1998年10月
所長からのメッセージ



■ 世界恐慌の始まり? ■


 2兆1800億円と170兆円、この数字が何の数字かおわかりでしょうか。2兆1800億円は会社更正法を申請した日本リースの負債額です。170兆円は破綻した、あるいは破綻しかかっている米国のLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)の投資額です。日本リースの負債額はともかく、LTCMの投資額には驚かされます。170兆円、170兆円、わずか5000億円の資金のヘッジファンドがその何百倍、中国のGDPをも上回る投資をしていたのです。170兆円の投資が破綻したときの影響の大きさを考えて、NY連銀が仲介して米国金融機関14社が36億ドル出資という、あっという間の支援体制を整えました。これまで公的資金を使って金融機関を救済することに異論を唱えていた米国がなり振りかまわぬ救済を行ったわけです。これまで表面化していなかったヘッジファンドが破綻したときの恐怖が現実のものとなってきました。ロシアの金融破綻が主たる原因と考えられますが、ということはジョージ・ソロスのクウォンタム・ファンドをはじめとする他のヘッジファンドも同じような含み損を抱えている危険があります。ロシアのデフォルト(債務不履行)宣言あるいはタイガーかクウォンタムといった大手のヘッジファンドの破綻でもあれば、世界は大混乱に陥るかも知れません。
 ところで日本リースについては国会でもて遊ばれた感があります。もし長銀の関連3社に対する債権放棄が認められていたら日本リースの破綻はなかったでしょうから微妙といえば微妙です。関係企業2千数百社、ユーザー数でいえば何十万、何百万という大リース会社の倒産です。更正法申請直前には安田信託等がリース債権の譲渡条項をたてに、借り手の企業に対してリース料の支払いを要求して混乱を招きました。顧客の立場としては、管財人より正式な連絡があるまでは日本リースにリース料を支払っておいたほうが良いと思います。しかしえげつない債権確保に走った安田信託の経営もますます心配です。恥も外聞もなくなってきました。
 日経平均も1万3千円割れ、もっとも日経平均については金融株やソニーのような値がさ株の影響を受けやすいので、市場の動きを正確につかむためには単純平均値を見られたほうがよいかも知れません。このような時期に上場するNTTドコモの動きに注目したいと思います。「ドコモの上場が失敗したら次に控えているNTTの売り出しに影響するから必ず成功させるはず」という素人考えが通用するかどうか見物です。私も2株申し込んでいます。最も会社に近い専門家は「寄り付きでいきなり大儲けするようなことには絶対なりません。ゆっくり育てます」と言っています。とは言え現在のような環境で長期に持つ気にはなりません。私はどんな値段でも寄り付きで売ります。



■ 21世紀のパソコン ■


 Windows98が発売されたばかりなのに気が早いかもしれませんが、21世紀まであと2年3ヶ月です。その頃パソコンはどのようになっているでしょうか。最も大きな動きは家庭内におけるパソコンあるいはインターネットの利用が格段に進んでいることでしょう。私の知り会いの会社が冷蔵庫のドアにディスプレィを埋め込んだ?インターネット冷蔵庫を発表して注目を集めていますが、今までは想像もできないような様々な形で家庭内で利用されていることでしょう。
 それはともかく、今パソコンを買う場合にはいくつかの注意が必要です。Windows98はともかくUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)という機能に注目しておく必要があります。これまでパソコンの周辺機器についてはその接続が面倒で多くのトラブルの原因にもなっていました。これがUSBの機能があれば何の設定も必要なく、接続のためにいちいち電源を切る必要もありません。これからは様々な機器をパソコンと接続するケースが考えられますが、その場合にパソコン側と機器それぞれにUSB端子があるとないとで使い易さがまったく違ってきます。今話題のデジタルカメラもまもなくUSB端子を備えたものが発売されるはずです。今後機器を購入される場合にご注意ください。また今はWindows95を搭載した旧機種が安売りされていますが、多くの機種がUSBを備えていませんので注意が必要です。Windows98に限らず、新商品が出るといくつものセールスポイントが叫ばれますが、それがキーとなる機能かどうか見極める目を持ちたいものです。




■ 今月、来月は生命保険強化月間 ■


 例年10月、11月は生命保険強化月間ということで皆さんのところにも生命保険の外務員の方が熱心に通っていることと思います。このキャンペーンシーズンに向かって各社ユニークな新商品を続々発売してきています。大きな特徴は保険料を安く設定した商品が多くなってきていることです。安くなっているからといって別に「安かろう悪かろう」ということではなくて、たとえば東京海上あんしん生命の「長割終身」という終身保険は中途解約時の解約返戻金を低くすることによって保険料の引き下げを図っています。また大同生命の「健康体割引」は通常と異なる厳しい健康体の審査基準を設けてそれをクリアすれば20%近く(期間10年の定期保険の場合)保険料が安くなります。非喫煙者の場合には更に10%近く保険料が安くなります。
 非喫煙者といえば最近各社から非喫煙者のための保険がいくつか発売されています。アリコの「ノンスモーカー」、第百生命の「すいません」などですが、これらは非喫煙者の健康上のリスクをもとに保険料を設定していますから、通常の保険料より必ず安くなります。すなわち、たばこを吸わない方にとっては通常の保険に加入することは明らかに損だということです。これまでは、中小の保険会社しかこれらの保険を扱っていませんでしたが、これからはいろいろな保険会社が扱うようになります。最も自分にあった、「得な」保険に加入するようにして下さい。




■ 投資は総て自己責任 ■


 とてつもない円相場の乱高下が起きました。わずか1週間で25円近い幅での乱高下です。これではヘッジも為替予約もあったものではありません。教訓は一つだけ。「為替相場の先行きだけは誰にもわからない」1週間前の経済記事を読み返してみてください。ちょっとした円高の動きに対し、著名な経済人から為替ディーラーまで120円どころか130円を切る円高を予想した人は一人もいません。皆さん「基本的な円安の基調は変わらない」とコメントしています。最近の新聞を見て下さい。専門家は突然「円相場のレンジは105円〜135円」と態度を激変(豹変)させています。
 今投信ブームです。投信以外にも様々な金融商品が販売されていますが。それらの中には為替オプションを組み込んだものも少なくありません。「為替が1ドル160円以上にならなければ利回り5%」とか「為替が1ドル120円より円高にならなければ4%の利回り、120円以上の円高になればドル決済」などと為替の振幅の幅を基準とした商品です。ここ半年以内のそれらの商品の限界値は総て突破してしまいました。新聞にも、もう相場の変動によって期日にはドルレートによって償還されることが決定された商品のお知らせが載っています。現在の相場で考えると僅か数ヶ月で大きな含み損を抱えてしまったわけです。「そこまで円高(円安)になりっこありませんから」などと勧誘する銀行員や証券マンが多いようですが、今更彼らをせめても「すいません、まさかこんなになるとはまったく予想しませんでした」の一言でかたづけられてしまいます。どうも「日本版ビッグバン」が言われるようになって、海外あるいは為替に関係した商品に対して拒否感を示すと、時代遅れと思われるような雰囲気になってしまったような気がします。別に人に何と言われようと気にする必要はありません。時流に乗って損する方がよほどアホです。
 何度も繰り返しますが、リスクのあるものに対する投資は総て自己責任です。私もご相談を受けた何人かの方に言いました。「為替だけは予想できませんから」
 とは言ってもこの2,3日で多くの方がドルに殺到したようです。やり方はピンからキリまであって、ピンはドル建てMMFを数千万円を購入した人、キリは何十万円かの現金をドルキャッシュに換えた人、レベルは様々ですがこの予期できぬ経済変動を掴んですぐ行動する実行力に敬服します。このような経験を積んで行くことによって日本人も世界の金融市場で生きていくことが出来るようになるのかも知れません。たとえ実行には移さなくとも(実行するのと実行したつもりでは天と地ほどの差がありますが)これから起きる様々な経済変動に対してどのように行動するか、一人一人が具体的に考えてみる必要があると思います。それが次のときの経験となって生きてくるでしょう。
 念のため申し上げておくと為替に関しては「もうこれ以上は・・・」などという相場観を持つことは危険です。ここからは1ドル116円をスタートとする新たな円相場が始まったと考えるべきです。




■ 新たな情報源 ■


 先日船井幸雄さんの話を聞く機会がありました。船井さんの話もさることながら、最も大きな収穫は増田俊男さんという方を知ったことでした。増田俊男氏はオフショア金融の専門家で、現在はパラオ銀行の取締役でもあります。船井幸雄さんが経済や社会の将来の予測についてその見解を注目するばかりか、最近の2年間の短期予測について殆ど間違いのなかった人だそうです。この方の意見については徳間書店から船井さんと共著で出されている「日本はどこまで喰われ続けるのか」をお読み下さい。以前ご紹介した中丸薫さんの「闇の世界」ほどではありませんが「資本の意志」の不気味さ、恐ろしさにギクッとなさると思います。また増田俊男氏の情報については、氏の「時事直言」のホームページを折に触れご覧になると良いと思います。私も早速「お気に入り」に加えました。
今回の円高及び円相場の乱高下も氏は9月15日号で見事に予測しています。99年1月→4月についてはびっくりするような予想がされています。是非自分の目でご確認下さい。インターネット環境になく、どうしてもその予想を知りたい方は私宛にお電話下さい。
 我々一人一人が経済学者になる必要はありません。信頼できる情報を提供してくれる人を何人か見つかればよいのです。良い人を見つけました。

□ 中小企業等に対する投資減税の拡充について □ 
前にもお知らせしましたとおり、中小企業等に対する投資減税の拡充につきまして、詳細の説明を平田会計NEWSの付録として、一枚添付しておりますので、よくお読みいただきますようお願いいたします。





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