

■ 前代未聞のミス(珍事?)、UBSウォーバーグ証券 ■
11月30日上場の電通の公開時に前代未聞のミスが起きました。電通は公募価額42万円、事前より人気を呼び、悪くても50万円台、うまくいけば60万円近くで寄り付くと予想されていました。現に寄り付き前の気配も順調に切り上げていました。そこに幹事証券のUBSウォーバーグ証券から何と「1株16円で61万株売り」の注文が流れました。これでいっぺんに気配は変わり、42万円で寄り付き、その後40万5千円まで売られました。しかしその後注文を間違ったことに気づいたUBSの買い戻し等が入り、一気にストップ高の47万円まで買い気配を切り上げて当日の商いは終了しました。UBSの間違い注文は「61万円で16株売り」を誤って「16円で61万株売り」と流してしまったものです。UBSは慌てて54万5千株を取り消し、誤って売ってしまった株式についても買い戻しに入りましたが、相当株数につき買い戻し出来ずに終わってしまったようです。
30日の手口を見ると、UBSは買いが18,111株、売りが65,579株で差し引き47,468株の売り越しとなっています。他の二つの幹事証券の売り物がそれぞれ3,000株と572株ですからこれから推定するとUBSは差し引き4万株以上を買い戻さなくてはならない羽目になりました。
びっくりするのは、当日の9時7分にはYahooの掲示板に「誰かが注文間違えた?」と書き込みがあり、9時10分には「UBS?」と早くもUBSの間違い注文の情報が飛び交っていることです。9時15分には「61万円で16株を、16円で61万株と間違えた」という間違い注文の詳細まで書き込まれています。取引成立から僅か15分以内にこんな情報が飛び交うなんて、いくら書き込み者に業界関係者が多いからといってすごい情報網だと思います。
この件では多くの被害者が生まれました。まず最も不愉快なのは電通自身です。本来ならば公募価額の何割か増しで寄りつき、上々の公開となったはずが、公募価額以下まで売られ、その後は一転買い気配が続き、今後しばらくは異常な株価形成が行われることになります。また成り行きで売ってしまった人も被害者です。本当ならば60万円近くで売れたものが42万円で寄り付いてしまったために、手数料だけ損することになってしまいました。また、初値の低さに驚いて慌てて投げてしまって40万5千円で売れてしまった人はもっと惨めな結果となりました。
不幸中の幸いは大引けの比例配分で3000株の商いが成立し、47万円の価格がついたことです。もし買い気配のまま引けていたら、機関投資家を始めとした多くの法人が1株につき1万5千円の評価損の計上を余儀なくされるところでした。
それにしても一時は公募価額割れまで引き起こしたUBSの責任は重大です。こんなことがまかり通れば株価操作にまで繋がってしまいます。どちらにしても今後UBSは4万株以上の電通株を買い戻さなくてはなりません。12月3日もストップ高の52万円で比例配分となり、出来高は約4000株です。初日だけでも23億円の損害を出したUBSは毎日必死で買い物を出し続けなくてはならないはずです。このまま行けば損害額は100億円どころではすみそうもありません。1人や2人の首が飛ぶどころではありません。営業停止処分に加えて経営危機まで考えられます。もし株主がみんなで結託して売り物を出さなければ、UBSは倒産します。
と言っていたら、4日の日に何と53万円で寄り付いてしまいました。3日の日の10数万株の買い注文が消えて、突然50万円台に多量の売り物が出ました。これについても「大手証券会社が結託して売り物を出したのではないか?」と疑いの書き込みが掲示板で乱舞しています。他の証券会社まで協力したかどうかはわかりませんが、とりあえず60億円の損ですんだUBSの作戦勝ちです。「株の世界は恐ろしい、ユダヤはやはり凄い」これが今回の感想です。
3日の日にはドイツ証券が誤っていすゞに3千万株の売り注文を出してしまいました。この注文は執行されずに済みましたが、何とか誤った注文を瀬戸際でくい止めるシステムが取引所と証券会社の双方に絶対必要です。株価に「やり直し」はあり得ません。

■ 日本経済再生の知恵 ■
最近毎月のように日本経済悲観論を書いています。単純な政策では回復不能な水準にまで来てしまっている日本経済ですが、起死回生の手段としてはインフレしか考えられません。
どう考えても日本は「デフレスパイラル(物価下落と景気後退の悪循環)」に突入しています。
(1)モノが売れない。景気がよくない。
(2)売れないので値段を下げる。
(3)会社としての利益が減る。景気がさらに悪くなる。
(4)社員の給料が減る。職を失う人が増える。
(5)可処分所得が減る。モノを買わなくなる。
(6)モノが売れない。(1)に戻る(BIGLOBE用語解説より)
いくらデフレによってお金の価値が上がっても、消費者が物を今まで以上に買うとは限りません。世の中にもタンスの中にも物はあふれています。と言って消費を喚起しなければ景気はいつまで経っても良くなりません。確かに所得が変わらなければ物価の下落は消費者にとって好ましいことかも知れません。しかしデフレスパイラルでは所得の減少も発生します。しかも構造改革が僅かに進む中、雇用不安はますます増大しています。機械の名門、新潟鉄工も倒産しました。特にバブルに踊っていたわけではない会社の倒産は不況の深刻さをますます実感させます。青木建設の民事再生法申請が引き金になり、飛島建設、熊谷組等の株価が20円を割ってきました。株価が10円台になってしまっては民需は期待できません。これから3月まではゼネコン、流通、不動産の断末魔が続きます。小泉内閣の構造改革と景気回復の同時達成はどう考えても不可能です。進まぬ構造改革に日本国債の格付けはどんどん引き下げられています。銀行救済のために続けられてきたゼロ金利ですが、国債の格付けがこれ以上引き下げられれば、金利上昇は必至です。銀行は手持ちの債券の評価損によりますます業績は悪化し、ローンを抱えている世帯は所得の減少と返済増加の二重苦に立ち向かわなくてはなりません。
経済をインフレ状態にすれば上記の多くの問題が解決します。何しろ限りなく続く不動産価格の下落が銀行の体力をますます痛めつけています。資産デフレが資産インフレに変わらなければ銀行の破綻は一層進みます、それどころかもう何をやっても手遅れかも知れません。
私もこれまでこのメッセージの中で「相続税非課税国債」やら「裏金あぶり出し作戦」等を提案させて頂きましたが奇手はどうも受け入れらそうもありません。これを「王道」と呼ぶかどうかわかりませんが、RCCや日銀等によって不良不動産を積極的に買い入れていく、株で言えば「株式買い入れ機構」のようなものが必要と思われます。土地の供給が止まり価格の下落に歯止めがかかり、これに不動産投資優遇の税制の後押しがあれば不動産価格は一気に上昇に向かうと思われます。資本主義社会の仕組みは総て右肩上がり、インフレを想定して作られています。本来の道に戻さなければ日本経済の回復はありません。

■ 信用を失った「安全な投信」 ■
11月29日日興アセットマネジメントを始めとする数社の投信会社のMMF及びチャンス等の公社債投資信託において、世界最大の米国のエネルギー会社エンロン社の社債の値下がりの影響による元本割れが発生しました。短期の定期預金代わりとして誰もが考えていたMMFに元本割れが発生した影響は甚大です。しかも日興アセットマネジメント株式会社については30日の基準価額の誤発表という重大ミスも犯しました。30日に発表された日興アセットのMMFの29日の基準価額は9,827円でしたが、30日のそれについては12月1日には9,552円と一時は発表しました。1日の解約の差で3%もの差が出たわけです。30日に解約した多くの投資家は「何で即日解約しろと言ってくれなかったんだ」と憤慨した週末を送ったわけです。それがどういう訳か12月2日の日曜日の夜になって「基準価額の算定に誤りがあった」として、30日の基準価額を29日と同額に訂正しました。損失は減少したわけですが、投資家には何となく日興アセットマネジメントに対する不信感が残りました。
それはともかく、今回の事件の影響は計り知れません。証券会社の商品で安心して預けられる商品が殆ど無くなってしまったと言うことです。これまでMMF、MRF、チャンス、公社債投信等の「公社債投資信託」についてはローリスクが売り物でした。ですから投資家の皆さんも普通預金代わりにMMF等に投資というよりは預けていたわけです。利回りもせいぜい1%とローリターン商品です。このような商品が元本割れ、証券会社によっては5%以上も元本割れすることなど許されません。リスクとリターンは最低限同じレベルが原則です。リターンよりリスクのレベルが高い商品はあり得ません。しかし今回の出来事は「ミドルリスク超ローリターン」の商品があることが周知される結果を招きました。今後は誰も公社債投資信託を信用しません。この商品は一気に消滅に向かうことでしょう。
それではお金はどこにおいておけば良いのでしょう。銀行預金についてはご存じのようにペイオフによって来年4月1日以降は1000万円までしか保証されません。国債は元本保証ですが値下がりのリスクがありますから絶対駄目です。タンス預金は盗難の危険があります。銀行の貸金庫がとりあえず最良の方法ですが手数料がかかります。そこでお奨めは郵便局の「郵便振替」です。「郵便振替」は振替口座ですが元本は保証されます。通常の郵便貯金は限度額1000万円ですが、「郵便振替」には限度額はありません。但し「郵便振替」には金利はつきませんが、現在のような低金利でデフレ時代には金利は問題ではありません。「郵便振替」は法人も個人も預け入れが可能ですから、一気に資金が郵便貯金に流れる事態を迎えるかも知れません。

■ 本年を振り返って ■
何しろ今年の9月以降は、飛行機テロに炭素菌、日経平均1万円割れ、狂牛病に、戦争と、どれ一つとってもその年のトップニュースになったであろう事件が目白押しでした。こんな時代にどう希望を持って良いのかわかりませんが、私自身を考えてみれば「大事件が多かった割には以前と変わらぬ生活をしているな」と言うのが実感です。来年も今年以上に多くの事件が発生するかも知れませんが自分を失わずに生きていきたいものです。

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