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ホロヴィッツとハイフェッツについての逸話

数年前、ウラディーミル・ホロヴィッツは、旧友 Paul Muniを起用した「Inherit the Wind」を見るために劇場へ行った。ホロヴィッツはステージには戻らず、彼がその公演をどれだけ楽しんだかを書いたメモを送ったのだった。数日後、Muniは、ホロヴィッツに手紙を書き送った。「私の公演に関するあなたの親切な言葉に感謝します。しかし、あなたが88に着席して作り出す感動を、私は決して生み出すことができないと確信しています」。

ホロヴィッツは、彼の妻ワンダに問うた。
「88って、何の意味だろう?」。
「それは、何かピアノでやることに違いないわね。だって、それがあなたが感動を生み出す場所なんでしょう」とワンダは答えた。
その時、彼らの娘のソニアが部屋を通りかかったので、彼女にも尋ねた。
彼女は、
「私は知らないわ。でも、多分それはピアノのキーの数じゃないかしら。いくつあるの、パパ?」と言った。
すると、ホロヴィッツは答えた。
「知らない。今まで数えたことなどないよ!」。

何年も後に、私はハイフェッツにこの物語を話した。
私が、 Muniが「88」といったところまで話したとき、ハイフェッツは私を遮り、
「いや、私は、ホロヴィッツが自動車を運転するとは知らなかったよ!」と言った。
彼も、ピアノのキーを一度も数えたことがないと認めたのだった。