1998年11月
所長からのメッセージ

■ 今後のインターネットはケーブルテレビで ■
世田谷区を中心とした東急ケーブルテレビジョンや文京区、台東区、千代田区を範囲とする東京ケーブルテレビジョンがケーブルテレビを利用したインターネット接続サービスを開始しました。
これまでインターネットと言えば電話回線を使うのが当たり前でしたが、ケーブルテレビの専用回線を使うことで、プロバイダと呼ばれる接続業者との契約も、時間制料金を支払う必要もありません。専用回線を使うので電話代もまったくかかりません。もっともケーブル会社には利用料金として3〜5千円を支払う必要があります。
これまで専用回線によるサービスと言えば、NTTやODNといった通信事業者しか行っていませんでしたが、金額的にも月額3万8千円と高額なため、家庭レベルまでの普及は望み薄でした。しかし、ケーブルテレビの専用回線を用いたインターネットへの接続によって、接続料金をまったく気にする必要がなくなりましたから、地域によってはインターネットの利用が一気に進むことが考えられます。特に小中学生のインターネットの利用がかなり促進されるでしょう。これまで家庭で休日に子供達に好き勝手にインターネットを利用させることは考えられませんでした。しかしこれからは年間数万円で使いたい放題です。ダイヤルQ2の時のように、電話代の請求に目をむくことはありません。私たちでさえ料金を気にしてこれまで慌ただしくインターネットを利用していましたがこれからはゆっくりじっくり使えるようになります。
料金的なことばかりでなく、ケーブルテレビジョンの専用回線を使うと電話回線どころかISDNを上回る速度で接続されますので、極めて快適な通信状況となります。特に「東急ケーブルTV」の場合には光ファイバーを用いますのでISDNをはるかに上回るスピードで接続されます。しかも専用回線が確保されていますので、お話中が続くということもありません。インターネットを利用していて最もストレスが溜まるのは回線が混雑していてなかなかつながらないということと、スピードが遅くてページが開くまで時間がかかる点でしたが、これからはこんなイライラともさようならです。
とりあえずインターネット接続を始めたのは「東京ケーブルTV」と「東急ケーブルTV」の二つのようですが、続々と新規参入してくると思いますので、ご自分の地域のケーブルテレビに問いあわせてみてはいかがでしょうか。とりあえず世田谷区や文京区にお住まいの方はすぐ申し込まれると良いと思います。なお「東急ケーブルTV」の場合にはよく、わかりませんが「東京ケーブルTV」の場合にはお使いのパソコンをネットワークにつなげる準備が必要です。パソコンに詳しくないとちょっと難しいかもしれませんが、お困りの場合にはご相談ください。部品代は数千円もあれば十分です。

■ 記録的な倒産数 ■
帝国データバンクから98年度上半期の企業の倒産集計が発表されました。これによると負債総額1千万円以上の倒産による負債額は前年同期比33.8%増の7兆9365億円で、戦後最悪となりました。倒産件数も26.9%増の1万34件と14年ぶりに1万件を突破しました。これは長引く不況が背景に有ることはもちろんですが、金融機関の貸し渋り、さらにはメインバンクの破綻による連鎖倒産といった、これまでにない倒産原因が増えているのが特徴です。また9月の倒産件数は前年同月比17.9%増の1518件で10ヶ月連続の2ケタ増、負債総額は3兆391億円でした。
また国税庁は10月22日、97事務年度(97年7月〜98年6月)の法人税の申告状況を公表しました。それによると全国の法人約280万社のうち264万社が申告、そのうち黒字申告法人は34.6%でした。これは7年連続の減少となります。世の中の会社のうち65%が赤字ということです。前にもお話したように、黒字申告した法人の中には公共工事の入札に応募するために赤字申告できない建設業や金融機関向けに経費を否認したり、減価償却費をわざと計上しなかったり、もっとひどいケースでは粉飾までするケースも見受けられるようです。従って実際の赤字率は70%をはるかに上回ると思われます。また特に中小企業の場合には同族役員が会社を黒字にするために自分の役員報酬を意識的に下げるケースもよく見受けられるだけに赤字の率はさらに高いと思われます。

■ 日本(世界)はどうなるのか ■
今、書店に行って経済書のコーナーを見ると大変面白い現象に気がつきます。それは日本経済に対する見方が大きく二分していることです。たとえば為替相場だけを見てみても、本によって1ドル65円から250円まで極端に見方が分かれています。為替と金利と国力はどのように関係するのか、債権国の通貨は必ず強いのか、このあたりで見方が大きく別れているようです。

私が貴重な情報源としている方が2人います。二人とも円高論者であることには変わりありませんが、一人は110円説、もう一人はとりあえず65円説、最終的には24円説です。円相場については「そんなに円高になったら輸出産業がやっていけない」とか「そんなに円安になったら輸入品価格が高騰しインフレになってしまう」とかいう意見はあまり問題にならないようです。そんな一国の経済事情で相場が大きく動くほど為替相場は小さなものではなさそうです。為替はもっと大きく複雑な思惑で動くもののようです。これからの日本あるいは世界の経済状態を見極めるためには景気や為替だけでなく、為替変動の原因を常に考えるようにしていく必要があるようです。10月上旬の円高のときになぜ1ドル110円の一歩手前で止まったのか、1ドル110円を切ることがチャート的にも政治的にも大きな意味を持つことを考えなくてはなりません。(ちなみに1ドル11010円は「クライスラーレポート」で示されたいわば米国産業にとって適正と考えられている為替相場です)
ばくちではありませんし、円高予想によって我々素人投資家が大儲け出来る可能性はありませんが、(円安予想ならドルを買っておけば良いのですから誰でも可能です)それによる世の中の変化を予想しておくことは必要でしょう。
嘘か本当か知りませんが米国では日本の国債がネガティブイールド、すなわち買った人が金利を支払うという異常事態になったそうです。ドル不信が米国でも進んでいるのでしょうか。

■ マスコミによって倒産に追い込まれる会社 ■
最近「Z値」ということをよく耳にします。これは1968年に米国のエドワード・アルトマンによって考案されたもので、「会社の財務健全性の測定」に広く用いられてきましたが、最近ではもっぱら「倒産危険度」として用いられています。今週号の「週刊ダイヤモンド」では上場企業のZ値を試算して「倒産危険度ランキング」として公表しています。数値の算出方法は省略しますが、Z値の判断基準については絶対的なものはありませんが、概ねZ値が1.1未満の場合には財務的に不健全、すなわち危険と判断されているようです。週刊ダイアモンドでは1.81以下を危険水準としてZ値1.78以下の上場及び店頭公開企業800社を掲載しています。これには金融機関は含まれていません。
これまで週刊誌等では数えきれないほど「危ない銀行」であるとか「危ない保険会社」等の特集記事を組んで人々の危機意識をあおってきました。そのために経営不安に陥った金融機関も少なくありません。さくら銀行は今年度上期だけで1600億円の個人預金が減少しています。東邦生命や第百生命の契約も減少し続けています。もちろんメディアとして、もしものときの被害者を増やさないための正しい情報提供も必要でしょう。しかし大企業には多くの従業員や債権者がいます。マスコミの報道が人々の不安感を増加させることによって、本来は倒産するはずでなかった企業が倒産に追い込まれることもあり得ます。今後株式投資を考えている投資家には確かに意味があることかも知れませんが、金融機関と異なり、一般企業の倒産によって大衆が被害を被る危険性はそれほど高いとは考えられません。しかし、今回週刊ダイヤモンドに掲載されたことによって仕入れ業者からの納品の停止や、金融機関のいっそうの貸し渋りにあって、いくつかの企業が窮地に追い込まれるのではないでしょうか。それほど絶対的な基準とも思えない基準によって評価され、その数値に対する絶対的な基準もないのに一方的に「危険」と評価されてはたまったものではありません。今回の掲載により不幸な企業が出ないことを祈ります。長銀は株式市場に殺されましたが、マスコミによって殺される企業も出てくるかも知れません。

■ 年末までにやっておくべきこと ■
本年も残すところ1ヶ月半、税金の世界では年末は大きな節目です。歯の治療をやりかけている人は、ぜひ今年中に治して支払いを済ませてしまいましょう。(もちろん医療費控除のメリットを最大限利用するためです)今年大きく儲かった方は(少ないでしょうが)手持ちの含み損を実現しておきましょう。特にゴルフ会員権相場については暴落状態です。売却することにより損を出し、新たに買い直すことによる「値洗い」を実行すれば税制面のメリットは膨大です。特に来年からは所得税率が下がることが確実なことに加えて、ゴルフ会員権の譲渡損を他の所得と通算できる制度の廃止の可能性もあり、もし値下がりしている会員権をお持ちの方は今年ぜひ実行しておきたいものです。
繰り返しますが、来年は所得及び住民税の税率が下がることが確実ですから、節税は今年行ったほうがメリットは大です。小規模企業共済を月払いしている方は今月の20日までに年払いに変更しておきましょう。来年の1月に経費を計上するのと年内に計上するのでは、税率が10%以上変わることになれば節税額も大違いです。
それにしてもゴルフ会員権の暴落はすごいですね。ピークの1/10以下になったものはざらです。15年前の水準も下回ってきました。「土地神話も終わりだ、ゴルフ会員権のように利用価値しかないものが何千万円もすることがおかしいのだ、もうゴルフ会員権も終わりだ」といわれる方も多いと思います。しかし日本には1200兆円の金融資産があることを忘れてはいけません。日本には金融資産を1億円以上持っていると思われる世帯が60万世帯もあると言われています。こんな時代でも世界1周クルーズはあっという間に完売してしまうのです。波乱の時代にこそ貧富の差がいっそう拡大するのかも知れません。と言うわけで、ゴルフ会員権が際限なく暴落することは私には考えられません。もっとも、ゴルフが過去のボーリングのようにブームとして終わってしまえば別ですが。

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