咲いている。
    まだまだ日中は汗だくになるし
    油断すると耳の裏が日焼けでボロボロになるけれども。

    晩ご飯を食べに入った店でクロマティ高校という漫画を読む。
    ウワサにはきいていたけど面白い。





9月18日 木曜日

    S木さんがんばるの日。
    今日明日と出荷が少ないということで社員さんが交代でお休み。
    今日はM渕さんとM田ムネさんがお休み。
    よって社員さんはM田ケンさんとS木さんだけ。
    3時になろうという頃から起きだしていた。

    レタス、サニー、リーフを軽く収穫。本当に朝飯前。
    朝食後から草とり。

    レタスより高い 間に捨てる

    レタスより背が高く生い茂ったり、レタスごと抜けてきそうなくらい深く根を張ったり。
    最初とりはじめたころは小さくて見逃すほどだったのが、こう。
    ここ数日、これで苦労してきた。
    しかし昼食後、お茶の時間のまえくらいに取り終わることができた。

    次に草とりに向かった場所は草が少なかった。
    だから楽だろうと思ったらトンデモナイ。
    草が多ければ一箇所にかかる時間が多くなるので座り込めたけど
    少なければ、かがんだ状態でサッサ、サッサと移動しないといけない。
    これがもう腰にくるくる。
    つらい。畝の半分くらいのところでダウン。
    あとは時間まで、這うように移動するしかなかった。

    お風呂で念入りにマッサージを受ける。
    そこへS木さん。
    「二日で帰っちゃいそうな顔して、けっこうもってるよね」
    うーん。

    スプリンクラーを止める 自転車をS木さんの軽トラックに載せてもらって
    畑へまいている水を止めに行くというのに同行。
    M田ケンさんもまだまだ仕事をしているようだった。
    S木さんの携帯に電話が入ってくる。
    明日、僕の休日確定。

    コンビニで食べ物を補充して、部屋で鈴木さんと飲む。
    実は今日までふたりして禁酒状態だったのだ。
    鈴木さんのレッドとかいうウィスキー。ろくろく飲んだことなかったけど
    やっぱり強すぎる。こんなに口の中が焼けては。

    つまみとして冷凍庫の豚肉をゆでてくれる。
    それにしょうゆをかけるだけだけど、これがうまい!
    安くてこんなにうまい! こんなにも肉の味!
    帰ったら僕も家でしよう。 焼肉に行かなくてもよくなるかも。

    興の乗ったS木さんが似顔絵を描いてくれる。
    「女子高生にエッチなこととかしちゃいそうな顔してる」
    なんですかそれ。
    「誉め言葉だよ」
    そんな誉め言葉聞いたことない!

    「でけえ口だな」
    「目が難しい。目が描けない」


    それにしても、そんな親のカタキのようにヒゲを描き殴りまくらなくても。


    むしろひとめ農業に向いてそう





9月19日 金曜日

    休日。体の癖か5時にはふたりとも起きてしまう。S木さんは掃除洗濯を始め、
    8時には愛車の軽トラックに乗せてもらって山梨へ。

    軽トラックの車窓から トラクター

    川上村や清里、南牧というS木さんの働いていたという場所を車窓から見学。
    川上村というのは、高原野菜発祥の地とかいう看板が出ているくらい。
    とてもレタスの栽培が盛んなところらしい。
    長野がレタス一番、その長野のなかでも一番の産地だそうな。
    ここのコンテナにも川上村って書いてあるなあ。

    「あっ、あれF田だ! 間違いない!」
    F田さんというS木さんの仲間と偶然すれ違う。
    白いシャツに黒いズボン、それに金髪。
    修羅場をくぐってそうな顔つき。
    日焼けをしていなければ、喧嘩でもしてきた不良かなあ、という感じだけども
    「すげえ技もってるぜ。レタス切らせたらすげえ速い」
    少し話したあと、パッっと荷台に飛び乗る。
    そのまま駅へと送る。実にワイルド。

    15から畑で働き始めて、冬は旅をしている、なんていう人が
    世の中にはゴロゴロしている、って。
    とても僕には、想像さえも及ばない世界なのかもしれない。

    おにぎり S木さんの昔の親方が 「うまい」 と言っていたというコンビニのおにぎりで朝食。
    コンビニなのに手作り。サランラップで巻かれている。手に取るとあったかい。
    野沢菜のおにぎり。絶妙な塩加減。うまい。
    たった1個の握り飯で、食べている間に何度もうまいと思わせられる。

    有料道路から八ヶ岳を眺め、小淵沢というところで温泉。
    10時から1時間。水風呂と交互にたっぷりとつかる。
    露天、屋根つきの露天、サウナといたれりつくせり。
    11時から1時間は畳の広間で昼寝。足裏マッサージ機も。

    八ヶ岳だそうな アウトレットやってー

    そこからアウトレットというところへまわって優雅に昼食。
    美しい木立がならぶなか、ペンションのようなお店が集合している。
    こ、こんなこじゃれた休日っぽい休日は初めてかも。

    帰り道でぽっぽ牛乳とかいう乳製品の販売所に立ち寄って
    うまいレアチーズケーキを食らう。
    S木さんの提案で実家へ詰め合わせの宅配を頼む。
    うん。これはいいことだ。自分では考えつかなかった。

    ここまでやってもまだ午後3時。
    ネットカフェへ行って3時間パックで漫画を読みつつ休養。
    マクドナルドで夕食をとって
    7時帰宅。
    これを書いて寝ることに。





9月20日 土曜日

    雨。でも作業はある。
    レタス切ってサニーリーフ切って運んで、草とり。
    午後はビニールハウス内の草むしり。

    部屋に戻ると食卓風のテーブルとイスのセットが入り口をふさいでいる。
    何事かと思っていると、
    F井さんたちが使っていたアパートを引き払った、その家具らしい。
    あっという間に段ボールやらふとんやらが。
    M渕さんやM田さんも続々と。
    僕もふとんを押入れへ運び込むが。
    ふと自分のかっこうに疑問を抱く。
    パンツ姿だ。
    風呂へ行こうとしていたから。
    「全然違和感ないよ」
    これでイスの生活ができると、S木さんはご満悦。

    脱衣場でハタと気づく。タオルを忘れた。
    忘れたというか先に寄ったコインランドリーで洗濯機に放り込んできてしまった。
    事情を施設の人に話して、近くのコンビニでタオルを買う、
    という選択肢も浮かんだけれど、ええい上がってからのことは上がってから考えろと。
    僕も結構変わってきてる?

    水滴を手で払って上がってくるも、やはりびしょびしょ。
    そのとき自然に脱衣場内のトイレが目に入る。
    イカンことだとは思いながらも少しトイレットペーパーを使わせてもらう。

    風呂へはO合さんが車で送ってくれたのだけど
    コインランドリーの乾燥機も利用したかったので帰りは歩き。
    ゴミ袋に入れた洗濯物を肩に担いで歩くヒゲは
    さぞあやしいことだったろう。

    玄関に、試しに切ってみたという白菜がドカンと置いてある。
    「鍋しよっか」
    いいですねえ。豚肉とダシで。
    「お。いいねえ」


    男の料理。

    光の加減がなんだかエッチ 豪快に

    なぜか猪木顔 うまいっ


    「なんだか住んでるみたいだね」
    家庭的な、実家でしか食えないような味です。
    「うまくない?」
    むちゃくちゃうまいっすねえ。
    その鍋の残りにご飯、白菜、
    それに僕のさじ加減で味噌を加えることに。
    これが当たって、奇跡のようなうまさ。
    とても良い夜だった。





9月21日 日曜日

    台風接近。雨。寒い。9月なのに手がかじかむ。事務室には暖房が入っている。
    昨日は降ったり止んだりだったけど、今日は丸っと一日
    しっかりと雨という感じで降り続ける。

    雨だからといって収穫が減るわけではない。
    レタス470ケースと、普段の倍。
    それにリーフ・サニー、キャベツも普通にある。
    O合さんほどの人から 「地獄だ」 なんて台詞が漏れたのは妙に面白かった。
    暑いのは平気だけど寒いのはダメなんだそう。

    「こっちの兄ちゃんのヒゲはすぐに強くなるだな。女の人かわいそうだに。
    接吻するときチクチクして。・・・それもいいだか」

    朝食のとき、小林のおばちゃんが皆の爆笑を起こす。

    寒さに震えていると、S木さんがトレーナーを貸してくれた。
    それで昼寝。
    「仕事には着ていくなよ」
    汚れるからねえ。

    今日の僕は積みこみ中心。
    2L、12玉、などとクレヨンで段ボールに書いていく。



    『それ』とはキャベツを切っているときに遭遇した。
    明らかに他のものとは違う。
    う。これは切れない。
    周りにある他のキャベツを切ってから手をかけようとするが
    やはり切れない。
    これは、王だ。品格が違う。

    波打つように。十重二十重と。左右対称に。
    中心の核になる部分は大きいわけではないが
    まわりの葉の波と見事に調和している。

    これって、他のキャベツと種類が違うんですか?!
    「なんだい、それ!」
    おばちゃんも驚きの声を上げる。
    M山さんによると、八重キャベツというものらしい。
    おばちゃんが生け花にするといってもらっていった。
    写真は撮らせてもらったけど。

    八重キャベツ



    「寂しくなるなあ」
    まだ早いって! ここ数日連発しすぎです、S木さん。
    それに僕がいなくなったら、セイセイするでしょ?
    「そうだね。 (ニヤリ)・・・ウソだよ」
    わかってますよ。
    「ホントにウソだと思ってんの?」
    ホントも混じってますよね。

    赤ジャージ 寒いだろうからと赤いジャージの上着を貸してくれてお風呂へ。
    「すげえ似合うなあ」
    わかってますが。着させといて笑うなんてひどいなあ。

    お風呂のあと
    今度は僕がスーパーのタイムセールで買ったものをご馳走。
    400円の弁当が半額だから、200円! で食べられる。
    スーパーに入ると必ず念入りに野菜を見て回る、S木さん。

    どうも油断していたらしい。
    最初はこんなに中腰にはならなかった。
    キャベツを切っているときに左腰を中心に、全身に痛みが走った。
    シップを買って貼る。
    痛みを取るとうたうものが多いが、痛みだけを取られても困る。
    痛くなければ無理してしまう。
    痛みより疲労を取ってほしい。