1999年12月
所長からのメッセージ

■ 黒字法人また減少 ■
国税庁が発表した99年6月までの1年間に申告した法人企業の黒字申告率はとうとう31.6%にまで落ち込んでしまいました。すなわち表面的にも7割の企業が赤字に転落したということです。
以前から統計数字はあまり当てにならないとお話してきました。というのも対銀行、対親会社、対官庁向けに決算書を提出する必要がある会社では「赤字はまずい」と考えている会社が殆どです。これらの会社は、粉飾とまではいかなくても、減価償却を実施しない、経費として処理できる消耗品を資産計上する、前払い経費を厳密に計上する等の方法で、合法的に利益操作を行います。企業の財務の健全性から考えると必ずしも望ましい行為とは言えませんが、黒字か赤字かで会社の評価や受注状況にまで影響してくる場合にはそんなことは言っていられません。
これらの、必死で黒字決算を組んでくる会社が相当数あるのに、なお黒字会社が31%ということは8割方の企業が赤字と言うことです。この数字は大変なことだとは思いますが、赤字会社を減らす政策が良い政策とは限りません。というのは、日本には相当数の建設関係の会社がありますが、これらの会社の業績は公共工事の発注高に大きく左右されます。ですから景気をよくするためにすぐ「赤字国債を発行して公共工事を増やす」という政策が打たれるのです。この旧態依然たる経済政策が我が国の産業構造を歪め、国家財政の赤字体質を作り上げました。
現在必要なことは、目先の景気回復のための経済政策ではなく、50年、100年先を見据えた産業構造を作り上げるための経済政策です。

■ 最新生命保険事情 ■
最近、日本団体生命のアクサ生命への身売りがあったばかりの生命保険業界ですが、そのほかにもいくつか動きがあったのでお知らせします。
まず、破綻予備軍の生命保険会社ですが、具体的に名前は挙がって来ませんが、気になるニュースがあります。政府が「生命保険会社破綻に備えて2兆円を準備」というニュースです。これはもちろん契約者保護基金の積立額を増やすということなのでしょうが、気になるのは準備される額です。2兆円というのは、日産生命につぎ込まれた額の10倍、東邦生命にしても4000億円と言われており、こんな額は必要としませんでした。と言うことは、日産生命の10倍規模の生命保険会社の破綻が予想されているということでしょうか。考えられるのは規模的にはC、M、S生命といったところでしょうが、もっとも可能性が高いのはC生命ということになるでしょう。注意が必要です。
と言っている間に生保業界6位の安田生命と11位の富国生命の提携のニュースが入ってきました。この2社はどちらも生命保険業界では勝ち組に属している会社ですから特に心配はありませんが、両者のバックが気になります。安田生命と言えば芙蓉グループに属する名門企業ですし、富国生命は朝日生命ほど純血ではありませんが、第一勧銀グループの優良企業です。
基本的には第一勧銀と富士銀行、日本興業銀行の統合がこの背景にあります。富士銀行は芙蓉グループの中核企業ですから、今回の両生命保険会社の提携はそれぞれ属するグループの統合を背景にしたものと考えられます。今回の発表では両者は合併までは考えていないとのことですが、今後の展開によってはその可能性も十分あると思います。またこの合併が本格化すれば、第一勧銀グループの朝日生命も参加する可能性が高くなります。まだまだ業界地図は変動しそうです。
次に最近続々と発売されている超長期定期保険の話です。少し前までは定期保険と言えば、掛け捨て、短期と相場が決まっていましたが、約10年前から長期の定期保険が発売になりました。満期が80才とか、85才とかの保険です。そして数年前から90才満期の保険が発売されています。それが最近は、95才あるいは99才満期の定期保険が発売されるようになりました。とても人間の寿命を考えた保険とは思えませんが、米国では以前から99才満期の保険が発売されています。
このような超長期の定期保険の発売された目的は、はっきり言うと長期の保障ではなく、中途解約返戻率のピーク時を後ろにずらすことです。これだけの説明で理解できた方は天才です。
一般の方には分かりにくい話なので、少し具体的にお話しましょう。そもそも生命保険料は死亡のリスクに応じて毎年上昇することが理論的です。しかし毎年保険料を値上げしていくわけにもいかないので、死亡率の上昇曲線のある一定時点の保険料を保険期間を通じて支払う仕組みとなっています。従って期間の前半部分は、本来の保険料より高い保険料を支払うことになります。と言うことは期間の途中でその保険契約を解約すると、前払いしていた高い保険料に対応する解約返戻金が契約者に返還されます。法人契約の場合保険料の一部あるいは全額を保険料として経費で処理し、解約時に戻ってきた金額を収入計上することが認められていますから、この制度を利用するとかなりの利益の繰り延べが可能になるわけです。
このような保険には相当の高齢者でも加入できます。一般的には保険の加入年齢は75歳から80歳、これまでは最高でも85歳でした。85歳で保険に加入してもあまり保険としての意味はありませんでしたが、満期が90歳となればそれなりの意味を持ってきます。利益の繰り延べ以外でも、個人として相続争いの防止のための保険加入も十分に考えられます。面白い商品が出てきたものです。
最後にイヤな話を一つ。あまり触れたくない話ですが、最近生命保険各社が自殺に関わる生命保険の免責期間を1年から2年に変更しています。それだけ自殺による短期の契約の保険請求が増えているということです。そもそも「自殺」は死亡原因としては「事故」ではなく「病気」として扱われます。しかし最近は資金繰りの悪化に耐えられず自殺に追い込まれる、あるいは積極的に自殺する例が多く見られるようになってきたようです。
よく「自殺による死亡では保険金は支払われない」と勘違いされている方がいますが、契約から1年以上経過していれば生命保険金は支払われていました。それが最近はあまり自殺による保険金の支払いが多くなったために、生命保険会社が免責期間を延長し始めたということです。陰鬱な時代になって来ました。

■ オンライン通販の便利さ ■
先日、オンライン通販で傘を購入したお話をしました。(あまり反響はありませんでしたが)
ごく最近、オンライン通販で大変便利な思いをしました。書籍の購入です。父が神田の大書店をくまなく探しても見つからなかった本が、インターネット上の本屋では僅か数分で見つかりました。早速注文しましたら、1冊は僅か2日で届きましたが、もう1冊は10日以上かかりました。
これからの買い物はネット上の買い物と実際に手にとってする買い物の二つに大きく分かれることになるでしょう。歳暮や中元もFAXやインターネットで注文することが当たり前のことになりつつあります。「ボーナス後初めての日曜日ということで大混雑するお歳暮注文コーナー」などという新聞の見出しはもう見られなくなるかも知れません。
私自身はさすがに最近話題の自動車のネット販売には参加する気にはなりません。「購入の喜び」が感じられないからです。これがネット上で買い物をするかどうかのポイントかも知れません。中元や歳暮の買い物に喜びを感じる人はあまりいないでしょう。と言って肌触りが大切なカシミアのセーターをネットで買う人がいるとも思えません。買い物自体を趣味としている人が世の中にはたくさんいます。趣味に「ウインドウショッピング」と書く人が多い内はまだまだ対面販売が中心になるでしょうね。
ただし重量のある商品はネットで買うに限ります。自宅でも事務所でも2000年問題に備えてかなりの飲料水をストックしましたが、こんな物の購入にはネット通販は最適です。

■ コンピュータウィルスに感染 ■
話には聞いていましたが、他人ごとだと思っていたコンピュータウィルスにとうとう感染してしまいました。コンピュータウィルスというと普通はメールに添付されてきたファイルを開かなければ大丈夫と言われていますが、私の場合には原因がはっきりしません。私は妙なメールを受け取った経験もありませんし、妙な雑誌の付録のソフトのインストールもしたことがありません。どこから感染したのか皆目不明です。
私の感染したウィルスはマイクロソフトのワープロソフト「ワード」に関するもので、ウィルスに感染した「ワード」を使って新規作成した文書はすべてウィルスに感染していたようです。みなさんもお気をつけ下さい。
一つびっくりしたのは、私が「ワード」文書を添付して送ったメールを受け取った何人かが、即座に「ウイルスに感染しているよ」と連絡してきたことです。世の中には用心深い人が多いものだと感心してしまいました。
しかし、ウイルスワクチンを入れてある方も常に最新の情報にアップデートしていないと、最近よく報道されているように2000年問題に関連するウイルスが多いようですから、これからの季節は特に注意が必要です。

■ 新市場に注目 ■
このメッセージがみなさんのお手元に着く頃には既に募集期間は終了していますが、今月22日の東証新市場の新規公開銘柄の動きにはご注意下さい。
今回公開される会社は二つ、両者ともインターネット関連銘柄ですが、その内の一社は売上高5200万円で当期損益は3億円の赤字です。しかも直近の3ヶ月も売り上げは計上されていません。こんな会社が公開される時代になったと言うことです。売り物は「将来性」のみ。儲かる保証は全くありません。しかも高度なインターネットあるいは業界事情に通じた人にしかその会社の将来性を判断することは出来ません。(その会社の同業者は見通しが暗いと言っていますが)その会社の株価が何と300万円と言うのですから驚きです。
もう1社、インターネット総合研究所はもう少しビジネス的には成立しており、将来性も高く評価されていますが、株価が1200万円と決まりました。それでもブックビルの倍率が250倍と超人気です。公開後の株価予想を1億円とする向きもあるようです。いくらインターネットブームとは言え、恐ろしい世界になってきました。寄りつき高値で終わらなければ良いのですが・・・・・。両社の株価の動きにご注目下さい。

■□ 年末年始休暇のお知らせ □■
下記期間は、年末年始休暇とさせていただきますので、あらかじめご了承下さい。
12月29日(水)〜1月4日(火)
本年も色々とありがとうございました。良いお年をお迎え下さい。

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