ERNAKULAM-06-2.3 バナナ問屋 1982

一番左が、カゴやザル等々を扱う荒物屋。あとは、バナナ問屋がずらりと並ぶ。

運搬用の小型トラクターが狭い路地を我がもの顔で往来している。そういえば、この市場内に犬や豚、牛の姿はみあたらない。

ここも、バナナ問屋街。店先に並んでいるのは、束になったバナナの葉(本文参照)。

絵には描ききれなかったが、市場内の路地は、野菜や果物のカスが折り重なって、踏み固められ、クッションのようにふかふかしている。屋根の上の構造を観察するために、一番ふかふかしている所をトランポリンがわりにしてぴょんぴょんジャンプしたりした。

 エルナクラム市場の主役はバナナだ。南インド各地からトラックに満載されたバナナが、まだ暗いうちからぞくぞくと集結し、仕切り場=通称バナナ広場に種類別に並べられる。それらはやがてセリ落とされ、野菜市場内の仲卸業者の軒先にぶら下げられる。圧倒的なバナナの群れは、肉市場のビーフやマトンのように堂々とした風格がある。バナナの葉も束になって売られている。これは多くの食堂で使い捨ての皿として使われる。

 南インドにはミールスと呼ばれる一種の定食がある。北インドではターリーと呼ばれ、近代になってステンレス製の丸いお盆に数種のカリーとライスが盛られるようになったが、この定食形態は、宗教的儀礼の場から発しているといわれる。本来なら、北部では沙羅(さら)双樹の葉に、南部ではバナナの葉に盛られるべきものであったという。浄・不浄の観念が社会通念として存在しているインド、とりわけ南インドにおいてバナナの葉は最も浄性の高い皿=食器であろう。