馬にとってとても重要なのがヒ・ヅ・メ(はぁと)
そんなわけで、蹄についてかるくお話をばさせていただきます。
馬は蹄で立っています。
馬の生活で立つ、歩く、走るなどの行動は蹄があってこそですので、蹄の知識を身につけて蹄をちゃんと手入れする事は乗馬する上でも非常に大切です。
蹄は馬によって個体差がありますし、それぞれの生活環境や食餌、手入れによっても大きくその状態は変わってきます。
生まれつき、良い素質の蹄であっても手入れが十分になされないと折角の蹄も痛んでしまい、その馬の寿命にも関わってきます。
皆様、ご自分の爪を考えて見ましょう。
お風呂上りなどでは爪は水分を含み柔軟性が出てきます。
しかし、乾燥状態では爪は硬くなって割れやすくなります。
馬の蹄も同じように、適度な水分を保っており蹄が乾燥すると質が悪くなってしまいますし、汚物に接する機会も多いので手入れが十分でないと腐ったりするなどの病気を起こす事があります。
そうなると、運動障害の原因にもなってきます。
蹄の名称
(側面)
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1. 蹄壁(ていへき) 2. 蹄尖(ていせん) 3. 蹄側(ていそく) 4. 蹄踵(ていしょう) 5. 蹄冠帯(ていかんたい) |
(裏面)
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1.蹄球(ていきゅう) 2.蹄叉枝(ていさし) 3.蹄叉中溝(ていさちゅうこう) 4.蹄叉(ていさ) 5.蹄叉尖(ていさせん) 6.蹄支角(ていしかく) 7.蹄叉側溝(ていさそっこう) 8.蹄支(ていし) 9.蹄底(ていてい) 10.白線(はくせん) 11.負面(ふめん) |
(蹄鉄)
お手入れ
蹄の手入れは1日1回水で洗います。
具体的には、蹄叉側溝を中心に泥などのヨゴレがこびりつくので、それをまずは「てっぴ」と言う鉤型の鉄の道具でほじって落とします。
てっぴでの作業があらかた終わったら水でよく洗い流します。私はよく亀の子タワシでゴッシゴシ擦ります。(^^ゞ
蹄叉中溝、蹄叉側溝、蹄鉄と蹄底の接点に溜まったヨゴレまで完全に洗い流せたら、水分があらかた乾くのを待って蹄油という植物性の保護油を付けてあげます。
病気や怪我
蹄の病気について簡単にお話します。
馬によって蹄が元々弱い馬もいますし、頑丈な蹄を持った馬もいます。
しかし、手入れや健康管理が行き届いていないと、病気になります。
裂蹄 (れってい) |
蹄壁に強い衝撃を与えたりすると、蹄が裂けたり割れたりします。酷い場合、出血してしまうこともあります。 |
蹄叉腐爛 (ていさふらん) |
蹄叉が腐る病気です。 この病気になると、蹄叉はボロボロに崩れやすくなり、蹄叉から悪臭がして化膿した液がにじみ出ます。 これが悪化すると蹄叉と蹄球が小さくなり蹄が小さくなってきて酷い物は※跛行(はこう)の原因となります。 蹄叉腐爛は不潔な環境や蹄の手入れが行き届いていないと起こり易くなります。 |
蹄葉炎 (ていようえん) |
蹄の内部の炎症で蹄骨と蹄の結合が悪くなり、蹄の変形を伴って蹄骨が蹄の裏側へ抜け出てくることがあります。 蹄葉炎は両前肢に起こる場合が多く、早めに治療すれば良いのですが、治療や発見が遅れると良くならなくなります。 原因として考えられるのは過食や過大な負荷がかかった(立ちっぱなし)等。特に骨折などをした場合は、反対側の肢に負重性の蹄葉炎を起こす事があります。 |
挫跖 (ざせき) |
石などで蹄底にキズが入ることです。 これは、外乗で固い路面で走ったり馬場内に石が紛れ込んでいてその石を踏んだ際に起こることがあります。 |
後突 (ついとつ) |
後肢の蹄尖が前肢の蹄球に当たって傷をつけることを指します。 これは後肢の踏み込みが深い馬に起こりがちな怪我で、駈足や伸長速足などを行った際に発生する事があります。 予防策として前肢にワンコを装着するなどします。 |
交突 (こうとつ) |
右肢(もしくは左肢)で左肢(もしくは右肢)の蹄を傷つけることを指します。 これは馬の肢の運びで左右の間隔が狭いと発生する事があります。 |
※跛行=正常ではない歩き方、びっこ。
装蹄(そうてい)
通常、馬の蹄に鉄の靴(?)を付けます。
この鉄のお靴は蹄鉄と言います。
そして、この蹄鉄をつける事を装蹄と呼んでいます。
装蹄師
装蹄を行う事が出来るのは正式な資格を所持した装蹄師のみです。
装蹄免許を持たない人間が自己所有以外の馬に対して装蹄を行う事はできません。
蹄鉄
鉄は上図参照して頂けば分かりますが、馬の蹄の裏に打ち付けてある鉄の保護具です。
蹄鉄は通常、蹄鉄型をした酸化鉄の材料になってます。
それを装蹄師が装蹄を受ける馬の蹄に合わせて焼入れをしながら形成していきます。
装蹄
出来上がった蹄鉄を馬につける訳ですが、付け方は蹄鉄を合わせたら、装蹄用の釘で6箇所ほど打ち込んで蹄につけていきます。
この際、蹄の奥の方に神経が通っているので神経に触らない様、細心の注意を払って釘を打ちます。
削蹄(さくてい)
装蹄の際に、伸びた蹄を削ってその馬にとって一番良いバランスになるようにします。
装蹄の必要性
馬の蹄は柔らかいので、馬場や道路を毎日歩いたり走ったりしていると蹄が削れてしまいます。
また、障害飛越の着地時などは蹄に掛かる負担は並大抵の物ではありません。装蹄をしていないと、その衝撃で蹄が割れる事もあります。
蹄の保護のためにも運動をする乗用馬、競走馬、使役馬は装蹄を行う事が推奨されています。
また、装蹄のタイミングは蹄鉄が磨り減ったりした時、もしくは蹄鉄が残っていても削蹄をしないといけないので1ヶ月に一度位の頻度で行われる事が普通です。