■ タンス株を利用した架空損失 ■


 「タンス株」という用語を年末近くになってよく聞くようになりました。「タンス株」とは投資家が証券会社に保護預けせずに、手許に置いている株を言います。手許と言っても別に自宅に置いている株券ばかりでなく、貸金庫等に預けている株式も含みます。「タンス預金」と同様に考えていただければわかりやすいと思います。自宅等に保管してあって取得価額の不明なタンス株については、来年末までに証券会社の特定口座に預け入れれば、みなし取得価格で受け入れられるようになっています。「みなし取得価格」とは、取得価格が不明な株式の取得価格として便宜的に設けられた価格で、平成13年10月1日の終値の80%の価格を言います。ですから、もし手持ちの株券の取得価額がこのみなし取得価格よりも低い場合に「この株券は取得価格不明」としてタンス株として特定口座に持ち込めば、実際の取得価格よりも高い価格が取得価格として認識されます。仮に現在の株価が「みなし取得価格」よりも大幅に下落している場合に、この株式を売却すれば、実際の売却損よりも遙かに大きな売却損が計上されます。この「タンス株」を用いて「架空損失」を生み出し、節税する手法が雑誌で紹介されました。雑誌では破綻した会社の株式が例として取り上げられました。倒産して整理ポストにあるような株は大体1株数円で取引されていますから、これを購入して「タンス株」として入庫して、しばらくして売却したときに、株式の取得価格として「みなし取得価格」を適用すれば巨額な損失が計上されることになります。
 この方法は破綻していない会社の株式でも実行可能です。例えば東証1部に上場しているキャッツという会社があります。シロアリ駆除の大手ですが、直近の業績が最悪なため、株価が一時に比べかなり下落して、現在は270円前後です。この株式のみなし取得価格は何と2680円、現在の株価の10倍です。この会社の株式1000株(約27万円)を市場で買い付け、株券を引き出し、これを「タンス株」として別の証券会社の特定口座に「みなし取得価格」で預け入れ、すぐに売却すればみなし取得価格268万円と27万円の差額241万円の損失が計上出来ます。雑誌ではみなし取得価格と現在の株価とを比較して下落率の大きい順に一覧表を掲載しています。まさに「脱税指南」です。 
 これに対して当局は「偽タンス株」への対策を強化しています。株券の裏面を見れば、名義書換の状況がわかり、取得時期の推定が可能です。前述のキャッツ株式は昨年の12月期まで配当をしていたため、殆どの所有者は名義書換をしていたでしょうから、新たな取得者が平成13年9月までの取得であることを主張することは難しいでしょうが、無配続きでも平成13年の秋の株価が高かった銘柄を探せば、架空損失を作り出すことは可能です。過去にも幾多の醜い節税策が披露されたことがありましたが、これほどえげつない脱税策は前代未聞だと思います。「架空損失」の創造を教唆したダイヤモンド社に猛省を望みたいと思います。

 



■ とうとうIP電話に電話番号 ■


 とうとうIP電話にも番号が付きました。これまで格安な通話料金が人気でも、受信が出来なかったIP電話にこの秋から電話番号が振られ、受信も出来るようになりました。早い業者では10月から番号が振られていましたが、最大手のヤフーのBBフォンにも「050」で始まる番号が振られ、今月の末から使えるようになります。これでIP電話も少々桁数が多くなるだけで、全く普通の電話と同じように使えるようになります。固定電話からIP電話にかける場合の通話料金は多くの通信会社では3分10.5円で、これはNTTの固定電話と変わりないように感じますが、この金額は何と全国どこからかけてもこの金額です。IP電話からの通話料金は何度もお話ししているように、全国どこへかけても3分7.5円から8円です。また、IP電話から携帯電話にかける場合の通話料は1分19円から20円ですが、携帯電話からIP電話への接続についてはまだ料金は明確になっていません。BBフォンでも来年初頭から携帯電話や国際電話からもIP電話にかけることが出来るようになります。今後色々な名簿に掲載される各家庭や会社の電話番号は一斉に「050」付きに切り替わっていくと思います。これから名簿作りを考えられる方は市外局番と市内局番のスペースをよく考えて作成された方が良いと思います。
 皆さんの家庭の通話料金も様変わりすると思います。これまでIP電話は発信にしか使われていませんでした。しかも電話番号が非通知になってしまうため、着信拒否になってしまったケースも見受けられましたが、これからは何の障害もありません。皆が「050」に慣れるまでしばらく時間がかかるでしょうが、一度料金明細を見れば、皆さん納得して、続々とIP電話に切り替えると思います。
 最近IP携帯電話の発売が発表されました。価格は1台2万6千円、初期費用1480円、月額基本料金370円がかかりますが、固定電話へは3分7.5円、米国への国際電話代が何と1分8円です。無線LANの環境下でしか使えませんので、街中どこでも使えるというわけにはいきませんが、大反響を呼びそうです。12月下旬発売予定です。

 



■ 駆け込み節税 ■


 本年も残すところ2週間あまり、税金面で出来ることはお済みでしょうか?最も一般的な節税は年末の贈与です。贈与税は歴年で課税され、しかも重い累進課税です。来年1月に400万円の贈与を行えば贈与税は42万5千円ですが、今年200万円、来年200万円と2年に分ければ、2年間の贈与税合計額は18万円です。これが金額が大きくなれば贈与を2年分ける効果はより顕著です。1年間に1000万円の贈与を行えば贈与税は260万円ですが、2年に分ければ贈与税は139万円と約半分になります。
 また、これまでゴルフ会員権の譲渡についても何回も申し上げてきました。毎年のように廃止がささやかれているゴルフ会員権の損失と他の所得との損益通算は今年は全く話題に上りませんが、油断は禁物です。いつ突然の改正が行われるかわかりません。今年も東京湾スプリングスカントリーなど多くのゴルフ場を経営する緑営開発を始め多数のゴルフ場経営会社が倒産しました。倒産したゴルフ場の会員権の売却による損失は他の所得と通算出来ません。倒産の怖れが少しでもある会員権で、売却損が多額に発生する会員権は是非早期に売却を進めて下さい。
 贈与税と違って、所得税の経費の支出は12月に支出すれば、節税効果はまるまる1年違ってきます。支出額以上に節税出来ることはあり得ないのですが、何となく12月になると備品を新しくしたくなってしまいます。私の事務所のパソコンの購入日を見てみたら殆ど12月でした。必要の無い物までつい買ってしまいます。消費に貢献していると言えば格好がよいですが、単なる無駄遣いです。



■ 遺言川柳 ■


 UFJ信託銀行の「遺言川柳」という面白い本が幻冬社から出版されました。全国から寄せられた50339通の中から厳選された川柳が紹介されています。秀逸と思われるものを幾つかご紹介します。
 「財産は取り合い、位牌は譲り合い」
 「通夜の席、銀行マンが勢揃い」
 「三兄弟、初七日終わって三国志」
「若夫婦、待っている間に老夫婦」
「正直に粗品と書いてある遺言」
「財産はお前にあげると皆に言い」
「長生きし、遺言したのをつい忘れ」
「兄弟は納得したのにしない嫁」
殆どの句が人の欲の醜さをあざ笑ったものです。欲に際限はありません。相続の遺産分割は「ええかっこうしいという見栄」と「欲」の綱引きです。



■ 年末の感動 ■


 数多くの女性雑誌がクリスマスイルミネーション特集を組んでいます。俄キリスト教徒が増える時期です。尤も私も息子の学校のクリスマスミサに8年連続で参列しています。
 イルミネーションで旬な場所と言えば汐留、お台場、品川、六本木ヒルズと続きますが、何と言ってもこの時期は東京ミレナリオが開催される丸の内でしょう。その光の通路には圧倒されます。亡くなった母が好きだったせいか、毎年足を運んでいます。終点の有楽町に近づくと感激が薄れてだれてきますが、丸ビル近くでは皆さんの感動も新鮮で、多くの人と感動を共有出来ます。以前にも申し上げましたが、人間50才を過ぎてくると「あと何度これと同じような感動を味わうことが出来るだろう?」と考えるようになってしまいます。尤も感動を常に求め続けるからこそ充実した人生を送ることが出来るのではないかとも感じます。元旦の早朝は例によって六本木ヒルズの51階にいるかも知れません。
 本年の私の感動No1はグランドキャニオンでした。今月の感動候補は「ラスト サムライ」です。あと何回「凄え!!!」と言えるでしょうか?

 今年もとりとめもないことを12ヶ月書き続けてしまいました。何人の方が毎月(楽しみに?)このメッセージを読んで下さっているかわかりませんが、毎月感想を寄せて下さる方が何人かいる内は書き続けようと思っています。知らない間に娘がこのメッセージの読者になっているのには笑ってしまいました。セキュリティをかけて家族に読ませない方法はないものでしょうか。(笑)

 皆さんもどうぞ良いお年をお迎え下さい。

 最後に面白い話を一つ
 小和田雅子さんと川島紀子さんは前世でも繋がりがあった?

     お わ だ  ま さ こ
       ×  ×  × ×  × 
     か わ し  ま き こ

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