1998年6月
所長からのメッセージ



■ 始めに… ■


 いよいよ6月になりました。このメッセージが皆さんに届く頃には噂どおり長銀や日債銀といった大金融機関が破綻しているでしょうか?
 アジア不況を契機として日本の金融機関の世界における地位はますます低下しています。国の格付けも見なおされるかも知れません。この危機的状況を政治家は理解せず、目先の不安を解消するために、不良債権問題に30兆円を更に上回る公金を投入しようとしています。日本の政治家は経済音痴で政治下手という指摘は極めて正確なようです。
 NHKの「徳川慶信」を見ていると、政治下手は昔からの遺伝というか国民性のようですから、いっそ今経済界で流行しているアウトソーシング、すなわち外注してしまってはどうでしょうか。キッシンジャーでもアイアコッカでもジョージ・ソロスでもよいと思います。ユダヤやアングロサクソンの陰謀にはめられるのが嫌なら、いっそお知恵を拝借してみてはいかがでしょうか。




■ 日産はどうなるか ■


 先日のWBSでも報道されていましたが、国内の自動車販売台数は7ヶ月連続減少となっていますが、ミニミニバンとでも言うべき日産のキューブ、ホンダのキャパ、マツダのデミオの快走は続いています。これは人々が単一機能では満足できずに,と言うよりは単一機能のみにお金を払うことに抵抗を感じ、多機能とまでは言わなくても、せめて「一粒で二度おいしい」のを求めているのではないでしょうか。しかも今の消費者の傾向は、一時期のように「他人と同じは嫌」から「良いものなら皆と同じものでもよい」という感じになっていると思います。従って商品的には「一人勝ち」の傾向が強まっています。またよく申し上げますが、あまり広いマーケットを狙わずに、狭い特定のマーケットに対象を絞れば絞るほど売れる可能性が高くなります。
 良いものを作って(売って)いるのに何故売れないのだろうという相談をよく受けますが、発想の全面的な転換が必要です。買いたいものかどうか決めるのは買い手であって売り手ではありません。総ての商売について言えることは「いかに相手の立場で物事を考えられるか」です。
 こういっている間に日産自動車の提携問題が大きく報道されています。自動車業界の中でもっとも官僚的で、社員総評論家と言われていた会社がやっと重い腰を上げたようです。技術の日産、販売力のトヨタと言われても平気でいて、販売に重点を置かなかったつけが回ってきたばかりでなく、自信のあった技術力についてさえ優位性が危うくなった超大企業がどのような行動をとるか注目です。フォードの会長が「将来生き残る自動車会社は米国、欧州、日本それぞれ2社ずつだ」と述べています。日本の2社とはトヨタの他は果たして日産でしょうか、それともホンダでしょうか。




■ カーナビのお勧め ■


 自分の車にカーナビを付けている人はまだ多くないと思います。カーナビを付けない人はそれなりの理由があるようです。@画面を見ながら走ると危ないA決まったところしか行かないから必要ないB道を良く知っているから必要ないなどの不要論が多いようです。
 私は最近カーナビをつけました。私も都内はよく走るほうなので、都内でのカーナビは不要だと考えていましたが、使用してみて考えを改めました。
 最近のカーナビは主要道路に設置されたビーコンという機器によって道路の混雑状況がわかるようになっています。それどころかその混雑状況に応じて、渋滞を自動回避して目的地まで案内する機能までついています。この機能を使ってみて驚かされるのは、同じ場所に行くのにも混雑状況に応じて毎回違う道を指示することです。裏道は指示しませんが、かなり複雑な渋滞回避を行います。私もカーナビのおかげで生まれて初めて走る道をいくつも体験しました。「え、こんな道のほうが早いの!」の連続です。もちろんカーナビにも頭の良いものと悪いものがあるようで、その差はかなり大きいようですが、頭の良いカーナビでは感動が得られます。道をよく知っているからカーナビは必要ないと思っている方にこそお薦めします。もっと道に詳しくなります。決まった所にしか行かないから必要ないと思っている方は、使ってみるともっと色々な所へ行くようになるでしょう。決まった所にしか行かないのではなく、道が良くわからないのであちこちに行かないのではないでしょうか。
 もしカーナビが危ないと思っている方へ。確かに画面を見ながら走ると危ないかも知れませんが、地図を見ながら走ったり、方向に不安を持ちながら走るほうがもっと危ないと思います。また孤独な運転に耐えられない方、常に女性の声で優しく誘導してくれますから寂しさも紛らわされるでしょう。しかも自宅の前に着くと、毎日必ず「お疲れ様でした」と言ってくれます。
 お薦めの機種はパイオニアとアルパインの新型機種、もちろんDVDがお薦めです。以前お勧めした関西弁や津軽弁で案内してくれるクラリオンのカーナビはあまり頭が良くなさそうなので今回はお勧めしません。




■ 投信ブームにご注意 ■


 かつてない投資信託ブームです。これまで投資信託といえば儲からない商品の典型のように言われていました。これまでは証券会社系列の投資委託会社が一切の運用を請け負っていました。従ってその運用方針については親会社の意向が強く反映されると考えられていました。悪く言えば証券会社本体が高値掴みして塩漬けになった株式を投信にはめ込んでいるから投資信託は決して儲からないと言われていました。現実に過去の投信の運用実績を見ると、日経平均の値上がり率を下回るものが非常に多く見られました。私自身は投資信託の運用が優れているとは考えていませんでしたが、個別銘柄が散発的に買われる相場ではなく、全体的に上昇する相場では、妙に自分で銘柄を考えるよりも投資信託のように多くの銘柄に投資するものの方が、結果的に安定的に値上がりを享受できるのではないかと、1989年の12月に考えました。元証券会社の社員の私が初めて投信を購入したのがこの1989年の12月でした。そうです。日経平均が最高値を記録したあの時です。このメッセージでも何回か書きましたが、あの時は相場全体はかなり値上がりしていましたが、過熱感はありませんでした。本当にそう思ったので周りの方にもお勧めして、後日ひんしゅくを買いました。昔と違い89年の12月頃は投信も案外優れた投資対象でした。しかしそれを最後に投信は再び儲からない商品の烙印を押されてしまいました。特に87年以降募集した投資信託に額面割れ償還が相次いだために、それ以後見向きもされなくなってしまいました。
 そして今回の投信、特に外国投信ブームです。カタカナの会社の運用だとみんな儲かるような錯覚をしています。もちろん外国投信には昔の日本の投資信託のようにお客を食い物にするものはありません。本当に顧客のために様々なテクニックを駆使し、高率運用を目指しています。しかしそうすれば必ず儲かるものではありません。必ず儲かるものならば証券会社自身も投信を購入しているかも知れません。投信と一言でいっても、山ほど数があります。それぞれの運用の特色、リスク等を考慮して判断して下さい。もっともこの判断が正確に出来るなら、何も投信を買わなくとも自分で運用できそうですが・・・。特に外国投信については為替が絡みますから、素人が判断することはまず不可能です。
 ところで、為替問題でもっとも説得力ある購買力平価説はマクドナルドのハンバーガー説です。すなわちマクドナルドのハンバーガー1個の値段が円とドルのレートとしてもっともぴったりくると考えると、1ドル128円になるそうです。それから見ると現在の円安は行き過ぎということになりますが・・・・・。





■ 金融機関決算発表 ■


銀行、生命保険等の金融機関の98年3月期の決算が相次いで発表されました。生命保険会社についてはある程度予想された決算でしたが、銀行については「あれ!」と思うことも多かったので、ちょっとご説明しておきます。
 銀行決算における自己資本比率については、安田信託等の経営不振が噂されている銀行が上位に来ました。これは劣後ローンと呼ばれる、ローンにも関わらず自己資本への組み入れが認められている特殊なローンの利用によって自己資本比率が実体よりはるかによく見える経理操作を行ったためです。最も優良行と言われる東京三菱銀行がビリに近かったのはそのせいです。この指標に目を奪われないように注意して下さい。
 次にお待ちかねの生命保険会社ですが、今回から「ソルベンシーマージン比率」という新しい用語がお目見えしました。これまで週刊ダイヤモンド等ではよく使われていましたが、これは「通常の死亡や事故に対する保険金支払い能力を超えるリスク、すなわち伝染病や大地震等の予期せぬリスクに対する支払能力の指標」で200%以上が望ましいと言われています。
 大手、中堅あわせて17社の中で最もこの比率の低かった会社はやはり東邦生命で、一応の指標である200%を下回り、154.3%でした。もっとも東邦生命は4月から新規募集を停止していますから、これから加入する人は考慮する必要はありません。(既契約者は一刻も早く解約を考えるべきです)そして悪いほうから第百生命、協栄生命、日本団体生命、千代田生命と200〜300%台が続きます。一応200%が目安とは言いましたが、これはあくまでも大蔵省が言っていることで、実際には400%以上が望ましいと言われていますので、これらの会社はやはり加入不適格な保険会社ということになります。もっとも良かったのは大同生命で唯一1000%を超えています。次いで日本生命、太陽生命、安田生命、富国生命、明治生命と、これまで私が一応安心だと申し上げていた会社が700%以上で続きます。
もちろんこの比率一つで評価してよいわけではありませんが、この指標が悪い会社は敬遠しておいたほうがよいことは間違いありません。



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