■ 再び出てきた金融不安 ■


 またぞろ金融不安です。最も危ないと見られていた東京生命は、先に発表された第三者割り当てがうまくいけばとりあえずの経営危機は乗り切れそうです。(こう言っている13日夕、外資に身売りの情報が流れてきました)しかし、ここのところの株価暴落で幾つかの銀行の経営不安がささやかれるようになってきました。まずは大和銀行、関連会社の破綻によって再び数百億円が焦げ付きそうです。また中央三井信託銀行も格付け引き下げが囁かれています。これ以上引き下げられると信用不安が起きます。両行とも公的資金の注入を受けており、この3月期決算次第では国有化の危険性まで出てきました。現在は国際業務を行うための金融機関の基準であるBIS基準の自己資本比率8%について大手行は総て上回っていることになっていますが、今後の不良債権の処理及び有価証券含み益次第ではいつでもBIS基準を下回っても不思議ではありません。そうなれば国際市場から締め出しです。

 2月になって日経平均は再び1万3千円を下回ってきました。3月末まで相場とは別の面で株式市場からは目を離せません。特に今週の週刊ポストで、株と債券の下落による自己資本比率の低下に警鐘を鳴らされた中央三井信託銀行は要注意です。ペイオフは1年先とはいえ、他にも冷や冷やしている銀行がさぞ多いことと思います。またあまり表には出てきませんが、実体は地方銀行の方が遙かに悲惨なようです。

 さらに週刊現代では「危険な生保」特集として修正ソルベンシーマージン(生保の支払余力)が再び取り上げられました。破綻はしていなくても、下位の生保の加入者の方は至急手を打たれた方が宜しいと思います。一番気になるのはM生命です。ぶっちぎりにビリの東京生命の次、すなわちブービー賞です。

 これまでの私の経験から言うと「ウチは大丈夫」と言って何か資料を持ってきたところは大体つぶれています。日本生命や東京三菱銀行なら「お宅は大丈夫?」と言われても歯牙にもかけないでしょう。




■ 小型成長株の見通し ■


 2月になって日経平均が再び1万3千円を下回ってきました。目前に迫った時価会計基準の導入を控えて、銀行をはじめとする持ち合い株式売りが続いているようです。持ち合い解消に伴う株式売却額は今後数年間で2,30兆円と言われています。これではマザーズやナスダックジャパンといった新興市場の株式以外は、なかなか相場の回復は望めそうにありません。株式投資を考えた場合には、まず銀行や生保が当該会社の株式をどれぐらい保有しているかのチェックが必要になります。政府は金庫株をはじめとした株価対策を進めようとしていますが、所詮目先の需給関係の改善であり、例の「先送り」の一つに過ぎません。

 一方、小型成長株に関してはそろそろ株式市場も底かと思っていたら、2月になってから日経平均と関係ない世界で水準訂正が進んでしまいました。ネット株ばかりでなく他の小型成長株に関しても本年の1月11日か12日が底になると思います。ここ1週間は最近公開した株式を中心に店頭市場も連日上昇しています。これによってますます1月の底打ちが確定したと考えられます。これからはこれらの銘柄は日経平均と乖離した動きになると思われますので、たとえ日経平均が1万3千円を割れてきたとしても、それが3月末に向けての金融不安につながらない場合には余り気にする必要は無いと思います。

 ちなみに1月11日及び12日を底にして大きく反転した例を挙げてみます。

 ソフトバンク 安値 1/11  2,980円 → その後の高値 1/26  8,000円
 楽天 安値 1/11 475,000円 → その後の高値 1/25 1,320,000円
 インターQ 安値 1/12   730円 → その後の高値 2/ 5  2,390円


 また最近水準訂正した小型成長株、特にマザーズやナスダックジャパンの上場銘柄に関しては銘柄によって業績変化が大変極端ですから、公表される4半期ごとの業績変化を丹念にウォッチしていれば大きく儲けられるシーンが出てくると思います。

 と言っていたら、日銀が公定歩合を0.15%引き下げました。昨年の夏にゼロ金利を解除して以来、久々の金融緩和です。正月のFRBと呼応して金利引き下げを行えば、効果は倍どころか数倍になったでしょうが、やらないよりはましです。この期に及んでも「景気は回復途上にある」と言っている速水総裁にしては上出来です。





■ 不況の中の顧客満足 ■


 先日のテレビ朝日のドラッカーの話をお聞きになったでしょうか?ドラッカーに言わせれば「日本経済はどこもおかしくない」確かに年間1800万人も海外旅行に出かけ、ブランド物の店舗はどこも大混雑。特に驚かされるのは最近のブランド物に関して消費者が定価で購入することに全く抵抗感を持たないことです。以前はブランド物を買うと言えば香港か韓国、またパリかイタリアと相場は決まっていました。しかし最近の若者?はルイヴィトンにしてもエルメスにしても最新の商品がお目当てですから値段を気にしません。昨年銀座松屋にオープンした国内最大のルイヴィトンの店舗は毎日大混雑です。ルイヴィトンの売り上げの3分の1以上が日本での販売高というのにはビックリしました。今度は図に乗って「円安が進んだので値上げする、売り上げが好調なので売り上げに影響は無いと思う」と来ました。消費者がなめられているようです。

 これで「消費不況」と言っても誰も信じません。ユニクロの柳井社長の言うように「よい物を適正な価額で売ればいくらでも売れる」のでしょう。よく言われるように現代は「物余り」の時代でもあります。もっとも経済的に辛いサラリーマンにしてもタンスの中には背広があふれています。ただ「横並び」から「個」を主張する現在の世の中ですから、標準的な物をいくら安く売っても、市場の賛同は得られないでしょう。

 また以前に中年向け雑誌の刊行が盛んだというお話をしましたが、消費の世界でも同じです。現在の消費マーケットの中心は50代に移りつつあります。日経ビジネスの2−5号でも紹介されていますが、5才刻みで考えて最も多い世代は50才から54才です。しかも単なる年寄りになるのが嫌で、こだわりを持っている中年です。嗜好も複雑ですが一発当たれば大ヒットとなる潜在的市場の担い手です。ネットの世界でも昨年株式公開した「夢見つけ隊」という会社は中年男性向けの商品のネット販売によって大躍進した会社です。「他人と同じことはしたくない」「皆と同じ物は持ちたくない」「目立ちたくは無いけれどおしゃれと思われたい」というこの世代に対しては、持つ満足、する満足に加えてこのような欲求も満足させなければなりません。「ナイスミドル」と呼ばれることを非常に喜ばれる世代ですから、そのプライドをくすぐる商法が成功への道です。

 またこれらの世代は戦後の第一世代からかなりのストックを相続する世代でもあります。私もこれまでかなりの相続に関わってきましたが、自分で稼いだお金より相続した資産の方が金遣いが粗い傾向にあるのは間違いありません。地主の相続人は決して資金的に裕福とは限りません。しかし、周りから資産家とは思われてはいなくても、現預金、有価証券等の金融資産を1億円以上残す方は驚くほど多いものです。そして予想外の金融資産は予想外の消費を生み出します。セルシオやシーマの好調な売れ行きや高層億ションの飛ぶような売れ行きはIT産業の好調だけでは説明出来ません。

 また消費世代は別にして、顧客満足は依然大変重要な問題で、これも1月に日経ビジネスに取り上げられた問題ですが、各商品ごとの顧客満足度を見るとその差は歴然です。庭の猫の死骸まで片づけてくれるへーベルハウスの旭化成、サポートの電話がなかなかつながらないばかりか、対応もひどいパソコンのソーテック。ソーテックに関しては当事務所もひどい目に遭いました。「内蔵」とされていた部品が同梱されていて自分で取り付けする羽目になりました。電話で文句を言っても反省の色もありません。とても公開企業とは思えません。またこの調査では、デジタルカメラの不具合に関してなかなか公表しなかったキャノンがかなりポイントを落としました。またデジタルカメラについては、売り上げは絶好調の富士フィルムが予想外の低いポイントとなって驚かされました。現代は通常のサービスではなかなか強い顧客満足を引き出すことは難しそうです。「こんなことまでやってくれるのか!」と思われて初めて顧客満足を得られると考えた方が良いでしょう。





■ 視聴率のマジック ■


 連続して視聴率30%以上を記録しているテレビドラマ「HERO」ですが、必ずしも世の中の人の3人に1人が見ているとは限りません。視聴率というとかなりの人数の統計を取っているように感じますが、実際にはきわめて少数の人のデータに過ぎません。ですから「そんなにたくさんの人が見ているなら自分も見ないと「白子海苔」になってしまう」とおびえる必要はありません。でも視聴率に怯えて見る人がますます増えてきたら本当に置いてきぼりになってしまうかも知れません。番組は本当に面白いですけどね。




■ 引越のご案内 ■


 まだ1ヶ月以上先のことになりますが、年賀状でお知らせしたとおり事務所を移転することになりました。開業以来慣れ親しんだ御茶ノ水を離れて、今度は赤坂に移ります。今までの事務所は場所を説明するのが面倒でしたので、今度は誰でも知っているビルにしました。新事務所は「赤坂東急ビル」、赤坂見附の「赤坂東急ホテル」と同じ建物です。3月最終週か4月の第1週から新事務所で業務開始の予定です。後日正式にご案内しますのでご注意下さい。


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私の友人の会計士が毎月業界紙にとぼけた記事を書いていて、いつも笑わせてくれます。 最近のヒットは
よその家に電話をかけて、子供が出たので「お母さんいる?」と聞いたら「いらない」と答えた。 笑えましたか?




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