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Around the World in Music

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まだ音楽がローカルな特色を持っていた頃、
そして、今ほど簡単には海外旅行ができなかった頃、
世界の国々を知る方法の一つは、その国の音楽を聴くことでした。
それらの音楽は、今もなお魅力を持っています。
最近はあまり聴かれなくなった、そんな音楽を特集してみました。
夢の旅路へ、ご一緒しましょう。




まず軽く地図の上で、世界一周と行きますか。最初はラテンアメリカから。メキシコ、キューバ、ブラジル、アルゼンチンとまわります。それからヨーロッパ大陸に渡り、パリ、スコットランド、オーストリア、イタリーを一巡りしてロシアへ。最後は、アメリカとハワイで締めくくりです。演奏は、パーシーフェイス、アンドレ・コステラネッツ楽団他です。

world.jpg Around the World in STEREO(日本コロンビア YS-165)
ベサメ・ムーチョ ウィーン気質
タブー 黒い瞳
ブラジル チャオ・チャオ・バンビーナ
ラ・クンパルシータ ボルガの舟歌
マドモアゼル・ド・パリ~パリの空の下 峠の我が家
グリーンスリーヴス ブルー・ハワイ




さて、いよいよ出発。最初は情熱と太陽の国メキシコ。Percy Faith管弦楽団がご案内します。アグスティン・ララ、マヌエルポンセの作品やメキシコ民謡をお楽しみ下さい。このPercy Faithの演奏、一曲目のグラナダの雄大な演奏、二曲目の情緒深いエストレリータなどそれぞれの曲の魅力を素直に引き出しています。

mexico.jpg VIVA The Music of Mexico (CBS SONY)
グラナダ サンドンガ:チアウアのキリスト
エストレリータ メキシカン・ハット・ダンス
エル・ランチョ・グランデ ラ・クカラッチャ
ラス・チアパネカス クアント・レ・グスタ
グアダラハラ ソラメンテ・ウナ・ベス
ラ・ゴロンドリーナ ノーチェ・デ・ロンダ
ラ・パロマ




キューバは、エルネスト・レクォーナで代表してもらいましょう。「シボネー」「マラゲーニャ」「アンダルシア」などは最も有名。ラテン音楽を得意とするスタンリー・ブラック楽団の快心の演奏でどうぞ。

cuba.jpg The Music of RECUONA (London SLC-21)
MalaguenaSiboney
Always in my heart Danza LUCUMI
Andalucia Jungle Drums
La Comparsa Gitanarias
High in Sierra Maria,my own




南米に飛んで、ブラジルはリオデジャネイロ。カーニバルの強烈なサンバのリズムが思い出されます。ブラジルにはサンバともう一つバイオンという音楽があるのをご存じでしょうか? サンバもバイオンも生き生きとしたリズミックな音楽ですが、バイオンの方が少し穏やかで、メロディー・ラインのある音楽です。
真っ青な南大西洋から打ち寄せる波、輝かしく降り注ぐ太陽に光るコパカバーナ海岸。愛し合っている二人のための亜熱帯の楽園。そんなハネムーンを想像しながら、ここに紹介するのは、題して「HONEYMOON in RIO」。
アコーディオンの名手シルヴェイエラによるバイオンと、メセネスのピアノによる少し古風なサンバのレコードです。1950年代終わり頃に発売された、世界の音楽シリーズの中の1枚。

rio.jpg HONEYMOON in RIO (Angel MW-8)
バイオン ガロアのバイオン
ナ・パブーナ 占いの小石
カベサ・インシャーダ ナム・ジローさんて何という人
ラファエルさん、連れてって そんなものないわ
パライバ 白い羽根
白髪 あなたと共に何処までも




ブラジルからお隣のアルゼンチンに移りましょう。なんといってもタンゴの国です。最近はピアソラの影響で、タンゴがリバイバル・ブームといってよいほど多くの演奏家に取り上げられていますから、タンゴに興味を持つ人も多いのではないでしょうか。バンドネオンが刻むタンゴのリズムを耳にすると、なんとなく情熱的な気分になるのは私だけではないでしょう。
ここでは、タンゴに情熱を傾け、タンゴに偉大な貢献をした、「フランシスコ・カナロとオルケスタ・ティピカ」の演奏を聴くことにしましょう。名曲「ラ・クンパルシータ」で始まり、「エル・チョクロ」で締めくくられます。まさに「これがタンゴだ」です。

tango.jpg FRANCISCO CANARO
Y SU EXITOS DE TODOS LOS TIEMPOS(Angel HV-1065)
ラ・クンパルシータ アディオス・パンパ・ミア
ロドゲス・ペニャ バンドネオンの嘆き
マノア・マノ 淡き光
ラ・バーラ・フエルテ インスピラシオン
センティメント・ガウチョ 恋の炎
エントレリオスの人 ラ・プニャラーダ
泣き虫 エル・チョクロ




さて、今度はヨーロッパ大陸に移って、ドイツに参りましょうか。アルゼンチン・タンゴに対抗して、コンチネンタル・タンゴといきましょう。それがドイツかって? まあ良いじゃありませんか。マーチを聴いてもリラックスできないでしょう?
演奏はご存じアルフレッド・ハウゼ楽団です。アルフレッド・ハウゼ楽団といえば、「碧空」「月下の欄」「バラのタンゴ」「オレ・グアッパ」「奥様お手をどうぞ」「小さな喫茶店」「ジェラシー」といった代表作を聴きたいところですが、ここでは、コンチネンタル・タンゴのスタンダード曲集(といっても比較的新しい作品)を紹介しましょう。

tango1.jpg DREAMING CONTINENTAL TANGO(Polydor SLPM-1037)
ALFRED HAUSE and HIS ORCHESTRA
ブルー・タンゴ 真珠取りのタンゴ
さらば草原よ ドンナ・ヴァトラー
夢のタンゴ ラ・ロシータ
ハーバー・ライト 私の祈り
美わしの島 愛を夢見て
赤いバラ ジプシー




タンゴのレコードをもう一枚紹介しましょう。写真をご覧下さい。情熱的ダンス音楽としてタンゴの魅力が出ていると思いませんか? ただ音楽が鳴るだけでなく、手に取ってみたくなるようなデザインの魅力がこの種のレコードには必要なのです。

tango2.jpg CONTINENTAL TANGO
The World's Most Romantic Dance
A Tribute to RUDOLPH VALENTINO
Roberto Rossani and his Orchestra
BLUE TANGOS LA PALOMA
EL CHOCLO LA CUMPARSITA
ADIOS MUCHACHOS TANGO FOR STRINGS
TANGO VERY MUCH LA GORONDORINA
SHADOW TANGO TANGO PIZZICATO
TANGO DE L'AMOUR TANGO LA CUMPARSITA




このあたりでドイツからフランスに移動しましょう。秋の日をシャンソンを聴きながら過ごす、なんていうのが昔の文学青年や文学少女の聴き方だったようですが、最近はそんなのは流行らないのでしょうね。それでも、たまには古いシャンソンの歌詞を読みながら音楽に耳を傾けるというのはどうでしょう。
シャンソンの歴史を彩る名歌手の競演でお届けします。

france1.jpg Chanson D'Automne「秋の日のシャンソン」(Odeon OR-8087)
枯葉(イヴ・モンタン) ミラボー橋(レオ・フェレ)
モンマルトルの丘(コラ・ヴォケール) セーヌの花(イヴ・モンタン)
小雨降る径(ティノ・ロッシ) 家へ帰るのが怖い(イヴェット・ジロー)
人の気も知らないで(ダミア) 夜のバイオリン(ティノ・ロッシ)
詩人の魂(シャルル・トレネ) モンマルトルに帰りて(コラ・ヴォケール)
わが心はバイオリン(アンドレ・クラヴォー) メア・キュルパ(エディット・ピアフ)
急流(グロリア・ラッソ) 恋人よおやすみなさい(グロリア・ラッソ)




下の写真のレコード、一見やなせたかしの絵のようですが、イヴ・モンタンのエトワール座でのリサイタルの実況録音盤です。1954年のディスク大賞を受賞した名作なので解説不要なのですが。
イヴ・モンタンは、本当はイタリア生まれなんだそうですね。1921年イタリアのモンスマノで生を受けたのですが、彼の一家がファシストに追われ、1923年にフランスのマルセイユに移住したとか。イヴ・モンタンというと反権力・反戦というイメージが私にはあるのですが、とにかく一流のエンタテイナーには違い有りません。
このリサイタル、モンタン自身が語りを交えて曲を紹介しながら進行していきます。「パリのバラード」で始まり、革命家の姿が目に浮かぶような「パリのフラメンコ」で山場を迎え、「DU SOLEIL PLEIN LA TETE(頭に太陽をいっぱい)」で前半を終了。後半は、器楽での演奏で始まり、劇的な盛り上がりを見せる「C'EST A L'AUBE(暁に)」、役者としての才能を示す「BARBARA」の朗読まで一気に進みます。そしてパリの春やパリ祭の雑踏を描いた「A PARIS」で一旦終了するのですが、聴衆の声援と拍手は鳴り止みません。それもそのはず、お目当ての曲がまだなのですから。声援に応えて「分かった、分かった」とでもいうようにモンタンが「ウィ」を繰り返し、「枯葉」が始まります。そして最後はユーモラスな「セ・シ・ボン」で締めくくり、聴衆も満足して大拍手でお仕舞い、と思いきや、まだレコードの溝は残っていました。静かになった後、モンタンが感謝の言葉を述べ、本日の伴奏者の紹介をしてリサイタルは終了します。

montand.jpg RECITAL Theatre De L'Etoile YVES MONTAND(Odeon)
LA BALLADE DE PARIS FLAMENCO DE PARIS DONNE-MOI DES SOUS
PREMIERS PAS IL FAIT DES... LES CIREURS DE SOULIERS
DE BROADWAY
QUAND UN SOLDAT LE PEINTRE
LA POMME & PICASSO
DIS-MOI JO
UNE DEMOISELLE
SUR UNE BALANCOIRE
SANGUINE LES CHEF D'ORCHESTRE
EST AMOUREUX
IL A FALLU DU SOLEIL PLEIN LA TETE C'EST A L'AUBE
LES SALTIMBANQUES TOI, TU N'RESSEMBLES
A PERSONNE
BARBARA
GILET RAYE LE CHEMIN DES OLIVIERS A PARIS
CAR JE T'AIME LES ROUTIERS LES FEUILLES MORTES(枯葉)
C'EST SI BON




夢、ロマンス、孤独、失恋、愉快で悲しい町。パリは、フランス人の精神を映し出している鏡のような町です。そして、パリといえばアコーディオン。アコーディオンの名手、ジョー・バジルの演奏をお楽しみください。

Paris.jpg Rendezvous a Paris(Audio Fidelity AFLP 1821)
Paris in the Spring Compilainte de la Butte
Sous les Toits de Paris Madame la Marquise
Rue Lepic-Domino Petite Valse
Just a Gigoro Symphonie-J'Attendrai
Mon Amant de Saint Jean Musetto a Gogo
Poor People of Paris La Madelon




お次はイギリスです。イギリスには日本人になじみの深い民謡が多くあります。イギリスといっても、アイルランド、イングランド、ウェールズ、スコットランドといった地方で持ち味が異なっています。ここで紹介するナナ・ムスクーリはギリシャ生まれですが、声の美しさ、歌のうまさは定評のある人。美しく澄んだ歌声がこういった古風な民謡にはぴったりです。

england1.jpg イギリス民謡名唱集(PHILIPS)
彼は市を通って行った 糸車
エリスケイ島の恋歌 子守歌
ダニー・ボーイ スカイ島の舟歌
イギリスの田舎の庭 とねりこの林
ああ、哀れ、哀れ ある朝はやく
よもすがら 恋人に桜んぼを上げた




イギリスの代表的な作曲家として、ヴォーン・ウィリアムズに登場してもらいましょう。イギリス的という表現を具体的に説明する能力は私にはありませんが、すくなくともヴォーン・ウィリアムズが、イギリスをモチーフとした音楽に多く残しているのは間違いありません。これがイギリス人の好みだとすれば、やはり日本人の好みと重なるところがあるなぁと思います。やわらかな抒情で満たされており、クライマックスでも決して絶叫せず、結局もの静かな瞑想に戻ってしまう音楽です。

england2.jpg GREENSLEEVES (Victor SHP-2359)
MORTON GOULD and His Orchestra
Vaughan Williams
グリーンスリーブズによる幻想曲
タリスの主題による幻想曲
イギリス民謡組曲
Coates
ロンドン組曲




さて、スペインです。スペインといえばフラメンコ、といきたいのですが、ここではスペインを舞台としたビゼーのカルメンの音楽にしましょう。ビゼーはスペインに行ったことが無かったはず。なのに、これほどスペインを描ききった作曲家はいません。紹介しているレコードは、OPERA WITHOUT WORDSシリーズの一枚で、とっつきにくいオペラを、歌の旋律、それに序曲や間奏曲などをすべてオーケストラだけで聴いてもらおうという趣向のもの。最近はしっかりした全曲盤が当たり前ですが、昔レコードが相対的に高価だった頃はこんな企画ものが結構ありましたね。

carmen.jpg CARMEN Opera without Words (KAPP)
前奏曲~子供達の合唱~ハバネラ~ミカエラとホセの2重唱~セギディリア
第2幕への間奏曲~ジプシーの歌~闘牛士の歌~カスタネットの踊り~花の歌
第3幕への間奏曲~ミカエラのアリア
第4幕への間奏曲~カルメンとホセの2重唱




ヨーロッパの最後はイタリアで締めくくりましょう。イタリア民謡とかカンツォーネを選べばよいものを、こんなものを選んでしまいました。映画「黄金の7人」のサウンド・トラックです。イタリアーノ・チネ・ジャズなんてへんてこな言葉で呼ばれるジャンルの代表作という人もいますが、結局は主演のロッサナ・ポデスタの魅力にマイッタというところでしょう。ライナー・ノーツが説くには、スキャット・ハミング・口笛を多用したコーラス、ジャズ・ボサノバ・ラテンなどの軽快なリズム、セクシーなジャケット、というのがイタリアーノ・チネ・ジャズのエッセンスなんだそうです。ロッサナ・ポデスタのつれそいでもある監督のMarco Vicarioが、彼女との結婚10周年を記念して(かどうかは知りませんが)、奥さんを主役に撮影し、その魅力に改めて惚れなおしたというおのろけ映画でもありますね。続編を2本も作っています。音楽担当のアルマンド・トロヴァヨーリもこの作品ですっかり有名になってしまいました。

italy.jpg 7 UOMINI D'ORO 黄金の7人
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ

曲目は省略。艶めかしいロッサナのテーマが何度も出てきます。
左の写真は、ジャケットの裏面。
表は素肌に真っ青なショールを羽織ったロッサナの写真です。見せられません。というのは冗談で、裏面のほうがセンスが良いという珍しいレコードであります。



ロシア民謡は、ロシアの大自然とそこでの人間の営みを描き出しています。そのロシア民謡を奏でるのは民族楽器バラライカ。ロシア民衆音楽の響きをもっともストレートに伝えてくれるのは、このバラライカだと思います。

russia.jpg "Old Russia" in songs and Dances バラライカの饗宴
ルイス・アルターと彼のバラライカ・オーケストラ
ドウシア・ボロドフ(唄)

黒い瞳 ドビヌシュカ
ふるさとを想いて ジプシー・ライフ
何故苦しむの 古いロシアのメドレー
やぶれし人生 橇の鈴
忘れられし愛撫 ジプシーの牧歌




明るい太平洋の楽園、ハワイへと飛びましょう。太平洋に横たわる7つの島々は、今では日本人が最も多く訪れる観光地ですが、その昔は平和と慰安のシンボルと考えられていたようです。郷土色豊かな甘く美しい旋律のハワイアン音楽を聴いていると詩情をかきたてられませんか? 映画音楽の大家ヘンリー・マンシーニもこの島に何度も訪れてその音楽に魅せられ、ずっとハワイアンのアルバムを作りたいと思い続けた結果、生まれたのがこのレコードというわけです。

hawaii.jpg Music of HAWAII (RCA)
Henry Mancini
His Orchestra and Chorus

Hawaii Hawaiian War Chant
Quiet Villege Adventure in Paradise
The Moon of Manakoora Beyond the Reef
Pearly Shells Tiny Bubbles
Blue Hawaii The Hawaiian Wedding Song
Driftwood and Dreams Aloha Oe




いよいよ旅の最後、アメリカ合衆国。アメリカの音楽を何で代表させるか選択に迷いましたが、やはりアメリカの良心ともいうべきフォスターの歌にしましょう。彼の歌は、アメリカ人と黒人の心の故郷としてのみならず、世界中の人々の故郷でもあります。その美しいメロディーは、現代の喧噪とは無縁の時間を超えた旅路に私たちを導いてくれるというのは言い過ぎでしょうか。
ここでは、ロジェー・ワーグナー合唱団のアカペラによる名唱集を紹介します。小さな編成で、親しい友人同士の男女が大学キャンパスで歌っているような素朴で美しさが心に染みてきます。

foster.jpg SONGS of Stephen Foster (Capitol)
The Roger Wagner Chorale
My Old Kentucky Home Beautiful Dreamer
Oh, Susanna Oh, Lemuel
Open the Lattice, Love De Glendy Burke
Some Folks I Dream of Jeannie with the Light Brown Hair
Nelly Bly Ring, Ring de Banjo
Old Folks at Home Old Black Joe
De Camptown Races(草競馬) Katy Bell




いかがでしたか?
世界一周の旅にお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
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