■ どうなる日本経済、どうなる株価 ■


 各種の経済指標も株価も最悪の数値を更新しています。今週中には株価も1万円割れとなっているでしょう。 現在の日本経済は@不況 A不良債権 B株価の3つの側面から考える必要があります。まず日本経済において最も大きな意味を持つ名目GDPが年率10.3%の減と過去最大の落ち込みを記録しました。これは4−6月の名目GDPの前期比マイナス2.7%から算出した数字ですが、7月以降もIT産業を始め大幅な設備投資の抑制が行われているので7−9月のGDPの更なるマイナスも確実視されています。小泉内閣は不良債権処理のための一時的な経済不況を予測し、また表明もしていましたが、具体的な不良債権処理に手をつける前に実体経済が落ち込んできてしまい、大変苦しい状況に追い込まれました。今の時点で不良債権処理に手をつければ、ますます手のつけられない不況に追い込まれることが確実ですし、不良債権処理を一時的に棚上げし、旧態依然的な景気回復手段に走れば世界の信頼をますます失い、一時的な国債格付けの引き下げどころではなくなってしまいます。

 また株価についてもこれが長期的な下落となれば金融機関の含み損はますます拡大し、自己資本比率も低下し、国際的な業務が行えなくなってしまう畏れも出てきました。但し、私は株価の問題と2番目の不良債権の問題は切り離して考えるべき問題ではないと思います。確かに企業業績等を考えると「今の株価は安すぎる」とは言えないかも知れません。しかし株価は際限なく下がるものではありません。もちろん個別銘で考えれば、倒産して紙くずになる会社も出てきますが、全体の株価が0になることはあり得ません。大体最近「株価8000円もあり得る」と言っている経済評論家の中で年初に今年の株価の安値は8000円とコメントした人は一人もいません。為替の80円割れの時もそうでした。株価や為替は予測が非常に難しいばかりでなく、よく「行き過ぎ」ます。この「行き過ぎ」を上手くとらえればかなりの高率の投資効果が期待できます。

 今週の経済誌や週刊誌のタイトルを見ると「株価8000円」が乱舞しています。ここまで皆が「日経平均8000円」と言うからにはある程度政府サイドの株価に対する予想というか意図を感じます。政府や役所も「株価8000円まではしょうがない」と思い始めたのでしょうか?現在のような下げ相場でも時々PKO(プライス・キーピング・オペレイション)による株価対策が行われていると予想されています。もし役所が考える下値の抵抗ラインが8000円だとすると、そこまでPKOは行われないことになります。但し相場は決して意図的に動かすことが出来ません。従って株価の下限を8000円で止めようと思っても不可能です。8000円までの下落を容認したら、株価は7000円割れまで突っ込むことも考えられます。「日経平均が8000円まで下がるはずがない」と思われる方も多いでしょうが、2ヶ月前には「日経平均が1万円になるわけがない」と皆が言っていたのを忘れずに。

 ところで現在の株安の主たる原因としては次の3つが考えられます。
@ NY株安
A IT産業を始めとする企業業績の悪化
B 日本経済に対する信頼感の欠如
このうち最も大きな原因は3番目の日本経済に対する信頼感の欠如です。しかもこれは外人投資家ばかりでなく国内投資家にも共通した認識です。金融機関が破綻するたびに、公表されていた不良債権より遥かに大きな不良債権があったことが公表されます。過去数年間で100兆円近い不良債権が処理されているにも関わらず、依然として現在の不良債権残高は明確ではありません。これでは日本経済を誰も信じることは出来ません。それに加えて、見通しの甘さだけでは片づけられないほど急激な企業業績の悪化のニュースが連日報道されています。いつ何時悪材料が公表されるか、おどおどしながら投資している状況では誰も高値まで買い上がりません。

 新聞では税調の有価証券税制改正の骨子が報道されていますが、有価証券売却益課税を軽減しても、売る人は増えるかも知れませんが、買う人は増えません。幾ら損失の繰り越し控除を認めても先行き不透明な時期に投資する人間はいません。将来に向かってはともかく目先の株価にはあまり関係のない議論が進められています。 話を元に戻します。日本経済に対する信頼の復活と不良債権処理は切り離して考える問題ではありません。不良債権の額が不明確でなおかつその処理が進まなければ、誰も日本経済に対する信頼は持てません。従って、今は間が悪く不況が強まってしまいましたが、それらを気にせず不良債権処理を政府は進めるべきです。不良債権処理を棚上げして景気対策に走ってもつかの間の対策にしかなりません。そのような古典的な景気対策を過去7,8年も打ち続けてきたにも関わらず景気は一向に回復していません。不良債権処理が先です。

 ところで不良債権処理がなかなか進まないため、株式の買い時も長続きしています。個別銘柄ではありませんから日経平均が0円になることはありません。日経平均が1万円を割れたら1000円刻みで買い下がっていったらどうでしょう。それも買い下がるたびに投資金額を増やしていけば投資効果は何倍増です。そこまで買い下がっていく気で買い向かえる人が大儲けが出来る人だと思います。なかなか出来ることではありませんが、過去に大儲けをした人は他人と逆のことをした人ばかりです。毎月のように申し上げていますが「下げ相場は買い場探し、上げ相場は売り場探し」です。と言っているうちに一部のIT株ネット株は早くも反転してきました。ネットワーク関連の指標銘柄であるCTC(伊藤忠テクノサイエンス)は9月3日の安値7570円に対して今日は9630円ですし、インターネット総合研究所は9月5日の安値43万円に対して本日は68万8千円の買い気配です。早くも安値から5割戻したことになります。自慢話になってしまいますが、私は9月3日にインターネット総合研究所を45万1千円で買いました。びっくりするような安値を買い下がっていけば案外簡単に儲けることは出来ると思います。各セクターの指標銘柄の動きに注意して下さい。慎重な方は指標銘柄が動き出してから投資を始めればよいと思います。

 と言っていたら、とんでもないテロ事件のニュースが飛び込んできました。NYの世界貿易センタービルや国防総省にハイジャックされた旅客機が突っ込みました。多数の死傷者が出ているようです。パレスチナゲリラNo.2の暗殺に続き、刻々と戦争への道が歩まれています。米国を始めとする兵器産業の思惑通りです。9月12日、1万円割れが現実のものとなりました。いきなり9600円です。(それにしても米国ともあろうものが民間ビルならともかく国防総省に不審機の侵入を許すものでしょうか?)

 なお、このテロの犯人については色々推測されていますが、ある評論家の「パレスチナゲリラの仕業ではない、彼らにこれほどの組織と資金があればとっくにイスラエルを攻撃している」という発言が最も説得力がありました。



■ 間近に迫った商法改正 ■


 あまり大きくは報道されていませんが、10月1日から株式売買に関して大きく制度が変わります。まず皆さんに最も関係が深い部分では売買単位が大幅に引き下げられることになります。今後は「単位株」すなわち1株5万円額面の会社にあっては1株、50円額面の会社にあっては千株(これ以下の株も有り)が廃止され、「1単元」と言う表現に変わります。多くの上場株式では1単元が千株となります。「単元」と聞くと教科書を連想してしまいますが、今後は毎日のように耳にすることになります。9月4日には東証を始め各証券取引所は「株式投資単位の引き下げ促進に向けたアクション・プログラム」を発表しました。今後多くの上場企業が最低投資金額が50万円以下になるように売買単位を引き下げるか、株式を分割して売買単価を引き下げることになります。これは個人投資家増加策ですが、扱う証券会社にとってはたまったものではありません。効率を高めるためには1取引の金額をアップさせることが必要なのに、今後は今まで以上に小口注文の処理に追われることになります。ますますネット証券の優位性が高まるでしょう。

 次に大きな改正としては企業が「金庫株」すなわち自社の株式を自由に取得することが出来るようになります。株価操作防止等の目的もあってこれまで商法では自社株の取得を強く制限してきました。それが今後は配当可能利益の範囲内で自由に取得できるようになります。例えばこれまで株式交換によって他の会社を系列化する場合、新たな株式の発行が必要でしたが、今後は手持ちの自社株を充当すればよく、かなり簡便に株式交換が行えるようになります。その他にも自社株が自由に取得できれば企業の財務活動がかなり弾力的に行えるようになります。

 また発行会社側にとって最も大きな改正は額面株式の廃止でしょう。これまで会社を設立する場合原則として1株5万円で資本金を構成してきました。今後は総ての会社が無額面となると同時に株式分割等における純資産額規制も無くなります。同じ資本金1000万円の会社でも経営者の方針で会社は自由に株式を発行できるようになります。今回の改正で発行済み株式数と資本金の関係は全く断ち切られることになります。




■ びっくりさせられる事故死者の数 ■


9/4号の週刊エコノミストを読んでびっくりしました。「人口動態統計」によれば転倒により死亡した人は年間に5600人、階段から転落して死亡した人は何と703人もいるそうです。また新聞では報道されませんが、年間で3434人の人が浴槽内で死亡しています。

 1日10人近い人が溺死しているわけです。新聞等では交通事故死ばかり報道されていますが、もっと身近な部分の危険の対する対策が必要なのではないでしょうか。なお浴槽内の死亡者は幼児と高齢者に集中していますが、この高齢者とは45歳以上とのことですので私もギクッとさせられます。身の回りの危険にご注意下さい。

※今月は専門的な話ばかりだった上に、最後は気色の悪い話で申し訳ありません。



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