1998年7月
所長からのメッセージ

■ 闇の勢力の支配 ■
先月のメッセージの冒頭でお話した、長銀の経営破綻が現実のものとなってしまいました。都内の各支店は解約客でごったがえしているようです。整理券まで品切れになった支店もあったそうです。冷静に考えてみると、長銀が破綻して最も困るのはこの国の支配層かも知れません。長銀の発行している無記名割引債券が紙屑になってしまって一番困るのは庶民ではありません。そもそも割引債のような無記名債券が堂々と販売されていることのほうがおかしいのです。割引債はアングラマネーの象徴です。割引債で賄賂の金をためているのは金丸元副総理だけではないでしょう。
また長銀が破綻すれば我が国最大のリース会社である「日本リース」も破綻します。この影響は計り知れません。ですから方法はともかく長銀は必ず救済される運命にあったとも言えます。しかしあまりに急激な株価の下落に対して、ゆっくり対策をねる暇もなく、とりあえず住友信託銀行とくっつけたというわけです。
もっとも、長銀の経営の行き詰まりは今突然発生したわけではありません。6月19日の円の反騰を受けたサマーズ副長官の来日と関係づけて考えずにはいられません。銀行の不良債権問題に対する対策について米国から矢のような催促を受けているこの時期に長銀の株が暴落したこと、これに何か意図的なものを感じます。これもまた世界的な金融グループの政策の一環なのでしょうか。ここ1,2年の日本の経済、特に金融機関に対する海外からの圧力はケタ外れです。BIS基準の導入や、日本版ビッグバンにしても総て日本の金融機関の世界における地位を下落させるための陰謀かも知れません。トラベラーズの日興證券に対する出資、メリルリンチ証券の旧山一証券の引き取り、AIGグループからのあおば生命の買収の申し込み、総て先方のシナリオ通りでしょう。世界を動かしている闇の勢力というものを感じます。「また馬鹿なことを言い始めたな」と思われるでしょうね。しかし後で紹介するある本を読んで頂くと納得される方も多いと思います。
やはりケネディ大統領、弟のロバート司法長官の暗殺、大統領選が近づく度に出てくるエドワード・ケネディ上院議員のスキャンダルは偶然ではなかったようです。イラクに対する空爆、あるいは中東戦争、古くは第一次世界大戦まで彼らの策謀だったのかも知れません。
今回にわかに浮上したブリッジバンク構想も、例のグループの日本人メンバーである宮沢元総理の提案であることを考えると背筋が寒くなって来ます。
これまで私はこのメッセージにおいて数々の金融期間の危機について、皆さんに警告してきました。しかし、この私自身が最も彼らの戦略に躍らされた人間だったのかも知れません。もし、このような話に少しでも興味のある方は中丸薫著「"闇"の世界 権力構造と人類の針路」(文芸社)を読んでみて下さい。背筋が寒くなること受け合いです。

■ 注目すべき投資減税 ■
お知らせするの忘れていましたが、6月1日より所得税、住民税の追加減税と同時に、投資減税の拡充も行われています。
最も注目すべきは、同一種類を合計して100万円以上なら、たとえ1台が10万円のものでもこの減税の適用が受けられるということです。パソコンに限って1台30万円未満は一括損金として認められる税制は結局消えてしまいましたが、今回の税制を適用すれば1台20万円のパソコンを5台購入すれば7%の税額控除が受けられることになります。
対象となるのはすべての機械装置と8トン以上の貨物自動車、内航船舶と、指定された9種類の器具備品です。9種類の中でも一般的なものは、電子計算機(含パソコン)、デジタルボタン電話設備、デジタル複写機、冷暖房用機器などです。パソコンと冷暖房機器については特に該当するケースが多いと思います。
節税の99%は利益の繰り延べで、いつか必ず課税されますが「税額控除」だけは唯一取り戻されることのない究極の節税です。わずか7%とはいえ、税前で言えば14%の節税と同様の効果が得られるわけですから利用しない手はありません。
なお、この制度は来年の5月31日までの期間限定ですから、お忘れなく。

■ windows98は買うべきか? ■
あと2週間でwindows98の発売です。windows95の時ほどではありませんが、かなり話題を呼んでいます。米国での売れ行きも好調なようです。日本でもかなり話題を呼びそうですが、これまでwindows95を使ってきたすべてのパソコンでwindows98が使えるわけではありません。今年の春モデルより前の機種ではいくつかの設定変更も必要になります。windows3.1から95へのアップグレードはもう3年近く前のことになるので、もうすっかり忘れてしまいましたが、あれよりはいくらか易しそうです。95へ入れ代えた時ほど大きな使い勝手の変化はありません。インターネット関連の使い易さが大幅にアップしていることが大きな特長です。パソコン利用はワープロや表計算や年賀状作りが主で、インターネットをまったく使っていない人は98にアップグレードする必要はないかも知れません。
但し3.1から95の時もそうでしたが、今後発売されるソフトの99%は98用になります。もっとも3.1は16ビットでしたが、95は98と同じく32ビットなので動作にあまり不安を感じる必要はないでしょう。(この点に関する説明は省略させていただきます)また98になると周辺機器の接続が簡単になると言われていますが、それほど色々増設しようと考えている人もそう多くはないでしょう。とすれば、出来れば95で出来るだけ我慢した方が良いかもしれません。もしどうしても98が使いたければ、今年の11月にモデルチェンジされた後に購入されるのが無難でしょう。3年前にも経験したことですが、新しいOS(オペレーティングシステム)は、最初からパソコンに搭載されているもののほうが、後から変更したものよりはるかに安定した動作が期待できるからです。11月まで待って前述の投資減税と組み合わすことが出来れば最高だと思います。

■ 公認会計士の言い訳 ■
金融監督庁のメンバーとして採用され、脚光を浴びているようにも見える公認会計士ですが、一方では、昨年の東海興業、拓銀、山一證券と上場大企業の破綻についてマスコミで非難されるケースもよく見られます。「なぜあんなになるまでわからなかったのだ」という非難です。「あんな決算書を適正としているのなら監査は無意味だ」とも言われます。
結果として言われてもしょうがないとは思いますが、なぜ会計士の監査がこんな状況に追い込まれてしまったのかご説明したいと思います。
基本的には公認会計士の意見には適正か不適正しかありません。企業の決算書に対してイエスかノーかどちらかの意見を表明しなくてはなりません。そういう意味では大相撲の行司とよく似ています。行司の人もたとえ「同体」すなわち引き分けだと思ってもどちらかに軍配を上げなくてはなりません。会計士も同じです。「適正ではないが不適正と言うほどではない」というケースでは適正とせざるを得ません。というのは公認会計士が不適正だと言えば上場廃止になってしまうからです。自分の一言で相手の企業が上場廃止になる、上場廃止になれば社会的信用は地に落ち、倒産の可能性もある。このような状況の中で発見したちょっとした不良債権のために「不適正」を表明できると思いますか?またちょっとした不良在庫を発見したとします。これの評価損を強要すれば決算書は汚れます。担当者は左遷されるかも知れません。これまで監査人の指摘で左遷されたケースは数えきれません。もちろんそんなことに情が絡んではいけないのですが、むずかしいところです。
というわけで、公認会計士の監査はある意味で適正意見を述べるためにやっているようなもので、こんな監査に無力感を感じ、しかも毎年似たような仕事の繰り返しに嫌気がさして、現場の若手会計士の中には辞めていく人間も少なくありません。
言い訳にならない言い訳でしたが、実状をご説明しました。私も監査法人の代表社員の一人ですが、こんな意見を言っていることが知れ渡ったら、首が飛ぶかも知れませんね。

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