1998年4月
所長からのメッセージ



■ ビッグバン始まる ■


 とうとう4月、ビッグバンも始まりました。為替の問題だけでなく1200兆円と言われる個人金融資産の内外の獲得競争も始まりました。毎日のようにシティバンクのことが話題になります。今後の外資の攻勢はすさまじいものになると考えられます。大河ドラマではありませんが、第二の黒船と考えてもよさそうです。ただ「みんなで渡れば怖くない」式に、カタカナならばみんな漢字(国産)よりも有利、と考えるのはどうかと思います。確かにゴールドマン・サックスだとかフィデリティといった会社の魅力的な投資信託の販売も始まりましたが、それではただお任せでよいかというとそういうものではありません。あくまで自己責任の世界です。但し情報開示が日本よりはるかに積極的に行われていますから、研究材料はいくらでもあります。今後はこの世界における個人のインターネットの利用も進むでしょう。自分で考えて自分で投資する。当たり前のことですが、やっと第一歩を踏み出したと言えます。
 最近の日本では投資の世界における自己責任論が展開される前に、金融機関の選択の時点で自己責任が問われることになってしまったのはあまりに皮肉と言えます。商品よりもまずつぶれない会社を見る目が要求されるようになってしまいました。商品よりも、まず販売会社の安全性に注目する。きっかけは異常でしたが、人の言うことを鵜呑みにしないようになっただけでも、拓銀、山一とよい材料が提供された悪夢の6ヶ月でした。




■ どうなる税制改正 ■


 七転八倒しているかの様な景気対策ですが、どうも目玉がありません。大型所得税減税の話も出たり入ったりという状況です。所得税減税が一つの方向で一本化しない原因は、皆が本音を言い出せないことだと思います。今回のような特別減税を何年続けても景気に大きく貢献するとはとっても考えられません。そもそも日本ほど課税最低限の高い国は少ないわけですから、減税の影響がある人が少ないわけです。一般家庭でしたら年収で360万円あたりまでは税金はかかりません。従って減税の恩恵も受けません。それに対して高所得者層に対しては大変高い所得税及び住民税が課せられています。
 個人的には高所得者層に対する減税が行われるべきだし、また消費に与える影響も大きいと考えられますが、政治家は選挙のこともあってなかなか大きな声でこの点に触れないようにしています。これが税金の世界では日本は社会主義国であると言われる所以です。以前からお話ししていますが、課税は「五公五民」が原則です。稼いだお金の半分以上が税金となってしまっては、稼ぐ気力も起きません。一部に税率までの見直しの声もありますが、また今回も大衆減税となって消費にそれほどの影響はないでしょう。所得税の10兆円減税ぐらいを期待したいところです。アメリカの要求ではありませんが消費税を3%に引き下げたらインパクトは大きいでしょうね。
 もっとも消費が盛り上がらないのは、単にお金が無いからばかりでなく、自分が勤めている企業や、国の先行きに不安を持っているせいです。企業も国も実体を明らかにし、将来の見通しを示すことによって初めて国民や従業員の不安を払拭できます。政治家も経営者もこの点に踏み込むべきでないでしょうか。単なる税金のバラまきでは消費には回らないと思います。
 ところで減税案に盛り込まれていながらなかなか実行されなかった通勤手当の非課税限度額の引き上げがやっと実施されることになりました。5万円から一気に10万円に引き上げです。でも、月々の通勤手当が10万円もかかる社員を抱えている会社は大変でしょうね。アルバイトが一人雇えますものね。




■ 最近の話題 ■


 最近のテーマはモバイルとリラクゼーションのようです。ビジネス誌はこぞってモバイル特集です。Eメールを使っていなければまともなビジネスマンではないかのような雰囲気です。しかし営業マンや私たちのように外で人と会うことの多い人間にとっては、Eメールは決して利用頻度は高くありませんでした。Eメールのイメージというと、アメリカのビジネスマンの様に、朝出社するとまずパソコンのスイッチを入れ、夜の間に世界中から届いたメールに目を通し、おもむろに返事を書く。パソコンは一日中つけっぱなし、もちろんインターネットもつなぎっぱなしといったところでしょうか。日本では電話料及びプロバイダを経由してインターネットに接続した場合の課金が高いために、よほどの大企業でない限り、インターネットにつなぎっぱなしということは考えられません。といってメールが来ているかどうか確かめるためにいちいちパソコンを起動するのも煩わしいものです。何しろwindows95の世界ではパソコンを起動するのに1分以上かかりますから。
 また外出の多いビジネスマンの場合にはお手上げです。モバイルの広告では駅のベンチか新宿の公園でパソコンと携帯電話をつないでモバイルしていますが、忙しいビジネスマンはそんなことをしている暇はありません。移動中にもっと気軽にメールのやりとりを出来ないと意味がありません。やはり携帯電話かPHSのみでEメールの受け渡しが出来ないと利用者は増えないと思います。
 メールの文字数が少なくてもよければ、最近ドコモの携帯電話で「トークメール」というサービスが始まりました。これはセンターにつなぐと自分宛のメールを読み上げてくれるサービスです。もっとも返信は携帯電話のキーを使ってかな文字で入力するわけですから、「キョウヒマ?」「サイキンゲンキ?」といったような高校生レベルのEメールになってしまうかも知れません。返信よりも受信に重点を置いた方がよいと思います。またPHSでもEメールのやりとりが出来る機種が何種類か発売されていますが、こちらも送信機能が今ひとつのようです。やはり文章を書くにはキーボードか最低でもザウルスのようなPDAの手書き文字認識機能が必要でしょう。
 次にリラクゼーションですが、最近の若い女性向きの雑誌、HanakoやPotachouchou、最近創刊したVOCE等を見ていると何号かに一回は必ずリラクゼーション特集です。以前はエステの記事が多かったようですが、最近はもっぱらマッサージです。単なるマッサージではなく、主流はオイルマッサージやリンパマッサージです。以前私が試してみるとお話ししたリフレクソロジーの紹介も多くなっています。(結局私はリフレクソロジーではなく足ツボマッサージになってしまいました。リフレクソロジーと足ツボマッサージの違いは西洋式か東洋式かということです。また足ツボマッサージは死ぬほど痛いのに対して、リフレクソロジーは痛いどころか、涎を垂らして眠ってしまう人が多いようです)
 私も3月はオイルマッサージ、リンパマッサージ、タイ式マッサージと試してみましたが、リンパ系が最も効くような気がします。というのも帰りには靴がブカブカになります。リンパ液の流れがよくなってむくみが取れているからでしょう。まだ眠ってしまうほどリラックスしたことはありませんが、これらに関する情報は山ほど集めているのでもうすぐ発見出来ると思います。たまには涎を垂らしてしまうほどリラックスしてみたいものです。




■ 公示地価発表 ■


 3月26日に98年の公示地価が発表になりました。今回ほど公示価格の発表が話題にならなかったことも少ないのではないでしょうか。少なくとも土地の値上がりが話題になりはじめた昭和60年以降は記憶にありません。各地区の公示価格を見ても劇的に上下している地域はありません。都心部においては銀座、新宿など商業地においては若干の値上がりを示していますが、住宅地区においては1平方メートル当たりわずか何千円という下落が目立ちます。
 3大都市圏としては3.2%の下落で下落としては7年連続となりましたし、地方も今年は1.7%の下落となりました。こちらも6年連続の下落です。今回の発表で特徴的なのは東京周辺地域の下落です。全国の下落率上位10地点の多くが千葉、埼玉です。特に千葉の商業地域は軒並み下落率が20%を越しています。東京周辺においてはまだまだバブルの直接的な清算が進んでいないようです。 これで今年の夏に発表される路線価すなわち相続税評価額も殆ど前年と同様な価額になると予想されます。
 次に今後の地価予想ですが、極めて個人的な感想としては、都心部においては土地の需要が回復してきているように見えます。というのは私がよく利用する時間式のコインパーキングがどんどん閉鎖され、ビル建築の看板が立ち始めているのです。都心部においてのオフィス賃貸料ははっきり下げ止まったものの、まだ値上げの動きは出ていません。新規のビルにおける賃貸料も採算点を上回るとは思えませんが、それにも拘わらず、ビル建築が増えているのはなにを示しているのでしょう。低家賃を補って余りある低建築単価になっているのでしょうか。。建築単価もピークに比べれば1/3どころか1/5になっています。新たなオフィス需要が発生するとも思えませんが・・・。とにかく都心部では土地の売り物が減っているようです。
 NHKの「クローズアップ現代」でも紹介されましたが、銀行も不良債権化した土地を海外の金融機関に次々と売却しています。といってその様な投げ売り値段で私たちが買えるわけでもありません。買う人は殆どいないのに、それほど土地の値段が下がってこないのはなぜでしょうか?株と同じで土地も基本的には投資商品ではないということでしょうか。どういう意味かと言えば、これまで日本では上場株式の多くは持ち合いによって保有されてきました。売買されている株式は全発行量の何分の一かに過ぎません。残りの株はどんなに値上がりしても売りに出されることはありません。土地も同様です。みんなが値上がりしたら売却しようと思って土地を所有しているわけではありません。需要が極端に落ち込んでいるのに価額が下がらないのは供給が少ないからです。すなわち投げ売りがもう終わったと言うことでしょうか。2,3年たてば真実が明らかになるでしょう。



前の月へ    次の月へ