1999年2月
所長からのメッセージ



■ ペイオフ迫る ■


 金融機関の預金が全額保護されなくなる「ペイオフ」が迫ってきました。2001年4月1日以 降、1金融機関につき1預金者当たり1000万円を超える預金は保護されなくなります。これに よって二つの大きな動きが起きることになります。
一つはもちろん預金の移動です。1金融機関に置いてある1000万円以上の預金はどんどん解 約されていくでしょう。そして別の金融機関に預けかえられることになります。これまでまったく 取引のない人からの預金が急増する金融機関もあるでしょう。一方、たとえ1000万円までは保 護されることがはっきりしていても、なんとなく不安になって、金融不安が噂されている金融機関 については一挙に預金が全額解約されてしまうケースも多発すると思われます。最近自民党内部で はペイオフの先送り論が台頭しているようですが、現実にはこのまま実施されると取り付けのため 破綻する金融機関も相当出てくると思われます。ビッグバンが本当に日本のためなのか、世界の闇 の論理に操られたのかわかりませんが、それまでに信用が回復しない金融機関は本当につぶしてし まうべきなのか、闇の支配から切り放して冷静に考えるべきなのかということになります。とりあ えず自己防衛は必要でしょう。
 もう一つは預金しておく期間の短縮です。今年の4月1日以降、新規の2年物以上の長期の定期 預金はすべて該当してしまいます。ですから、4月1日以降の定期預金は殆ど1000万円以下に なると同時に、短期物になる可能性が大です。幸か不幸か、現在のような低金利では長期物の金利 面における有利性はそれほどありませんから、短期物にすることに抵抗はまったくないでしょう。
 またそれ以前でも、現在それほど大きく注目されていない「保護される預金」と「保護されない 預金」の選別が進むと考えられます。ちょっと勘違いしがちですが、シティバンクに代表される外 国銀行の預金は保護されません。たとえ東京三菱、住友といった邦銀の預金でも外貨預金は保護さ れません。ですから最近大はやりの外貨預金については「たとえ円高になっても長期に保有すれば 金利差でカバーできます」とか「何年持ってもらえばたとえ円が1ドル80円になっても元本割れ しません」との説明がなされていますが、保護されない預金では将来どうなるかわかったものでは ありません。また今回は例外的に保護される様ですが、利付金融債や割引債も保護されません。
 世の中、ますます自己責任を求められる時代になって来ています。十分研究なさるか、しっかり としたアドバイザーにご相談なさることをお薦めします。なお何度も申し上げるように郵便貯金は 決して安全な金融商品ではありません。これは2000年以降満期が到来する定額貯金の行き先を 考えることが今後の投資行動の第1歩となるでしょう。(定額貯金が満期のピークを迎える200 1年の4月からペイオフが施行されるのは、偶然でしょうか?)




■ 2000年問題を考える ■


 2000年問題は予想以上に私たちにとって大きな問題になりそうです。今までコンピューター については、桁数の省力あるいは倹約のために年号はすべて2桁か3桁で処理されてきました。す なわち1900年代か、悪くとも1999年までしか想定されていませんでした。しかし21世紀 というより、西暦2000年が身近になってくると、殆どのコンピューターが西暦2000年を認 識せず、1900年と勘違いするか誤作動を起こすことがわかってきました。そこで世界中でこれ に対する取り組みを行っているわけですが、日本は先進諸外国の中でもっとも対応が遅れていると 言われています。
 私たちにとってはそれほど関係なさそうな話にも思えますが、私たちの周りにはコンピューターで管理されているものが無数にあります。コンピューターがダウンすれば、銀行の オンラインもダウンしますし、電話回線も使えなくなります。電車も走れなければ、交通信号も麻 痺するかもしれません。家庭の中でも留守番電話やビデオは確実に影響を受けますし、冷蔵庫や洗 濯機も使えなくなるかもしれません。出来れば2000年の1月1日には都会にはいない方がよさ そうです。少なくとも今年の大晦日から元日にかけては、乗り物、特に飛行機だけには絶対に乗ら ないようにしましょう。何しろ有史以来初めての体験ですから、何が起こるかわかりません。
 この度金融監督庁は、2000年問題で障害が発生する危険がある日を13日公表しました。 最も早い日は、今年の4月にも訪れます。ご注意ください。





■ 携帯電話とPHS ■


 携帯電話とPHSを巡る動きが活発化して来ました。主としてNTTドコモの動きですが、まず 2月22日から「iモード」と言われる、インターネットに携帯電話でアクセス出来る新サービス が開始します。「iモード」では携帯電話からインターネットに接続し、モバイルバンキングや証券 取引、航空券の予約も出来るようになります。またホームページを閲覧することも可能です。これ に合わせて各社から大型ディスプレイを備えた新型機種が発売されます。
 次にこれもNTTドコモですが、私が待ちに待った携帯とPHSのデュアル端末がとうとう春に 発売されることになりました。これで車で移動中は携帯、歩いている時や地下ではPHSという、 最高の環境が整うわけです。PHSと携帯電話を併営しているNTTドコモならではのサービスで すが、また他の携帯各社からの横槍が入らないかどうか心配です。
 と思っていたら、2月からPHS各社が移動中でも通話できるようにPHSの機能を改善すると のニュースが入って来ました。理論上は走行中の自動車でも利用できるそうです。こうなると何も デュアル端末は必要なくPHSだけで足りるということになってしまいます。もっともPHSは一 つのアンテナで3台の端末しか使用できませんから、人ごみでは使えないことも多く、特に車等で 移動すればビジー状態が多くなることも予想されます。また携帯電話に比べて電波のない状態の場 所も多く、自動車で移動中、常に電波を受け続けられるとは思えません。状況を見守りたいと思い ます。とは言っても、通話品質が悪いとか、夕方や盛り場ではなかなかつながらないと不満だらけ の携帯電話事情がやっと改善されることになるのは大変良かったと思います。
 ドコモの7シリーズをはじめ、毎月のように新型機種が発表されていますが、新サービスも続々 開始します。機種というよりはサービスの質を見極めて購入するようにして下さい。現代社会にお ける携帯電話の便利さ、実用性等を考えると1台の電話をあまり長く使い続けることは得策とは思 えません。ビジネスに使用している方は1年に1回位のペースで買い替えが必要ではないでしょう か。750グラムの重さで毎月の電話代が5万円を超えることが当たり前だった初期の携帯電話か ら考えると、今は天国です。




■ 東急日本橋店の閉店 ■


 東急日本橋店の閉店騒ぎは新聞、テレビで大きく報道されたので皆さんご覧になったと思います。 私も何回か覗きましたが、品揃えがお粗末で特に購買意欲が刺激されませんでした。またどのフロ アーもレジで30分も並ぶので、嫌気がして何も買わなかった人も多かったようです。
 東急日本橋店が白木屋時代から300年も続いた由緒あるデパートであるとか、日本橋の交差点 という超一等地にあるなどといったことは何にも意味がありません。日本橋店の営業不振の理由と して、周囲が銀行、証券ばかりのビジネス街になってしまったこと、三越、高島屋という高級百貨 店の中間で集客出来なかったことなどが上げられていますが、こんなことを言っていたら東急百貨 店の残りの店も危ないと思います。日本橋店の品揃えの悪さ(なぜゴルフ用品売り場を廃止しない のか不思議でした)、店員の態度の悪さ、売り場特に地下鉄入り口からの売り場の雰囲気はヤミ市の ようで、まさに三流デパートでした。接客業の基本も出来ておらず、マーケッティングもメチャク チャではつぶれない方がどうかしています。浅草の松屋にしても同様です。
 週刊ダイヤモンド最新号に掲載された鈴木敏文セブンイレブン・ジャパン会長の言葉が印象的で す。
「町の商店だって生き残るところもあれば、規模では断然大きい百貨店でさえつぶれることはあ る。大事なのは、時代の変化のスピードに対応すること。スケールメリットなんて商売と何の関係 もない。『今は景気が悪いから売れない』という考え方は大間違いだ。そんな考えでいると、この先、 経済成長がプラスに転じても、売上げを伸ばすことは出来ない」
また、よく「差別化、差別化」と言われますが、それほどたいそうなことを考える必要はありま せん。「ちょっとしたこと」を「すぐやる」ことの積み重ねが「差別化」になるのです。
 これから数年間、特に数ヶ月はまさにリストラ、倒産の嵐でしょう。いくつかの生保、銀行、ゼ ネコンは確実に消えていきます。これまでのように誰もが企業の一員として業務をこなしていくだ けでは生き残っていけません。常に時代の求めるもの、それに対して自分が何をしていくのか考え ていないと「不要人間」の烙印を押されるか、企業自体が生き残って行けなくなってしまうでしょ う。社内の事が出来るのではなく「仕事」が出来る人間になっていく必要があります。ただそのよ うな人間が増えてくるということは、経営者としてもかなり意識改革を強いられることになるで しょう。終身雇用制を前提とした「上司の言うことは何でも聞く」社員は少なくなっていくでしょ うから。もっとも経営に絶対の自信があり、人を見る目に間違いがないならば「当社は終身雇用制 です、決して首切りをしません」と言って人材募集をすれば、内気ですが優秀な人間が集まるかも 知れません。今、皆さんに息子さんがいたら、どのような職業につくことを、あるいはどこの会社 に入ることを薦めますか?
最後に、もう一つ印象的なドンキホーテの安田社長の言葉を。
「もはや業界という言葉は意味がない。これからは業態が重視される時代だ」




■ コンピューター減税の注意点 ■


 4月1日から購入時に一括損金算入出来る情報通信機器の内容が明らかになりました。大蔵省は 問い合わせに対して「電子計算機及び本体と一緒に購入した付属装置、具体的にはディスプレイ、 プリンター、スキャナー、外付けHD/MO、デジタルコピー機、電子ファイリング設備等」とい うことですが、注意していただくのは1点。付属設備のみの購入については、100万円まで一括 損金算入の規定は適用されない、という点です。したがって付属設備のみの購入については原則の 「1点10万円未満の品物の一括損金算入」が適用されます。特にこれからは省スペースの液晶ディ スプレイのみを購入するケースが多くなると思いますので、ご注意下さい。




■ バブル10年後 ■


 今年はノストラダムスの予言ばかりでなく、バブルのピークの10年後という重要な意味を持っ た年です。バブルのピークとなった1989年は、企業がこぞって不動産、株、ゴルフ会員権への 投資を行った結果、バブルの崩壊によって膨大な含み損を抱える羽目になりましたが、それらへの 投資資金も含めて、大量の資金調達をした年でもあります。公定歩合が、当時としては低金利の3. 5%ということもあって、大量の社債発行、特に転換社債の発行を行いました。転換社債は株価が 上昇し、株式に転換されれば償還の必要はなくなりますが、その後株式市場は下落の一途をたどっ たため、全く転換のチャンスがなく、社債としての償還の時期を迎えることになりそうです。それ らの償還額は年末までに148社、2兆7000億円と言われています。この3月まででも、佐藤 工業の100億円、フジタの270億円、ジャパンエナジーの433億円と心配な企業の名前が並 びます。
 また3月末の資本注入を控えて、各金融機関は貸し手企業の一層の選別を強めるでしょうし、金 融機関自体も大変動を迎えるでしょう。何しろ金融機関は3月末までに不良債権の償却を進めない と自分自身が不良金融機関の烙印を押されてしまうのですから。これまでのようにいたずらに償却 を先送ることは許されません。従ってこれからの1ヶ月半は、倒産、提携、合併、撤退等の文字が 飛び交うことになるでしょう。
 なお先月号で店頭株式をお薦めしましたが、あまりのフィーバー状態に天井が近いことを感じさ せます。特に新規公開株に関しては投資ではなく、くじ引きです。公募株が当たれば、700万円 がわずか1週間で1210万円の日本オラクルや480万円が960万円になる大阪2部の船井電 機、600万円が1050万円になったジャックなど異常以外のなにものでもありません。暴落に 引っかからないようご注意下さい。 




■ 最近の研修から ■


 急に勉強心が目覚めたのか、2月の第1週だけで5つの研修に参加しました。特に今は勉強しな ければという意識が非常に強くなっています。先ほどもお話ししたように、今年から来年にかけて は何しろとてつもない大変動が続々と発生する危険があるからです。ありとあらゆる危険性に対す る心構えが必要でしょう。
 7月の巨大な隕石に対してはどう対処すればわかりませんが、地震に対する準備は依然必要です。 もっとも地震に関する最高権威の元東大地震研究所長の力武常次先生によれば、今後10年間の間 に関東大震災が起きる確率は10%ということですからあまり心配する必要はなさそうです。しか し注意すべきは東京直下型地震です。東京直下型地震が最後に起きたのは1922年、これは確率 が高いそうで、今後10年以内に起きる確率は40%だそうです。もっとも揺れはそれほどでもな く、深さ30キロの地点でマグニチュード6ということで震度は6ぐらいだそうです。これは神戸 の地震と比べればかなり軽く、東京の山の手では木造家屋でも倒壊の心配はないそうです。ただし 地盤の弱い下町ではやはり注意が必要とのことでした。また火災ですが、山手線より外で注意すべ きなのは、やはり下町と中央線沿線、特に中野から阿佐ヶ谷にかけての住宅密集地帯と大田区の蒲 田周辺だそうです。これは2月5日のセミナーの最新情報です。
 研修に参加するたびに自分の不勉強を自覚します。



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