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カラヤンで音楽を聴く場合、ウィーンフィルハーモニー、フィルハーモニアそしてベルリン・フィルハーモニーという3つの異なる個性の管弦楽団で多くの曲を聴くことができる。それぞれに名演がたくさんあるが、ここではカラヤンを世に送り出し、その最後を看取ったウィーンフィルハーモニーとのディスコグラフィーを振り返りつつ、亡きカラヤンを偲ぶこととしたい。

このページの作成に当たっては、「カラヤン 全軌跡を追う (音楽の友社)」と手持ちのレコード、CDを参考にして、そこからウィーンフィルとの関わりに絞って調べた。
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Herbert Von Karajan
1908-1989

1908年~1945年

戦前にはウィーンフィルとのレコーディングはない。しかし、1934年、弱冠26歳のカラヤンは、演奏会で早くもウィーンフィルを指揮している。

西暦 月日 年齢 レコード会社 曲目 トピック
1908 4/8 0歳 - - ザルツブルグに生まれる
19264/818歳-- ウィーン音楽アカデミー指揮科入学
19348/2126歳-ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲ウィーンフィルを初めて指揮
19376/129歳-ワグナー:トリスタンとイゾルデブルーノ・ワルターの招きでウィーン国立歌劇場にデビュー
19384/830歳-モーツァルト:33番
ラヴェル:ダフニスとクロエ
ブラームス:4番
ベルリン・フィルを初めて指揮
9/30--ベートーヴェン:フィデリオベルリン国立歌劇場デビュー
12/9-独Polydorモーツァルト:魔笛序曲カラヤンの初レコーディング
ベルリン国立歌劇場管弦楽団


1939年から1945年まで
第二次世界大戦の間、アーヘンとベルリン国立歌劇場を舞台として指揮活動を続け、独Polydorにレコーディングしている。
1945年
敗戦6週間前にミラノへ向かい、イタリアで指揮活動をしながら滞在中に終戦を迎えるが、終戦後、連合軍より、ドイツ、オーストリアでの指揮活動を禁止されてしまう。フルトヴェングラーも同様であった。従って、カラヤンの指揮活動はイタリアで引き続きやらざるを得なかった。

1946年~1952年

1946年、戦後初のウィーンでの演奏会をウィーンフィルと行った(1946年1月12,13日)。ウィーンフィルからの要請であったとはいえ、この時期はまだ連合軍より許可が出ていないはずなので、なぜこの演奏会が可能になったのか不明。その直後(1月19日)、ウィーンでEMIの名プロデューサ、ウォルターレッグと出会い、その年9月よりウィーンフィルとレコーディングを開始。いよいよカラヤンの快進撃の始まり。連合軍が、公的な指揮活動を許可したのは、翌1947年である。

このウィーンフィルとのレコーディングは、1946年から1949年まで集中的に行われている。1950年になると指揮界に復帰したフルトヴェングラーがウィーンフィルとカラヤンの関係を拒否したため、1950年のオペラ「フィガロの結婚」と「魔笛」の全曲録音を最後に、カラヤンとウィーンフィルの第一次蜜月時代は終わりを告げる。しかし、この時期のカラヤンとウィーンフィルの演奏が評価の高い物であったことが、その後フルトヴェングラーが亡くなった後にベルリンフィルとウィーンフィルがカラヤンを迎え、帝王として君臨することになる礎となったことは事実である。まさに、カラヤン芸術の原点として評価すべき時代の録音といえるだろう。

ウィーンフィルから締め出されたカラヤンは、ウィーン交響楽団に活動の場を移し、またレコーディングは、フィルハーモニア管弦楽団と行うようになる。ただ、1952年に唯一、バッハのミサ曲ロ短調をウィーン楽友協会管弦楽団の名でウィーンフィルとレコーディングしている。

西暦 月日 年齢 レコード会社 曲目 トピック
1946-38歳---
1/12-13--ハイドン:104番
R.Strauss:死と変容
ブラームス:1番
ウィーンフィルとの戦後初の演奏会.
9/13-15-英Colベートーヴェン:8番
戦後初のレコーディング
THE WIENNA YEARS 1946-1949
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9/15-17, 19-20-英Colシューベルト:9番
10/18-19-英Colモーツァルト:33番
10/21-英Colモーツァルト:フィガロの結婚序曲
10/21-英Colモーツァルト:
6つのドイツ舞曲より5番
3つのドイツ舞曲より3番
10/21-22-英Colモーツァルト:アイネクライネナハトムジーク
10/22-英Colモーツァルト:
ディベルティメント17番、第4楽章
10/23-英Colモーツァルト:<後宮への逃走>より
10/28-29-英Colチャイコフスキー:ロメオとジュリエット
10/29-30-英ColJ.Strauss:ジプシー男爵序曲
10/30-英ColJ.Strauss:皇帝円舞曲
10/30-英ColJ.Strauss:芸術家の生涯
10/30-英ColJ.Strauss:美しく青きドナウ
10/30-英ColJ.Strauss:浮気心
10/31-英Colワグナー:
ニュルンベルグのマイスタージンガー
1947-39歳---
10/20-22, 27-29-英Colブラームス:ドイツ・レクイエムbrahms-req.jpg
10/27-28,11/3-英ColR.Strauss:メタモルフォーゼン-
11/3-6,12/10-12,14-英Colベートーヴェン:9番beethoven9.jpg
12/3-英Colモーツァルト:
弦楽のためのアダージョとフーガ
THE WIENNA YEARS 1946-1949
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12/8-英Colレズニチェック:ドンナ・ディアナ序曲
12/9-英ColR.Strauss:<バラの騎士>より
12/9-英Colモーツァルト:<フィガロの結婚>より
12/9-英Colモーツァルト:<ドンジョバンニ>と<魔笛>より
12/11-英Colモーツァルト:
<フィガロの結婚>と<ドンジョバンニ>より
12/12-英Colプッチーニ:マノンレスコー間奏曲
12/13-英Colモーツァルト:フリーメーソンのための葬送音楽
12/15-英ColR.Strauss:<バラの騎士>より
12/15-英Colスメタナ:<売られた花嫁>より
12/16-英Colモーツァルト:<ドンジョバンニ>より
12/16-英Colシャブリエ:エスパーニャ
1948-40歳---
11/4-6, 8-10-英Colチャイコフスキー:6番<悲愴>tchaiko1.jpg
11/6-英Colプッチーニ:<ボエーム>より THE WIENNA YEARS 1946-1949
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11/10-英Colモーツァルト:<フィガロの結婚>より
11/10-英Colプッチーニ:<トゥーランドット>より
11/10-英Colモーツァルト:<ドンジョバンニ>より
11/10-英Colプッチーニ:<ボエーム>より
11/11, 15-17-英Colベートーヴェン:5番
11/16-英ColR.Strauss:<ナクソス島のアリアドネ>より
11/18-英ColJ.Strauss:<ジプシー男爵>より
11/19-英Colワグナー:<さまよえるオランダ人>より
11/19-英Colワグナー:<ローエングリーン>より
11/22, 24-英ColR.Strauss:<サロメ>より
11/23-英ColJ.Strauss:ウィーンの森の物語
11/30-英ColJ.Strauss:こうもり序曲
1949-41歳---
1/21-英ColJ.Strauss:常動曲 THE WIENNA YEARS 1946-1949
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1/21-英Colマスカーニ:
カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲
10/7-英Colシベリウス:
5番より第3楽章
10/18, 21-22,
24, 27, 11/8
-英Colブラームス:2番
10/18-英ColJ.Strauss:天体の音楽
10/18-英ColJ.Strauss:トリッチ・トラッチ・ポルカ
10/18-英ColJ.Strauss:雷鳴と電光
10/20, 26,
11/10
-英Colモーツァルト:39番
10/20-英ColJ.Strauss:トランスアクツィオン
10/20-英ColJ.Strauss:酒・女・歌
10/24-英ColJ.Strauss:うわごと
10/24, 11/10-英ColJ.Strauss:ウィーン気質
11/2-英Colワグナー:<タンホイザー>より
11/3-英Colワグナー:<ローエングリーン>より
11/3-英Colワグナー:
<ニュルンベルグのマイスタージンガー >より
11/7, 8-英Colモーツァルト:クラリネット協奏曲
19506/17-21,
10/23-27, 31
42歳英Colモーツァルト:フィガロの結婚初のオペラ全曲録音
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11/2-3, 6-9,
13-16, 20-21
-英Colモーツァルト:魔笛zflute1.jpg
195211/2-5, 744歳英Colバッハ:ミサ曲ロ短調ウィーン楽友協会管弦楽団の名によるウィーンフィルの演奏
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1953年~1958年

この時期は、スタジオ録音でウィーンフィルとの物はない。しかし、1954年、11月30日、フルトヴェングラー他界後、フルトヴェングラーの呪縛から解放されたカラヤンは、一気に音楽界の頂点を極める。

1955年、4月5日、ベルリンフィルが、米国公演での成果を評価し、フルトヴェングラーの後継としてカラヤンを芸術監督及び常任指揮者に任命
1956年、6月16日、ウィーン国立歌劇場の芸術監督に就任
1957年、4月17日、1950年以来7年ぶりのウィーンフィルとの演奏会。曲目は、ブルックナーの8番であった。

レコーディング活動はまだフィルハーモニア楽団が主体だが、1959年に転機が訪れる。1959年、英DECCA及び独Deutsche Grammophonとのレコーディング契約が成立し、以降、英DECCAのプロデューサ、ジョン・カルショウがウィーンフィルとの録音を、独グラモフォンのプロデューサ、オットー・ゲルデスがベルリンフィルとの録音を推進していく。

1959年~1969年

英DECCAでのウィーンフィルとの録音は、ベートーヴェンの7番から始まった。この時期の演奏が大好きという方は多いのではないだろうか。私もそうだ。従って、この時期のレコードの大半はここで紹介することが出来る。

さて、このページはRecord Galleryなので、少しレコードの話をしよう。以下に示す何枚かのレコードに「RCAソリアシリーズ」とあるのは、DECCA専属のカラヤンとウィーンフィル、RCA専属のメトロポリタン歌劇場の歌手を起用してレコーディングし、当時のRCAの豪華版シリーズの代名詞だった「Solia Series」として発売されたもの。このSolia Seriesは、ジャケットの豪華さで知られ、特にオペラのレコードでは中の解説書のデザイン・印刷がとても美しいので、日本版が発売されたときも、解説書は英語版のものがそのまま使われていた。発売はRCAだったが、録音は、ジョン・カルショウをプロデューサーとしてDECCAが担当したもの。

西暦 月日 年齢 レコード会社 曲目 トピック
19593/9-1051歳DECCAベートーヴェン:7番ジョン・カルショウによる初録音
RCAソリアシリーズのレコードを探しているのですが・・・
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3/23, 26-DECCAブラームス:1番RCAソリアシリーズ
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3/23, 4/9-DECCAR.Strauss:ツァラトゥストラはかく語りき当時の優秀録音
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3/27-28-DECCAモーツァルト:40番
ハイドン:104番(ロンドン)
RCAソリアシリーズ
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4/7-8-DECCAJ.Strauss:こうもり序曲ほかRCAソリアシリーズ
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9/2-15-DECCAヴェルディ:アイーダaida2.jpgaida3.jpg
19601/7-952歳DECCAチャイコフスキー:ロメオとジュリエット
R.Strauss:ドン・ファン
演奏の切れの良さは、まさにこの時代ならではのもの
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6/12-20-DECCAJ.Strauss:こうもり(全曲)フィルハーモニアとの録音も、もちろんお勧めです。
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6/22-30-DECCAR.Strauss:
ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
<サロメ>より<7つのベールの踊り>
死と変容
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19615/10-2153歳DECCAヴェルディ:オテロ(全曲)デル・モナコの十八番
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6/3-5-DECCAクリスマス曲集レオンタイン・プライスとの協演
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9/5-22,29-10/8-DECCAブラームス:3番brahms2.jpg
9/5-22-DECCAチャイコフスキー:クルミ割り人形組曲
グリーク:ペールギュント
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9/5-22-DECCAアダン:ジゼルGiselle.jpg
9/5-22-DECCAホルスト:惑星この曲を一気に有名にした名演
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9/29-10/8-DECCAドヴォルザーク:8番麗しさに溢れた名演
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19629/16, 24-3054歳DECCAプッチーニ:トスカRCAソリアシリーズ
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19634/9-1155歳DECCAモーツァルト:41番<ジュピター>
ハイドン:103番<太鼓連打>
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11/18-27-DECCAビゼー:カルメンRCAソリアシリーズ
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19653/1957歳DECCAチャイコフスキー:白鳥の湖
眠りの森の美女
ジョンカルショウのDECCA最終録音
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1970年~1979年

1965年以降、カラヤンとウィーンフィルの関係はレコーディング上は断絶してしまう。ただ、演奏会では、ザルツブルグ音楽祭でウィーンフィルの指揮は続けている。1970年になって、ようやくDECCA、EMIと契約が成立し、再びウィーンフィルとのレコーディングが始まる。レコードファンにとっては朗報であった。1970年以降、オペラへの積極的な取り組みが始まる。もっとも、1970年代は、ベルリンフィルがカラヤンの手兵としてもっとも充実していた時期であり、レコーディングもベルリンフィルが主体だった。

西暦 月日 年齢 レコード会社 曲目 トピック
197011/2-6,
9-10,
16-20
62歳DECCAムソルグスキー:
ボリス・ゴドゥノフ
-
19741/28-3166歳DECCAプッチーニ:
蝶々夫人
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19775/9-11,
13-18, 20
69歳EMIR.Strauss:サロメsarome.jpg
19784/17-24,29,
5/1-4
70歳DECCAモーツァルト:フィガロの結婚-
19795/7-10,
14-17
71歳EMIヴェルディ:アイーダaida1.jpg


1980年~1989年

1980年代に入ると、カラヤンとウィーンフィルとのレコーディングは、ドイツ・グラモフォンに一本化され、ベリリンフィルとのトラブルもあってか、ウィーンフィルとのレコーディングが活発になってくる。それは、1989年4月のラストレコーディングまで続く。
私は、1980年代のカラヤンの演奏を、まだあまり聴いていない。ゆっくりとカラヤンのレパートリを味わいたいと思っているので、これから少しずつ聴いていくつもりである。

西暦 月日 年齢 レコード会社 曲目 トピック
19805/27-3172歳Phヴェルディ:ファルスタッフ録音は、DGチーム
19815/11-1873歳DGプッチーニ:トゥーランドット80年代の初頭を飾る壮大な音絵巻
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19828/16-1874歳DGハイドン:
オラトリオ<天地創造>
-
11/22-24,
29-12/4,
1983/5/9-10,
1984/1/8-10
-DGR.Strauss:ばらの騎士-
19835/4-8, 1984/9/2275歳DGブラームス:ドイツ・レクイエム
ブルックナー:テ・デウム
この年4月5日、ウィーンフィル名誉指揮者に推挙される
カラヤンの音楽美の結晶
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19841/10-1676歳DGチャイコフスキー:6番<悲愴> 7度目のチャイコフスキー
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3/13-22-DGチャイコフスキー:5番-
6/5-13-DGヴェルディ:レクイエム-
6/18-19-EMIヴィヴァルディ:四季アンネ・ゾフィー・ムター(Vn)
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9/17-24-DGチャイコフスキー:4番tchaiko-sym4.jpg
19851/9-1177歳DGドヴォルザーク:8番-
6/29-DGモーツァルト:戴冠式ミサ-
19865/26-6/178歳DGモーツァルト:レクイエム晩年のカラヤンの傑作
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19871/179歳DGJ.Strauss:
ニューイヤーコンサート
-
5/24-DGシューマン:4番-
8/15-DGワグナー:
タンホイザー序曲
ジークフリート牧歌
トリスタンとイゾルデ前奏曲
愛と死
-
19888/1580歳DGチャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲アンネ・ゾフィー・ムター(Vn)
11月-DGブルックナー:8番-
19891/27-2/381歳DGヴェルディ:仮面舞踏会-
4/18-23-DGブルックナー:7番カラヤンのラスト・レコーディング
4/23 は生涯最後の演奏会でした。
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1989年7月16日、ザルツブルグ自宅にて没す。享年81歳。

カラヤンは、26歳から81歳まで、途中戦争などで中断はあったものの、55年間に渡ってウィーンフィルと関係を持ち、その中で数々の名盤を生み出して私たちに音楽の楽しみを与えてくれた。この不世出の指揮者にあらためて感謝したいと思う。