1998年8月
所長からのメッセージ

■ 税務調査 ■
今月は中旬から下旬にかけて2週間税務調査の立ち合いがあり、ほとんど事務所を留守にすることになりそうです。毎年7月の税務署の定期異動から1ヶ月ぐらいはあまり調査も行われませんでしたが、今年は国税局から「早く、たくさんやれ」という指示が出ているそうで、例年になく真夏の調査が数多く行われているようです。このメッセージも実は調査の立ち合い中に書いていますが、調査官は気合十分です。調査の最中に仕事をやるわけにもいかず、苦痛の時間ですが、もし妙な質問があった時のことを考えると、まったく放っておくわけにもいきません。事務所にはおりませんが、連絡はいつでもつくと思いますので、事務所にお電話下さい。多分折り返し御連絡できるはずです。
税務調査というものは、私たちにとってはいわば試験の採点と同じで、これをクリアーして初めて私たちの仕事に及第点がつくわけです。何事につけても、自分のやったことを人にチェックされるのは嫌なものです。最も会計士である私は監査の時期には逆の立場で仕事をして嫌がられているのかも知れません。「明日は我が身」という言葉を肝に命じて仕事に当たろうと思っています。

■ 泥縄減税 ■
歴史上最低支持率で小渕新政権がスタートしました。宮下厚生大臣のように厚生行政にまったくの素人大臣がいたりして、相変わらずの派閥順送り人事の色合いは隠せません。宮沢大蔵大臣の起用が吉と出るのか凶と出るのかわかりませんが、とりあえず市場は悲観的な見方をしているようで、円も安値を更新しています。銀行株も下落を続けています。まさに分刻みで世界が日本の景気と不良債権に対する早急な対策を求めています。しかし発足してから1週間、未だ新しい動きはありません。無責任な言い方かもしれませんが、ベストな対策でなくとも世界があっと驚くような政策でも打ち出さない限り、この流れは変わりそうもありません。世界が期待しているのは迅速かつダイナミックな政策です。これまでのように総て後手後手かつ問題先送り対策が問題にされているのです。こんなことは週刊誌にも新聞にもどこにも書いてあることですが、政府がなぜそのような対策を取れないのか、その原因究明が行われていません。サンデープロジェクトでもその点の突っ込みが足りないと思います。この点がはっきりしないとたとえ管直人氏が首相になっても何ら有効な対策が打てないということになります。
と言っている間に、宮沢蔵相が妙なことを言い始めました。最高税率の引き下げと定率減税を併用した所得及び住民税減税です。複雑怪奇な税制になりそうです。なぜシンプルに税率構造の見直しを行わないのか不思議です。蔵相は総ての納税者に必ず減税になるようにするとも言い始めました。総ての人にとって減税であり、高所得者に有利にならないようにと無理なことをやろうとするから変な税制になるのです。マスコミもいけません。「定率減税をすると所得の多い人のほうが減税額が多くなるから不公平だ」とか「最高税率を下げても金持ちはお金を使わないのではないか、それなら中堅所得者層の減税を多くしたほうがよい」などと報道しています。前者については橋本政権の行った現在の特別減税すなわち「定額減税」を念頭に置いた発言だと思いますが、定額減税こそ実は不公平です。日本は世界でもまれなほど累進率の高い税制が実施されています。累進課税の国で定額減税を行うことほど不公平なことはありません。
また所得層と消費の関係ですが、私の見るところ、高所得者ほど消費性向が高いようです。と言うのも中堅所得層までは日常の生活に追われていて、多少の減税が行われても、それがダイレクトに消費に結びつくとは考えられません。それに比べて高所得者層は余裕が違います。私の知っている最高所得者は年間給与1億8千万円ですが、手取りの殆どが自由に使えるお金です。と言うよりも、高額所得者、特に会社経営者は必要手取り額から逆算して自分の給与を決めているような気さえします。何年か前に、200万円を限度として、税額の20%を減税する政策が実施されましたが、200万円の減税を受けた高額所得者は、その殆どを消費に回したのではないでしょうか。高額所得者ほど減税額から消費に回る可能性は高いと思います。政治家はサラリーマンをやったことも無ければ、自分自身で高額所得者になったことも無いので、どうも減税される立場の感覚がわかっていないようです。
と言っているそばから、今度は700〜1,000万円の層について特に配慮するとの報道がなされています。何が「恒久的減税」でしょう。「場当たり的、その場だけ取り繕い減税」になってきました。

■ 少額備品の経理 ■
今年の4月以降決算期が開始した会社では経費として処理できる少額物品の基準が20万円から10万円に下がったことは何回もお話してきました。この改正に伴い、10万円から20万円の物品についてはグルーピングして一括して3年で償却することが認められました。ここで一つ大きな疑問が生じます。これらの物品については経理上どのような科目で処理されるのでしょうか。通常一括償却備品として固定資産に計上するのでしょうが通常の備品と分けて減価償却しなければならないためにシステムとしてはかなり面倒なことになります。しかし実はこれらの備品については償却資産税はかかりません。(償却資産税とは土地、建物などを除いた固定資産税に課せられる税金をいいます)同じ備品でもこの取り扱いを適用して3年間の償却を選択した場合のみ償却資産税がかからないという極めて特殊な取り扱いが行われるわけです。というわけで、こちらを選択したほうが圧倒的に有利になりましたので処理は面倒でも必ずご利用下さい。

■ Windows98をめぐるトラブル発生 ■
Windows95からWindows98への変更、すなわちアップグレードにおいてトラブルが発生しているようです。特に1年以上前の機種ではスムーズに移行出来ないケースが出ているようです。2年後にはNTと呼ばれる企業向けのOS(オペレーティングシステム)と統合されることも決まっていますので、よほど98の機能を試してみたい人以外は当面静観したほうが良いかもしれません。アップグレード中にトラブルが出ても後戻りするわけにもいかず、にっちもさっちもいかなくなってしまうようです。OS関係の立ち往生はそのまま放っておくわけにもいかないいため、素人には手に負えません。もし現在Windows95で安定的に運用出来ている方は、手を出す必要はないでしょう。またWindows98で特に便利な機能を享受するためには、パソコン本体もそれなりの機能を有していなければなりません。1年以上前のパソコンではWindows98の機能に対応していないものも多いのでアップグレードの意味があまりないと思います。
またWindows98と同時に「Microsoft Money]というソフトが発売されました。個人の資金管理をトータル的に行うソフトで「ホームバンキング」にも対応しています。米国では個人が自分で申告することが当たり前ですので、それを補完する意味でこのような個人資産管理ソフトが大変良く売れているようです。自分の資産管理がビジュアルに一目瞭然となるので、大変分かりやすいソフトです。私も購入して試してみようとしたところ、入力する数字があまりに多くて閉口しました。血液型がA型の方にお薦めしたいソフトです。

■ 夏期休暇 ■
下記期間、夏期休暇とさせていただきます。
8月12日(水)〜16日(日)

|