■ 本当にテロ? ■


 先月のメッセージの最後にもコメントしたように、今回のテロ事件についての本質の論議はなされていないように感じます。 何故今回の被害者の中に超VIPは一人もいないのか、何故モルガンスタンレーに被害者はいないのか、イスラムゲリラにこれほど緻密な計画が実行できるのか、今回の事件で得をするのは誰か等々、様々な議論が必要と思われます。今回の事件が本当にイスラムゲリラによって引き起こされたものかどうかによって、今後の私達の行動は大きく変わってきます。

 話は遡りますが、1941年当時の米国民の多数は米国の対日参戦に積極的ではありませんでした。それが12月8日(米国時間12月7日)の「奇襲」によって全世論が対日参戦に傾いたのです。「真珠湾攻撃」がアメリカの陰謀によって引き起こされたことは歴史上の事実として既に明らかにされています。当時の米国首脳部は何とかして国民感情を「日本憎し」に向ける必要があったのです。真珠湾攻撃によって2000人の人命を見捨てた米国ですから、5000人の人命ぐらい見捨てるかも知れません。

 米国の国民感情が一斉にある方向に向かう裏には必ず時の為政者の何らかの思惑が働いていたという歴史上の事実を見ると、今回の状況も単純に「イスラムゲリラ」のテロと片づけて良いものかどうか?何十年後かに極秘資料が公開された時に真実が明らかになります。それが自分の目で見届けられないのが残念です。
9月11日の事件発生直後にはドイツのテレビ放送が今回のテロを「カミカゼ」と呼び、今回の事態を「パールハーバー以来」と表現していました。イスラム教徒も日本人と同じように「理解できない民族」として葬り去られようとしているのでしょうか?

 今回の事件の本質はともかく、事態は犯人の意図以上に異常な事態になりつつあります。犯人達もまさかビル全体が崩壊するばかりか、周囲のビルまで崩壊する事態になるとは想像しなかったのではないでしょうか。更にNY金融市場に与えた影響は甚大です。世界の金融の中心部の機能が一時的にせよ麻痺してしまいました。ワールドトレードセンターには米国最大の債券業者である「キャンター」が入居していましたが、同社は壊滅的な打撃を受けました。また同社以外にも幾つもの債券業者が被害を被っており、米国債券取引市場は一時麻痺状態に陥りました。

 また旅行業界、航空業界に与えた影響は更に大きく、大規模なレイオフが進められています。日本でも大手企業においては出張自粛命令が出ていますが、特に太平洋線においては30%から50%の旅行客の減少が続いています。既に日本の旅行社にまで影響が及び、名古屋の旅行業者が1社倒産しました。主要旅行社各社は今後500億円を超える減収を予想しています。全世界の人間の心の中に漠然とした不安感を植え付けた今回の事件の持つ意味合いは極めて大きいと言わざるを得ません。当分の間、人々の行動範囲は狭まるでしょうし、総ての面において萎縮状態がみられることになるような気がします。単に自分の身を守るだけでなく、今回の事件の自分の事業に与える影響を深刻に考えてみる必要がありそうです。

 日本のIT産業は北米通信機器メーカーの投資激減の影響で収益復活の見通しが立っていません。また半導体部門はCPUやメモリの価格急落によって超赤字状態です。そして今回の事件によって米国消費が急激に落ち込むのは確実です。通常の年であればアメリカ国内はこれからクリスマス商戦という最大の消費時期を迎えますが、今年は期待できそうもありません。

 11月にはマイクロソフトの新OS、ウィンドウズXPが発売されますが、消費にどれほどの影響があるかどうか。今回のような事件の後には、何らかの出来事で急激に人々の心が明るくなることは考えられません。米国内あるいは日本国内においても数々の国際イベントが中止されている状況です。まだ私たちの頭の中には「サリン」に対する恐怖が残っています。飛行機に乗る人々の頭の中から今回の事故の記憶が完全に消え去るには10年以上の月日がかかるのではないでしょうか?そして10月7日、米英両空軍はとうとうアフガン空爆を開始しました。また犠牲者が増えます。

 今回のメッセージはいつもながら物事の真実を見極める鋭いコメントを発する増田俊男氏の直言を参考にさせて頂きました。興味のある方はHPをご覧下さい。



■ 迷走する有価証券税制 ■


 有価証券税制改正案が発表されましたが、期間限定のサービス項目が多くて、何を目指しているかよくわかりません。緊急手当的に改正を望む塩川財務大臣に対して、何とか源泉分離課税を葬り去ろうとする官僚と、株式相場が置かれている立場を全く理解せずに、今時「申告分離課税への1本化」の1年前倒しをぶち上げた経済音痴の税調会長とそれに煩雑な改正を好まない「税調のドン」山中貞則氏と役者には事欠きません。

 根本的な有価証券税制はどうあるべきかはともかく、株式市場の活性化を考える上で、現在の株式市場と個人投資家の関係における問題点は、個人の売り圧力を止めることではありません。いかに個人に株式を購入してもらうかです。改正案にはその視点が欠けているように見えます。いっそ「今後3年間は株式売却益非課税」ぐらいの大胆な政策を打ち出してはどうでしょう。幾ら小手先のことをやってみても、将来の申告分離課税1本化が見えていては個人資金は株式市場には向かって来ないと思います。1400兆円と言われる個人金融資産、もっともそのうち株式購入に回る可能性のある金融資産はせいぜい半分の700兆円でしょうが、その2〜3%の資金が株式市場に向かわないと、企業の持ち合い株式の解消によって市場に出回る株式を吸収出来ません。

 今週号の東洋経済には税調の石会長のインタビューが掲載されていますが、どうも石会長は株式投資の現実をご存じないようです。年に何十回も株式を売買し、その申告をすることがどれだけ煩雑なことか、頻繁に売買を重ねる方の場合には申告書に添付する売買報告書だけでも何センチもの厚みになってしまいます。1年分の売買報告書を時系列に保存しておくことがどれほど大変なことか石会長はご存じないはずです。再来年以降、税務署は提出された膨大な有価証券売買報告書の山の中でパニック状態に陥るはずです。年に100回以上も売買する人の売買報告書をチェックすることなど不可能です。他の所得の場合には1年に100回も200回も所得が発生することはあり得ません。

 年に1000回も売買する人の申告はどうなるのでしょう?私の事務所では絶対に引き受けません。




■ 猛威を振るうコンピュータウィルス ■


 今年の夏は「サーカム」というコンピュータウィルスが猛威を振るいましたが、9月にはそれを遥かに上回る「ニムダ」というコンピュータウィルスが世界中を震撼させました。
 これまでのコンピュータウィルスはメールの添付ファイルを開かなければまず感染することはありませんでしたが、この度の「ニムダ」というウィルスは恐ろしいことに、添付ファイルを開かなくてもメールを読んだだけで感染するばかりか、あるHPにアクセスしただけで感染してしまいます。しかも今回はマイクロソフトのHPにそれが仕掛けられたために、あっという間に世界中で140万台が感染しました。「ニムダ」が発見されたのが9月18日、翌日には日本においても国立大から農水省、さらには内閣LANにまで感染が広がりました。

 基本的には感染ルートは二つで、
1.サーバーのホームページを閲覧すると自動的にウィルスを送る
2.パソコンのアドレス帳の宛先に添付ファイルつきメールを送る
また「ニムダ」は Microsoft社のブラウザ『Internet Explorer』を 利用している全てのパソコンに感染する恐れがあります。早急に修正ソフトをインストールして下さい。
とりあえず以下のサイトにアクセスして、自分のパソコンが「ニムダ」に感染しているかどうかチェックしてみて下さい。

トレンドマイクロ社




■ まだまだ続く金融不安 ■


 2ヶ月ほど前から予告申し上げていたようにマイカルが倒産しました。ある意味ではそごう以上の影響が今後出てくるかも知れません。次はゼネコンでしょうか、銀行でしょうか、それとも生命保険会社でしょうか?以前から最も危ない銀行としては大和銀行の名前が挙がっていましたが、内部のバタバタもあり突然あさひ銀行が本命として浮上してきました。あさひ銀行も以前にUFJグループの一員になっておけばこんなことにはならなかったでしょうに、ここまで来て、しかも支援を仰いだのが大和銀行とは、まさに倒産しない上での最悪のシナリオです。明らかに経営陣のとてつもない判断ミスです。新聞等の報道では未だに協和銀行グループと埼玉銀行グループの軋轢が報道されていますが「まだそんなことをやっていたのか」と言う感じです。たとえ今回の合同がうまくいったとしても将来に展望はありません。特にあさひ銀行旧経営陣はお先真っ暗でしょう。

 また先週にわかに三井生命危機説が飛び交いました。一般契約者ばかりか企業年金の解約も進んでいるようです。気の毒なのは三井グループの各会社です。「あそこは危なそうだ」と思っていても、まさか三井グループの会社が三井生命を見限ってどんどん解約を進めるわけには行かないでしょう。辛いところです。

 次にゼネコンです。これが幾つか飛ばないことには不良債権の処理が進むわけがありません。FかAかTか?こちらにも注目です。

 本当に暗い話ばかりの1ヶ月でした。歌舞伎町のビル火災、ワールドトレードセンター、コンピュータウィルス、狂牛病、外に出かけるのも危ないし、食べ物にも注意が必要だし、家にこもってインターネットを楽しむことも出来ないといった生活を強いられています。何か明るい話はないでしょうか?



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