2004全国水墨画研修会報告書


1.日 程	平成16年10月31日(日)〜11月1日(月)の一泊二日。
	10月31日(日) 天気(曇りのち晴れ)
	 7:30	町田観光バス発着所(町田市民ホール隣り)に集合。
	 8:00	出発。
	11:30	清里着。自由に散策しながら各自で昼食。(写生可)
	13:30	清里発。車窓から紅葉を楽しみながら進みます。
	15:00	小諸懐古園着。藤村記念館、小山敬三美術館などを自由に見学。(写生可)
	16:30	懐古園発。
	17:00	国民年金保養センターこもろ着。
	18:30	親睦会(夕食)
	11月1日(月) 天気(曇り時々小雨)
	 7:30	朝食。
	 8:30	宿の庭で写生会開始。先生から写生のこつを教わる。(写生指導)
	10:00	宿の会議室にて写生をもとに水墨画の描き方を習う。(作画指導)
	12:00	宿の食堂にて昼食。ジャンボ・エビフライ定食。
	13:00	藤原先生に写生から絵を作る様子を見せていただく。
	14:00	研修会終了。記念撮影。
	14:30	現地発。佐久インターチェンジ前の土産物店に立ち寄る。
	19:00	JR町田駅前着。解散。

2.会 場	布引温泉 国民年金健康保養センター こもろ
		長野県小諸市大久保620-3 TEL.0267(22)2288

3.内 容	写生・作画指導	11月1日(日) 8:30〜14:00(途中、昼食を挟む) 
		● 講師 藤原 六間堂(ふじわら ろっけんどう)先生
		1957年、藤原楞山の長男として岡山県に生まれる。
		水墨画虎杖会・金石六友会主宰。山陽新聞カルチャー教室で指導。
		著書 「水墨画の上達法」「水墨画の勉強法」(日貿出版社刊)他多数。

4.参加者	30名(講師・スタッフを除く)
5.報告

 今回は、水墨画指導者としては、たいへんお若い気鋭の画家、藤原六間堂先生をお招きしての研修会である。
 初日は、朝早く、雨のそぼ降る中の集合となったが、バスが中央道を進むうちに天気は回復へ向かい、バスの窓からは笠雲をかぶった富士の姿も見られた。小淵沢インターで降りて八ヶ岳高原道路を清里へと向かう。道路の両側は、カラマツが黄色く紅葉し、所々に赤い落葉樹が混じる。ちょうど見頃だ。途中、まきば公園でバスを停めて、眼下に広がる一大パノラマを楽しむ。

 富士川沿いの町々にうっすらと靄がかかり、その上に峰を覗かせる南アルプスは、薄い空の青を背景に、くっきりと濃い青に見える。甲府盆地の向こう側、パノラマの中心に富士山はそびえ、左手には、秩父山地の山々が迫る。駐車場のすぐ下は牧場で、羊たちがのんびりと草をはみ、背後にはカラマツの黄葉が美しい。この公園を後にしてバスは、東沢大橋を渡る。左手の山も右手の谷も美しく紅葉している。その先、清泉寮の脇を通り抜けて、小海線清里駅近くの駐車場に着いた。
 駐車場から踏切をわたると、すぐに清里の中心街となる。ナナカマドの並木やドウダンツツジが真っ赤に紅葉している。各自、思い思いの昼食を取り、その後写生をするなどして過ごした。私たちは、吐竜の滝は遠そうなので、近そうな千ヶ滝を目指した。しかし、滝は坂のずっと下の方にあり、行けども行けどもたどり着かない。一緒に滝を目指した人たちもいつの間にか脱落し、気がつけばひとりぼっち。悔しいので、とにかく滝まで降りていった。滝は、轟々と音を立て、その裾に虹をかけて、私を迎えてくれた。来た甲斐はあったが、時間はもうない。とりあえず写真だけ撮って、急いで引き返す。スタッフが集合時間に遅れるわけにはいかない。しかし、わかっていたことだが、上り坂はきつい。早足であえぎあえぎ上っていくが、目が回りそうだ。「しょうがない、下から車が来たらヒッチハイクだ。」心に決めてしばらく歩くと、乗用車が来た。振り返って手を挙げる。止まってくれた。駅まで乗せてくれるようお願いすると、快く承諾してくださった。助かった ! ありがとうございます !! というわけで、楽して、駅前まで戻ると、折井さんが写生をしていた。そこから歩いて駐車場まで戻ると、先に引き返した方々を、途中で追い越してしまったらしく、まだ来ていないという。すみません、一人ヒッチで楽してしまいました(^^;
 バスは、紅葉の中を小諸を目指して進む。佐久甲州街道だ。やがて、懐古園に到着。ここで、関西から参加の木山さんと、小諸と同じ長野県ながらずっと南の伊那から参加の村澤さんご夫妻、鈴木さんと合流。園内を散策する。園内の紅葉はちょうど見頃で、菊花展も催されていた。千曲川を見下ろすところには、藤村の碑がたつ。天守台址の野面積みの石垣は苔むし、その脇にはケヤキの大木がそびえていた。藤村記念館や小山敬三美術館を見てバスに戻る。
 宿にはまだ陽のあるうちに到着。手前の千曲川にかかる橋の右手は、布引渓谷と呼ばれ、紅葉の間に奇岩が顔を覗かせている。夕食兼宴会は、午後6時半から。会長の挨拶に続いて乾杯。やがてカラオケと司会進行の川田運営委員は盛り上げに余念がない。8時頃、藤原先生が東京での講演会を終えて到着。先生にもご挨拶をいただいたり、カラオケに参加して頂いたりして楽しいひとときを過ごした。最後は、みんなで「星影のワルツ」を歌い、吉田運営委員長の三・三・三・一の「とおじめ」でお開きとなった。
 翌朝は、はじめ窓から浅間山の頂も拝める天気であったが、朝食を済ませて写生を始める頃には頂が雲に隠れてしまい、小雨もぱらつき出す始末。それでも、各自ロビー内や庭に場所を見つけて陣取り、熱心に写生を行った。藤原先生も参加者の間を回り、丁寧に写生のこつを伝授してくださった。男性会員が写生に夢中で、知らぬ間に露天風呂の女湯前を横切って苦情が来たなんて一幕もあったが(苦笑)。

 10時からは、大会議室に場所を移して、写生を墨絵に仕立ててみる勉強。まずは、藤原先生から講義があり、その後各自が墨をすって書き始める段取りだったが、藤原先生が墨をすり始めると、皆、先生を取り囲んでしまい、自分の絵どころではない。

 墨は軽く持って、静かに柔らかくする。強くすった墨液で描くと、墨がちって墨色が濁る。墨をすると熱を発するので、時々水を足して冷やしながらする。古来、墨は朝露ですれ等と言われるのは、冷たい水の方が粒子の細かい、すんだ色の墨がすれるということである。墨の色が濁るのは、煤を包む膠の層が破れてしまうからである。また、筆のしごき方、墨の付け方、墨のなじませ方等という基礎的な話も丁寧にしてくださり、皆熱心にメモをとっていた。質問にも丁寧に答えていただき、あっという間に昼食時間に食い込んでしまった。
 定刻より遅れて、宴会場で昼食。ジャンボ・エビフライ定食に舌鼓を打ち、すぐに、会議室へ戻って、今度は先生の作画を見学。といっても、先生は写生をする暇もなかったので、参加者の写生を墨絵にして見せてくださった。一筆動かすごとに、参加者から感嘆のため息が漏れる。何を省略して、どこを濃く、どこを薄く描くか、大いに勉強になった。
  
参加者のスケッチ(左)が藤原先生の手にかかるとご覧の通り(右)。

 三角形の構図作り、アクセントになる事物を描き込む画面上の重量バランス、視点の高低の取り方、葉の線の交わらせ方、描線の弾き方、画面の三分の一ないし四分の一を目指して線を引いていくこと、そのときの左手の使い方等々、具体的に見ながら教わるので非常によくわかったことと思う。
 2時に終了して、宿の前で記念撮影。タクシーで駅へ向かう先生をお見送りし、我々も帰路についた。参加者の希望で、佐久インター前の土産物店に立ち寄ると、農協の販売所があり、りんごや野菜が売られていた。また横川駅の「峠の釜飯し」やゆで栗、ソフトクリームなども売られていて、買い物を楽しんだ。天気は時折日が差すぐらいに回復してきたが、高速に乗り、妙義荒船のトンネルを抜けると急変、どんよりとした空に雨が混ざった。我々が研修会を行ったところだけが天候に恵まれていたようだ。バスの中では、小諸を舞台にした「男はつらいよ」第40作が上映され、それを楽しむうちに、渋滞もなく八王子まで戻ってくることができた。予定時刻より30分ほど遅れたが、事故もなく無事帰着することができた。ゆったりとして楽しい有意義な研修会となったと思う。



(2004.11.8 文責:全国水墨画協会事務局)






全国水墨画協会事務局
(c) 2004KUBOTA JUN.