■ 3月危機の次は5月危機 ■


 政府の株価政策が功を奏し何とか3月危機は回避しましたが、次に5月危機が叫ばれ始めています。
(と言っても、もう5月の半ばですが。)
 昨年1年で14社の上場企業が倒産に追い込まれましたが、今年は4月までの倒産数が17社に上っています。こう言っている間にも1社倒産しました。DNA(流通のD、証券のN、金融機関のA)を初めとする超大企業の倒産が無いせいか、世の中の危機感はそれほど高まっていないように感じますが、今年の上場企業の倒産数が過去最高となることは間違いありません。また、公開企業ばかりでなく、2月にはゴルフ場経営の大手「スポーツ振興」が倒産しましたが、負債額2109億円の大型倒産でした。そして、毎月の倒産件数も1700件を超えてきており、負債総額も連月で1兆円を突破してきています。特にペイオフの影響で地方金融機関が貸し出しを規制してきていることから、地方企業の倒産が目立っています。

 金融庁の特別検査の結果、新たな破綻懸念先債権3兆7千億円が増加しました。金融機関が不良債券処理を進め、続々と経営不振企業を破綻に追い込んでも、不良債券は一向に減るどころかますます増加し続け、まさに泥沼状態です。そして今月5月は3月決算企業の決算発表の月です。
 会計ビッグバンの完全適用による3月決算数値によっては更なる破綻企業の増加も予想されます。
 消費者市場の一部における異常な消費の盛り上がりと、不況の真っ只中を示すマクロ数値の同居が現在の経済の閉塞感を象徴しているような気がします。
 ところで、これまで私は基本的には円高論者で日本の潜在的な国力、成長力を信じていましたが、「宗旨替え」させて頂きます。
 5月9日に国際経営コンサルタントの太田春雄氏の話を聞く機会がありました。「デフレ時代はチャンスがいっぱい」「悪魔の投資術」、最近では「資産疎開」という著書で著名な方です。氏の講演の骨子は以下の通りです。


1.日本の財政は2005年3月に破綻する。
  根拠:国、地方公共団体の債務はこれまで666兆円と言われてきたが、それは
      一昨年の数値であって、現在のそれは1000兆円近い。その内訳は国
      債、地方債が600兆円以上、その他に借入金、政府短期証券等を加
      え、さらに金融機関の不良債券150兆円と特殊法人が抱える不良債
      券180兆円をプラスすると1000兆円 近くなり、個人金融資産の内、
      保険等をのぞいた純粋な金融資産の額を上回る。
2.来月にはIMFの先遣隊が来日しIMF管理の準備が始まる。
  その根拠として本年2月衆議院予算委員会の小委員会で、民主党の五十嵐
  文彦議員が「ネバダレポート」なるものについて、塩川財務大臣と竹中財政担当
  大臣に質問をした。「ネバダレポート」は米国のIMFに近い筋の専門家が定期
  的に発行するもので、その昨年の9月7日号では「50兆円しか税収のない日本
  が82兆円の予算を組むことは異常だ」との指摘があり、このバランスが解消出
  来ないときはIMFの管理下に置かれざるを得ない。両大臣もこれに対して異議
  を唱えていない。


IMFの管理下に置かれた場合には以下のようになる。
  @公務員の総数・給料は30%以上カット及びボーナスは例外なくカット
  A公務員の退職金は一切認めない
  B年金は一律30%以上カット
  C国債の利払いは5〜10年間停止
  D消費税を20%へ
  E課税最低限を引き下げ、年収100万円以上から徴税を行う
  F資産税を導入し、不動産に対しては公示価格の5%を課税。社債等の債券
    については5〜15%の課税。株式については時価を正確に計算出来ないた
    めに取得価額について1%課税
  G預金については、来年4月を待たずに、一律ペイオフを実施するとともに第2
    段階として預金を30〜40%カット

 「そんなバカな」と思う方ばかりだと思います。但し、50兆円の歳入で82兆円の支出を組んでいることは事実で、これを続けていく限り、財政の好転はあり得ませんし、もし金利が上昇して国債の金利負担が増大すれば破綻の時期はもっと早まります。このままでは当分の間、日本の復活は望めません。円安も進むでしょう。

 更にこれに加えて日本の場合には少子化の問題があります。何度もこのメッセージでもお話ししているように、我が国の出生率は既に1.34、現在の人口を維持するためには2.3の出生率が必要だと言われています。厚生省は今後の出生率を1.39と見積もっていますが、これには何にも根拠が無く、この率が維持できないと健保も年金も破綻してしまうので1.39という出生率を予想しているに過ぎません。
 持たれ合い構造の生保と銀行ですが、銀行が破綻すれば生保の財務内容も極端に悪化するばかりでなく、人口減少がもたらす生保の事業収支の悪化が更なる経営悪化をもたらすことになるでしょう。
 噂の生命保険会社の破綻は6月19日と予想されています。

 来月のIMF先遣隊の来日を前に、我が国にとっての目先の大問題である国債格付けの再度の引き下げが予想されます。今度引き下げられれば我が国の格付けはボツワナと同じになります。ボツワナと言ってもご存じない方も多いと思いますが、アフリカの小国で、国民150万人の内50万人がエイズ患者という国です。但しこの国は希少金属の埋蔵量が豊富なため、格付けとしてはかなり上位になっています。それにしてもこれ以上の格付けの引き下げが行われれば、国際企業の格付けにも影響し、本社を日本から移転する企業が現れかねません。日本に本社があるから企業の格付けまで低くなってしまうのでは納得できない企業が現れてくるのも当然です。

 それでは資産防衛のためには個人はどうすれば良いか?基本的には資産を外貨で持つことしかありません。それも国内銀行の外貨預金で持っていても意味がありません。在外銀行、出来れば国外で持つことが必要でしょう。

 どんな通貨で持つか、ドルといえども万全ではありません。現在は世界の基軸通貨であるドルも米国の巨額財政赤字の懸念を考えると決して安泰ではありません。特に9月11日テロ直後に防衛費の大幅増加が承認され、財政赤字転落は間違いなく、経常収支赤字は相変わらず巨額であり、再び「双子の赤字」が心配されるのでユーロ等への分散も必要でしょう。

 以前、金地金への投資に対しての注意をお話ししましたが、こうなってくると最も容易な円資産からの疎開の手段として金地金が浮かび上がってきます。全資産の1/3とは言いませんが、最終的には全資産の1割位を金で保有することも考えるべきでしょう。但し、金の場合には保管場所が問題です。銀行の貸金庫の空きがどんどん少なくなっているようです。

 大変極端な意見になってしまいましたが「まあ、どうにかなるだろう」だけではすまなくなる危険性もあることを感じ取って頂ければ幸いです。
 出来れば氏の近著「資産疎開」(実業之日本社)をご一読なさることをお勧めします。



■ お勧め図書多数 ■


 パレスチナ情勢やら、北朝鮮問題、有事法案等きな臭い話がとぎれることはありません。
 有事法案によって日本が米国のアジア戦略の一環として取り込まれることについては強い懸念が叫ばれていますが、今ひとつ議論が盛り上がりません。何か人々の目が真実に向けられない状況になっているのでしょうか?

「真実のともし火を消してはならない」
 もうずいぶん前に中丸 薫氏の「闇の世界権力構造と人類の針路」という著書をご紹介しました。
 つい最近その続編とも言える「真実のともし火を消してはならない」が発刊されました。
 ロスチャイルドに代表される「国際金融資本」の策謀について知識を深めたい方には最適な書です。
 この書の中でも昨年9月11日の航空機テロについて、闇の権力者たちが事前に情報を掴んでいたにも関わらず、実行を見逃したと推定される事実が明らかにされます。
 中央銀行とはそもそも何か?各国の中央銀行を支配しているのは誰か?世界の金融は誰が支配しているのか?バブルを派生させた責任者は誰か?バブルを一挙に崩壊させて膨大な不良債券の山を築かせたのは誰か?がこの本の中で明らかにされています。闇の世界の権力構造を理解し、これから我々が何をすべきかを明らかにしてくれる著だと思います。後半では「幸福論」も展開されていますので是非ご一読を。
 俳優の中丸忠雄氏の配偶者である著者の中丸 薫氏が明治天皇の孫であることを知っている方は少ないと思います。そのせいかどうか分かりませんが、あまりにズバズバ書いているので「ここまで書いて闇の世界に暗殺されないな?」と思います。尤も「暗殺されないと言うことはそれほど真実性が無いのでは?」と逆読みもしたくなってしまいます。

「検察秘録」

 大阪高検公安部長の逮捕につき、検察機密費暴露を封じ込めるためではないかとの議論を呼んでいますが、最近の検察スキャンダルや様々な不可解な事件の真相を明らかにした「検察秘録」(光文社)と言う本が発刊されました。金丸事件の真相や検察と国税の対立、過去の不可解な検察人事の背景が次々と明らかにされる力作です。この本を読んでから今回の逮捕劇の報道を見ると、より興味深いと思われます。

「追われ者」

 本の紹介ばかりで恐縮ですが、ベンチャー経営者の間で発刊が待たれていたクレイフィッシュ社松島庸元社長の「追われ者」がやっと書店に並びました。内容はまさに「引かれ者の小唄」自分の無知を軽く棚に上げながら、まさに他人への責任転嫁のオンパレードです。謙虚な反省の言葉は一言も聞かれませんでした。弁解も許されず、衆人環視の中で実名入りで非難された会社関係者は堪らない気持ちでしょう。これで松島氏の社会的復帰は難しくなったと思います。

 今回のメッセージは本と人の話の紹介ばかりでしたが、最後にある本の一節をお送りします。

「出会った人と読んだ本を別にすると、今日の自分も、5年後の自分も全く同じ」


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 とうとう今月で事務所設立20年となります。
 言いたい放題、やりたい放題の事務所を暖かく見守って頂いた皆様には心から御礼申し上げます。
 大規模な税理士法人の設立が相次ぐ中で、当事務所のような小事務所がどのように皆さんのお役に立てるのか悩み続ける毎日ですが、バランス感覚と、浅く広い知識、機動力を失わずに頑張ってまいりたいと思っておりますので、今後とも宜しくお願い致します。

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