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My Favorite Vocal Albums

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1950年代から1960年代初頭の女性ボーカルアルバムを紹介します。 この時代のボーカルは、「chic」「sofisticated」「elegant]といった形容詞が生きていた頃の時代の雰囲気を伝えてくれます。 今ではほとんど失われた、古き良き時代を想い出させてくれるアルバムたちです。下のアルバム・タイトル「Music and Memories」が、このページのテーマです。 私の好きな歌手は、ペギー・リー、ドリス・デイ、ジェーン・モーガン、それとジョー・スタッフォードといったところです。

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ペギー・リー(Peggy Lee)

まず、大御所のペギーリーのアルバムから紹介しましょう。

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1950年代のペギー・リーの魅力は、多くの方が認められると思います。ジョージ・シアリングと共演した「Beauty and the Beat!」では、彼女の語りのうまさも聞き所です。このアルバムで、白人最初のジャズシンガーであるミルドレッド・ベイリーの想い出として「ALL too soon」を歌うところなど、ミルドレッド・ベイリーのそれほど幸福とはいえなかった人生を思い起こさせる感動のステージです。

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ペギー・リーは、DECCA時代とCapitol時代の各々に名盤を残していますが、上の「Black Coffee」は、DECCA時代の代表作の一つですね。右の2枚はCapitolでの代表作。「The Man I Love」ではフランク・シナトラがオーケストラの指揮をとっていますね。


ドリス・デイ(Doris Day)

次は、ドリスデイに行きましょう。

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ドリス・デイは、日本でも大へん人気がありますから、あらためて紹介するまでもないですね。彼女の歌を聴いていると、「やっぱり、ドリス・デイはいいなぁ」という感想がつい出てしまいます。それほど声を張り上げないで、少し押さえた歌い方で十分に情感を伝えてくれるうまさは、やはりトップクラスの歌手の中でも抜きんでていますね。「Day by Day」「Day by Night」ではスタンダード曲の魅力を聴かせてくれます。「My Name is Doris」は、コロンビアの My Nameシリーズの一枚。日本では1966年に発売されたもので、当時のヒット曲と、彼女の往年のヒット曲のアンソロジー。最初の「モア」「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」などゆったりしたテンポで堂々とした歌唱を聴かせてくれます。「センチメンタル・ジャーニー」は、彼女が1944年に録音したものが大ヒットした訳ですが、ここでは20周年を記念して1965年に再録音されたものが収録されており、より円熟した立派な歌唱を聞くことができます。

doris4.jpg 最後に、「HOORAY FOR HOLLYWOOD」では、1930年代の映画の主題歌から、Cheek to Cheek, The Way You Look Tonight, Blues in the Night, Over the Rainbow, Love is Here to Stay, In the Still of the Night, Night and Dayなどおなじみの曲を聞くことができます。Irving Berlin, Jerome Kern, Harold Arlen, George Gershwin, Cole Poterといった当時の最高の作曲家の代表曲をドリスの名唱で聞けるのですからの言うこと無しです。
本当にドリス・デイっていいなぁ。


ジェーン・モーガン(Jane Morgan)

さて、「Fascination」という歌、多くの方がご存じと思いますが、この曲を大ヒットさせたのが、ジェーン・モーガンです。「Warm, tender, mature romance...This is the mood of the mellow music made here by Jane Morgan...the Voice of Fascination」という紹介文がジャケットの裏に記されていますが、まさに Warm and Tender な歌声が魅力です。彼女は、オペラのリリック・ソプラノ歌手を目指してジュリアード音楽院にいたとのことで、歌のうまいのも納得。この人の歌を聴いていると、その安定した歌唱によって、安心して音楽に浸ることのできる快感が味わえます。というわけで、私は、彼女の大ファンです。レコードも随分集めてしまいました。

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Jane in Spainの中のGranadaとか、Love Makes the World go Roundの中のTemptationなどは、さすがオペラ歌手を目指した人だけの実力が現れている名唱。ちょっとだけ補足しておくと、ジェーン・モーガンの歌は、1950年代から1961年頃までがベストです。それ以降は、うまさは変わらないものの、やや声をはりあげるような歌い方が目立つようになり、デビュー当時の Warm and Tender の印象が薄くなっています。ここに上げたレコードは、どれも初期のもの。しかし、彼女のレコードもなかなかCD化されないなぁ。


The War Years の名歌手たち「Jo Stafford と Eve Boswell」


joe1.jpg ジョー・スタッフォードは、第2次大戦の頃からトランペット・ヴォイスの名で有名で、その郷愁をさそう声は、戦地の兵士をしてホームシック・ヴォイスと言わしめた魅力的な歌手です。左は、ジョー・スタッフォードの名盤「Autum in NewYork」。どうしてこういう歌手のレコードがきちんとCD化されないのか、レコード会社は義務として取り組んでほしい。版権の問題で難しいのかなぁ。
彼女のレコードは、Capitol時代の1940年代ものはアンソロジーの形で米CapitolからCDが出たが、Columbia時代のモノがなかなか出ない。いつまでもJO+JAZZの一枚だけではね。やっぱり中古レコードのお世話にならないとダメかな。

eve.jpg これは、1950年代のイギリスを代表する名歌手、イヴ・ボズウェルの「The War Years」。タイトルの示す通り、第二次世界大戦中のヒット曲を集めたもの。It's been a long long time とか、I'll be seeing you、As time goes byといった懐かしい歌を聞くことができます。 この種のレコードとしては、上で紹介したジョー・スタッフォードの「I'll be seeing you」と双璧の一枚。ある人に言わせれば、イヴ・ボズウェルは「男を知らぬ訳ではないが、まだその純真さを失ってはいない乙女」の如き風情で、「漂うほどの色香、決して濃厚ではなく、まだ知り染めし新妻の色気」を備えているのだそうです。
ところで、手前の熱い二人をうらやましそうに眺めている水兵さんの思いは如何?


女優さんのレコード

さて、少し趣を変えて、女優さんが作ったレコードを紹介しましょうか。女優さんのボーカルといえば、余技みたいなものと思いがちですが、なかなかどうして、とても素敵な歌を聴かせてくれます。
私は、このジャンルはあまり専門とはいえないので、手持ちの物からとりあえず数枚を紹介します。

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歌でも有名な女優と言えば、まずマリリン・モンローから。マリリン・モンローは「帰らざる河」など、たくさんの映画で歌っていますね。マリリンのレコードは何度となく各社から発売されています。しかし何故かマリリンの魅力を伝えるものが少ないのが残念です。ここに紹介したレコ-ドは、20世紀フォックスへの出演映画のサウンドトラックから録音したもの。彼女の声が綺麗に取られていて、愛らしい魅力を伝えています。


ohara1.jpg 左は、「わが谷は緑なりき」で有名なモーリン・オハラの「Love letters form Maureen O'Hara」。このレコード解説は、映画監督ジョン・フォードが執筆しており、モーリン・オハラとの出会いとその後の彼女を起用した映画について書いています。そして、彼女の音楽的才能と努力を認め、映画でもそれを活かしたこと、そしてこのレコードの魅力を「You will agree with me that hers is a beautiful voice - a voice of great charm and personality」という言葉で紹介しています。一曲目の「My romance」からジョンフォード監督の言葉そのままの魅力。モーリン・オハラはアイルランド出身で、アイルランド民謡集のレコードも作っています。

ジャンヌ・モロー(Jeanne Moreau)


jeanne0.jpg 女優を見たとき、彼女が素晴らしい女優であるかどうかを、どこで見て決めるか。”それは目である”といって即座にフランス女優の代表格ジャンヌ・モローをあげた監督がいるらしい。左は「小間使の日記」の映像写真ですが、・・・ この眼の魅力には参った

『ジャンヌ・モローの眼のすばらしさは
なんといっても 深く 強いその視線にある
無邪気で純情な女をとうに卒業した彼女の眼には
どのような裏切りも飲み込む暗い情念が渦巻き
その眼はまた 悲しみを踏み越えて
高らかに笑うことも知っている』

と書いた人がいますが、この写真がその証明です。

jeanne2.jpg ジャンヌ・モローの歌では、映画「突然炎のごとく」の中で歌った「le tourbillon(つむじ風)」が有名ですね。ギター伴奏の素声でハミングのように歌われる、かわいらしい歌でした。この映画を見た人は忘れられないでしょう。このCDは、91年に日本PHILIPSが発売したフランス女優シリーズの一枚。つむじ風を聴きたい人はこのCDを探して下さい。

jeanne4.JPG ジャンヌ・モローで忘れられない映画に因むレコードを載せておきます。「死刑台のエレベータ」です。「死刑台のエレベータ」は、マイルス・デイビスの音楽で有名ですね。マイルスも収録中にすっかりジャンヌ・モローのファンになってしまったとか。映画は、ヌーベルヴァーグの誕生を告げるルイ・マル監督のデビュー作。多くの賞を獲得し、ジャンヌ・モローも一躍脚光を浴びた作品です。

jeanne3.jpg 1957年12月、マイルスは単身ヨーロッパ公演へ出発し、パリに降り立った時、ジャズ好きだったルイ・マル監督は空港まで迎えに行き、この「死刑台のエレベータ」の映画音楽の依頼をしました。マイルスらは、音楽を付けたい部分をつなぎ合わせた映像を見ながらアドリブで演奏。所要時間は、たったの5時間!。このレコーディングの現場にジャンヌ・モローも現れ、スタジオの片隅に作られた仮設のバーから、ミュージシャンたちに向けてにこやかに笑みを投げかけていたそうです。左の写真は、そのときのもの。髪を上げたモロー、その耳にミュートをつけたマイルスのトランペット。なんともエロティックな写真です。この映画は、ヌーベル・ヴァーグとモダン・ジャズの結びつきを決定的なものにした作品です。

Viva-Maria.jpg これは、「Viva Maria!」。「ビバ・マリア」は、映画自体は名画というものではありませんが、ジャンヌ・モローとブリジット・バルドーという2大女優出演のルイ・マル監督の娯楽作品。音楽的には、哀調を帯びたテーマ曲が魅力的な映画でした。いつか、サウンドトラック盤を探して手に入れたいと思っていますが、なかなか簡単には手に入らない。このサウンドトラック盤LPは、オークションに出品した人のもので、私のものではありません。オークションでは4万円の価格がつきました。見つかっても非常に高価なレコードです。テーマ曲は、男性歌手が歌っているのですが、映画の中では、この2大女優のデュエットも聴かれます。

jeanne5.JPG これは、ビバ・マリアを撮影の頃のスナップ写真。この映画はフランス映画なのに英語で作られており、ジャンヌ・モローのセリフも英語ですが、これがとても上手い。映画の中で、シェークスピアのパロディーのような演説をぶつシーンがありましたが、実は、彼女の母親は英国人なので、英語も堪能なのです。

jeanne1.jpg ジャンヌ・モローは、ヌーヴェルヴァーグ時代、ルイ・マル監督やフランソワ・トリュフォー監督の作品に多く出演してその女優としての名声を築いたわけですが、新しい時代のシャンソンの創造にも取り組み、自分で作詞も手がけたりしています。歌手としての魅力もなかなかのもので、女優さんの中では指折りの存在と思います。
レッスンを正式に習い、作詞をするようにまでなり、シャンソン歌手として世界各地の舞台に立ったこともあるほど。これは、"Jeanne Chante 12 Chansons by Cyrus Bassiak"と題された作品。このセルジュ・バシアクとの共同作品が大変多い。先の「つむじ風」もバシアクの作品です。シャンソン歌手モローにとって、バシアクは、映画におけるルイ・マルの役を果たしたといえるでしょう。

jeanne.jpg これは、"12 Chansons Nouvelles"(12の新しい歌)。伴奏がギターとベースだけのシンプルな構成で、言葉が主体のシャンソンの伝統に沿ったものです。これもバシアクとの共同作品。

おまけ

rhonda.jpg 最後に、「OK牧場の決闘」に出ていたロンダ・フレミングのアルバム「Rhonda」を紹介しましょう。神秘的な緑の目で見つめるようなこのジャケット写真の魅力だけで十分価値があると思いませんか。歌の方も、ソフトなヴェルベット・ヴォイスで、匂い立つような女らしさは、まさに溜息モノ。選曲も良く、女優さんのLPとしては上出来の一枚です。

A面
Don't Take Your Love form Me
Around the Worldin Eighty Days
Love Me or Leave Me
The End of a Love Affair
Under Paris Skies
Baby, Baby All the Time
B面
With the Wind and the Rain in Your Hair
When I Fall in Love
I've Got You Under My Skin
Then I'll Be Tired of You
Love
They Can't Take That Away form Me


star.gif 終わり star.gif