Bayreuth_Festival.jpg
バイロイト音楽祭

Invitation to Opera

オペラへの招待



OperaToDie.jpg
オペラの名場面集
趣味は?と聴かれて、「クラシック音楽が好きです」とまでは言えても、「オペラが好き」なんてすぐには告白できるものではない。この人には言っても大丈夫そうだという程度に相手を理解してからでないと、相手からこの人と付き合うのはしんどそうだなあと思われることを覚悟しなければならない。
クラシック好きというだけで、堅物と見られ、肩身の狭い思いをするのが普通であり、ましてオペラが好きなんていえば、「へえ、すごいですね」なんて適当にあしらわれて、その後の会話は弾まないこと必定です。

そういう状況を理解しつつも、あえてオペラを聴くことをお勧めする。オペラで聴く歌手の発声に違和感を覚える人が多いのも承知しているが、人間の声がここまで力強くそして美しいものであり、その声の魅力がいかにドラマチックな表現を可能にするかを教えてくれるのはオペラ以外にないのです。クラシック音楽の中で、もっとも具体的に人間のドラマを表現する手段がオペラなのでありますから、これを聴かないのはもったいない話である。

オペラは聴くものじゃなくて見るものだという意見は正しいのだが、オペラの舞台をいつでも見に行ける人は別にして、家庭で何度も味わうには音だけの方が適している。舞台は自分でイメージを膨らませて下さい。これじゃまるでラジオとテレビを比較しているようなものだなぁと思いつつも、本当にそうなのです。聞き込んだ後で、TVなどで放映していたら、映像はそれを見れば良い。そして自分のイメージとのギャップを楽しむのも一興である。(まったく日本人的な発想だ)

というわけで、じゃあ何を聴こうか、ということになる訳ですが、これが万人に向けて「これが最初の一枚!」というのが難しい。なんといっても、音楽+人間ドラマでありますから、その人にとって方向を間違うと「ナンジャこのくだらないストーリ」は、といったことになりかねない。そこは、大人になって、たわいないストーリも娯楽作品と考え、オーケストラと歌手の魅力を味わうことにするしかない。くれぐれも、最初の体験だけですべてを否定しないようにしてください。… 脅かしている訳ではないので念のため。

まずはカルメン

carmen1.jpg
Maria Callas "Carmen"
で、とりあえず最初にマリア・カラスの「カルメン」を紹介しましょうか。管弦楽組曲でおなじみだし、いろいろ聞き所があるのも確かです。なんのかんのといってもカラスのドラマチックな表現が聞きもの。でも個人的にはミカエラを歌っているギオーにも魅力を感じています。第一幕のホセとミカエラの2重唱において、幼なじみのミカエラがホセに「あなたのお母さんから、あなたへのキスを私が代わりにしてあげるように言われたの」と伝えるわけですが、ここでのギオーの声の可愛さはなかなかのものです。この可愛いミカエラを放ってホセはカルメンになびくものの、結局はカルメンから袖にされ、激情にかられてカルメンを殺害してしまうという物語です。カルメンは、このほか多くの録音がありますから聴き比べも楽しいですね。

お次はモーツァルト

さて、オペラの入門といえば、モーツァルトの「フィガロの結婚」だろうという人も多そうなので、モールァルトにいきます。フィガロ、ドン・ジョバンニ、魔笛あたりをしっかり聴けば十分。モーツァルトのオペラは、はっきりいって娯楽作品ですから、あまり難しく考えないで、歌手たちの名演・名唱に耳を預けましょう。各作品の能書きは、CDやレコードの解説書をご覧下さい。
(1)~(4)はベームのモーツアルト傑作集
(5)はモーツアルト生誕200年記念したエーリッヒ・クライバーの名録音
(6)は、ラインスドルフによるメトロポリタン歌劇場のメンバ
(1)フィガロの結婚
figaro1.jpg
(2)ドン・ジョバンニ
jovanni2.jpg
(3)魔笛
zflute1.jpg

(4)コシ・ファン・トゥッテ
cosi.jpg
(5)フィガロの結婚
figaro2.jpg
(6)ドン・ジョバンニ
jovanni1.jpg


愉快なヨハン・シュトラウス「こうもり」

J.Straussは、「こうもり」ですべて。ただ笑って鑑賞すればよい無条件に楽しいオペラですね。 (1)は、カラヤン、ウィーンPOの名演。ガラ・パフォーマンスのサービス付き。マイフェアレディの「踊り明かそう」とか、ガーシュインの「サマータイム」などが立派(すぎる)歌唱で聴かれます。(2)は、指揮者のオスカー・ダノンは有名ではありませんが、ヴェヒター、ローテンベルガー、ロンドン、クンツとキャストは立派。ここでもパフォーマンスとして、「春の声」がフィーチャーされています。このレコード、もっと人気があっても良いのですが。(3)は、カルロス・クライバーの名声を高めた一枚。
(1)こうもり(カラヤン)
frmouse2.jpg
(2)こうもり(ダノン)
flmouse2.jpg
(3)こうもり(クライバー)
flmouse4.jpg


ワグナーでオペラ芸術を味わう

お次は、一気にWAGNERに進みます。ワグナーは、「音楽は言葉に奉仕すべきだ」との思想のもとに作品をつくり、それは「楽劇」と呼ばれています。(こんな解説はよけいかな)。その音楽はとにかく重たく長いので、どっぷり浸かりたいという人にぴったり。ワーグナーの作品は数多いのですが、「ニーベルングの指輪」4部作を聴けばもう十分。それでも、15時間も聴いてられない忙しい人がほとんどでしょうから、歌合戦でのファンファーレが有名な「タンホイザー」あたりで軽くかじる手もある。調性の崩壊とかなんとか現代音楽とのつながりなど、蘊蓄で聴きたい人には「トリスタンとイゾルデ」が欠かせない。
注意:軽々に「ワグナー好き」と言ってはいけません。ナチスとワグナーの関係があって、反発を食らうこともあります。

まずは、「ニーベルングの指輪」4部作

これらは、1958年から1966年までかけて作られたショルティ指揮・ウィーンPOによる初のステレオ録音。キャストの豪華さ、録音のすばらしさなど、現在に至るもこれ以上の物は無いと言われている作品。一度は聴くべき。DECCAのプロデューサ、ジョン・カルショウの最大の遺産。
(1)ラインの黄金
ring-rhein.jpg
(2)ワルキューレ
ring-walkure.jpg
(3)ジークフリート
ring-siegfried.jpg
(4)神々の黄昏
ring-gotter.jpg


以下は、オマケ。(5)は、ワルキューレのみ。RCAがビルギット・ニルソンを起用して録音したもの。ソリア・シリーズによる豪華作品。(6)はワルキューレの1幕のみ。(1)~(4)の4部作を計画していたDECCAが、クナパーツブッシュを起用して手始めに録音した物。うまく行けば、そのままクナで全曲録音となったものを、録音に熱心でないクナに手こずったDECCAは、クナをあきらめてショルティで全曲録音したという曰く付き。(7)はベームによるバイロイト実況録音。
(5)ワルキューレ
(ラインスドルフ)
walkure2.jpg
(6)ワルキューレ
(クナッパーツブッシュ)
walkure3.jpg
(7)ニーベルングの指輪
(ベーム)
ring-boem.jpg


次は、トリスタンとイゾルデ

(1)は、フルトヴェングラーの名作。当時英HMVと契約していたRCAが、このレコードのために特別のジャケットデザインを画家に発注して製作したのがこれ。
(2)~(5)は順に、ショルティ、ベーム、カラヤン、カルロス・クライバー。どれも有名ですね。なぜかトリスタンとイゾルデには名盤と呼ばれるものが多い。
(1)トリスタンとイゾルデ
(フルトヴェングラー)
tristan1.jpg
(2)トリスタンとイゾルデ
(ショルティ)
tristan2.jpg
(3)トリスタンとイゾルデ
(ベーム)
tristan3.jpg

(4)トリスタンとイゾルデ
(カラヤン)
tristan4.jpg
(5)トリスタンとイゾルデ
(クライバー)
tristan5.jpg


ショルティの「タンホイザー」と「ニュルンベルグのマイスタージンガー」

どちも録音、演奏とも素晴らしい。本当に、このころのDECCAとショルティによるオペラ作品はどれも充実の極み。
タンホイザー
tannhauzer1.jpg
マイスタージンガー
nurnberg1.jpg


ドイツオペラの古典~Weber「魔弾の射手」

ドイツの森深い伝説の世界を歌う「魔弾の射手」は、これぞドイツ人のアイデンティティとでもいうような古典中の古典ですが、質朴な生活感覚を失っている現代人にとっては、オアシスのような作品ですね。
(1)はオイゲン・ヨッフム、(2)はカイベルト、(3)はカルロス・クライバー
個人的には、(2)が気に入ってます。
(1)魔弾の射手(ヨッフム)
freischutz1.jpg
(2)魔弾の射手(カイベルト)
freischutz2.jpg
(3)魔弾の射手(クライバー)
freischutz3.jpg


ドイツロマン派の最後きらめき~R.Strauss「ばらの騎士」

「ばらの騎士」は、ウィーンの貴族社会が育んできた古き良き欧州文化の爛熟期の作品です。こうした欧州文化は第一次世界大戦で表面上は失われてしまったけれど、人々の心の奥底には根強く残っているわけで、そんなことを考えながら19世紀ロマンに浸る作品として、カラヤン指揮でシュワルツコップが元帥夫人で登場するこの録音を聴いてみましょう。才色兼備のシュワルツコップの代表作の一つです。気品とはこの人のためにある言葉。共演はクリスタ・ルードヴィッヒ。「ばらの騎士」は名演に恵まれています。これ以外のものを選んでもそれほど間違いなし。これに味をしめて、R.Straussに興味がでてきたら、「サロメ」、「エレクトラ」、「ナクソス島のアリアドネ」あたりへ。R.Straussほど近代の作曲家でオペラのレパートリにきちんと名を残した人はいない。
(1)ばらの騎士(カラヤン)
rosen1.jpg
(2)ばらの騎士(カラヤン)
rosen2.jpg


それでは、オペラの国、イタリアへ

まず、VERDIから

問題は、この人の数ある名作から何を選ぶか。ここでは、椿姫、アイーダ、運命の力、ファルスタッフを上げておきましょう。この他にも、リゴレット、イル・トロバトーレ、仮面舞踏会、ドン・カルロ、オテロとどれも傑作揃いです。
(1)椿姫
tubakihime1.jpg
(2)アイーダ
aida1.jpg
(3)運命の力
forte1.jpg
(4)ファルスタッフ
farstaff1.jpg


プッチーニの名旋律に酔う

イタリアの2番手はプッチーニ。世界中のオペラ劇場のドル箱の一つ、プッチーニの旋律の美しさは特筆もの。専門家に言わせると、ドビュッシー風の新しい和声の技巧や、エキゾチックな音階の使用などを大胆に取り入れる器用な人だそうです。この人も作品が多い。日本でも、蝶々夫人ですっかり有名ですが。プッチーニは、「ラ・ボエーム」「蝶々夫人」「トスカ」あたりにしておきましょう。最後の LA RONDINE は、あまり有名とはいえない「燕」。アンナ・モッフォの妖艶さに惹かれて、つい手が出てしまった。
(1)ラ・ボエーム
boheme.jpg
(2)蝶々夫人
butterfly.jpg
(3)トスカ
tosca.jpg
(4)燕
moffo.jpg


オペラ作品は、まだまだ多いのですが、以上にしておきます。最後に、オペラのCD、レコードを楽しむ大事な秘訣。できるだけ良いオーディオ装置で聴きましょう。オペラほど臨場感が大切なレコード音楽はありません。(といいながら、情けなくも、ほとんど音が出せない住環境でヘッドフォンに頼っている私です。嗚呼!)ビジュアル面はジャケット写真で。それにしても、CDになって、聴くには便利なのだが、解説書の字が小さいのはなんとかならんかなぁ。

付録として(失礼!)、日本の作品も … オペラというより、語りの世界

yuzuru.jpg