尚も ここに愛は深く |
一緒に苦しんで 一緒に笑おう。 ずっと一緒に 歩いて行こうね。 |
ツォンがキーストーンを受け取った後、そのままヘリは離脱する。 地上からじっと見上げるエアリスと、ツォンの目があう。 二人は視線をそらさなかった。 そして一言も発さなかった。 やがてヘリはクラウドたちの視界から消えた。 ・・・ツォン・・・。 エアリスはきゅっと手を握りしめた。 クラウドの激しい舌打ちに、エアリスは振り返る。 ケット・シーを見送った後、クラウドは地を蹴っていた。 エアリスは小さく息を吸い込むと、明るく声をかける。 「だいじょぶよ」 いつもは心を落ち着かせてくれるそのエアリスの言葉に、なぜかクラウドは苛立った。 「何が大丈夫だ!」 キーストーンは奪われ、マリンは敵の手の中。さらにこの先も神羅に自分たちの動きは筒抜けになってしまうのだ。 「クラウド」 エアリスはそんなクラウドに驚いた様子もなく、穏やかに言う。 「クラウド、私を見て」 「・・・・・・」 クラウドは顔を上げ、エアリスを見る。 エアリスがにこり、と笑った。 「だいじょぶ。全部、うまくいく」 「エアリス・・・」 優しい、だが揺るぎないエアリスの瞳。 クラウドの心から、焦りや、憤りや・・・何か固いものが溶けてゆく。 クラウドはほっと息をついた。 胸に満ちてくる、柔らかい空気。 「・・・そうだな。きっと、大丈夫だ」 「うん」 エアリスは明るく笑う。 クラウドはそんなエアリスを眩しげに見た。 影を消し去る強い光。 だがそれは決して苦痛なものではなく。 あたたかい、救いの光だった。 「・・・戻ろうか」 言って、クラウドは踵を返す。 「・・・・・・だいじょぶ、だから・・・・・・」 背中に繰り返されたエアリスのその声が、なぜか胸が痛むほど悲しげに感じて、クラウドは振り返った。 だがそのクラウドの目に映ったのは、変わらず一点の曇りもなく微笑む、明るいエアリスの姿だった。 「予定通りですね」 操縦席の男が、フロントから目を離さずに言う。 ツォンはそれにうなずいた。 「そうだな」 キーストーンは彼の手にある。 ・・・エアリス・・・。 「・・・・・・」 「ツォン様?」 「・・・・・・」 ツォンは操縦席の後部シートに片手をかけた。 「・・・・・・戻ってくれ」 「え?」 「私用を思い出した」 「は?」 ゴールドソーサーでの用事とはなんだろう、と思う。まさか遊ぶというのは考えられない。 だが他の人間ならともかく、ツォンが用事があると言うのだ。 何か意味のあることに決まっている。 それに、任務は成功したのだし、まだゴールドソーサーを出て間もない。 「頼めるか」 「あ、はい。もちろんです」 ヘリが旋回を始める。 イリーナがツォンを見た。 「私用って、なんですか?」 「イリーナ」 ツォンはそれには答えず、キーストーンを彼女に渡した。 「お前が持っていろ。・・・大丈夫だな?」 「はい! おまかせ下さい」 イリーナはギュッとキーストーンを握る。 ツォンはそれに頷くと、ハッチを開いた。 ヘリはゴールドソーサーのポートへ、ゆっくり降り立つ。 ツォンは操縦席を振り返った。 「25:40にここで」 「わかりました。お気をつけて」 「ありがとう」 ツォンはそして、ヘリを後にした。 エアリスはぱさり、と髪をおろした。 ベッドに腰かける。 着替えようかと服のボタンに手を伸ばした時、軽く扉がノックされた。 エアリスは立ち上がると、扉を開ける。 そこにはゴーストを模したメッセンジャーが浮かんでいた。エアリスはホテルのメッセンジャーからメッセージを受け取る。 扉が閉められた後、エアリスはメッセージを開いた。 “ホテル前、ターミナルへのゲート近くで待つ” ツォンだ! そうエアリスは直感した。 そして、エアリスはそのまま駆け出した。 メッセージの場所に向かったエアリスは、そこにツォンを見つけて足を止めた。 まだ別れてそれほど時がたっていないというのに、もう何年も会っていないような気がした。 胸が震える。 これほど自分は彼が好きなのだ、とエアリスは思う。 「・・・ツォン・・・」 ツォンは、振り返った。 エアリスを認め、ツォンは静かに笑んだ。その瞳は、普段の彼を知る者が見れば驚くだろうほど、ひどく優しい。 エアリスはどきりとする。 この人工の闇ではとてもかなわない、とエアリスは思う。柔らかで綺麗な彼の瞳には・・・。 優しい色の瞳を前にして、エアリスの胸は切なく痛んだ。 ああ、会いたかった・・・!! 「ツォン!」 エアリスはツォンの胸に飛び込んだ。 ツォンの腕はしっかりと、恋人を支える。 ツォンはそして、エアリスを抱きしめた。 |