コミック感想記録(2000-12)


02-Dec-2000

星野之宣「エル・アラメインの神殿」 メディアファクトリー(文庫/MF文庫/ISBN4-8401-0189-2)
 第2次世界大戦時のドイツ軍の兵がエジプトで発見した壁画には歴史を覆す驚くべき事実が…という表題作他5編からなる短篇集。 このうち4編は大戦中のドイツ軍に関するもので、残り2編はなんともいえない「問題作」であるもの。 4編のほうは真面目で、こじんまりとしているが星野作品らしいものに仕上がっているが、 なんといっても残り2編の「国辱漫画」と「国辱漫画2 G.H.Q.」。 いつもの真面目な絵柄でここまでやってくれるとは、星野之宣を見損なっていたようだ。 かなり大笑いさせてもらったが、これを出した出版社というはのかなり勇気あるとしかいえない。 作者があとがきで書いているが、第3作もなんらかの形で読んでみたいものだ。


04-Dec-2000

森山大輔「クロノクルセイド」2巻 角川書店(A5/角川ドラゴンコミックス/ISBN4-04-926152-9)
 6月に購入して読んでいたのだが、メモしてなかったので3巻購入を機に再読。 とりあえず「導入」と「紹介」的な1巻を受けて、 この巻ではロゼッタとクロノの出逢いと、彼らの持つ宿命がメインに、 当面の敵となる存在とそれに立ち向かわねばならないクロノとロゼッタ、 そして彼らとともに歩むことになったアズマリアが旅立つところまでが描かれる。 多少ウェットなところのある、派手なガンアクションもの、という感じがしていたこの作品も なかなかにシビアな話が展開するようである。 敵が敵だけに、完全なハッピーエンドにはなりそうもないが、その間できっちりキャラクターを描ききってほしいと思う。
 それにしても尼僧が主役の作品で巻頭からカラーでサービス満載とは気合が入っている。

森山大輔「クロノクルセイド」3巻 角川書店(A5/角川ドラゴンコミックス/ISBN4-04-926161-8)
 ロゼッタ・クロノ・アズマリアの一行とであった"宝石の魔女"ことサテラ=ハーベンハイト。 "尖角のない悪魔"を探す彼女がクロノの正体を知ったとき…という展開から始まる第3巻。 主人公一行の一人が「仇」で、それを狙うキャラクターが登場…という、 「時代劇」みたいな展開であるが、個人的には結構好きだ。 サテラを仲間に加えて、敵へと向かう一行の前に現れた新たな悪魔は サディスティックだが妙に人間っぽくて、アイオーンという敵の首魁が必ずしも完全な悪ではなく、 むしろそれに取り込まれ掛けているロゼッタの弟ヨシュアのほうが最後の最後で、 キレて悲劇が…という展開になるのではないか?とか思ったりする。
 センターカラーの部分がいささか粗かったり、 描き分けも粗かったりするので作者も大変なのかと感じるのだが、 クオリティを保ったまま最後までいってほしいものだ。


09-Dec-2000

あさりよしとお「まんがサイエンスVII」 学習研究社(A5/ノーラコミックスDELUXE/ISBN4-05-602252-6)
 学研の「5年/6年の科学」に連載中の作品の久しぶりの単行本化。 今回はテレビやカメラ、望遠鏡などの仕組みをいつものメンバーでおちゃらけつつもしっかり解説するのはかわらず。 まあ、いつものペース、というところか。 テレビやビデオについては「ふーん」という程度であったが、望遠鏡の仕組みはちょっと知らないこともあったので、 結構新鮮な気持ちで読めた。


10-Dec-2000

ほったゆみ・小畑健「ヒカルの碁」10巻 集英社(新書/ジャンプコミックス/ISBN4-08-873047-X)
 プロ試験続行中。星の潰し合いの中、ヒカルと伊角さんが激突。 秀英との戦いをみてヒカルを意識するあまり反則をしてしまう伊角さんとそれを指摘することで楽に勝とうとして自己嫌悪に陥るヒカル。 基本的にはヒカルがより強くなるためにステップとしての話なのであろうが、 落ち込んでから復活する伊角さんの方に目がいってしまうのはぼくだけではあるまい。 この数話については伊角さんの美形化が加速度的に進行していった時期であり、 話の展開とあいまって妙に人気の上がっていた頃でもある。 後半では越知がアキラからヒカルとの因縁を聞き、戦慄するところもあり、 本来主役であるはずのヒカルやアキラよりも脇役の異常なまでにスポットの当たりやすいマンガであるなあ、と思う。

鈴木央「ライジングインパクト」9巻 集英社(新書/ジャンプコミックス/ISBN4-08-873048-8)
 ガウェインに飛距離で敗北したクエスターのために米国が脱落する中、 ついに実力を発揮し始めた英国ペアの前に調子が崩れ始める日本ペア、ガウェインとランスロット。 なんだかんだいってもガウェインを見下していたことで、自分への責任を必要以上に感じるランスロットが、 いつも前向きでいつのまにか成長していたガウェインに触発され、日本ペアが復活するあたりと、 ガウェインに叱咤されることで復活するクエスターなど、非常に少年マンガっぽく、さわやかでいい。 もっとも、その過程で英国ペアの影が薄くなったのは事実で、 もう少し重要な描き方をされるべきスフィーダが少々等閑になったのは残念なことだ。
 次の敵となるトリスタンも登場し、次巻からはいよいよ個人戦。 少々キャラクターが多すぎるけれど、しっかり描ききれるか?


12-Dec-2000

平野耕太「HELLSING」3巻 少年画報社(B6/YKコミックス/ISBN4-7859-2047-5)
 1年振りの第3巻。"Order is Only One. Search and Destroy"…殺して殺して殺しまくる、としか表現しようのない展開。 本編の内容や展開などどうでもいいと思えるくらい殺しまくってるだけなのだが、 キレまくった連中の動きや間のとりかたなど、妙に面白いのが不思議だ。 どいつもこいつもキレまくっているため、「普通」なセラスの方が異常に見えるというのも面白い。 いまいち出番が少ないが、数少ない女性キャラなのでもっとがんばってほしいところ。 南米での敵が昔のエロ系のころのキャラの復活組ということだが、 きっとこれまでの敵以上にキレてくれて、さらに面白くしてくれることだろう…って相当ヤバいマンガみたいだ。 実際かなりキているが妙な規制にかからなきゃいいけど。


15-Dec-2000

貞本義行「新世紀エヴァンゲリオン」6巻 角川書店(B6/角川コミックス・エース/ISBN4-04-713380-9)
 TV版でいえば、壱拾七・壱拾八話にあたるエピソード。 シンジの友人、鈴原トウジが「フォースチルドレン」に選ばれ、 エヴァ参号機に搭乗することになったが、その参号機は既に使徒に支配されており、それと戦うシンジたちは… という話であり、TVとの大きな差は「シンジがトウジがパイロットに選ばれたことを知っている」 ということで、最初からシンジの心の葛藤が描かれており、 そこに至るまでの心理描写もTV版ではなかった細かいところまで描かれている。 TVと同じにしないことで、結末は見えている…多少違うが…ものを違った面で読ませるというのには成功していると思う。 連載が少々不定期のようなところもあり、「いつ完結するのか」ということについて危惧があったのだが、 この調子なら案外うまくまとまってくれるかもしれない。 是非コミック版ならではの結末をも見せて欲しい、と期待する。

18-Dec-2000

加藤元浩「Q.E.D.証明終了」7巻 講談社(新書/月刊少年マガジンKC/ISBN4-06-333734-0)
 燈馬の友人・知人のMITの秀才達が次々に殺害され、そこには謎めいた数式が…「Serial John Doe」と 花屋の不可思議な現金消失事件「憂鬱な午後」の2編を収録。 オビには前者が「数学ミステリ」、後者が「シチュエーションパズル」とされているが、 後者はともかく前者は数学ミステリかなあ、と疑問に思わないでもない。一応数式はでてくるけど…。 比較的「地味目」の「Q.E.D.」には珍しく海外にも行くけれど、この結末が結構「地味」で、 この作品のカラーを逸脱してないので、却って良い感じだ。 「憂鬱な午後」のほうは打って変わって殺人など起こらないけれど、 少し哀しさを漂わせ、悪くない余韻で終わるいい感じの作品。 「事件」といったら「殺人」と思われがちな「ミステリマンガ」であるけれど、 しっかり練れば、こういった題材でも立派な作品になる良い例だと思う。

加藤元浩「Q.E.D.証明終了」8巻 講談社(新書/月刊少年マガジンKC/ISBN4-06-333750-2)
 バンジージャンプする施設が使用中止になった原因となった過去の事件を探る「フォーリング・ダウン」と 燈馬たちの学校の学園祭での騒動を描く「学園祭狂騒曲」の2編を収録。 「Q.E.D.」のいいところは、やたらと「殺人」や「トリック」に頼り過ぎないところであって、 ふとした日常の不可思議を題材にしても立派なミステリに仕立てるところにあると思う。 それを踏まえてこの巻を読むと、「フォーリング・ダウン」のほうは、 「殺人のための機械的トリック」が見えすぎて、少しあざといかな、と思える。 それでも犯人の動機やそこにいたるまでの過程や結末がしっかりしているので、 そう悪い作品ではないし、偶発的な殺人との遭遇という手段を使ってない点には好感が持てる。 後半の「学園祭狂騒曲」は人は死なないけれど、学園祭の会場設営で起こった事件をとりあつかっていて、 一つ一つは別に不思議でもなんでもないのに、複数の人間の思惑が微妙に絡むことで不可思議になる、 という状況を上手く描いている作品だ。 あまり「キャラ萌え」といったものには縁の無い作品…それはそれでいいことだが…であるが、 ここではかつて孤独だった燈馬が可奈を始めとする普通の人々と触れ合うことで、 少しづつ人間らしくなっているところが描かれていて、シリーズものとしての楽しみを忘れていないので、 読みつづけている読者として少しうれしくなった。


19-Dec-2000

矢上裕「エルフを狩るモノたち」16巻 メディアワークス(B6/電撃コミックス/ISBN4-8402-1731-9)
 続きも続いてついに16巻。「エルフは脱がーす!!」が主題だったはずなのだが、 エルフに関連する話が少なくて、話自体が低調とは思わないけれど、 メリハリがないというか、当初の目的を見失ってきているのではないかと少々気になった。 キャラクターは相変わらずバカでそれぞれ動いてはいるのだが、かつてほどのパワーは感じない。 そういう中で「白にこだわるモノたち」は愛理のキャラが妙に立っているあたりが面白かった。 この形式でずるずる続けるのも悪くないが、ぼちぼち一度「仕切りなおし」していいような気がしてきた。


21-Dec-2000

皆川亮二「ARMS」15巻 小学館(B6/少年サンデーコミックススペシャル/ISBN4-09-124895-0)
 エグリゴリの本拠、カリヨンタワーに突入するARMSオリジナルとその一党。 この巻ではバトルが最初のグリーンvsホワン、そしてカリヨンタワー突入後のものくらいで、 半分くらいはバトルのない「溜め」的な感じがする。 グリーンvsホワンの戦いは強さのインフレが進んできて、 収集つかなくなっている帰来の有るこの作品のバトルの中では、 なかなかいい見せ場であるように思った。 逆に涼と隼人がエグリゴリのサイボーグ達と戦うあたりはインフレが悪いほうにでていて、 なにをいまさら…という感が漂うのは作品が長く続いた悪影響であろう。 精神的に落ちついたARMSオリジナル達の相手としてはキースシリーズくらいのものなので、 ぼちぼち出し惜しみをしないでラストまで突っ走っていって欲しいと望む。

久米田康治「かってに改蔵」10巻 小学館(新書/少年サンデーコミックス/ISBN4-09-125540-X)
\ 相変わらず、小ネタとトラウマでちくちくと笑いを誘う。 いろいろなネタを探してくるなあ、と毎回感心するけれど、 さすがに10巻までくると新鮮なネタをみつけてくるのが大変なのか、 話によってはいまいちなものも混ざってきている。 ギャグマンガで水準以上を保つのはやはり難しいものなのか。 この巻に収録されている話では「大人の時間」のやつと「学校の七納得」「お世話様」のが面白かった。 こういう水準の話をなんとかうまく続けていってほしいものだ。


22-Dec-2000

藤崎竜「封神演義」23巻 集英社(新書/ジャンプコミックス/ISBN4-08-873059-0)
 最終巻。仙道全てが力を合わせてジョカとの最終戦に望む。 連載時にはやや低調な印象を持っていたが、この巻だけ読むと、 仲間の協力・かつての敵との共闘などジャンプ漫画らしい要素が詰まっていて、 妲己の地球との融合や太公望の消滅と復活なども結構面白く読めた。 ただ、全巻を通してみると、この「対ジョカ最終決戦」は蛇足というか、消化不良な感は否めない。 これがもう少しうまく纏まっていれば…と思うが、 全23巻を通してそう大きな破綻もなく、ジャンプの人気マンガの例に従わずに、 大団円を迎えたのは実はすごいことなのかもしれない。 トータルでみれば出だしは多少の不安はあったが、 ラストはすっきりまとまって結構良い最終回であったから、 作品としての「封神演義」は成功作であったと思う。


Author : suita@terra.dti.ne.jp