馬の馬装、馬具


馬につける道具

馬につける馬具は大雑把に言うと、鞍と頭絡です。
鞍は、馬の背に載せて人が乗りやすいようにする道具。英語ではSaddle(サドル)と言います。
頭絡(とうらく)は馬の頭につけて騎手の指示を馬の口に伝達させるもの。

これらは色々な種類があるので、運動の種類によって使い分けるようなカンジになります。

鞍と頭絡以外にあとは、肢巻(プロテクター)、やら補助馬具があります。


(くら)

鞍は馬の背中に載せて我々はその上に座ります。
そして、鞍の上で安定できるので馬に対して色々な指示を出す事ができます。
鞍は基本的に革製品で、まともな物は職人の手作りの物も結構あります。
そして、馬に乗せるわけですから鞍が馬の背中に合っていないと、鞍ズレを起こしたりして馬が鞍を載せるのを嫌がる原因にもなります。
鞍をご購入の際はご自分が乗られる馬に合わせて買うのが一番です。
いや、もっと欲を言えば自分の馬を鞍職人の所へ連れて行って背中の型取りをしてフルオーダーメイドの鞍を作るのがベストですが、そんな貴族じゃあるまいしムリだと思うので、ちゃんとしたメーカーの鞍でなるべく馬にあったものを買う事が良いと思います。

鞍等の馬具メーカーで日本国内での有名所は、キーファ、パッシェ、スチューベン、エルメスと言った感じでしょうか・・・
エルメスは皆さんご存知のあのエルメスです。

まともな鞍なら一背、30万円前後からって感じですね。高いですね。(^^;;
しかし、ちゃんとした作りでしっかり手入れすれば10年くらいは平気で使えます。
作りがヤワだと、縫い目が解れたり革が擦れて穴が空いたりして結局修理に費用がかかってしまうハメになります。

もちろん、安い鞍がいけないと言ってるわけではないですよ。
安くても良い鞍はいくらでもあるので、お時間のある方は色々探してみるのが良いと思います。(^^)

で、100%革製品の鞍は高温多湿と直射日光をイヤがるので、保管の際は風通しの良い冷暗所に置くのが良いでしょう。さもないと私の鞍もそうですが、梅雨時なんかカビだらけになって鞍の形をした大きなカビの塊になっちゃいますよ。(爆)

鞍は使った後で手入れを行いますが、普段はサドルソープと言う鞍用のクリーナーがあるのでそれできれいにしてあげれば良いです。
でまあ、月に2回くらいは、保革油で磨いて柔らかと輝きを保たせましょう。
保革油を塗る際は出来れば分解掃除までしてあげると良いですよ。

鞍の各部名称

鞍外観
1.鐙革託鐶
(あぶみがわたっかん)
2.胸具託鐶
(きょうぐたっかん)
3.前橋
(ぜんきょう)
4.小あおり革
(しょうあおりがわ)
5.鞍つぼ
(くらつぼ)
6.後橋
(こうきょう)
7.鞍尾
(あんび)
8.鞍褥
(あんじょく)
9.鐙革通し
(あぶみがわとおし)
10.あおり革
(あおりがわ)
あおり革の内側
1.あおり革
(あおりがわ)
2.騎座止め
(きざどめ)
3.腹帯託革
(はらおびたっかく)
4.下あおり革
(したあおりがわ)
5.尾錠保護革
(びじょうほごがわ)

1.鐙革託鐶
(あぶみがわたっかん)
2.鐙革
(あぶみがわ)
3.鐙
(あぶみ)

鞍の種類
鞍の種類は大きく分けて3種類あります。
馬場鞍、障害鞍、総合鞍です。

パッシェGrand Gilbert DRESSAGE
鉛筆デッサン

パリアニUSA
鉛筆デッサン
キーファー アーヘン
鉛筆デッサン
馬場鞍
馬場馬術を行うのに適した形状をしています。騎座止めがあまり出てなく、あおり革も垂直に下がっているので、馬場馬術の姿勢(脚をまっすぐ下に下ろす)が取りやすくなっています。
障害鞍
障害馬術を行うのに適した形状をしています。騎座止めが高く競り上がっていて、障害飛越時の腰を浮かした姿勢になった時に、脚の位置がずれるのを防いでくれます。また、あおり革の形状は下にはあまり伸びておらず、前方に膨らむように出ています。これは、障害飛越時の腰を浮かした姿勢(2ポイント)をしやすくするためです。
総合鞍
馬場馬術、障害馬術兼用の鞍です。なのであおり革の形状も馬場鞍と障害鞍の中間な形状になっています。なので、どちらの練習にも使えるスグレモノですが、帯に短しタスキに長し的なところもありますね(^^;;
ここまで書いておいて何ですが、私の鞍は総合鞍です。(爆)
すんごい偶然ですが、左から値段の高い順に並んでますね(笑)
ちなみに、総合鞍は私の所有する鞍をモデルにしました。
10年選手の鞍なので小あおり革が曲がってる・・・・(^^;;

頭絡(とうらく)

馬を動かすのに我々は手綱を使います。
その手綱は馬の口に入っているハミと言う金属製の棒に繋がっています。
そして、そのハミが勝手にずれたりしないように馬の口の一点に固定するための道具として、頭絡を使用します。
また、頭絡には乗馬用の物、調馬索(長い調教用の索)用の物、乗馬以外で馬を連れて歩いたり馬繋場に繋ぐための物があります。

頭絡の場合、ハミ以外のパーツはセットになって売られている物と全てのパーツがバラで売られている物があります。
これも馬の頭につけるものですので、馬に合わせて購入するのがベストです。

頭絡の場合、額のところのバンド(額革)がおしゃれのしどころです。(笑)
色々な装飾が施された物があります。例えば、装飾金属で飾られた物や、シンプルに革が貼ってある物、エンビ素材でカラーリングされた物や中にはダイアモンドを散りばめてある物まで!
アナタのセンスの見せ所ですよ。(笑)

頭絡の各部名称
頭絡は革のベルトの集合体です。
一つ一つのパーツに名前があるので、覚えておくと便利です。

1.項革
(うなじがわ)
2.額革
(ひたいがわ)
3.鼻革
(はながわ)
4.顎革
(あごがわ)
5.頬革
(ほおがわ)
6.ハミ環
(ハミとも言う)
7.手綱
(たづな)

鼻革の話
上の図でも描かれているタイプですが、通常使用されるのはフランス鼻革と言うタイプのものです。
馬がハミを受けようとしなかったりしたら、鼻革を別のタイプのものにして馬がハミから逃げないようしたり、若い馬のハミ受けの調教にも利用されます。

フランス鼻革
この鼻革は水勒および大勒どちらでも使用します。
装着場所は頬骨の指2本分下あたりで頬革の内側を通します。
ドロップ・鼻革(ドイツ鼻革)
ドロップ・鼻革は鼻革、項革、喉革の3つのパーツで構成されています。
全てのパーツは両側のリングで止められています。
この鼻革は手綱を使用した時に、馬が口を開けてハミを外すのを阻止します。そうする事で、下顎はハミ受けを助けて項から正しく曲がってくるようになります。
フラッシュ・鼻革(コンビ鼻革)
フラッシュ・鼻革はフランス鼻革と細い鼻革の組み合わせです。鼻革の中央部分に革通しがあり、そこに細い鼻革を通します。
細い鼻革はハミの下に通します。
この鼻革も馬が口を開けるのを防ぎ、また外すと通常の鼻革として使用できます。
クロス・鼻革
通称メキシカン・ノーズバンドとも言います。
これは、鼻梁部分で2本の鼻革が交差し、1本はハミの上、1本はハミの下で調節します。

ハミの話
ここまではハミを入れないで話をしてきましたが、ここでハミを含めて話をしていきます。
ハミは前述の通り、馬の口に入る棒です。
そして、そのハミと手綱がダイレクトに繋がっており、騎手の指示はハミを通して馬の口に伝えられます。
馬の口の中は(人間も同じですが)粘膜で構成されているので非常に敏感です。
騎手は馬に乗る時に手綱を引いたりしません。
引っ張ったら、口角が後に引っ張られるので痛いです。コレはシャレになってません。
騎手は手綱を使って優しく、柔らかく、馬に指示を出します。
騎手の指示は手綱とハミを介して馬に伝わるので、ハミが馬に合っていないと馬にとって非常に辛い状況が発生します。
ハミは大別して2種類、水勒と大勒があります。
そして、水勒は更に細かく色々な種類に分かれています。
それらを説明していきます。

水勒(すいろく)

水勒は一般的に練習でよく使われるハミです。
乗馬の基本レッスン、外乗、障害飛越などは殆ど水勒で行われています。

1.ハミ環(はみかん) 2.ハミ

水勒の種類

ノーマルビット
一番ノーマルなタイプです。
ハミ自体がハミ環に固定されないので自由に柔らかく馬の口に当てる事ができ、馬も口を柔らかくしやすいのですが、騎手が馬の口に優しく当てないとムダに動いてしまい、馬が従順でなくなる事もあります。
エッグビット
ハミがハミ環と固定されているので、ハミが口の中でムダに動かないで済みますが、柔らかさが多少失われます。
Dビット
頬に圧力が掛かる為、横方向によれ易い馬などでは直進性が保たれやすくなります。また、暴走した場合に制御しやすいハミです。
チークビット
ハミの両脇に長い枝が出ており、ハミが外れるのを防止してくれます。

大勒(たいろく)

大勒は主に馬場馬術を行う際に使用されます。
で、どの程度の馬場馬術かと言うと、日本馬術連盟の馬場馬術科目で言うと、第4科目以上は必須です。
第3科目までは水勒だけでも構いません。

大勒は通常、小勒(小型の水勒)とセットで使用します。
なので、馬に大勒を掛けるということは、大勒と小勒の2本のハミを噛ませます。
騎手は4本の手綱を使用して馬に乗ります。
大勒はテコの原理を応用して、少ない力で馬に対して大きな力をかける事ができるハミです。
このハミを使う時は騎手は拳を柔らかくして、尚且つ馬のとのコンタクトが無くならないように常に中指と薬指で馬とコンタクトを取りつづけます。
もしも、水勒で乗っている時の感覚で強く馬の口を引っ張ったりしてしまうと、馬は相当な痛みを感じる為、逆に反抗して暴れたり最悪の場合、二度とハミを噛まなくなる事もあります。
このハミを使用するまでには相当な練習が必要となります。
また、このハミは十分に調教がなされた馬にしかつけてはいけません。

1.大勒ハミ 2.舌ゆるめ 3.枝上部
4.枝下部 5.手綱用リング 6.グルメット留め革リング
7.フライリング 8.グルメット 9.グルメット用リング

大勒を装着すると以下のような感じになります。

その他のハミ
ペラム
ペラムは水勒のハミに大勒のような枝とグルメットがあります。
ペラムは水勒より強力に馬の口に効いてくるので、水勒のみで抑える事が難しい馬などに使用します。
通常、ペラムは専門的な有識者の監督の下で使用します。
ハックモア
ハックモアはハミではありません。
これは、ハミを受け付けない馬などに使用します。
動きとしては長い枝の先に手綱が付いており、手綱を引くとテコの原理で上の鼻革とグルメットと項革が馬の頭を締め付けます。
この締め付けによって馬を制御する事ができます。
通常、ハックモアは専門的な有識者の監督の下で使用します。

保護具

肢巻(しまき)
肢巻とは、馬の肢の管から球節に掛けてを保護する目的で巻く細長い(10cm×10m)包帯のような布です。
馬場で運動したり、外乗に出たときなどに肢に怪我をしないように巻きます。
また、乗馬目的以外で輸送時や肢の水冷を行う時にも使用できます。
個人的には、自分の捻挫などにも使えます。(^^ゞ

プロテクター
プロテクターも肢巻同様、肢の管から球節にかけての保護をします。
こちらは馬の肢に合わせた形になっており、より保護効果が高いので通常、練習や競技会ではプロテクターを使用します。
また、障害競技やクロスカントリーではプロテクター着用は義務となっているのが普通です。

わんこ
ゴム製の蹄カバーです。
通常、前肢に装着して、後肢が追突してくるのを防ぎます。
また、前肢の交突にも効果があります。
胸がい
鞍が後ろにずれるのを防ぐ道具です。
ランニング・マルタンガールを兼ねているものもあります。

補助手綱

基本的な馬装は頭絡と鞍だけで構成されます。
しかし、頭絡が水勒だけで馬を抑えきれない場合があります。
馬がハミに対して、従順に言う事を聞くようにするには馬の頭を地面に対して垂直に近い形になるように下げさせなければなりません。これをハミ受けをさせると言います。
しかしながら、馬によっては水勒ハミと手綱だけでは従順に頭を下げないフトドキモノもいます。(苦笑)
そのような場合、次に挙げるような補助手綱を使用して、ハミを受け易くする必要があります。

ランニング・マルタンガール
一方は腹帯を通す折り返し部分があり、他方は二股に分かれて手綱を通すリングがあります。
手綱に通すリングは固定式ではないので、馬に対して優しく効いてくる形になっております。
ランニング・マルタンを装着すると、馬が頭を上げようとした際にマルタンが手綱に作用して、頭が上がるのを阻止します。
この働きによって馬がハミを受けて騎手の操作を受け入れる体制を整える補助をします。
また、騎手が手綱を上に持ち上げてもマルタンによってハミの方には作用しない為、初心者の練習などで馬が口を壊す危険性も回避しやすくなります。

オリンピック・マルタンガール
(私は)最近はあまり見かけませんが、ランニング・マルタンガールより強烈に馬の頭の姿勢に影響を及ぼすものです。
一方はランニング・マルタンと同じように腹帯に通す形となってますが、他方は二股に分かれてからそれぞれハミ環を通してそこで折り返し、手綱に専用のフックがあるのでそこに引っ掛ける形になります。
これはランニング・マルタンがあまり効果を示さない場合に使用されたりします。

折り返し手綱
標準で1本の長さが2.75mの手綱で、中央のバックルで2本を接続してそれぞれ左右のハミ環を通して折り返して、前肢の間を通して腹帯に固定します。
使用方法は通常の手綱と共に折り返し手綱を持ちますので、合計4本の手綱を持つ形となります。
何となく、オリンピック・マルタンガールに似ていますが、こちらは馬場馬術の練習や調教で馬の姿勢を正しい状態に持っていくために使用されることが多いです。


障害の手前で止まった際にマルタンに助けられた図
マルタンが無かったら点線のアタリまでは平気でアタマ上がります。

折り返し手綱で馬と仲良くしている図(^^ゞ

これらの補助手綱は使用方法を間違えると、馬に対して悪い影響を与えますので使用の際には経験豊富なインストラクターや調教師の指示に従って使用することをお勧めいたします。


トップへもどる馬装へもどる