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エルナクラム市場の主役はバナナだ。南インド各地からトラックに満載されたバナナが、まだ暗いうちからぞくぞくと集結し、仕切り場=通称バナナ広場に種類別に並べられる。それらはやがてセリ落とされ、野菜市場内の仲卸業者の軒先にぶら下げられる。圧倒的なバナナの群れは、肉市場のビーフやマトンのように堂々とした風格がある。バナナの葉も束になって売られている。これは多くの食堂で使い捨ての皿として使われる。 南インドにはミールスと呼ばれる一種の定食がある。北インドではターリーと呼ばれ、近代になってステンレス製の丸いお盆に数種のカリーとライスが盛られるようになったが、この定食形態は、宗教的儀礼の場から発しているといわれる。本来なら、北部では沙羅(さら)双樹の葉に、南部ではバナナの葉に盛られるべきものであったという。浄・不浄の観念が社会通念として存在しているインド、とりわけ南インドにおいてバナナの葉は最も浄性の高い皿=食器であろう。 |