

■ ちぐはぐな政策。日経平均8,000円間近 ■
竹中平蔵経済財政担当大臣が金融大臣も兼務し、プロジェクトチームのメンバーに公的資金注入論者のKPMGフィナンシャルの木村剛氏が選任されたことにより大手銀行株が総売りになっています。特にみずほ銀行とUFJグループの下げがきつくなっています。UFJ銀行に関しては藤和不動産を始めとして大京、ダイエーと巨大不良債権が山積みです。ダイエーに関しては殆ど退場間近状態です。株価を見ても僅か数日で半額になっています。「銀行の経営状態は公的資金を注入するほど危機的状態にはない」と言い続けていた柳沢金融相と竹中新大臣のどちらが正しいかどうかはともかく、現在不良債権処理に関して閉塞状態にあることは間違いありません。このまま柳沢大臣の指導でだらだら不良債権処理を続けても、処理のスピードが遅すぎて、日本の信頼の回復にはほど遠いものがあります。竹中、木村剛両氏の豪腕に期待したいと思います。もちろん瞬間的には不良債権処理が一気に進む過程においては今より遙かにひどい不況状態に陥るでしょうが、現状の継続よりは期待が持てると思います。
また、もともと銀行の不良債権が増加し、財務体質が悪化したのは、不況により企業業績が悪化したというよりも、土地の値段と株価が下落したからです。企業の単なる不動産投資ばかりでなく、巨額な設備投資による損失も、土地の価格がここまで下落しなければここまで傷が深くならずに済んだでしょう。
今回不良債権に対する引き当てをより厳しくし、それでも足りないようなら公的資金を注入したとしても、その間にまた不良債権が増加する危険性が有ります。まず不良債権の増加をストップさせた上で、厳密な査定をしないといつまでも追いかけごっこになってしまうでしょう。
土地の値段がピークの10分の1、株価がピークの4分の1になったのですから土地本位制に基づいて貸付業務を行っていた銀行の不良債権が巨額になるのは当たり前です。また、株式の持ち合いにより、企業と取引を拡大して強大な金融機関となった銀行が、その持ち株の下落によって財務体質が悪化するのも当たり前です。日本は不動産バブルとITバブルの二つのバブルを経て、あらゆる業種が傷を負ってしまいました。富士通、NECといった巨大IT企業の受けた傷はとてつもなく大きく、富士通の株価は一昨年の初めに比べて10分の1以下です。富士通ほどの時価総額の巨大な企業の株価が僅か2年9ヶ月で10分の1になればこの株を保有している企業の損害も莫大です。
土地の下落にしても、ある程度の速度で下落するのならともかく、総量規制のような政策によって一気に土地価格を強制的に下落させられては、手の打ちようもありませんでした。土地価格の上昇を防ぐために、当時幾つもの税制改正が行われましたが、その多くは今回の土地価格の下落の過程においても全く手を加えられていません。麻生政調会長が言い出しました「総ての土地に関する税制をバブル前に戻すこと」もともとそれらの税制は、税法の原則からはずれた変則的な税制ですから、今回それらを撤廃することは逆に土地税制を本来の形に戻すことになります。特に不動産賃貸物件の土地に係わる金利の損益通算禁止規定を廃止することの意味は大きいと思います。
バブル当時、「不動産投資で所得税を節税しましょう」という詐欺まがいの広告をよく見ましたが、不動産投資の当初、立ち上げ期の負担を所得税の負担減と相殺することによって、投資を容易にすることは現在においても大きな効果を持っていると思います。投資用不動産市場が冷え切ってしまったのはこの制度のせいです。
株価についても、制度的に「持ち合い解消」を進めれば何兆円もの株式が市場に売りに出されるのですから株価が下落するのは当たり前です。それに加えてこの時期に源泉分離課税を廃止しようとすれば、テレビのコマーシャルではありませんが、何十兆円ものタンスにしまわれていた個人の保有株式が市場に出回ることになります。かなりの株式を所有している資産家ならば、年末までに株式を一旦売却して買い直し、取得価格を洗い替えるでしょうが、多くの個人株主は売ったら売りっぱなしです。数十兆円と言われるタンスにしまわれていた「寝た子」を起こしてしまったわけです。株式を持っていたことを思い出した人がさらに株式を買い増すと思われますか?殆どの人は「そうだ株があった。早く売って現金化しよう」と考えるはずです。その上、来年まで持っていたら、ややっこしい証券税制が開始されるのです。数十兆円の一部でも市場に出てきただけで相場総崩れになることを予測出来ないのでしょうか?
この様に極端に株式の供給量を増加させる政策をいくつも打っておいて「株価が下がった。さあ大変だ」と騒いでいる政治家はとってもおかしく見えます。

■ 見通し暗いナスダックジャパン市場 ■
今月15日で大阪のナスダックジャパン市場が終わりを遂げ、新市場「ヘラクレス」に名称が変更されます。。大証の巽理事長の強烈なリーダーシップで立ち上げられる市場ですが、先行きの見通しは決して明るくありません。先週、東証のマザーズ担当者と大証のヘラクレス担当者の講演会及びパネルディスカッションがあり参加してきました。東証担当者の元気良さは昨年と様変わりでした。昨年は僅か2社の上場にとどまったマザーズ市場ですが、年内にも15社近い申請が予定されているようです。その多くがナスダックジャパン市場からの鞍替え組であることの自覚を持って今後ともサービスの向上に務めてほしいと思います。
一方、大証担当者の表情もそれほど暗くありません。大証では新2部等とは全く異なる市場として今後とも運営するようだそうです。そして「ヘラクレス」ブランドをグローバルなマーケットとして構築する予定だそうです。まあ話半分どころか、話10分の1ぐらいに考えるべきでしょうか。こういっている間にも店頭市場への変更か東証2部への鞍替えを計画している企業が何社もあります。もし大証がヘラクレスを早急に魅力ある市場に育て上げないと、続々と鞍替えをしていってしまって残されたのは他の市場に移れる能力の無い企業ばかりという悲惨な結果になりかねません。
ナスダックは強いグローバルブランドでした。それに対抗するような市場ブランドを大証が作り出せるとは思えません。マザーズと比較して何か大きな特徴を持った新興企業向けマーケットとして生きていくしか可能性はありませんから、それを早急かつ明確に打ち出していかないと手遅れになります。
新規企業の参入が無く、残った企業も関西の企業ばかりということになれば投資家は見向きもしなくなるでしょう。幸いなことに大証の理事長は役人上がりでなく、バリバリの民間人です。行動力に期待は持てます。但し光世証券の社長ですから不祥事一つで吹っ飛んでしまうかも知れないというリスクはあります。ともかく、年内によほど魅力的な対策を打ち出し、ナスダックジャパン市場を目指していた企業のマザーズへの鞍替えを一刻も早く阻止しないと手遅れになってしまいます。
と言っていたらとんでもない記事を見つけました。夕刊紙に「ヘラクレスは大証の巽会長の趣味」という記事が載っていたので、まさかと思って光世証券のHPを開いたらいきなりヘラクレスの彫像が出てきました。これが本当なら巽会長は自分の趣味である「ヘラクレス」を新市場の名称としたわけです。これではお先真っ暗です。大証新市場に未来はありません。せっかくアンケートを実施しても、結局自分好みの名前を付けるようでは先が知れています。こんなところにワンマンぶりを発揮してもらっても意味がありません。

■ これぞ役人の発想 ■
またまた役人に対する不満です。先月は外人不信でしたが、今月は役人不信です。
休日に郊外に出かけると頭にくるのが例の「ETC」です。いくつものゲートがあるのに相変わらずETC専用ゲートを設けずに一般とETCゲートを併用しているケースが数多く見られます。ETC装着者から見れば、専用ゲートが無ければETCを装着している意味が全くありません。逆に一般車から見ればETCと一般の兼用ゲートの方がETC車がいる分だけ通過時間が早くなりますから、一般車専用ゲートよりも兼用ゲートに向かう人が多くなります。そうなればETCユーザーの不満はますます大きくなります。一般車から多少文句を言われてもETC専用ゲートを設けなければETCは絶対に普及しません。そもそも全料金所でETCが使える準備が出来ていないのにETCの利用を開始する方が間違っています。また早急にETCを普及させる必要があるのに、料金の割引率はハイウェイカードと同じです。最低でも「当初1年間は通行料金は半額」くらいのサービスを打ち出さなければ、自己負担でETC機器を付ける人が増えるはずがありません。
そしてETCの関連団体は国土交通省や道路公団の絶好の天下り先になっていくでしょう。役人のこのような発想を排除していかなければ我が国の繁栄は望めません。これを役人の「私利私欲」という表現を使うことは正しくないかもしれませんが、政治家も役人も「利権」とか「天下り」という発想を捨てて、真に日本の将来を考えた制度作りを進めることは出来ないものでしょうか?

■ 東京の地価 ■
9月19日、国土交通省が今年の7月1日時点での土地の価格、すなわち基準地価を発表しました。東京圏の住宅地の下落率は6.1%と相変わらずの下落が続いていますが、都心3区の商業地に限って言えばとっくに上昇に転じています。銀座や表参道の有名ブランドショップオープンのニュースが続々報道されているのを見てもわかるように、ブランド品に対する需要は全く衰えていません。従って都心のファッションビル用地は引き合いが多く、売り物は超不足状態です。丸ビルの大にぎわいを見ていると人々の都心思考はますます強くなっている気がします。
一方住宅地については松濤、白金、大和郷といえども上昇に転じたとは言えません。これはここ数年言われていることですが、住宅地と商業地は全く分けて考えるべきです。収益を全く生まない住宅地については今後も供給は増えるでしょうが、需要はますます減るばかりです。今後は賃貸住宅の家賃と比較しながら住宅を購入する層が増えてくるでしょう。
都心回帰が進んでいますが、都心の高級住宅地に対するニーズが増えているわけではありません。便利さに対してお金を払う人は増えていますが、自宅をステイタスシンボルとする考え方は消えつつあるようです。今後住宅地と商業地の土地価格の乖離はますます大きくなるでしょう。資産家の高級住宅地取得ニーズは高いかも知れませんが、マーケット全体からすればたかが知れています。今後の土地保有の主体が法人に移っていくことを考えると、居住用の不動産は投資対象となり得ません。不動産投資を考える場合には、商業地か高収益が見込める賃貸不動産物件に絞って考えられるべきだと思います。

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