父、母、夫、私の4人家族。
昼食と夕食を作るのは私の役目だ。
畑でできる野菜やご近所の農家からいただいたく野菜が大量に集結することがよくある。
また、うちは牛の畜産農家なので大量の牛肉が冷凍庫に待ちかまえていることもしばしばだ。
70代の味には保守的な両親である。いろいろと味の冒険をしてみるわけにもいかない。
今日はどうしようと頭を悩ませるが、そんな制限があるところも面白いと思う。
 
 2002/8月
●色のついた料理の名前をクリックすると作り方のページに進みます    
 
8月19日   ひる  

長い間『S家の食卓』を休んでしまった。

8月のはじめに引っ越しをし、新居の片づけもままならぬまま夫と旅に出た。
行く先は、私の実家の母のそのまた実家の島根県。
朝早く起き、畑でたくさんの茄子ときゅうりを収穫し、これをおみやげとする。
午前7時半に群馬を出発。車での旅。群馬→長野→岐阜→愛知→滋賀→京都→大阪→兵庫→岡山→鳥取→島根。こんなにたくさんの県(府)を横断したのだが、約900kmにおよぶ行程のうち300kmが長野県だった。どこまで行っても長野県。でっかかった長野県。
愛知まで来ると「関西の風景」になった。大阪のドライバーの「不埒な運転」はおそろしかったけれど笑ってしまった。
がら空きの中国道は私が運転し、初めての「高速道路での追い越し」を練習することができた。
前日3時間という睡眠不足だったため、所々で休憩を取りつつひたすら西に走る。
島根の県庁所在地・松江に叔母夫婦と叔父家族が住んでいる。ここにたどり着いたのが午後9時。なんとか宴会に間に合った。ここでは叔父が市場から買ってきてくれた驚くべきおいしい魚や貝を堪能した。日本海の魚介はうまい。
翌日松江市内を観光し、いよいよ目的地であるおばあちゃんの家へ向かう。
松江から約1時間、あの「どじょうすくい」の「安来節」の安来(やすぎ)からさらに山奥へ入ったところだ。 私は幼少から中学生まで夏休みをここで過ごしたのだった。なつかしい「夏のおばあちゃんち」だ。このいとしい風景をぜひとも夫に見せたくて、夏の旅を選んだのだった。私は20才の春に訪れて以来なので約15年ぶりだ。おばあちゃんも、おばあちゃんちも何も変わっていなかった。けれど、道路はものすごく良くなっていた。
84才になるおばあちゃんは、おじいちゃんが亡くなってから20年、たった一人でここに住んでいる。車を運転して買い物に出かけたりもしているそうだ。
最も驚いたのは、おばあちゃんが毎日毎日、朝・昼・晩「食べたもの日記」をつけていたことだ。きちょうめんにつづられたノートを見たとき、なんだかジーンとしてしまった。

そんなわけで孫の私も「食べたもの日記」を続けていこう。

●う巻き
(だし巻き卵にうなぎの入ったもの)
●子持ちししゃも(マヨネーズと七味で食べるとうまい)
●塩トマト
●かぼちゃの煮もの
●おかあさんの太巻き・おいなりさん
●ぬか漬け
●みそ汁(ごぼう・えのき・キャベツ・万能ねぎの小口切り)

 

    よる   この夏も「酷暑」だった。数年前までは30℃だって驚きだったのに近年では平気で35℃になる日が続く。夏が好きとはいえ体がもたない。でも、お盆も過ぎれば秋の気配。ここ数日は涼しい風も吹いたりして体はホッとしているが、気持ちはさみしい。何より気温が下がると油絵の具の乾きが遅くなるのが気がかりだ。
●「ふれあい食材」の鶏の唐揚げ
●にしんの黄金漬け
●きゅうりの酢のものザーサイ和え
●焼き茄子
●かぼちゃの煮もの

●おかあさんの太巻き・おいなりさん
●ぬか漬け
●みそ汁(にんじん・しいたけ・枝豆・岩のり)

8月20日   ひる  

茄子ときゅうりが毎日たくさん収穫される。毎日毎日、食卓には茄子ときゅうりだ。採れたてだからおいしい。東京で食べていた茄子やきゅうりとは味が違う。とくにきゅうりはその差を激しく感じる。深い味わいがある。
●豚肉のしょうがゆで焼き(みそ味)+茄子
●ゆでキャベツの酢のもの(夏味)+きゅうり
●塩トマト
●ぬか漬け
島根にある宍道湖は半分海水半分淡水の湖で、しじみの産地だ。「そのままみそ汁に入れるだけ」という加熱して真空パックになっているしじみがみやげものとしてそこかしこに売られていた。便利でそしてうまい。
●しじみのみそ汁

 

    よる  

よるはお母さんのリクエストで天ぷらとうどん。天ぷらは家にあった適当なもので、インゲン豆、茄子、かき揚げ(ねぎ・たまねぎ・しいたけ・にんじん・ごぼう・桜エビ)、さつま揚げなどを揚げた。
天ぷらは作っているだけでおなかがいっぱいになってしまう。できあがった頃には見るだけで満腹だ。うどんにかき揚げをのせて、七味をふって食べたのはおいしかった。
●天ぷら

●上州・手打ちうどん
●上州・手打ちうどんのつゆ

●冷や奴(夏の薬味
●ツル菜のおひたし
●きゅうりの酢のもの
●ぬか漬け


8月23日   ひる   ●ゆで鶏と茄子の味噌炒め
●ゆでキャベツの酢のもの(夏味)+きゅうり
●塩トマト

●ぬか漬け
●お吸いもの(にんじん・えのき・みょうが・枝豆・とろろ昆布)
 

    よる  

スーパーでおいしそうな天然もののイナダの刺身を発見。このあたりでは刺身売り場にはマグロばかりがずらりと並んで売られているのでこんなことは珍しい。迷わず買うことにした。
イナダとはブリの幼魚のこと。成長に伴い呼び名の変わるブリは東京地方では[ワカシ→イナダワラサブリ]と呼ばれ、大阪地方では[ツバスハマチメジロブリ]と呼ばれるらしい。
また島根の話になるが、島根では売り場にはマグロはあまりなく、ブリ系が主流だった。それらのなんとおいしいことか。上品でさっぱりとしていて、かつ、深い味わいだった。それからイカも「白イカ」といってこのへんでは見かけたこともないものが主流で、それはそれは柔らかく甘く、とろっとしたコクのあるイカだった。
●刺身(マグロ・イナダ)
●きゅうりと大根の千切りサラダ(しらす・梅肉入り)
2日ばかり私が留守にしていたせいだろうか、ご飯がたくさん余っている。チャーハンを作ろう。お刺身なので、もちろん白米もあり。
●チャーハン(卵・ハム・しいたけ・枝豆入り)
●モロヘイヤのおひたし
●ぬか漬け
●みそ汁(大根・にんじん・舞茸・岩のり)
島根のおばあちゃんが、月に数度通っている老人センターで書かされたという色紙を見せてくれた。なんでも「座右の銘を書いてください」と言われて書いたものだそうである。そこには達者な筆でこう書かれてあった。
『食は命なり』


8月25日   ひる  

●「ふれあい食材」のいかそうめん
●さばの醤油煮
茄子ときゅうりがたくさん採れる。茄子は生でも焼いてでも揚げでても茹でてでもなんでもOKだが、きゅうりとなると調理法の幅が狭いものだ。かつて「きゅうりのみそ汁」なるものを作ってみたこともあったが、不評だった。やはり生に限るのだろうか。
●きゅうりとキャベツとみょうがの酢のもの(きざみ昆布入り)
●塩トマト
●ぬか漬け
●おかあさんの赤飯
●お吸いもの(茄子・にんじん・しいたけ・みょうが・枝豆・とろろ昆布)

 

    よる   「ふれあい食材」から「肉団子セット」が届いている。そういえば、夏になる前に「ふれあい食材」の肉団子セットと大根を煮てみたらおいしかったことを思い出した。大根の煮ものを作るようになるなんて、もう秋はそこまで来ているのだな。
●大根と肉団子の煮もの(油揚も入れた)
●きゅうりとキャベツとみょうがの酢のもの(きざみ昆布入り)
にんじんが半端に余っているのですりおろしてみた。これを紫たまねぎを薄くスライスしてドレッシングをかけた上にのっけてみた。すりおろしたにんじんは甘みが強調されて食べやすい。そのうえいろどりも派手で効果的だ。
●紫たまねぎのサラダ(にんじんのせ)
●ぬか漬け
●おかあさんの赤飯
●みそ汁(にんじん・舞茸・しいたけ・ねぎ)

8月26日   ひる  

久しぶりに〈レバにら炒め・もやし入り〉を作る。食べながら、お母さんと「レバーはすごいね〜。こんなに旨いのに、安い。」「もやしはすごいね〜。こんなに旨いのに、もっとも安い。」という話で盛り上がる。
●レバにら炒め(もやし入り)
●塩トマト
●きゅうりの塩もみ
●ぬか漬け
●みそ汁(大根・にんじん・舞茸・しいたけ)

 

    よる   ●茄子とみょうがの醤油炒め
●ピーマンと挽肉の味噌炒め
●冷や奴(
夏の薬味

●ぬか漬け
●みそ汁(にんじん・えのき・しいたけ・麩・ねぎ)

8月27日   ひる   ●焼き肉
●きゅうりの酢のものザーサイ和え

●昆布の佃煮
●ぬか漬け
●みそ汁(しいたけ・にら・溶き卵)
 

    よる  

「ふれあい食材」からさんまが届いた。秋はすぐそこ。
●さんまの塩焼き
(大根おろし添え)
●きゅうりとキャベツとみょうがの酢のもの(きざみ昆布入り)
今日はうどんだ。うどんをゆでるのにお湯を沸かしているので、ついでに茄子をゆでる。茄子のヘタを切り落とし、沸騰したお湯に入れ、ゆであがったら水に放つ。水気を軽く絞り、適当な大きさに切り、温かいうちに醤油をかけ、黒ごまを散らす。
●ゆで茄子
●上州・手打ちうどん
●上州・手打ちうどんのつゆ

ついでに、島根からおみやげに買ってきた「出雲そば」の半生麺をゆでる。
またまた島根の話になるが、島根の「出雲そば」はおどろくべきおいしさだ。「出雲そば」はたいてい「割子(わりご)そば」という形式をとっていて、直径10センチくらいの朱塗りのスタッキングの椀が3〜5段
重ねになっている。ここに、青ねぎ・のり・もみじおろしなどの薬味をのせ、つゆを直接かけて食べるのだ。そばの色は濃く、香りが強い。
滞在中に4件のそば屋に行ったが、いちばんおいしかったのは、安来(やすぎ)のさぎの湯温泉・足立美術館入り口にある「吾妻そば」。今すぐにでも飛んで行って食べたいおいしさ。そば好きの群馬のお父さんにとおみやげのそばを買ってきたのだが、みやげものには混じりものがあってあの味をそっくりそのまま再現することはできない。お父さんにぜひとも食べてもらいたいのだが、片道14時間というのはちょっと難しい。
●おみやげの出雲そば
●ぬか漬け


8月29日   ひる   朝からかなり蒸し暑い。今日は町の健康検診の日だった。レントゲンを撮ったり採血されたり、問診で酒の飲み過ぎだと言われたり。身体測定の結果、身長が1センチ伸びていた。まだまだ成長中。
ここ数日、猛烈な残暑だ。とはいえ、近頃食欲が増してきたのは「秋のきざし」だろうか。もうすぐこの暑さも去ってしまうのかと思うと、この残暑もいとおしくてならない。
●まぐろの刺身
●にら卵(しいたけ入り)
●きゅうりとみょうがの酢のもの
●塩トマト
●ぬか漬け
●みそ汁(にんじん・茄子・えのき・しいたけ)
 

    よる  

●穴子とごぼうの入った蒲鉾を切ってからサッと焼いたもの
●紫たまねぎときゅうりときざみ昆布の酢醤油和え
●お母さんのきんぴらごぼう
●チャーハン(卵・ハム・しいたけ・枝豆入り)
●上州・手打ちうどん
●上州・手打ちうどんのつゆ
●ぬか漬け


8月30日   ひる  

「そろそろ庭にみょうがが生えだしたよ」とお母さん。さっそく、茄子と一緒にみそ味で炒めてみる。「茄子とみょうがのみそ炒め」は、先日、とある飲み屋で食べて、あぁ、いいものだなと思ったものだ。みょうがは買うと高いので、これまでは、炒めてしまうのはもったいないと思っていたが、今後はふんだんに使うことができそうだ。今日は豚肉も加えてみた。
●豚肉のしょうがゆで焼き(みそ味)+茄子とみょうが
●ゆでキャベツの酢のもの(夏味)

●ぬか漬け
●お吸いもの(大根・にんじん・舞茸・えのき・とろろ昆布)

 

    よる  

残暑の厳しい炎天下の下、引っ越した新居のまわりを自転車で探索してみた。新居は見晴らしのいい丘の途中に建っている。だから、このあたりはなだらかな坂道が多い。自転車のペダルをいっさい漕がなくてもよい道もあれば、一所懸命に漕がなければならない道もある。初めて通る道を走っていると、よく知った道に出くわしたりして妙な感動がある。道それぞれに独特の表情がある。道というのはおもしろい。
●冷や奴(夏の薬味
●大根とホタテの煮もの
●お母さんのきんぴらごぼう
●チャーハン(梅肉・しょうが・しらす・万能ねぎ入り)
●上州・手打ちうどん
●上州・手打ちうどんのつゆ
●ぬか漬け