『光らびた村』PATTAMANGALAM-精神世界=13 大樹祭5

 ともあれ、うら若き乙女たちが美しいサリ―を着て一心に大樹を巡る姿には胸をうつものがある。バニヤンは、たれ下がった枝がそのまま地について根となり横へ広がってゆくだから一口に一周するといっても100メ―トル以上はある。単純計算してもなんと10キロ。小走りでまわっていた娘もしたから、これは並のジョギングなんてもんじゃない。しかも最後の一周は、かかととつまさきをつけるようにして歩かねばならないわけだから高度な持久力と集中力が要求される。信仰力の勝利なのだ。

 「わあ、疲れるだろうなあ。でもきれいだなあ」などと感慨にふけりながらも、僕は必死で鉛筆を走らせる。なぜ必死にならざるを得ないのかというと、こんな時でないと乙女のスケッチができないからだ。村人の似顔絵をずいぶん描いたが、年頃の娘さんの絵はごくわずか。彼女たちは、初潮をむかえてサリ―をきたとたん、僕のような不良外人の視界から一切消えてしまうのだった。したがって、彼女たちの自然な肢体を描けるのは、村の定期市で買物をしている時や祭りでお祈りをしている時が絶好のチャンスなのである。要するに、僕がこの『タァイ・マ―スィ・アディ』に興味を持ったそもそもの動機は、しごく不純なわけ。