書籍感想記録(1999-09)


03-Aep-1999

【文庫】宇宙英雄ローダン・シリーズ<20> 精神寄生人の陰謀」早川書房(ハヤカワ文庫SF162)
 「三惑星系(Die Welt der drei Planeten)」クルト・マール(松谷健二訳)
 「精神寄生人の陰謀(Aktion gegen Unbekannt)」クラーク・ダールトン(松谷健二訳)
を収録。
 銀河の広大な領域に君臨するアルコン帝国。 しかしその<大帝国>は過去のアルコン人の作った<大調整官>… 巨大ポジトロン脳に一切の支配を委ね、退廃の極みにあった。 <大調整官>によって外惑星ナートに禁足されたローダンは、 技術と智恵を駆使してアルコンへの潜入をもくろむが…
 <大調整官>ことロボット摂政登場。 まだその全貌は明かされていないが、退廃の極みに陥った大多数のアルコン人と異なり、 当面ローダンたちテラナーの敵となる強大な存在である。 コンピュータが人類に敵対するというのは古典的なテーマではある。 インペリウム級を遥かに凌ぐ新型ウニヴェルズム級超弩級戦艦が登場し、 しっかりそれをかっぱらうローダン。 後半はロボット摂政とは別の不気味な敵の影も見え隠れして、 銀河中枢星域は陰謀の嵐。敵が揃ってきてますますおもしろくなってきた。


05-Aep-1999

【ハードカバー】「巷説百物語」 京極夏彦 角川書店
 巷にあやかしが騒ぐ刻、又市の鈴の音が薄闇に染み渡る…
 角川書店の”妖怪マガジン”「怪」に連載されていたものをまとめたもの。 「幻惑が操る巧緻な妖怪小説」というのがオビの煽り文句だが、 これは「妖怪小説」というより「時代劇小説」である。 固定化されたレギュラーキャラクターが様々な怪異な事件に関わっていき、 最後にその真相があかされる…この「お約束」な展開が京極夏彦の筆で語られるとあっては、 たまらない。 広くとれは「ミステリ」といえなくもなし、そういう楽しみもあると思われるが、 やはりこれは「時代劇」としてイメージして楽しむのが個人的にはお薦めである。 「御行奉為」…の又市を介してリンクしている 「嗤う伊右衛門」は少々「固い」感じがしたが、 この本は基本的に短編集であることも手伝って気楽に楽しめる一冊である。


06-Aep-1999

【文庫】宇宙英雄ローダン・シリーズ<21> 宇宙船タイタンSOS!」早川書房(ハヤカワ文庫SF166)
 「巨人のパートナー(Der Partner des Giganten)」クラーク・ダールトン(松谷健二訳)
 「宇宙船タイタンSOS!(Raumschiff TITAN funkt SOS)」クルト・ブラント(松谷健二訳)
を収録。
 惑星ツァリトのに潜伏したローダン一行は、 支配者デメソルのアルコン帝国に対する叛乱の意図を知る。 ローダンは謎の異星人に操られたこの叛乱に対する地下運動を密かに支援して、 叛乱を防ぐことでロボット摂政に対して自らとテラの安全を確保しようとするが…
 前巻から引き続きの帝国版図の一星系の叛乱に関わってしまったローダン一行が これを奇貨としてロボット摂政との交渉に臨む前半部分の見所は、 すっかり普通の女性のようになってしまったトーラか。 グッキーがブリーに自分の毛皮をなでさせるあたりは、 やっとお約束がでてきたというところ。 やはりグッキーとの掛け合いはブリーが相手のほうが面白い。 後半はツァリトの叛乱を収めたローダンの部下たちの大半が 「ハイパー多幸症」に冒されたところに、謎の宇宙船が出現し危機に陥る。 いよいよモーフを操っていた黒幕が出現して次回に続くというところ。 続けて読めばよかった…


13-Aep-1999

【文庫】宇宙英雄ローダン・シリーズ<22>  銀河の麻薬商人」早川書房(ハヤカワ文庫SF171)
 「銀河の麻薬商人(Rauschgifthandler der Galaxis)」 クルト・マール(松谷健二訳)
 「人間とモンスター(Der Mensch und das Monster)」 K.H.シェール(松谷健二訳)
を収録。
 ハイパー多幸症に冒され徐々に衰弱していくブリー達。 その原因が人工の化学物質であると知ったローダンは、 増員された部下の慣熟を待って、ハイパー多幸症の手がかりを求めて惑星ホルヌに向かう。 派遣された偵察隊の一隊を率いたティフラーはナータンと名乗る怪人物に出会うが…
 ハイパー多幸症の元凶、銀河の悪徳医師(といったら言い過ぎかもしれないが)アラス登場。 薬も売るけど儲けになるなら病もばらまく立派な悪役ぶりはまだ噂レベルでしか表現されていないけれど、 この巻はとりあえず「顔見せ」とモーフの秘密の解明という感じである。 モーフの親分がとりあえず仲間になったが、次巻はいよいよアラスの本拠地アラロンへの突入。 さてどうなるやら。 ハイパー多幸症でほとんどの主要人物が使い物にならなくなっていると、 まだキャラが出そろってない段階だとローダンが1人で活躍せざるを得なくて、 ちょっと弱いかな、という気がする。


15-Aep-1999

【文庫】宇宙英雄ローダン・シリーズ<23>  銀河の病巣アラロン」早川書房(ハヤカワ文庫SF176)
 「銀河の病巣アラロン(Seuchenherd Aralon)」 クラーク・ダールトン(松谷健二訳)
 「アルコン鋼商売(Geschäfte mit Arkon-Stahl)」 クルト・ブラント(松谷健二訳)
を収録。
 「ハイパー多幸病」の原因をつきとめたローダンは、その元凶アラスの中央世界アラロンに向う。 アラス族はアルコン帝国の「病院惑星」ともいうべきこの惑星で 病気を作り出し、それに感染した患者から治療費として膨大な利益を得ていたのだ。 ローダンはトーラ、ブルを始めとする仲間を救うためにトリック作戦を展開するが…
 対アラス編はここで一応カタがつく前半はティフラーを使ったトリック作戦。 あっさりと失敗するがなんだかんだで血清を入手して一応は大団円。 アラスは医師と考えれば悪徳だけど、スプリンガーの支族であることを考えれば 商売に手段を選ばないのはむしろ当然、ローダンが正義をかざすのはいいけれど、 スプリンガーの族長会議で似たようなことやったローダンがいうとちょっと説得力に欠けるような…。 後半は前半で敗北したアラスがスプリンガーと超重族を巻き込んで、 ローダン=テラに復讐を開始しようとするが、それを察知したローダンが 久しぶりに登場のトプトルの船に記載されたテラのポジションを改竄する作戦。 超重族を味方につけて、さらにそこからトプトルをも中立にしてしまって 改竄作戦は一応成功。でもブルとミュータントが…。 「地球替え玉」作戦開始にあたって不吉な気配が…。


17-Aep-1999

【文庫】宇宙英雄ローダン・シリーズ<24>  地球替え玉作戦」早川書房(ハヤカワ文庫SF179)
 「ゴム応答せず(Gom antwortet nicht)」 クルト・マール(松谷健二訳)
 「地球替え玉作戦(Rotes auge Beteigeuze)」 クラーク・ダールトン(松谷健二訳)
を収録。
 トプトルの船のポジトロニクスに保存されたテラのポジションを改竄することに成功した ブルとミュータント部隊の面々であったが、帰還の途中、謎の惑星ゴムに引き寄せられてしまう。 不時着したブルたちはそこで原住生物ゴムスとアラスの作った合成人間にでくわすが…
 前巻の続きで惑星ゴムに不時着したブル一行の活躍を描く前半。 言葉づかいも悪く、ローダンほど聖人君子でもないが、ブルのほうがより「人間らしい」感じがして、 この話での活躍やミュータントたちとのやりとりなど ローダン主役の金星の冒険より面白い気がする。 単に個人的にはブルのほうを贔屓にしているからかもしれないが。
 後半はいよいよ「地球替え玉作戦」開始。「替え玉」となるべきベテルギュース系の第三惑星に 到着したデリングハウスらはそこにかつての仇敵トプシダーを発見するが、 機転を利かせて、テラに有利になるようにしむける。 それはトプシダーとスプリンガーを互いに誤解させて戦闘させる、というもの。 あざとい手段だけれど弱小勢力のテラとしては悪くない手。 この話でもローダンよりもデリングハウス以下の派遣部隊の面々が活躍しているのだが、 さすがに50話近くもなると「脇役」も揃ってきたので すべてローダンがいなければだめ、という状態からも脱却できて話に幅がでてきてると思う。

【文庫】宇宙英雄ローダン・シリーズ<25>  地球死す」早川書房(ハヤカワ文庫SF184)
 「地球死す(Die Erde stirbt)」 クラーク・ダールトン(松谷健二訳)
 「アトラン(Der Einsame der Zeit)」 K.H.シェール(松谷健二訳)
を収録。
 ブルとミュータントたちの活躍で改竄されたデータに従いベテルギュースに誘導された スプリンガー艦隊とデリングハウスらの計略でスプリンガーの目的を誤認したトプシダーは 互いの誤解に気づくことなく戦闘状態に入る。 しかし、かつて太陽系に侵攻した超重族族長トプトルは、赤色巨星ベテルギュースをみて ここがテラではないことに気づきはじめていた。 このままでは「地球替え玉作戦」は瓦解してしまう。 作戦成功のためにローダンはトプトルの行方を追うが…
 すんなりうまく行くかとおもわれた「地球替え玉作戦」も 自らの誤謬に気づいたトプトルによって危機に陥る。 もっともグッキーの活躍で事無きをえたものの、 結果的には巻き添え食った形のトプシダーがなんとなく哀れ。 それにしても「黄色」のソルの代わりに「赤色」のベテルギュースを選ぶあたりが まず間違っているような気がしなくもないのだが…
 後半はいよいよサイクルが切り替わり、 新サイクル「アトランとアルコン」サイクルの重要人物アトラン登場。 今回はとりあえず捕虜になったアトラン…アルコン人である以外、 まだその出自は明らかにされていないが、妙なところで 「テラナーよりテラナーらしい」のが楽しい。 今回はいきなり一人称で始まるので戸惑うが、 前の話から一気に半世紀を飛び越え、「太陽系帝国」に成長した姿を 長い眠りについていて情報のなかったアトランの一人称形式で語らせるのは、 飛び越えた時間の分の説明をするになかなかうまいと思う。 シェールの面目躍如、といったところか。


18-Aep-1999

【文庫】グイン・サーガ<42>  カレーヌの邂逅」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 シルヴィア奪還の命を受け、黒竜騎士団を率いるグインの元に モンゴール-クム連合軍よりの会見の申し入れがあった。 両軍の中間地点、名も知れぬ寒村カレーヌで、袂を分かったかつての友、 いまやモンゴール左府将軍となったイシュトヴァーンと相見えることなったが…
 18巻で喧嘩別れとなったグインとイシュトヴァーンの再会の話。 イシュトヴァーンが一方的にグインを憎んでいたのと、 外伝1巻で明らかに敵となっていたことからどういう再会になるのかと思ったら、 グインの「ごめんなさい」作戦であっさり仲直りしてしまった。 これでなんとなく気がおさまったのか、 イシュトヴァーンが昔の彼に少しもどったようでなんとなく安心。 まあ、後でまたキレるんだろうけど…


19-Aep-1999

【文庫】グイン・サーガ<43>  エルザイムの戦い」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 イシュトヴァーンとの和解のなったグインはついにエルザイム攻略の決断を下す。 総攻撃の行われる中、グインはエルザイムをイシュトヴァーンに任せて シルヴィア誘拐の主犯ダリウス大公のいるバルヴィナへ向かうが…
 和解したグインとイシュトヴァーンが肩をならべて戦う、 というのはなかなかいいなぁ、と思った。 やはり1巻からの仲間で数々の冒険を共にした2人が憎み合う (イシュトヴァーンが一方的にキレてるだけだが…)のはなんとなく気分がよくないからだ。 後半は一転、今は亡きゴーラ皇帝サウルの眠るバルヴィナ攻め。 悪役のダリウスが悪役らしい、結構いい死に場所というかシーンを割り当てられたなぁ、 というのが感想。グインを手に入れられなかった人々の「可愛さ余って憎さ百倍」 というのをよく説明してくれたので、 いずれイシュトヴァーンがこういうことを思うようになるんだろうな…と思った。

【文庫】グイン・サーガ<44>  炎のアルセイス」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 エルザイム・バルヴィナを陥落させた連合軍は一路、公都アルセイスを目指す。 しかしシルヴィア誘拐にユラニアの責任のないことを知ったグインは 最早ユラニアと事を構える気はなかった。 平和裏に事を済ませようとするグインであったが、 イシュトヴァーンをゴーラ王にするための布石として、 その勇名を世界に知らしめるべくアリストートスの策略が始まる…
 <青髭>オー・ランもネリィも随分「丸くなった」なぁ、というのが最初の感想。 まあ、この程度まで衰えていなければイシュトヴァーンの王への道は開けないわけだけど。 <ドールに追われる男>イェライシャ再登場…というか「本体」は初登場か。 <闇の司祭>グラチウスが彼自身のいうよりもレベルの低い存在であることが イェライシャから語られたが「ほんとかいな」という感じ。 どうもお互いにけなしあってるようにしか見えないのだが…
 ともあれこの巻でグインは一旦「本編」から退場。続きは「外伝」で。

【文庫】グイン・サーガ外伝<10>  幽霊島の戦士」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 ケイロニア皇女シルヴィア奪還のため単身アルセイスを旅立った。 イェライシャの導きにより目指すは<死の都>ゾルーディア。 しかしそこはかつてグインの訪れたゾルーディアではなく、 シルヴィアを連れ去ったグラチウスにより魔物の跋扈する魔の都と化していた…
 いきなり「グインの軌跡」と称する本編1巻からの粗筋が 10ページほど記されている。 それはまあいいのだが、粗筋の冒頭で「この冒険行にグインが出かけてから、 すでに本篇で10巻以上刊行されている」 という記述があるのだが、「おいおい、よく考えたら主役が活躍するんだから、 こっちが本篇で向こうが外伝違うんかい」とツッコミいれてしまった。
 内容的にはすっかり陰謀劇と化している(らしい)本篇と違って、 魔道師、妖魔、怪物が現れる立派なファンタジー。 個人的にはこういうののほうが好み。 どうも陰謀劇というのは性に合わないらしくって。 しかし次の巻からキタイへの冒険に入るわけだが、 なんだかキタイにいかせるための記述が随分強引だったような気がする。

【文庫】グイン・サーガ外伝<11>  フェラーラの魔女」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 シルヴィアとマリウスの行方を求め、 ザザとウーラを従えて旅をするグインの前に現れたのは妖魔と少女。 妖魔と人が共存する都市フェラーラに住む2人は恋仲であったが、 フェラーラの女王によって少女が生け贄にされかけているというので グインに助けをもとめにきたのだが…
 前巻とかわらず死霊も平気ででてくるわ、 都市には妖魔と人が共存しているわと中原とはまったく違う世界が展開される。 出てくる連中がそろいも揃ってグインのことを「豹頭王」と呼び、 なんらかの秘密をしっているような事をいうのだが、 もしかして中原以外の世界ではグインは有名人で、中原が遅れてるだけなんじゃねーか、 と疑う。 女神アウラ・シャーなんての現れてグインの秘密のほんの一端を明かしているが、 こういう重要なことを外伝でバラしていいのか?と思う。 やっぱりこっちを本編でやるべきだよなぁ。

【文庫】グイン・サーガ外伝<12>  魔王の国の戦士」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 グラチウスの魔道によってグインが飛ばされた先は キタイの旧都ホータンであった。彼はそこで大男に襲われている少年を助ける。 それが縁で少年、シャオロンの属する孤児のグループの協力を得て、 シルヴィアとマリウスの居場所の手掛かりとなる「さかさまの塔」を捜すが…
 いよいよホータンにやってきたグイン…なのだが、 名前や固有名詞がちょっとちがうだけでどうも中原との区別がないような気がする。 そもそも彼らはどこの言葉でしゃべっているのか? もしかして世界中で言葉が共通? 距離の単位が「モータッド」だったりしてそれも中原と同じだしなぁ。 妙なところで疑問があふれる。 せっかく異質な文明の国にきたのだから、その世界の描写にもうちょっと力をいれてもいいとおもうのだが。 ともあれマリウス救出は完了。

【文庫】グイン・サーガ外伝<13>  鬼面の塔」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 マリウスを救出したグインは彼を青鱶団にあずけ、 シルヴィアを救うために彼女の連れ去られたという鬼面の塔を目指す。 彼の行く手に立ちふさがる謎の暗殺者集団。グラチウスの罠がグインを襲う…
 謎の暗殺教団登場。「一定時間毎に薬を飲まないと死んでしまう」…って お前ら「ゲルショッカー」かい。 意志をもち、グインの過去をしっているような瑠璃=ユーライカなども現れ、 最後には物神ライ=オンだのもでてきて立派なファンタジー続行中。

【文庫】グイン・サーガ外伝<14>  夢魔の四つの扉」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 鬼面の塔の内部に歩を進めたグイン。 そこは異次元ともいえる四つの世界からなる空間であった。 巨大な蜘蛛、太古の種族サイクロプスの生き残り、幻惑する妖魔などが 次々にグインに襲いかかるが…
 四層構造の鬼面の塔をクリアしていくグイン。うーんRPGみたい。 敵はいまいち雑魚っぽいのが多くて、いまいちだし、 なんだかライ=オンの兄弟がぽこぽこやられるのはなんだかなぁ、という感じ。 あやしげな惑星にとばされてク・スルフというおっさん(?)に出会うが、 この人(?)やったり「クトゥルー」なんだろうか?

【文庫】グイン・サーガ外伝<15>  ホータン最後の戦い」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 グインとライ=オンとの戦いは雷雲神将ゾードをも加え激しさを増す。 苦戦するグインであったがなんとか彼らを倒したグインはついにシルヴィアを発見するが、 捕らえられていた場所は巨大な宮殿の中であった…
 激しさはましたが、なんだかあっさりたおされたライ=オンとゾード。 前巻もそうだが、なんだか戦闘が随分あっさりしているような。 暗殺教団もとい望星教団の教主ヤン=ゲラールも登場したが、 なんだかいまいちぱっとしない。もうちょっと秘密があるとか、 ヤンダル=ゾックについて語るかとおもっていたのだが。 <黄昏の国の戦士>篇はこれで完結するわけだが、 最後はなんだかおお慌てでまとめたような印象がある。 他国の歴史にあれだけ干渉しておいてそのまま去っていくグインというのが なんだか随分無責任にみえる。まあ任務は果たしたわけだけど、 なにかもう1冊分くらい書いてフォローしてほしかったような。


21-Aep-1999

【文庫】グイン・サーガ外伝<16>  蜃気楼の少女」 栗本薫 早川書房(ハヤカワ文庫JA)
 シルヴィア奪還を果たしたグインは、キタイを脱出して中原へと向うが、 グインの選んだルートはかのノスフェラス。そこで彼を待っていたのは 「蜃気楼の娘」という古代の霊であった…
 外伝15巻までの<黄昏の国の戦士>シリーズの後日談にして、 本編67巻とのリンクとなる話。 <黄昏の国の戦士>はグイン不在の本編以上に本編としての体をなしていたが、 「蜃気楼の少女」も例外ではなかった。 この本ではついにカナン帝国の滅亡が明らかにされる。 伏線は既に引かれまくっているので目新しさはないが、口絵の「巨人」ともども、 「グイン」はヒロイックファンタジーにとどまらない「SF」なんだなぁ、と実感させてくれる。
 舞台がノスフェラスということで、妖しの者達もでてくるが、 グインの王国ということでセム・ラゴンとの再会もあり。 これもなかなか良いが、この本はやはりシルヴィアであろう。 イラストが未弥純氏になってからイメージが「儚げな少女」になっていたこともあり、 この話のシルヴィアは所々グインを意識しているのがはっきり分かるところがあり、 「結構可愛いところあるなぁ」と思った。 これでグインとラブラブモード全開というとこだろうか…でもそんなに簡単には幸せにはなれないんだろうなぁ。


24-Aep-1999

【新書】「人形的モナリザ」 森博嗣 講談社(講談社ノベルズ)
 避暑地の施設博物館「人形の館」の常設ステージで、衆人環視の中、演者が謎の死を遂げた。 殺人者は発見されず事件は謎に包まれる。さらに被害者の一族の一人が 2年前にも謎の死を遂げていたことが発覚し…
 保呂草・紅子シリーズ…というのか新シリーズの第2作目。 今回は謎めいた一族にまつわる殺人事件を保呂草・紅子・練無・紫子の4人が解決… というか関わる。一応解明はするのだが決して解決はしてないような気がする。 もしかして「ミステリ」というより「ピカレスク」の類なのかもしれない。 前作が「顔見せ」としたら今巻から本番のはずなのだが、 ちょっとパっとしなかった印象。「天才」のはずの紅子がいまいち冴えなかったのが主な原因だと思うし、 「ホームズ」となるべきキャラはわかっているけど、 「ワトソン」となるべきキャラがはっきりしないので、 そのあたりの解明プロセスが明確でないのが気になった。


Author : suita@terra.dti.ne.jp